第111話『店長マニュアル』
『クローバーマート』王都1号店の店舗奥にある執務室。夜が深まる中、啓太は一人、机に向かってペンを走らせていた。
羊皮紙の上にぎっしりと書き込まれているのは、彼が元コンビニ店長として培ってきた知識と、この異世界で仲間たちと実践してきたすべてのノウハウだった。
『クローバーマート運営・接客・品質管理基本マニュアル』
表紙にそう刻まれた分厚い一冊の冊子をナデナデと撫でながら、啓太は満足そうに息を吐いた。
「よし……これで『店長不在』でも、お店が完璧に回る仕組みが完成したぞ」
翌朝、啓太は全スタッフと『クローバー』の仲間たちを店内に集めた。
「みんな、聞いてくれ。俺たちが2号店、3号店の出店に向けて各地を旅している間、この王都1号店を任せる『店長代理』を発表する」
啓太の言葉に、アルバイトから社員へと昇格した優秀な青年・マルクが息を呑んだ。
「マルク、君だ。君にこの1号店の店長代理を託したい」
「えっ……! ぼ、僕が店長代理ですか……!? ほ、本当に僕なんかでいいんですか……!?」
「勿論だ。君の真面目な仕事ぶりと、お客さんへの思いやりは俺が一番よく知っている。それに……このマニュアルがある」
啓太が手作りの分厚いマニュアルをマルクへと手渡す。
「ここには、清掃の手順から商品の補充タイミング、レジ締め、さらにはトラブルが起きた時の対応まで、すべてが書いてある。……だが何より大切なのは、技術じゃない。『お客様に便利と笑顔を届ける』という心だ」
「ケイタさん……ッ!」
マルクは感極まった様子でマニュアルを両手で強く抱きしめ、深々と頭を下げた。
「任せてください! ケイタ店長たちが作ってくれたこの大切な『1号店』を、命に代えても守り抜いてみせます!」
「頼んだぞ、マルク!」
シルフィやルナたちも温かい拍手を送り、任せられる後継者の成長を心から喜んだ。
「ふふ、これで王都の拠点は完璧だね! ケイタ、いよいよ新しい街への旅立ちだね!」
「ああ。最高の仲間に店を任せて、俺たちは次の『夢の舞台』へ出発するぞ!」
一歩ずつ、確実に広がり始める異世界コンビニの輪。啓太たちの新たな冒険の準備は、着々と整いつつあった。




