第103話『大行列と大繁盛』
グランドオープンから一週間が経過しても、『クローバーマート』の熱狂は衰えるどころか加熱の一途を辿っていた。
「朝の開店前から夜の閉店間際まで、ずっと客足が途絶えないなんて……! 本当にすごい勢いだね、ケイタ!」
閉店後の店内で、売上金を計算していたシルフィが嬉しそうに目を輝かせた。
「ああ。単に『珍しい』だけじゃなく、日常の『便利さ』が王都のの人々に定着し始めてる証拠だ」
啓太が帳簿に目を落とすと、そこには凄まじい数値が並んでいた。
早朝は、仕事へ向かう職人や冒険者たちが温かい『肉まん』と『ホットココア』を求めて来店する。
昼時は、手軽に食べられる『特製サンドイッチ』や『おにぎりモドキ』が大人気。
夕方から夜にかけては、無事にダンジョンから帰還した冒険者たちが『極上氷晶パフェ』や『ポーション』をまとめ買いしていく。
「店長! レジの売上金、金貨の山ができてるぞ!? 冒険者時代の命懸けの報酬より稼いでねぇかこれ!?」
ルナがぎっしりと詰まった革袋を揺らし、豪快に笑う。
「ふぁぁぁ……! 毎日忙しいですけど、お買い物してくれた人がみんな笑顔で『ありがとう』って言ってくれるのが、すっごく嬉しいですぅ〜〜!」
リーネが疲れた様子も見せず、満足そうに長耳を揺らした。
「ダグラスさんの誘導のおかげで、一度も大きなトラブルが起きていないのも大きいよ。本当に助かっている」
「なに、警備と誘導は俺の担当だからな! だが、啓太の組み立てた『商品の並べ方』と『無駄のない導線』が見事だからこそ、客もスムーズに動けているんだぞ」
ダグラスが誇らしげに胸を叩く。
元コンビニ店長としてのノウハウ――客の動線を計算したレイアウト、時間帯に応じた商品補充、そして徹底した品質管理。それらが異世界の魔法技術と完璧に融合したことで、『クローバーマート』は単なるショップを超えた「王都の新たなインフラ」として機能し始めていた。
「よし、今の需要に合わせて、明日はもう少し商品の仕入れ量を増やそう。シルフィ、商業ギルド経由で果物と肉の追加発注を頼めるか?」
「任せて! 精霊ルートで一番新鮮な食材を揃えておくよ!」
「わたしは新しいPOP(おすすめ看板)を描くですぅ! 今度は『夜のおすすめ栄養ドリンク』の絵ですぅ!」
成功に甘んじることなく、常に次の改善へと動く五人。
彼らのチームワークは、冒険者として死線をくぐり抜けてきた絆があるからこそ、接客業においても鉄壁の強さを誇っていた。
しかし、その大繁盛の裏で、王都の闇に蠢く「良く思わない者たち」の視線が、確実に彼らへと向けられ始めていたのだった。




