第18話 王宮会議にて
「ルアンってさー、ステラ先生のこと好きだよね。」
孤児院の子どもがルアンに言った。
その瞬間ルアンは固まってしまい、
持っていた買い物袋からりんごがごろごろと転がり落ちた。
「やー、何やってんのー」
「ほんとなんだー固まっちゃってるー」
子どもたちはルアンの反応に大笑いしている。
確かにステラに関心はあったが、
今まで人間が嫌いだったため、好きという感情が芽生え
ることなどないと思っていた。
「なんでそう思うんだ?」
ルアンは顔を赤くして恥ずかしそうに聞く。
「最近様子おかしいし、バレバレだって〜」
そう、月見祭で一緒に踊ってから2人の空気感は
明らかに変わっていた。
子供たちも気づくのは時間の問題だった。
「それで、好きってことなの?」
「ち、違う。何言ってんだ」
「きゃーうそだよ絶対」
子どもは大騒ぎしながら、別の1人がつぶやいた。
「でもステラ先生は結婚とかはしないって言ってた。
前ここでずっと私たち子どもを見守るって言ってたよ。」
「えぇ、そんなぁ、ステラ先生にも幸せになってほしいよね。」
「ルアンしかいないよ。ルアンがここのパパになれば
ずっとでステラ先生といられるでしょ?」
「俺はこう見えても一応月の国の王子なんだぞ!」
「その話って本当なのかよー(笑)」
子どもたちはルアンが月の国の王子であることを
今だにあまり信じていないようだった。
(まぁ、こいつらにどう思われたっていいさ。
ところであいつ頑張ってるかな…?)
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王宮について2日目。
ステラは勉強会という名の会議に参加していた。
話し合いのテーマはこの国の貧困問題について。
長いテーブルを10名ほどが取り囲んでいた。
上座にはテルスが座り進行をしていた。
「では、今日から始めていきたいと思います。
我が国では年々貧困問題が深刻となっております。
今回はこの問題を少しでも解決に導けるよう、
各専門の皆さまよりお集まり頂きました。
皆様には様々な交流を通し、
解決策を考えていただきたいと思っております。
では、意見のある方からどうぞ。」
「私、王宮専属の騎士より発言させていただきます。
現在我が国は隣国との長きにわたる緊張状態で…………」
「私、貿易商をしております。我が国では現在東の国より絹を輸入して…………」
会議では軍事や外交の意見が飛び交っていた。
ステラは顔を顰めていた。
ここは自分は場違いなのではないかとも思った。
(皆とても難しいテーマで話し込んでいるわね。
私が考えていることはもっと身近なことなんだけど、
相手をしてもらえるかしら。)
ステラは勇気を出して手を挙げた。
「ステラ先生、どうぞ。」
「町の孤児院の教師であり管理をしております、
ステラローゼンと申します。
私は身分関係なく、識字ができることが
重要だと思っております。」
「はっ、孤児や貧困者に識字など必要ですか?」
「はい、我が院では、私自らが子どもに読み書きを
指導しております。
識字ができることで、仕事の質の向上や、新たな発見、より豊かな暮らしができ国民全体の幸福度が上がるのではないかと考えております。」
すると、昨日ステラの挨拶を無視したメガネの女性が
反発をしてきた。
「発言失礼します。私は貴族向けに家庭教師を
している者です。
私は貧困者に識字など必要ないと思います。
なぜなら国の予算は限られているから。
その限られた予算を貴族などの生まれながらに
優秀な子の教育に注ぎ込んでいくことこそが
正しい使い方だと思いますわ。」
ステラはメガネの女性にすかさず言い返した。
「私は毎日孤児の子達と過ごしていますが、
断言できることがあります。
子どもたちは皆それぞれ才能の原石を持っています。
機会がないだけで学べばそれを開花できる
子たちはいくらでもいると思います。」
「では、どうすればいいというのですか?」
メガネの女がキツくステラを言い負かそうとしている。
「私は今の孤児院を誰でも文字が学べる施設にしたいのです。」
「誰でも学べる施設って、そんな時間の無駄なことに
協力する教師などいるのですかね。」
「それは…考えます。我が院では、年上の子たちが下の子に教えるなど、教育のサイクルが出来上がっています。」
「ですが、その教育水準で教師の代わりになりますか?」
メガネの女性と他数名がステラの意見を笑って
聞いていた。
ステラは負けずに続けた。
「おっしゃる通り、人員は必要不可欠です。
あとは、本です。本を読むことは知識を広める
最高の方法です。
本をら読むことができるのは識字ができたり、
購入できる物も貴族に限られております。
私は誰でも本を借りられる図書館ができれば良いのではないかと思ってます。」
「図書館ですか?それは面白そうですね。」
テルスは興味深そうに言った。
「しかしながら、本を集めるには膨大な費用がかかると思いますわ。」
メガネの女はテルスが反応したのを気にしたかのように、すかさず言い返す。
「まずは、寄付でなんとか集ってみます。」
「寄付されるような本など、ろくな本がないに決まってる。」
メガネの女性と、その他の参加者もステラの意見を揶揄していた。
ステラはそれに対して、言い返した。
「不要になった本でも、子どもたちにとっては初めて
出会う知識です。とても価値のある物になります。」
「とてもいい案だと思いますが、
問題は本を集めることですね。
私の方でも少し考えておきます。
ステラ先生ありがとうございました。
では、他に意見がある方おりますか?」
メガネの女と数名はテルスがステラの意見を
聞き入れようとしていることを気に食わない顔で見ていた。
「はい。次は私……………」
ステラは自分の意見が他の参加者には
賛同されなかったが、テルスが興味を
持ってくれたことを嬉しく感じていた。
「では、本日の会議はここまでで終了します。
皆さまお疲れ様でした。」
先ほどステラの意見に反対だった参加者たちは
ステラにわざと聞こえるように話していた。
「図書館ですって。」
「夢物語もいいところね。」
「孤児院の先生らしい発想ですこと。」
ステラは悔しかったのを堪えて会議室から出て行った。
テルスがステラを呼び止めた。
「ステラ先生。ご挨拶が遅くなってもうわけありません。」
「殿下。この度はご招待頂きありがとうございます。」
「いえいえ、ステラ先生の発表、とても学ばせてもらいました。」
「いえ、でもなかなか受け入れてもらえない気がしますね…」
「そんなことはないですよ?そういえばお食事は今からでしたか?」
「はい…食堂へ向かうところでしたよ?」
「ちょうど良かった。私もちょうど食事をしようと思ってたんですよ!良かったらご一緒しましょう。」
そう言ってテルスはステラの腕を掴んで歩き出した。
「えぇ、ちょっ…」
連れてこられたところは、
煌びやかに装飾された王族専用の
ダイニングルームだった。
「こちらでお食事を用意しました。さぁ、おかけになって」
(えええ、絶対私場違いだよ!!!?)
ステラはこの場が自分には不相応だと心の中で泣いていたのだった。




