表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/22

第19話 ダイニングルームにて

ステラはテルスに案内されて椅子にかけた。


「殿下、このようなお席にお呼びいただき、ありがとうございます。」


「いやいや、こちらこそ僕の食事に付き合ってもらって申し訳ないです。気を使わせてしまって申し訳ありません。」


そう言うと、次々と料理が運ばれて来た。


「今日はお酒はやめておきましょうね。」


ステラは顔が赤くなってしまった。


「先日はご失態をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。」


「いえ、私が勧めたのが悪いのです。

でも…あの日は楽しかったです。」


「お恥ずかしい限りです…」


大きなダイニングテーブルにはテルスとステラ2人きりだけだった。


「あの、ご家族や他の参加者の方などはいらっしゃらないんでしょうか?」


ステラは不思議そうに聞いた。


「はい。私はいつも1人で食べているので、

今日はステラ先生がご一緒でとても嬉しいです。」


そう言ったテルスの表情はどこか寂しげだった。


(こんな素敵な王子様なのに、いつも1人で食べているんだ。)


「この間、子どもたちとご飯を食べた時間は楽しかったです。大勢で食事を取るのはいいことですね。料理も美味しく感じます。」


「ええ、本当にありがとうございました。」


「勉強会の話に戻りますが、

私はステラ先生の意見に賛成です。

子どもたちは可能性に満ちている。

可能性の種をもっと蒔いていかないと…」


「共感していただけて光栄です。」


「それで、孤児院の国営化はもう少し時間がかかりそうですが……図書館については、孤児院の近くにある使われていない屋敷を改築できないかと考えております。」


「あの使われていない屋敷ですか?」


孤児院の近くには確かにもう使われていない

かつての貴族が住んでいた古い屋敷があった。


「これは王室からの資金でなんとかできそうです。

先ほど国王から許可を得ました。」


「国王さまが…」


「ええ、実は父上もあなたのお父様に感謝をしてたのです。それで、私が何か恩返しをしたいと申し出たところ、すんなりと受け入れて下さいました。」


「本当ですか……」


「それで、ステラ先生にも協力をして欲しいのです。」


「も、もちろんです。」


ステラは感動で合わせた手を顔に寄せていた。


「ですが、問題は本ですね。

我が国には本の流通がまだまだ限られている。

寄付も募りますが、図書館を開くまでの本の数が足りないですね。

いっそ、外国に入手しに行くのもありですが。」


「外国ですか?」


「ええ、よければ一緒に行きませんか?

ステラ先生となら、きっと楽しい旅になります。」


ステラは一瞬テルスの顔が本気に見えて戸惑った。


「楽しそうですが、子どもたちもいるし。すぐには難しいかもしれないです。」


「そうですよね…これはもう少し考えましょう。

王室の方でも予算内で買える範囲で用意してみます。」


そう言って2人はこれからの話に盛り上がりながら食事を続けた。


「そういえば、ステラさんはルアンさんの秘密はご存知なのですか?」


「秘密?」


「はい、月の国の者ということはご存じで?」


「あ、あぁ、そうですね。殿下はお気づきだったんですね。」


(殿下は気づいてたのね。普段孤児院の生活に馴染みすぎてて、そんなこと忘れていたわ。)


「そうですか。ところで、彼はどうしてステラ先生の孤児院にいらっしゃるのですか?」


「その…皆既月食の日に空から落ちて来たんですよ。それで行く宛がなくて、孤児院を手伝ってもらう代わりに住んでるんです。」


(信じてもらえるかしら…)


「落ちて来た?なるほど…見たところ彼は王族ですよね…」


(月の国は70年前の王子が地上を悪魔から

守ってくれたと聞いているが、

それ以来平和が続き、月の民が地上に来ることなどなかったはず。彼が落ちて来たのには理由があるのか…?)


「ルアンったら滑っちゃったんですかね?」


「ルアンさんでもそんな失敗をするんでしょうか」


2人はルアンの話をして笑っていた。


翌日からも勉強会では様々な議論が飛び交っていた。


盗賊問題、食料問題、環境問題などなど。


ステラは揶揄されながらもめげずに自分の意見を

発言した。


これら全ての問題を未来の子どもたちのために残さないように……少しでも私が出来ることで役に立ちたい。


ステラは本気でそう思っていた。


勉強会最終日。


「皆さん、長らくの勉強会のご参加、

誠にありがとうございました。

皆様の知識を今後も活用させて頂きたい。」


続けてテルスは言った。


「あと、この度ステラ先生の意見を取り入れて、

国立図書館の設立を検討しております。

場所は孤児院の近くにある古い屋敷を改築する予定です。しかし、蔵書の確保が難しく、実現にはまだ課題も残っています。」


会議室はざわついていた。


メガネの女がすかさずテルスに反論した。


「そもそも本を集めるだけでも莫大な費用がかかりますが?」


「私はこの国を支えてくれる民、すべてが恵まれる国にしたいのです。ステラ先生のいう通り、学びは平等であるべきだ。学びへの投資はお金以上に将来への価値のあるものになると思います。」


メガネの女はテルスの発言を聞き、それ以上は何も言わなくなった。


そして勉強会は終了した。


ステラはテルスに感謝の意を伝え、

詳しいことは今後進めていくこととなった。


(ルアンたちにも急いで伝えないと…)


ステラは急ぎ足で孤児院へ帰っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ