第28話『高カロリーの魔法』
「ふぁぁ……昨日の一撃でスッカラカンでしたぁ……。朝ご飯、最高に美味しかったですぅ……」
フォレストピアの街へ戻った翌朝。
リーネは宿の食堂で特盛りの朝食を綺麗に平らげ、幸せそうに頬を緩めていた。
啓太はコーヒー(異世界の香草茶)を飲みながら、昨日リーネが見せた圧倒的な魔法の威力を思い出していた。
(一撃の威力は文句なしのS級だ。だが、一発打つたびにあそこまで腹ペコになって動けなくなると、ダンジョンや連続戦闘で命取りになるな……)
啓太は元コンビニ店長としての知識をフル回転させた。
(必要なのは、素早い栄養補給と高カロリー。手軽に持ち運べて、戦闘の合間にもサッと食べられる高エネルギー食……。そう、前世でいう『エネルギーゼリー』や『高タンパクなカロリー補給食』みたいなものが必要だ!)
啓太はさっそく街の市場へ出かけ、現地で手に入る食材を物色した。
購入したのは、粘り気と強い甘みのある『ハニーナッツ』、高栄養な『魔獣の乾燥肉の粉末』、そして熱量を高める『赤果実のジャム』だ。
宿の厨房を借りてこれらを混ぜ合わせ、固形に焼き固める。
「できたぞ。特製『高カロリー・スティックバー』だ」
「ふぇ……? これがお菓子ですかぁ?」
市場から戻ってきたリーネとシルフィに、焼き上がった茶色いスティック状の固形食を差し出す。
「お菓子っていうより、持ち運びできるエネルギーの塊だな。ナッツと肉粉末で高タンパク・高カロリーに仕上がってる。これをポケットに入れておけば、魔法を使った直後でもサッと一噛みで栄養補給できるはずだ」
「すごーい! ケイタ、本当になんでも作れちゃうんだね!」
シルフィが目を輝かせる。リーネも一口かじると、その香ばしい甘さとズッシリとした腹持ちの良さに目を丸くした。
「んんっ……! 甘くて香ばしくて、すっごく美味しいですぅ! お腹の底からジワッと力が湧いてくる気がしますぅ……!」
「よし、これでリーネの燃費問題もかなり改善されるはずだ。今日も森へ繰り出すぞ!」
その日の午後、三人は『深緑の森』の少し奥まったエリアへと足を踏み入れていた。
今日の依頼は、街道近くに巣を作って旅人を襲う『ワイルドボア(巨大イノシシ)』三頭の討伐だ。
「ブモォォォッ!!」
茂みを押し分け、鋭い牙を生やした巨大なワイルドボアが三頭同時に襲いかかってくる!
「ケイタ、右のやつはあたしが止める!」
シルフィがすばやく距離を取り、風の魔力を乗せた矢を放つ。矢は正確に一頭の膝を撃ち抜き、体勢を崩させた。
「よし! 残り二頭はまとめて叩く! リーネ、準備はいいか!?」
前衛の啓太が小太刀を構え、ワイルドボアの突進をギリギリでかわしながら足止めする。
「はい! いつでもいけます!」
リーネがスッと背筋を伸ばし、両手を前に掲げた。
いつものおっとりした雰囲気は完全に消え去り、その青い瞳に凛とした鋭い光が宿る。
「駆け巡れ、気高き炎……! 『ファイアストーム』!!」
ドゴォォォンッ!!
巨大な炎の竜巻が放たれた。
旋風となった炎は二頭のワイルドボアを一瞬で包み込み、叫び声すら上げる間を与えずに焼き尽くした。
圧倒的な威力の広範囲魔法。
炎が収まると、そこには黒こげになった魔物の素材と、焦げた地面だけが残されていた。
「ふぅ……」
魔法を放ち終えたリーネは、深く息を吐くと――
「ふゃぁぁぁ……やっぱり凄まじくお腹が空きましたぁ……っ」
いつものおっとり顔に戻り、フラッと倒れそうになった。
だが、そこへすばやく駆け寄った啓太が、ポケットから例の『高カロリー・スティックバー』を差し出す。
「ほら、リーネ! これを食え!」
「はむっ……! もぐもぐ……!」
スティックバーを丸ごと一本口に放り込み、必死で噛み砕くリーネ。
すると、ほんの数秒で顔に血色が戻り、自分の足でしっかりと立ち上がった。
「ふはぁ〜〜っ! 生き返りましたぁ……! ケイタさんのスティックバーのおかげで、倒れずに済みましたぁ……!」
「成功だな! これなら連続戦にも耐えられるぞ!」
シルフィも駆け寄り、三人は互いの顔を見合わせて爽やかに笑い合った。
前衛で敵を抑える啓太。
正確な射撃で牽制するシルフィ。
そして、啓太の特製補給食によって『連射』が可能になった超威力の魔法使いリーネ。
三人となったパーティ『クローバー』のコンビネーションは、早くも完璧な完成度を見せ始めていた。




