第31話『躍進のクローバー』
巨大イノシシ『ワイルドボア』の討伐から一週間。
森の街フォレストピアの冒険者ギルドは、今日も大勢の冒険者たちでごった返していた。
「おい、見たか……? 今日の買取所……」
「ああ、またあの三人組だろ……? ワイルドボア五頭に、大蜘蛛まで持ち込んできやがった……」
ギルドホールの一角で、ベテラン冒険者たちがひそひそと囁き合っている。
彼らの視線の先にいるのは、啓太、シルフィ、そしてリーネの三人だ。
「……信じられねえ。あのエルフ、前のパーティーじゃ食費ばかりかさむ落ちこぼれだったはずだぞ?」
「それが今じゃ、一日で上級依頼を何件もこなす爆発力だ。一体どんな魔法を使ってるんだ……?」
かつてリーネを「大飯食らいの借金野郎」と馬鹿にしていた周囲の目は、いまや驚愕と尊敬の入り混じったものへと完全に変わっていた。
「はい、お疲れ様でした! 『クローバー』の皆さん、本日も依頼達成です!」
受付の職員が、眩しい笑顔で新しいギルド証をカウンターに置いた。
「そしておめでとうございます! これまでの目覚ましい成果を考慮し、本日付で『クローバー』の皆さんはEランクへ昇格となりました!」
「本当ですかぁ!? Eランクですぅ!」
リーネがおっとりとした声を上げて喜ぶ。
「やったね、ケイタ! これで受けられる依頼の幅もグッと広がるよ!」
「ああ、良かった。地道に稼いできた甲斐があったな」
啓太も差し出された新しいギルド証を手にとり、そのズッシリとした質感に口元を緩めた。
前衛で体を張りつつ『強運』で危機を回避する啓太。
正確無比な弓で牽制と援護をこなすシルフィ。
そして、啓太の「高カロリー・スティックバー」で連射が可能になったリーネの爆発的な超魔法。
三人となった『クローバー』の噛み合い方は凄まじく、異例のスピードで結果を出し続けていた。
「よし、Eランク昇格のお祝いも兼ねて、夜はパッと美味いものでも食べるか!」
「わーいっ! ご飯ですぅ〜〜っ!」
リーネの耳が嬉しそうにピンと跳ね上がる。
宿へ戻る道中、啓太はポケットの中でジャラリと鳴る金貨の重みを感じていた。
(リーネの借金も無事に返し終わったし、旅の資金も一気に蓄えられてきたな)
前世ではコンビニ店長として、店舗の成長に喜びを感じていた啓太。
いま、仲間と共に強くなり、資金を貯め、確実に「次のステップ」へ進んでいる感覚は、それ以上に胸を熱くさせるものがあった。
(Eランクに上がれば受けられる依頼も増えるし、さらに遠くの街や国への移動許可も下りやすくなる。そろそろ、このフォレストピアの『次』の目的地についても情報を集め始めるか)
「ケイタさん、今日の晩ご飯は何ですかぁ〜?」
「そうだな……フォレストピア名物の『大角鹿の香草煮込み』と、特大の焼き立てパンにしようか」
「ふはぁ〜〜っ! 楽しみですぅ〜〜!」
夕暮れの街道を、三人の賑やかな笑い声が包み込んでいく。
駆け出しだった『クローバー』は、新しい仲間を加えて確実に次なるステージへと歩みを進めていた――。




