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第9話 街へお出かけ

ステラはすっかり元気を取り戻していた。


「ルアンそろそろ月見祭の準備を始めて行こうと思ってて、買い出し一緒に手伝ってくれる??」


そして、ステラのお願いで2人の1日は始まった。


まずはパン屋を訪れた。

「ステラじゃないか」

そう声をかけてきた青年がいた。

「エドじゃない!久しぶり!元気してた?」

「もちろんさ!ん?今日は新入のお手伝いさんも一緒なのか?」

「この人はルアンよ。最近手伝ってくれているの。よろしくね。」

えらく親しそうだった。

ルアンはステラが自分以外の男と、

楽しそうに話しているのを見るのが初めてだった。

「ルアン、この人はエドよ。

私より5つ年上なんだけど、うちの施設の出身なの。

今は卒業してこちらのパン屋さんでお仕事してるの。

とってもいい人なのよ。

パンを買いたい時は、エドのところに来るといいわ。」

そう言ってパンを買っていた。

エドはステラの頭にポンっと手を置き、

「月見祭の準備、無理するなよ。

パンの出店は任せろよ。

俺しかできないことだってあるからな」

と、ルアンに見せつけるように話しかけていた。


ルアンは先に行こうとしたが、エドに呼び止められた。

そして、ステラに聞こえないように話し出した。

「おいお前、新しい用務員とか言いながら、

ステラに近寄りたいだけだろ?

こう見えてステラは貴族から平民まで

色んな奴から人気なんだ。俺だって狙ってる。」

「そうなのか…」

「だからお前なんかがこすい手使って近づいたら

許さないからな。」

「はあ?」

「まずはファンクラブに入ってからだ」

「…ファンクラブ?」

「そうだ。」

「ど、どーしたら入れるんだよ?」

エドは懐から一枚の紙を取り出した。

「入会申込書だ。」

「これを書いて渡せばいいのか?」

「年会費は銀貨一枚。」

「金取るのかよ。」

気付けばルアンの手には入会申込書が握られていた。

その用紙を捨てずにポケットにしまおうとした。

が、用紙のある言葉が目に入った。

「なんだよこれ…会員規約?」

ルアンは会員規約を読んでから、

しまおうとした紙をぐちゃぐちゃにして捨てたのだった。




次に孤児院の協力者、マダム・ソフィーの元を訪れた。

彼女は街でブティックを開いている貴族だ。

心優しい彼女は、よく余った生地などを寄付してくれる。しかし、少しおせっかいな性格でもある。

お父さんの代からお世話になっている大切な方だ。

店に入ると、マダムソフィーは大層嬉しそうに奥から出てきた。

「あらーステラとルアンじゃないの〜2人なのは珍しいわね。」

「ご機嫌よう。マダムソフィー。今日もお美しいですね。」

ルアンは普段言わないような紳士な口調になっていた。

「あっはは。ルアンは今日もかっこいいわね」

(そとヅラはいいみたいね)

ステラは白い目で見ていた。

「なーに?デート?」

「いや、そうゆうのじゃなくて、月見祭の買い出しに来ているんです。」

ステラは、即答で全否定した。

「そーか、もうそんな季節ねぇ。

孤児院がステラの管理になって、

初めての月見祭ってことね!

最近はルアンがよく来てくれてお店のこと手伝ってくれるから、私にも協力させて✨余ってる布がたくさんあるから、これ使ってっていいわよ。」

「ありがとうございます。」


そう言って日頃の雑談をしたあと、帰ろうとした。

ルアンは店の中に置いてあるドレスを見つめていた。

そしてステラが店を出ようとすると、

ルアンはマダムソフィーに耳打ちをした。

「マダム、お願いがあるのですが…」

マダムは目を輝かせ「もちろんよ、任せて!」

大層嬉しそうに返事をしていた。

何話してたのかしら…ステラは気になっていた。



ステラはパンを頬張りながら歩いていた。

「ほんと美味しいわ〜ルアンの分もはいどーぞ」

「俺はいらねーよ」

「え、なんで。食欲ないの?」

すると、ルアンは突然屈んでステラが食べていたパンを

横からかじり出した。

「俺が作った方がうまいからだ」

そう言って

「全部食いな」

と、先に歩いて行ってしまった。

ステラは突然のことにびっくりして、慌ててルアンを追いかけた。(何故、私が食べているのを食べた??)


(これはこすい手だったかな…)

ルアンはエドの言葉を思い出しながら、

何故だか少しだけ気分が良かった。


2人は孤児院に帰っていた。

今日は早々に夕食を終え、子どもたちが寝たあと、

ステラは広間で紅茶を飲んでいた。

そこにルアンもやってきた。

ここ最近、2人は自然と夜の広間に集い、

その日の出来事や子どもたちの報告、たわいもない話をしているようになっていた。


「ふぅ、今日はちょっと疲れたわねぇ。」

「最近頑張りすぎじゃないか?寝れてないだろ?」

「大丈夫よー。このお月見祭を成功させないと、叔父様に孤児院を見放されちゃうかもしれないの。だから絶対成功させたくって。付き合わせちゃってごめんね。みんなも巻き込んじゃってダメだなー」

「なんで叔父さんはお前に全部背負わすんだ。

いっそ投げ出したっていいと思うぜ?

どっちにしろ、たまには休まないとな。また倒れられたら困るし…」


「ありがとうね。いつも助かってる。」

ステラは少し切なげな表情で答えた。

その時、ステラは首元からペンダントをだした。

「おばあちゃんやお父さんが繋いできた思い。

私が守らないといけないからね。」


それを見て、ルアンは突然表情を固めた。

「お前…それ…どこで手に入れた?」

「え?これはおばあちゃんの形見だよ。

お父さんが亡くなった時に譲り受けたの。」

ルアンは思った。

(そのペンダントは兄様のものだったはず…なんでステラが持っているんだ…)


そしてルアンはペンダントに手をかざした。

すると、ルアンの手に反応して、ペンダントが黄金の光を放った。

(やっぱり…)

ルアンはそう思った。

「これはいったい、なんなの?」

「これは、月の国の光のマナで作られたものだ…

こんなものを作れるのはおそらく俺の兄さんくらいだ…」

「お兄さん…?もう亡くなったって言ってた…?」

「これがあれば俺は月の国に帰ることができるかもしれない…」

ルアンは迷った表情でステラに言ったのだった。


「これがあれば帰れるの?」

ステラは慌ててペンダントを外し、ルアンの手に握らせた。

そして微笑みながらルアンに言った。

「これはお兄さんが導いてくれたってことなんだね。

よかった…」

「これは、お前の大事な形見だろ…」

「いいえ、これはルアンのお兄さんの形見よ。あなたが持っているべきね。」

そう言ってステラはルアンにこのペンダントを渡したのだった。

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