第26話『三人目の仲間』
「〜〜っ、本当に美味しかったですぅ……。ケイタさんは命の恩人ですぅ……」
お腹を満たしたリーネは、長くて綺麗な耳をふわふわと揺らしながら、おっとりとした口調で胸を撫で下ろした。
「前のパーティーの人たちには『大飯食らい』って怒られちゃいましたけど……わたし、魔法を使うと本当にすぐお腹が空いちゃうんですぅ。魔力を回復させるためには、たくさん食べないとダメなんですぅ……」
「なるほどな。燃費が悪い高級車みたいなもんか」
啓太は納得したように深く頷いた。
「ねえケイタ、どうしよう? リーネさん、借金もあるみたいだし、このままだと路上で倒れちゃいそうだよ……」
シルフィが心配そうに啓太の顔を覗き込む。
啓太は腕を組み、目の前でおっとりとお腹をさすっているリーネをじっと見つめた。
(膨大な魔力を持つ魔法使い……。前衛の俺、後衛の弓手シルフィに加えて、強力な魔法使いがいれば『クローバー』の戦力は一気に跳ね上がる。問題は食費と借金だが……)
「リーネ、さっき前のパーティに立て替えられた借金って、いくらなんだ?」
「えっと……大銀貨二十枚ですぅ。ギルドに返済しないと、新しい依頼が受けられないんですぅ……」
「大銀貨二十枚か」
先日のシルキーホーンの買い取りで得た報酬は金貨三枚(=大銀貨三十枚相当)。旅の準備で新しい装備や日用品を買ったが、まだ手元には大銀貨二十五枚ほどの資金が残っている。
(支払えない額じゃない。それに、食費に関しても俺の強運や【不老】の知識、それに料理のやりくりでカバーできる範囲だ)
啓太は意を決すると、ポケットからズッシリと重い革袋を取り出した。
「リーネ。その借金、俺たちが立て替えて払ってやるよ」
「ふぇ……!? き、金貨が入った袋ですぅ……!? ほんとうですかぁ!?」
リーネの大きな青い瞳が丸くなり、おっとりした声が一瞬跳ね上がった。
「ただし、条件がある。俺たちのパーティ『クローバー』に加入すること。そして、借りた金は依頼の報酬から少しずつ返してもらう。それでどうだ?」
「け、ケイタさん……! わたしをパーティーに入れてくれるんですかぁ!?」
リーネは信じられないといった様子で口元を両手で覆った。
「でもでも、わたし、すっごく大食いですよぉ……? 食費でまた迷惑かけちゃうかもしれませんぅ……」
「食費の件なら心配いらないよ!」
シルフィがニッコリと笑顔で助け船を出した。
「ケイタはすっごく料理が上手だし、あたしたち『クローバー』はすっごく運が良いんだから! 美味しいもの、いっぱい食べて魔法をドカンと使ってくれればそれで大満足だよ!」
「シルフィさん……っ! ケイタさん……っ!」
リーネの瞳からボロボロと大きな涙が溢れ出した。
「うぅ……ありがとうございますぅ……! わたし、一生懸命がんばりますぅ! ケイタさんとシルフィさんのために、いっぱい魔法使いますぅ……!」
その直後。
三人は受付カウンターへと向かい、ギルド職員へリーネの借金大銀貨二十枚を全額返済した。
「……えっ!? リーネさんの借金を全額返済……!? しかも新しくパーティに勧誘されたのですか!?」
受付の職員は目を丸くして驚いていたが、手続きは迅速に行われ、無事にリーネは『クローバー』の正式メンバーとして登録された。
「ふぁぁ……すっかり借金が無くなってスッキリしましたぁ。……あ、でも、なんだかまた少しお腹が空いてきた気がしますぅ……」
「はは、さっきあんなに食べたばかりだろ。よし、まずは宿に行って荷物を置いて、今夜は三人で歓迎会をやろう」
「歓迎会ですぅ!? 美味しいもの食べられますかぁ!?」
「ああ、お前が満足するまで食わせてやるよ」
「わーいっ! ケイタさん大好きですぅ〜〜!」
おっとりとした笑顔で啓太の腕にしがみついてくるリーネ。
前衛の啓太、後衛弓手のシルフィ、そして規格外の魔力を持つおっとり腹ペコ魔法使いのリーネ。
三人となった『クローバー』の新しい冒険が、この森の街フォレストピアでいよいよ幕を開けるのだった。




