第108話『悪徳商会の失脚』
「な……なぜだぁぁぁッ!? なぜあの店が潰れるどころか、売り上げを伸ばしているのだぁぁッ!?」
ガルド商会の豪華な執務室で、ガルドは髪を掻きむしりながら絶叫していた。
「ひ、ヒィィッ! か、彼らは問屋を通さず、郊外の農村やダンジョンから直接素材を買い取っているようでして……! しかも問屋より高値で買い取るため、生産者たちがこぞって『クローバーマート』へ食材を持ち込んでいるのです……!」
「お、おまけに我が商会の抱える問屋には食材が集まらなくなり、王都内の我が直営レストランが食材不足に陥っております……!」
「なんだとぉぉぉッ!?」
ガルドの顔が恐怖で引きつる。圧力をかけたはずの相手に、市場の主導権を完全に奪い返されたのだ。
そこへ、バンッ!と音を立てて執務室のドアが叩き開けられた。
「ガルド! そこまでだ!」
踏み込んできたのは、商業ギルドの総裁と、王都の近衛兵たちだった。その背後には、静かに佇む啓太と『クローバー』の仲間たちの姿がある。
「な、なんだお前たちは! 営業中の私に何の下知だ!?」
「ガルド、貴様が『クローバーマート』に対して行った不当な流通妨害、および裏稼業のゴロツキを使った狂言嫌がらせの全容が明らかになった」
総裁が重々しく羊皮紙を突きつける。
「な、何を証拠にそんな――!」
「これですよ、ガルドさん」
啓太がポケットから取り出したのは、音声を記録する魔導具『録音の魔石』だった。そこには、ガルドが裏稼業の男に金貨を渡し、店を妨害するよう指示していた生々しいやり取りがはっきりと残されていた。
「あたいの『勝負師の勘』で仕込みの動きを読ませてもらってな。裏でコソコソ動いてた証拠は全部押さえさせてもらったぜ!」
ルナが不敵に笑う。
「ひ……ヒィッ……!」
「商業ギルドの法に基づき、ガルド商会の営業許可を取り消し、全財産を凍結する! 連れて行け!」
「や、やめろぉぉぉッ! ワシの商会が……ワシの財産がぁぁぁッ!!」
見苦しく叫ぶガルドは、近衛兵たちによって引きずられるように連行されていった。
王都の商業を牛耳っていた巨悪が失脚し、街に本当の意味での自由な取引と活気が戻った瞬間だった。




