第39話『新調した装備と次なる大都市』
王都からの使者ヴァルター補佐官を完璧に返り討ちにし、手に入れた金貨五十枚。
指名依頼の達成から数日、フォレストピアの街での『クローバー』の知名度は、もはや「知らない者はいない」というレベルにまで跳ね上がっていた。
「おい、見たか? あの三人組……」
「ああ、Cランクの変異種を一日で片付けた『クローバー』だろ? もう街の英雄扱いだな」
すれ違う冒険者たちの尊敬の眼差しを受けながら、啓太たちはフォレストピアで一番の規模を誇る武具工房『ドワーフの鎚亭』を訪れていた。
「いらっしゃい! ……おおっ! 噂の『クローバー』の御一行さんじゃねえか!」
店奥から出てきたのは、頑丈な腕組みをした小柄なドワーフの親方だった。
「親方、今日は三人の装備を新調したくてね。手に入った予算で、今使える最高のものを揃えたいんだ」
「おうよ! 噂は聞いてるぜ、あの意地悪い役人から金貨五十枚をむしり取ったんだろ? ハハッ、痛快だったぜ! 腕によりをかけて最高の品を選んでやるよ!」
ドワーフの親方は気持ちよく笑うと、店の奥から厳重に保管されていた逸品を幾つも取り出してきた。
まず選ばれたのは、前衛である啓太の装備だった。
「まずはリーダーのお前さんだ。お前さんの立ち回りなら、重苦しいプレートアーマーより、軽さと頑丈さを兼ね備えた『秘銀混じりの軽甲冑』が最高だ。大剣も、グラナイトベアの甲殻を鍛え直したこの『剛岩の大剣』を持っていきな!」
「すごい……持った感じがすごくしっくりくる。軽いのに、刃にズッシリとした重心があるな」
啓太が新調した大剣を軽く振ると、ヒュッと鋭い風切り音が響いた。
前世の店舗マネジメントと同じで、道具の質の向上は作業効率(=生存率)に直結する。啓太の口元が自然と緩んだ。
続いて、シルフィの弓と防具だ。
「お嬢ちゃんにはこれだ。風の魔導木を削り出して作った『風霊の長弓』。矢に自動で風の補正がかかるから、遠距離の命中率と貫通力が跳ね上がるぞ!」
「うわぁ……! すごいよケイタ、弦を引くだけで風が手に吸い付いてくるみたい……!」
シルフィが目を輝かせながら弓を構える。
そして最後は、爆発的な超魔法を放つリーネの装備だ。
「エルフのお嬢ちゃんには、この『世界樹の枝の杖』と『魔導師のシルクコート』だ。魔力の循環を助けるから、魔法の威力が上がるのはもちろん、使用後の魔法酔いや疲労を大幅に軽減してくれる」
「ふぇぁぁ……! 着心地がとっても軽くてふわふわですぅ……! これなら、もっとたくさん魔法が撃てそうですぅ!」
リーネが嬉しそうに裾をひらひらと揺らした。
「よし……これで『クローバー』の全身新調完了だな!」
店を出た三人は、お互いの新装備を見立て合って笑顔を咲かせた。
啓太の【剛岩の大剣】と軽甲冑。
シルフィの【風霊の長弓】。
リーネの【世界樹の杖】とコート。
一気に装備がランクアップしたことで、パーティー全体の総合戦力は、すでに上位ランクの冒険者チームにも引けを取らない領域に達していた。
「さあ、装備も整ったことだし……次は『これ』だな」
啓太はポケットから一枚の真新しい羊皮紙を取り出した。
それは午前中、冒険者ギルドのマスターから直々に手渡された『紹介状』だった。
「……王立都市『グランドール』への通行許可証兼、紹介状かぁ」
シルフィが感心したように息を漏らす。
「はい。ギルドマスターが言ってましたねぇ。今のあたしたちの力なら、このフォレストピアの街に留まるのは勿体ない。王国で最も大きな大都市『グランドール』へ向かうべきだって……」
「ああ」
啓太は遠く北の空を見上げた。
王立都市『グランドール』。
そこは数多くのBランク、Aランク冒険者が集い、巨大なダンジョンや大規模な依頼が集まる、まさに冒険者たちの聖地とも言える大都市だ。
そして……あの横暴なヴァルター補佐官をはじめとする、王国の中心勢力が蠢く場所でもある。
(Fランクの駆け出しから始まって、シルフィと出会い、リーネを仲間に迎えてEランクへ昇格した。……俺たちの『クローバー』は、確実に強くなっている)
元コンビニ店長として培った管理・交渉能力。
シルフィの確かな弓の腕とサポート。
リーネの規格外な超魔法。
そして、啓太の秘められた【強運】と『高カロリー・スティックバー』。
この三人なら、どんな大都市に行こうと、どんな困難が立ち塞がろうと、絶対に乗り越えていけるという確信があった。
「二人とも、どうだ? このフォレストピアを旅立って、王都グランドールを目指さないか?」
啓太が振り返って尋ねると、二人は顔を見合わせ、弾けるような笑顔で頷いた。
「勿論だよ、ケイタ! ケイタとなら、世界の果てまでだってついていくよ!」
「はいっ! ケイタさんの作る美味しいご飯とスティックバーがあれば、どこまでだって行けますぅ!」
「よし……決まりだな!」
夕暮れの風が心地よく吹き抜ける中、三人はしっかりと手を重ね合わせた。
駆け出し冒険者パーティー『クローバー』の、フォレストピアでの章が静かに終わりを告げ――
さらなる広大な世界、王立都市グランドールを舞台とした『次なる大冒険』の幕が上がろうとしていた。




