第104話『迫る影』
『クローバーマート』の快進撃が連日王都の話題を独占する中、大通りの一角にある豪華な商業ギルドの幹部室では、一人の男が苦々しい表情でワイングラスを煽っていた。
「クソッ……! なんだあの『クローバーマート』とかいうふざけた店は……!」
男の名はガルド。王都の大手商会『ガルド商会』の代表であり、強引な手法で王都の食料流通と商店街を牛耳ってきた強欲な商人だった。
「我が商会の高級レストランや食料品店の売り上げが、あの新参者の店のせいで三割も落ち込んでいるのだぞ!? たかが冒険者上がりが始めたふざけた店のためにだ!」
ガルドは机を激しく叩き、控えていた影のような男たちを睨みつけた。
「おい! あのおかしな『魔導ショーケース』とやら構造は分かったのか!? なぜ温かい食べ物と冷たい食べ物が腐らずに並べられるんだ!?」
「は、ははっ……それが、かなり高度な魔法陣と特殊な耐熱ガラスが組み合わされておりまして、我が商会の技師では構造の再現が不可能です……」
「ええい、使えない奴らめッ!!」
ガルドは激昂し、ワイングラスを壁に投げつけて粉々に砕いた。
「技術が盗めぬのなら、方法はいくらでもある……! たかが冒険者どもが、商売の厳しさを知らずに調子に乗りおって!」
ガルドの目が凶悪な光を帯びる。
「あの店を潰せ。商品を汚すか、ならず者を送り込んで店を荒らせ。客が恐怖して寄り付かないようにしてやるのだ……!」
「かしこまりました。腕利きの裏家業の者を手配いたします……」
一方その頃、『クローバーマート』では夜の閉店作業が進んでいた。
「ふぅ……今日も無事に一日が終わったね」
シルフィが店内の床を丁寧に掃き掃除していると、啓太は店舗の裏手にある搬入用の扉付近で立ち止まり、じっと暗闇を見つめていた。
「……啓太? どうしたの?」
「いや……ここ数日、店の周囲で不自然な視線を感じるんだ」
啓太の言葉に、ルナとダグラスが目つきを鋭くした。
「視線……? 地元のごろつきかい、店長?」
「いや、ただの冷やかしや通りすがりじゃない。俺の【強運】と直感が、嫌な予感を告げている。……おそらく、俺たちの急激な大繁盛を面白く思っていない『ライバル商人』の仕業だな」
「商売の邪魔をしようってのか!? 許せねぇな……!」
ルナが怒りで拳を握りしめるが、啓太は静かに首を振った。
「落ち着け、ルナ。相手がどんな汚い手を使ってこようと、俺たちが客と店を守る姿勢は変わらない」
啓太は仲間たちを見渡し、力強い声で言った。
「俺たちの『クローバーマート』は、みんなの努力と絆で作り上げた大切な場所だ。どんな嫌がらせだろうと、返り討ちにしてやるさ」
「「「おおーッ!!」」」
忍び寄る陰謀の気配に対し、五人の決意はさらに固く結ばれていくのだった。




