第105話『卑劣な妨害行為』
翌日の午後。『クローバーマート』の店内が買い物客で溢れ返っていたその時、事件は起きた。
「おいこらぁぁぁッ!! この店の食いものはどうなってやがるんだッ!?」
突然、店の入り口近くで怒号が響き渡り、店内の客たちが一斉に身をすくめた。
声を上げたのは、身の丈二メートル近い強面の男数人だった。ガラ行儀の悪い甲冑を身に纏い、見るからに行儀の悪いゴロツキといった風貌である。
「俺はなぁ! さっきこの店で買い食いした『肉まん』のせいで、腹が激痛で死にそうなんだよッ!! 毒でも盛ってんじゃねぇのかッ!?」
男が手に持った半ば食べかけの肉まんを床に叩きつけると、周りの客たちから「えっ……毒!?」「この店の食べ物、危険なの……!?」と動揺の声が広がり始めた。
「待ってください! 当店の食べ物はすべて『鑑定』と厳重な品質管理を行っており、毒や痛んだ食材は一切――」
リーネが説明しようと前に出るが、男は卑劣にもリーネを突き飛ばそうと手を伸ばした。
「うるせぇッ! 小娘が知ったような口叩いてんじゃねぇぞッ!」
「きゃっ……!?」
その瞬間――!
ドガッッ!!
男の伸ばした腕が、突如現れた鉄壁の大盾によって完璧に遮られた。
「俺の仲間と、店のお客に気安く触るな」
ダグラスが静かな、しかし山をも動かすような威圧感を放ちながら仁王立ちしていた。
「くっ……なんだお前はッ! 邪魔立てする気か!?」
「騒ぎを起こしたいなら相手になってやるぞ、ゴロツキども」
ルナがメイスを肩に担ぎ、ギラギラとした勝負師の凶暴な笑みを浮かべて前に出る。シルフィも素早く精霊弓を引き絞り、矢先を男たちの眉間にピタリと合わせた。
「な、なんだこの圧は……ッ!?」
男たちが気圧されて一歩後退る中、啓太が静かに男の足元へ歩み寄った。
「……『鑑定』発動」
啓太の眼光が青く輝き、叩きつけられた肉まんと、男の体状態を瞬時に解析する。
【対象】:投げ捨てられた肉まん
【状態】:成分に異常なし。極めて新鮮。
【対象】:暴言を吐く男
【状態】:腹部の異常なし。極めて健康。
服のポケットに『ガルド商会』からの金貨10枚を所持。
「フッ……演技も雑なら、裏付けも甘いな」
啓太はフッと冷ややかな笑みを浮かべ、男の目を真っ直ぐに見つめた。
「君の腹は至って健康だ。そしてその肉まんに毒など入っていない。……ついでに言えば、君のポケットに入っている『ガルド商会』からの買収資金の金貨10枚についても、説明してもらおうか?」
「なっ……ななな、なんでそれを知って……ッ!?」
男の顔が瞬時に真っ青に染まった。
「ガルド商会……!? あの強欲商会が仕組んだ狂言かよッ!?」
集まっていた客たちから「なんだ、嘘だったのか!」「汚い真似しやがって!」「クローバーマートさんを陥れようとしたな!」と一斉にガルド商会と男たちへの怒りの声が上がった。
「くそっ……覚えてろよッ!!」
男たちは捨てゼリフを残し、蜘蛛のの子を散らすように店から逃げ出していった。
「みんな、騒がせてしまって申し訳ありませんでした。当店の食べ物は、俺が『鑑定』スキルで安全を100%保証しています。どうぞ安心してお買い物をお楽しみください!」
啓太が店内のお客に向かって頭を下げると、一瞬の静寂の後、雷のような拍手と歓声が店内に巻き起こった。
「さすが店長だ! 完璧な見破りだったぜ!」
「応援してるぞ、『クローバーマート』!」
危機を見事に脱し、店とお客を守り抜いた『クローバー』。
彼らの絆と確かな信頼は、卑劣な妨害工作ごときで揺らぐものでは決してなかったのだ――!




