第32話『Eランク昇格』
フォレストピアのギルドで目覚ましい活躍を続け、周囲の評価を一変させた『クローバー』。
ある日の夕方、三人がいつものように素材の買い取りを終えたとき、受付の女性職員が微笑みながらカウンターの奥から小さな木箱を取り出してきた。
「『クローバー』の皆さん。……実は、ギルドマスターからお預かりしているものがあるんです」
箱の中から取り出されたのは、光沢のある新しいギルドプレートが三枚。
そこに刻まれていたのは――銀色の【E】の文字だった。
「これまでの数々の討伐・採取の実績、そして街道の安全貢献を考慮し、本日付で皆さんのEランクへの昇格が認められました!」
「ふぇええっ!? Eランクですぅ!?」
リーネがおっとりとした声を上げて目を丸くする。
「やったぁぁーっ! ケイタ、あたしたち本当にEランクになったよ!」
シルフィが飛びついて啓太の腕をゆさゆさと揺らした。
「ああ、よかった……! 地道に頑張ってきた甲斐があったな」
啓太も手渡されたプレートを受け取り、その重みを噛みしめた。
FランクからEランクへの昇格。
前世で言えば、研修期間を終えて正式に店舗のメインスタッフとして認められたような、確かな達成感があった。
「……おいおい、マジかよ」
「あの三人組、Fランクに入ってから一ヶ月も経ってねえぞ……?」
「前のパーティを追い出された大食いエルフが入ってから、一気に加速したな……」
ギルドホールにいた他の冒険者たちから、どよめきと感心の発言が漏れ聞こえてくる。
かつてリーネを「大飯食らいの借金野郎」と馬鹿にしていた者たちも、いまや納得の表情で拍手を送っていた。
「Eランクになれば、受けられる依頼の範囲も広がりますし、他の街や国への通行許可も取りやすくなります。……ただし」
受付職員が少し表情を引き締め、三人を見つめた。
「Cランク以上の高ランクを目指すとなると、実績だけでなくギルドの厳しい『昇格試験』が課されることになります。ですが……今の皆さんなら、そこまで駆け上がるのも遠い未来ではないかもしれませんね」
「昇格試験、か……」
啓太は自分の手の中にあるEランクの証を見つめ、静かに闘志を燃やした。
(元コンビニ店長としての管理能力、そしてこの二人という最高の仲間がいる。Cランクだろうと、その上だろうと、みんなで一緒に登り詰めてやる)
「よし! Eランク昇格のお祝いだ。今夜は宿で豪勢な晩ご飯にしよう!」
「わーいっ! ご飯ですぅ〜〜っ! お肉たくさん食べたいですぅ!」
「あたしも手伝うよ、ケイタ!」
夕暮れ時のフォレストピアの街。
新しい目標と大きな自信を胸に抱き、三人となった『クローバー』は笑顔で歩き出すのだった。




