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第13話 いつもと違う場所で

ルアンはとても気まずそうにしていた。

ステラもいつもとは違う姿のルアンを見て、

遠い存在のように思えた。

「最近いないと思ってたら、こんなところで働いてたんだね…言ってくれれば良かったのに…」

「まぁ、な…ちょっと色々あって…」

「そう、その…似合ってるわね。」

「そうかな…」

その後ルアンは店主に呼ばれカウンターの方に戻っていった。

「ごめん、俺行かなきゃ」

「うん…」

ステラは複雑な表情を浮かべていた。


(ルアンって私の知らないところであんな顔するんだ…

私だってもう大人なのに…)


テルスがその表情に気づき、横から声をかけた。


「ステラ先生。やっぱり今日は色々とお疲れのようなので、後日出直しましょうか?院まで送りますよ?」

「いえ、折角殿下がご用意してくださった時間です。

もう少しお店にいましょう。」

そう言って、ステラは席に座り出した。

テルスは戸惑っていた。

「えっと、その大丈夫なのですか?」

「はい!」

「お水でよかったですか?」

「いえ、またカクテルをお願いします。」

「ですが…!?」

「いえ、酔いが覚めたので。大丈夫です。もう少し楽しみましょう!」

(ええい、今日は私だって大人になってやるんだから…)

そう思いながら、ステラはまたテルスと乾杯をして飲み始めた。

ルアンは他の客の接客をしていたが、

遠くからステラのことが気になり横目で見ていた。

(あいつ何やってんだ…てか、そもそも酒なんて飲めるのか?)

「このお酒も美味しいです。」

「それは良かった。本当に無理なさらないでくださいね。

でも…」

「?」

「元気になってくれて良かった。

今夜は私がお供しますから。安心してください。」

「…はい。ありがとうございます」

こうして2人はまた、孤児院のことや月見祭のことについて話し込んでいた。


そして1時間後…


「ステラ先生…ごめんなさい。

もうここら辺にしましょう。」

「もうじわげありまぜん…私がバカだから…」

すると、ルアンが水を持ってやってきた。

「おい、ステラ。大丈夫か?」

「ルアンはいいの…しごともどってて…らいじょうぶだから」

「どんだけ飲んだらそーなるんだよ?」

そう言って、ルアンはグラスを見たが、

ほとんど減っていない、1杯しか置かれていない

グラスを見て、唖然とした。

「私も知らなかったんですよ。まさかこんなに弱かったなんて…引き留めたんですが、やめなくって…お誘いした私が悪かったです…」

ルアンはテルスの手が

ステラの肩に回っているのを見て、

自分の元にステラを引き寄せた。

「もう、ステラに無理はさせないでください。」

「まぁ、でも今日は先生と2人きりの時間が取れてとても楽しかったです。また飲みましょうね。」

「こちらごそでず。ルアン、殿下は

とても素晴らしい方なのよ!かっこいいし、優しいし、孤児院の事もとても考えてくださって…」

「お前はもうしゃべるな…」

「はい…」

ステラはそう言いながら伏せて眠り込んでしまった。

「おい…」

「それはそうと、前から気になっていたのですが、

貴方の紫のその瞳。月の王族の証ですよね…?」

ルアンはテルスの突然の言葉に一瞬戸惑ったが、

すぐに返事をした。

「………さすがこちらの王族ですね。何でもご存じだ。」

「もちろん。かつて月の王族が地上を守ってくださったのも存じ上げております。」

「……」

「なぜ貴方がここにいるかは模索しませんが、

いつかまた力を貸してくれることを願っております。」

「見て分かる通り、俺にはそんな力などない…」

「私には貴方は凄まじい力を感じますがね…特にステラ先生に関しては…」

「?」

「ステラ先生、とても寂しそうにしてましたよ。

貴方が最近夜いないって。」

「なっ!?」

その時寝ていたはずのステラが、 

テルスのその言葉で急に起き上がり、

顔を赤らめながら大声で言った。

「そそそ、そんなことないですよ!何をおっしゃいますか?……もう、私帰りますね。」

そう言い放ち、ステラはとてつもないスピードで

店を出ていった。

「ステラ…!?まてっ…」

「僕が送ろうかと思ってたんですが、

きっと貴方が追いかけてくるのを待っていると思います。」

「…分かったよ。」

「またお会いしましょう。」

「……何がまただよ。」

そう言ってルアンは店長に今日は抜けることを伝え、

走ってステラのことを追いかけた。


外は上限の月だった。

秋風が少し肌寒かった。

ステラは走り足で帰路を辿っていた。

自分でも何が悲しいの分からなかったが、

なぜかひとりぼっちの気分だった。

(何で飛び出しちゃったんだろ……テルス王子がルアンに言ったこと、私あんなこと言ってたのかな、全然覚えてない。恥ずかしすぎる……言ってたにしても本人に直接いうなんて……)


その時ステラは見知らぬ男性に声をかけられた。

「お嬢さん、1人かい?」

男性はステラの腕を掴んできた。

「わ、私は今から帰るんで…」

「ちょっとくらいいいじゃん?僕一応貴族だし?」

「きゃっ」

ステラは強引に引っ張られた。


その時____

「その手を離せ…。」

振り向くとルアンが立っていた。

「何だお前?」

ルアンは黙ったまま紫の目を光らせていた。

その目からは隠しきれない殺意に近いものが溢れ出ていた。

「なんだよ、お前。化け物かよ」

男はその目を見ただけで去っていった。

「立てるか?」

ステラは酔いと恐怖で立ち上がれなくなっていた。

すると、ルアンがしゃがみ込んで背中を向けた。

「乗って」

「自分で歩けるよ」

「歩けねぇだろ。いいから」

「…ごめん……」

そう言ってルアンがステラをおんぶして帰ることになった。

「重いでしょ。」

「全然っ」

「嘘だ………」

さらにステラが続けて話した。

「ルアンはお金が欲しかったんだね。」

「ちょっと欲しいものがあってな。貯まったらすぐ辞めるつもりなんだ。一応俺王子だし金持ちのはずなんだけど、この世界じゃどうも、働かなきゃいけないらしい。」

「そっか…その…孤児院のお手伝いも減らしていいからね。」

「それとこれとは別だよ。

働かざるもの食うべからずってお前が言っただろ…」

「……」

「お前さ、もう1人で飲んだりするなよ……」

「そうだね。でも今日は殿下とルアンがいたから安心できたけど。これからは気をつけます。」

「あいつと2人も危ないから、俺がいる時にしろ…」

「え?そうかな??殿下は悪くないよ。」

「いいから。あいつはこんなふうにお前をおんぶはできないよ。」

「あははっなにそれ。でも、ルアンありがとう。」


「ところでさ?」

ルアンが話しかけたが突然ステラの返事が無くなった。

「寝たのか?」

いつも微かにするステラの香りが今日はおぶっているせいかとても近くに感じた。

(前から思ってたけど、こいつ危なっかしすぎるだろ……)

そして、先ほどのテルスの言葉を思い出した。

…「ステラ先生、最近貴方がいなくて寂しいとおっしゃってましたよ」…

(寂しいって何だよ。俺がいなくたって平気な顔してるくせに…)

背中の温もりを確かめるように、ルアンは少しだけ腕に力を入れた。

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