眠れない夜に考える、村を離れた理由
いつ頃からか、何をしていても集中できなくなった。
教室でも、店にいても、遠くに何かがあって、シグナルを発信しているような気がしていた。
ある夜、祖母に打ち明けた。
「おばあちゃん、私、どこかに行かなきゃいけない気がして、眠れないの」
「あるねえ、そういう日が」
「これは、それに従うのは正しいの? 何かが呼んでいるの?」
「いろいろだね、ずっと昔の縁だとか、
どこかで何かが起きていて、それがあるべき結果に向かうためには、メイが必要だとか」
「私は、それを探しに行きたい気もするの、でもどこに行ったらいいかわからないし、
それにおばあちゃんとずっと一緒にいたい。
それともそれを探しに行かないといけない?」
「メイだけじゃない、皆、それに悩んでいた。
今の社会で暮らしていくためには、働いて、お金を稼がないと生活できない。
必要最低限の手段。
大抵の人は、その勤めを軸に、自分の好きなことを小さく守りながら生涯をおくる。
でも、中には、目に見えない務めを与えられる者がいる。
無視して生きようにも、それが魂にまで入り込んでくるから、無視できない。
働いてお金を稼ぐよりも、それを大事だと魂がそちらへ心も頭も引っ張っていく。
メイを感じていることは、メイにしかわからない。それが本当かどうかも。
おばあちゃんが言えるのは、同じように悩んでいた人たちが、ずっと昔からいたということだけ。
でも、今メイがそこへ行けないとして、それが終わりじゃない、メイが本当に必要とされるなら、メイは必ずその場所へ行くことになる。それが宿命だ。
何もわからないまま、行動しているうちに、
「ああ、このことだったんだ」って気付くこともあるんだよ。
毎日、たくさんの人が自分の中の何かの結末を求めている。
その結末は、自分では気づけない心が安らぐ終わり」
祖母の言葉は、ゆっくりと噛み締めると、何か大事な答えが隠されている気がする。
それに今はお彼岸だからね」。
「お彼岸って、お墓参りをしておはぎを食べる以外に何かあるの?」
「おはぎは本当は、ここから真っ直ぐの西の方にいる人たちのために作っているんだよ。
あずきの粒には霊力があるからね、亡くなった人たちは、みな西の彼方にいるから、
現世と西の彼方が真っ直ぐにつながる日は、ご先祖様が呼んでるように感じたりするもんなんだよ」
「あとね、あの仏間に置いてある鳥籠、あれをもらっていい?」
「いいよ、持っていきなさい」
今思うと、祖母はそれを私の旅立ちの準備と気づいたのだろう。
それから間もなく私は家を出て、白鷺さんのところで仕事を探すことにした。




