第106話『ガルド商会の追い込み』
狂言の嫌がらせを退けられたガルド商会は、なりふり構わぬ暴挙に出始めていた。
「なに……!? 『クローバーマート』への食材の搬入がストップした……!?」
朝一番、宿屋の厨房兼バックヤードで、仕入れから戻ったシルフィが悔しそうに拳を握りしめていた。
「商業ギルドの大型流通ルートを、ガルド商会が金を積んで買い占めたんだよ……! うちへ回すはずだった肉や野菜、小麦粉の供給を力づくで止めやがった!」
「なんですって……!? そんなの卑怯すぎますぅ……ッ!」
リーネが憤りで長耳を逆立て、ダグラスも苦々しい表情で腕を組んだ。
「王都の主要な問屋を牛耳るガルドならではの汚いやり口だな。商品の在庫が尽きれば、店を開けられなくなる……」
「へっ、どこまでも腐った野郎だぜ。直接殴り込んで引導を渡してやりたいところだが……」
ルナがメイスの柄を固く握りしめる中、店長である啓太の表情は驚くほど冷静だった。
「慌てるな、みんな。……元コンビニ店長を舐めてもらっちゃ困る」
「え……? ケイタ、何か策があるの?」
シルフィが尋ねると、啓太はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ガルド商会が押さえたのは『王都内の大型問屋』だけだ。だが、俺たちの最大の強みは何だ?」
「あたしたちの……強み?」
「そうさ。俺たちは単なる商人じゃない。各地のダンジョンや未踏の地域を攻略してきた、最高峰の冒険者パーティー『クローバー』だ!」
啓太は王都周辺の広大な詳細地図をテーブルの上に広げた。
「ガルドの息がかかっていない個人農家や、郊外の冒険者ルート、さらには俺たちの『強運』と『鑑定』で見つけ出した未開拓の採集ポイント……そこから直接、最高の食材をルート開拓して直仕入れする!」
「直仕入れ……! 問屋を通さず、自分たちの足で素材を集めるってことか!?」
ルナの目が輝き出す。
「そうだ。そうすれば間卸しの手数料もかからず、問屋の品よりも圧倒的に新鮮で高品質な食材が手に入る。……ガルド商会の圧力を、逆にコスト削減と品質向上に繋げてやるのさ!」
「ふぁぁぁ……っ! 流石ですぅ〜〜っ! ケイタさんのノウハウは凄すぎますぅ〜〜っ!」
「よし! なら仕入れルートの開拓はあたしとダグラスで一気に片付けるよ! 精霊の足なら、王都郊外の農家なんてあっという間だからね!」
「おう! 搬送の護衛は俺に任せとけ!」
仲間たちの目が息を吹き返したように輝き出す。
王都の商売人が考えもつかない「冒険者×コンビニ経営」の機動力。ガルド商会の卑劣な仕打ちが、逆に『クローバーマート』をより強固な店舗へと進化させようとしていた。




