第101話『緑の四つ葉と制服』
王都グランドールのメインストリート。朝の爽やかな光が差し込む店舗の前で、啓太たちは組み上がったばかりの大きな木製看板を見上げていた。
そこに刻まれているのは、緑色の四つ葉のクローバーをあしらったロゴマークと、美しい金色の文字。
『コンビニエンスストア クローバーマート』
「うわぁ……! すごいよケイタ! 本当に私たちのお店なんだね……!」
シルフィが胸の前で両手を組み、瞳をキラキラと輝かせながら歓声を上げた。
「はいですぅ! わたしの描いた四つ葉のロゴが、こんなに立派な看板になるなんて感激ですぅ〜〜っ!」
リーネがぴょんぴょんと飛び跳ね、嬉しさを全身で表現する。その隣で、ダグラスが太い腕を組んで満足そうに頷いた。
「おう、街を行き交う冒険者や住民たちも、みんな足を止めて看板を見上げているぞ。視認性抜群だな!」
「ふふ、これで外観は完璧だね。でも、店長……お店の準備で一番大事な『見た目』がまだ残ってるんじゃないかい?」
ルナがニヤリと不敵な笑みを浮かべ、店舗の中に置かれた大きな木箱を指差した。
「よく覚えていたな、ルナ。……さあみんな、これが『クローバーマート』の接客を支える、最後にして最高の装備だ」
啓太が木箱の蓋を開けると、そこには仕立て屋に特注して作らせた、真新しい制服が美しく畳まれて並べられていた。
深緑色を基調としたシンプルで動きやすいデザインのポロシャツと、エプロン。胸元にはしっかりと『Clover Mart』の四つ葉の刺繍が施されている。
「うわぁ、可愛い! 動きやすそうだし、生地もすごくしっかりしてる!」
さっそく制服に袖を通したシルフィが、クルリと一回転してみせた。
「わたしも着てみましたですぅ! どうですかぁ……? 似合ってますかぁ?」
リーネが少し照れくさそうにエプロンの紐を結び直し、長耳をふにふにと動かす。
「似合ってるよ、リーネ。シルフィもルナも、ダグラスさんもバッチリだ」
「へっ、あたいみたいな元ギャンブラーがこんな清潔感溢れる服着るなんて、人生何が起こるか分からねぇな! でも……悪くない心地よさだぜ!」
ルナが胸を張り、ダグラスも巨体にぴったりの特注エプロンを撫でながら豪快に笑った。
「よし! 全員、制服の着こなしも完璧だ。商品の最終搬入と棚入れに取りかかるぞ!」
「「「はいっ!! / おーっ!!」」」
元コンビニ店長としての長年の経験から、啓太は商品の陳列位置に徹底的にこだわった。
店に入ってすぐの視線が集まる場所には、試作を重ねた『特製肉まん』や『フライドチキン』が並ぶアツアツの魔導ショーケース。その隣には、冷たい『極上氷晶パフェ』や清涼飲料水がズラリと並ぶ。
店内の中央棚には、ダンジョン探索で役立つポーションや非常食、日用品、さらには冒険者向けの簡易文房具や魔法の松明まで、多種多様な商品が整然と分類されて配置されていった。
「商品棚に隙間がない……! まるで魔法の宝箱の中にいるみたいだね!」
シルフィが整列した商品群を見て感嘆の声を漏らす。
「これが『コンビニエンスストア』――欲しいものが、いつでも手に届く便利なお店だ」
啓太は陳列棚の端から端までを『鑑定』を交えて最終チェックし、満足そうに頷いた。
「レジの釣り銭の準備も完了、商品の在庫管理票も完璧だ。みんな、明日はついにオープン当日だぞ。今日はしっかり休んで、万全の体調で臨もう!」
「「「了解っ!!」」」
五人は固いハイタッチを交わした。王都の夜が静かに更けていく中、明日訪れるであろう情熱と歓喜の瞬間を胸に、彼らは静かに決意を燃やすのだった。




