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第14話 気まずい2人

次の日、ステラは朝目覚めると

自分がどうゆう状況だったか思い出すのに時間がかかっていた。


(最悪だ……昨日のこと、

ところどころしか覚えていない。

テルス王子と食事したよね。

そしたらルアンがいて…

あれルアンって何でいたんだっけ……

あ、あのお店で働いてたのか………)

その時ルアンが女性客に囲まれていることも思い出した。

(こんなところで私といるより、

あの時のルアンの方が煌びやかだったな…

私、知らずうちに彼に甘えてたんだな…

よしっ、ルアンには月見祭で感謝を伝えて、

もうここを離れていいよって伝えよう。


てか私、まともにテルス王子にお礼も言えてない気がする!!!とゆーかどうやって帰ってきたんだっけ!?)


ステラは自分の失態に頭を抱えていた。


仕事を始めようと一階に降りたが

今日はルアンの姿は無くホッとした。

(今あったら気まずいもの…ちょうど良かったわ)



夜になり、ステラは1人で紅茶を飲んでいた。

(ルアン、今日もあそこで仕事なのかな…)

ティーカップを片付けようとしたところ

ルアンがやってきた。


2人きりでここで会うのは数週間ぶりである。


「よぉ」

(うわ、最悪だ。き、気まずい。)

ステラはその思いを隠そうと慌てて話し出した。

「今帰り?疲れてるでしょ?

部屋で休んだ方がいいんじゃないの?」

「ん?いや、最近ここで過ごしてないなーって思ってさ。別に俺が好きでここに来てるだけだよ。」

「ふーん。」

ステラは久々ルアンとの2人の時間に少し緊張を感じていた。そして酒場での姿がフラッシュバックした。

「あのさ、もうここにいなくたっていいよ?」

紅茶を淹れかけていたルアンの手が止まった。

「は?どういう意味?」

ルアンはステラが言った言葉に強く反応した。

「いや、この前酒場でお仕事してるの見てて、

正直ルアンはそっちの方が向いてるなって思ったの。」

「向いてるって何がだ?」

「いや、楽しそうだったし。うちじゃ、そんなお給料あげれないし。」

「だから何なんだ…!?」

ルアンの口調は強くなっている。

「無理してずっといてくれてたら申し訳ないなって思って…」

「別に無理なかんかしてないっ」

「嘘だ…だってもうルアンがここにいる必要なんてないのよ。そもそも月の国にだって帰っていいんだよ!あのペンダントがあれば帰れるんでしょ?

早く行かないとっ」

ルアンは困った表情になった。

ステラは涙目になっているのを見られたくなかったので、部屋に向かって階段を駆け上ろうとした。

その時、階段から滑り落ちそうになった。

「危なっ——!」

咄嗟にルアンがステラを受け止めた。

そのまま二人は床へ倒れ込んだ。

気づけば、ステラがルアンの上に乗り掛かる体勢になっていた。

ルアンの顔をステラの髪が覆い被している。

「いったた……ご、ごめんね!助かった」

「……」

「なに?」

「近いって」

「え?」

「あっ、ごめん……!痛かったよね。」

ステラは慌てて立ち上がった。

「だからだよ…」

「え?」

「…お前が危なっかしいから、放っておけないんだよ。」

ルアンは顔を真っ赤にしたまま黙り込む。

そう言ってしばらく2人の間に沈黙が続いた。

ステラは自分の胸の鼓動が早くなっていることに気づいた。

「…もういいよっ」

ステラは屋根裏部屋へ戻って行った。

(今の何だったの…?)

ステラは隠れるように布団に潜り込んだ。


ルアンは1人で外に出て月を見上げていた。

(もうすぐドレスが買えそうだ。

今まで働いて欲しいものを買うなんて概念なかったが……案外達成感があったな…)


そう、ルアンは以前マダムソフィーにステラに 

プレゼントするドレスを仕立ててもらうようにお願いしていた。

以前、ステラがクララのためにドレスを売り払ってしまったのを見ていたからである。


(でも、あんな仕事は金が貯まったら二度とごめんだ。

女たちや貴族の相手は本当にたるかった。

心がすり減りそうだった。

なにより、この期間あいつとのティータイムが

取れなかったのが1番辛かった……

しかも、あの王子め。俺が懸命に働いている間に

2人で出かけやがって……)



そしてステラに渡されたペンダントを眺めた。


このペンダント、兄様が守護の力を宿して、

人間に渡したのであろう。

どういうわけだか、ステラが持っていた。


きっとこの力を俺が取り込めば、

俺は月に帰ることができて、

強い力を手に入れることができるだろう。

これからも月の国だけは救えるはず。

兄様の地上の守護の力は消滅し、悪魔がまた増えてくるだろうが…


何も知らないステラは迷わず俺に差し出した。

家族の思い出が詰まった、形見のはずなのに。

帰ることが兼ねてからの俺の願いであったから。


本来俺は月の国の王子であり、

月の国を守れさえすればそれで良いはずだ。

人間の世界などどうでも良かったのだから。


でも、俺が月に帰ったとしても

あいつのいない世界なんて、

想像もできなかった。


気付いたら、彼女が作り上げた

この世界が好きになっていたのだ。

兄様が守ったこの世界が。

---


「俺は本当に自分勝手だな…

こんなに何もできないくせに…

俺がもっと強かったら、

兄様もこの世界にいられたはずなのに…

そんな奴がステラの隣にいたいだなんて……」


そう呟いて、ルアンは涙を流していた。

自分の未熟さにようやく気付いたのだ。

憎んでいたのは兄様でもなく、人間でもない。

自分自身であった。


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