第30話『【幕間】風の少女と出会いの記憶(後編)』
(シルフィ視点)
出会った日は散々だったケイタだけど、二人でパーティ『クローバー』を組んでからの日々は、驚きの連続だった。
武器の扱いは怪しかったのに、ケイタの周りでは不思議なことばかりが起きた。
仕掛けた罠をすっかり忘れていたのに、そこへ高級な『シルキーホーン』が勝手にかかって大金が手に入ったり。
森で迷いそうになれば、なぜか一番安全で希少なハーブが群生しているルートへ辿り着いたり。
「ケイタって、本当にとんでもない幸運の持ち主なんだね……!」
「いや、たまたまだよ」
本人はいつだって照れくさそうに笑うだけ。
でも、あたしが本当に救われていたのは、その幸運じゃなくてケイタの「優しさ」と「居心地の良さ」だった。
ラグナの街で、あたしが前衛のいない焦りや失敗で落ち込んでいた時も、ケイタは一度もあたしを責めなかった。
それどころか、夜には宿で驚くほど美味しいご飯を作ってくれて、元店長さんらしい落ち着いた声で話を聞いてくれた。
『大丈夫、ゆっくり一歩ずつ進めばいいんだよ』
その言葉に、どれだけ肩の荷が下りただろう。
ラグナの街を出る日、宿のマルタさんやギルドのみんなが温かく見送ってくれた時のことも覚えている。
「シルフィちゃん、ケイタさん、気をつけてね!」
「元気に旅を続けるんだぞ!」
一人で不安を抱えていた頃には想像もできなかった、温かい絆。
ケイタと一緒にいたから、あたしはこんなに素敵な世界を見ることができたんだ。
そしていま――。
「すぅ……すぅ……ふぇ……お肉……美味しいですぅ……」
ベッドの上で、寝言を言いながら幸せそうにお腹をさすっているリーネ。
フォレストピアのギルドで出会った、食費の借金で追放されかけていたおっとりエルフの女の子。
最初はびっくりしたけれど、ケイタは迷わず彼女の借金を立て替えて、特製のご飯まで作って仲間に迎え入れた。
『ご飯を美味しく食べて、元気に魔法を使ってくれれば大満足だよ』
あの日、あたしに差し伸べてくれたのと同じ温かい手を、ケイタはリーネにも差し伸べたんだ。
「よし、手入れ完了!」
あたしは弓を愛おしく撫でて、そっと壁に立てかけた。
最初は格好のつかない出会いだった。
だけど今の『クローバー』は、頼もしくて優しいリーダーのケイタと、規格外の超魔法を放つリーネ、そして風の狩人のあたし。
三人になった『クローバー』は、もっと強くて、もっと賑やかで、もっと素敵なパーティになった。
(ケイタ、あたしをパーティーに誘ってくれて……ううん、あの日飛び出してきてくれて、本当にありがとう)
すやすや眠るリーネに毛布をかけ直し、あたしは窓の外の静かな星空を見上げた。
明日からも、きっと楽しい冒険が待っている。
この大好きな仲間たちとなら、どこまでだって行ける気がしていた。




