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死に戻りに疲れた傾国王子、生存ルートを模索する  作者: 沓子
番外篇

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傾国王子after〜従者ガーシュによるネタバレその2〜




 古びてはいるが立派な城の待合室に、珍しく晩餐の客が招かれていた。

 その顔触れにも統一性がない。




 城の主はガーシュ。

 招待客はカズサ、マリア、バレル魔術師団副団長、ソル司祭。

 来たくて来たのではない。招待状に強制参加のまじないが掛けられていた。




「何を企んでんの、あの吸血従者」

「面白い、が行動規範だよ」

「……神に仕える私が吸血鬼の招待を……」

「ほぼ面識のない私が何故」

 憤慨や諦念、戸惑いのなか主が姿を現した。

「ようこそ、我が城へ。晩餐の間にご案内致します」

  




「………ねえ」

「なんですか」

「これ変じゃない!?」




 案内されたのは城の大広間。

 その真ん中、何故か二十枚くらい畳が敷かれている。その上にはテーブルこたつ。繰り返すが炬燵。形は丸い。中華料理屋の天板のように回せる仕組みだ。

 見上げれば豪奢なシャンデリア、室内には大きな暖炉。そして広い部屋の真ん中、孤立した島のような畳にテーブルこたつ。

「魔石で暖めています。いいでしょう」

「……」

「マリア、メニューがアレな時点で突っ込みどころしかないよ」

「……そうね」

 義理の姉弟が諦めの溜息をついた。司祭らは反応したら負けとばかりに全てスルーしている。



 マリアは考えるのをやめた。前世にもいたではないか。なんかとっ散らかった感じでNIHONを取り入れてる外国人。あれだあれ。




 夕餉は鍋だった。

 豪勢に5つの鍋が、煮え具合も程よくいい匂いをさせている。

 トングとおたまが各自一つずつあるのはありがたい。直箸で鍋を囲むような関係ではないので。

 


「オーソドックスな寄せ鍋、刺激が欲しいならキムチ鍋、まろやかさが売りの豆乳鍋、すき焼きにおでん」

「おでんはまだしもすき焼きは鍋って言いにくい」

「カズサ様のお気に召さなければ手をお付けにならずに。A5松阪牛ですが」

「食うに決まってる……、ってハヤテ!? おまえも食うの」

「わっ! あ、守護獣の……?」

 勝手に顕現したハヤテが立ち上がりテーブルに脚をかけ鍋を凝視していた。




「団長のパーティーでも食べてましたが、精霊も食事するんですね」

「必要はないんだけど食べたいようで」

「あれ?」

「どうかした」

「なんかもう1匹いた気がしたんだけど……気のせいよね」

「ああ! うん、気のせい気のせい! ガーシュ、ハヤテたt……じゃないハヤテの取り鉢頼む。鍋ごとに五つ」

「ハヤテ用にも鍋を仕立てましょう。カズサ様が取り分けるだけで終わってしまいます」

「ありがとう、野菜少なめで」




 豆乳鍋はハマグリや牡蠣を中心とした海鮮、キムチには定番の豚や白菜ニラ、もやしの他にソーセージ。

「すき焼きは白菜椎茸ネギにお麩、焼き豆腐に春菊。それからちゃんと白滝ね。合格。寄せ鍋は鶏団子に鶏モモ、えのき、シメジ、椎茸にエリンギ。絹ごしと葛切りもナイス。キムチと豆乳にはマ◯ニーちゃん、よしよし」

「お詳しいのですね、鍋奉行というのですか」

「奉行は違くない? あれは取り仕切るのでしょ。それぞれの鍋にベストマッチな理想的具材を望んでるだけ」

「寄せ鍋かあ。水炊きポン酢も食べたかった」

「異世界文化にお詳しいのですね。さすがグレイシア」

 マリアのは前世記憶なのだが、説明が面倒なので司祭には微笑んでおく。

 見慣れない食材はカズサが異世界から持ち込んだものだが、司祭とバレルは気にしないことにした。追及し始めるとキリがない。




 鶏肉、生姜のきいた鶏団子、しゃぶしゃぶ用豚肉と肉ベースながらあっさりとした寄せ鍋から始めるのがマスト。

 食欲が戸惑いに勝ち、緩んだ空気が流れる。寒い時期にあつあつの鍋各種とこたつで緊張し続けるのは難しい。

「どれも美味しいですね。このすき焼きの肉は口のなかで溶けるようだ」

「極上です。私は歳のせいか、このあっさりとした寄せ鍋と豆乳鍋が気に入りました」

「追いキムチが効いてるなー、沁みる」




「この酒はなんと清冽な。この鍋というのに合いますな」

「日本酒ですよ。異世界の酒を再現しようと研究し、やっと形になりました」

「なんと!」

「フルーティななかに芯の通った力強さがある。素晴らしいですね」

「私はこっちがいいわ。おふたりとも、口当たりは良いけれど結構強いお酒ですからお気をつけて」

「司祭、日本酒にはおでんが合いますよ」

 マリアは冷えたビールを手酌で。これもグレイシア製のものだ。




 締めは、豆乳鍋とキムチ鍋にはラーメン、すき焼きにうどん、寄せ鍋は卵と万能ネギを落としおじやに。司祭を除く三人とハヤテは健啖家なので、綺麗さっぱり片付いた。

「日本じゃまだ飲めない年なのにな」

「郷に入っては郷に従うってやつよ。ここじゃ合法! ほうらハヤテ、あんたももっと飲みなさい。日本酒がいいの?」

「あっこら! ハヤテはザルなんだから」

「神様にお供えよ~。……ん。んん? ハヤテ、分身してない? なんか今、」

「酔い過ぎだろ」

「私もザルなんだけど。いつもノエルを潰してる」 

「ガーシュ殿はご一緒しないので…?」




 黙々と給仕するガーシュに恐る恐るバレルが話しかけた。ひょっとして鍋や酒に何かを仕込んでいたから口にしないのではと疑念が湧いたのだ。

「味見で鍋一つ分ほど頂きましたので」

 答える笑顔に何故か仏頂面の上司が重なる。アレの従者をいまいち信用しきれない。

「副師団長、たぶん大丈夫。俺のカンだと食後になんかある」

「それ大丈夫って言います!?」

「ツェーレンが怒るようなことはやらないから平気だろ。食べ物に細工したら粗末にするなって叱られるもんな」

「まあ飲みましょう。頃合い良くつまみも出てきたし」

「よく食うなあ……」






「さて、今日はある物語を聞いて頂きたいと思い皆さんをお招きしました」

 満腹でほっこり日本茶、または引き続き酒を飲んでいたところに本題が来て、一同にまた緊張が走る。



「『えーあい』による読み上げです。なお、この物語はフィクションです」

 



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