表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

隣人


白い羽がゆっくりと降ってくる。

羽は、地面に着く前にいろいろな形に変化している。

一つ一つを眺めていて、屋敷の人たちだと気づく。

最初に落ちてきたのは、怖い顔をした老人、

その着物の裾を掴んで、女性が落ちてくる。

そして、書類鞄を抱えてメガネをかけた年配の男性、

次が若い青年、軍服を着ている?

その白い手袋が縄のような紐を握っていて、

その紐の先に、首に縄をかけられた旦那様が落ちてきた。

そして、まっすぐな姿勢で笑いながら秘書氏が、

最後に喪服を着た孔雀さんが降りてきて、黒い幕を下ろした。


           ※


掃除をしていてると、どこからかお線香の匂いが漂ってくる。

旦那様からは一度も匂いがしたことがない、秘書氏でもない。

でも屋敷のどこかで、誰かが誰かに手を合わせているように思える。

村にいる時、たくさん家族を亡くしている家ほど、線香の匂いが濃く漂っていた。

その古びた匂いが、悲しみの深さを表しているように思っていた。


それに、芝生の周りには紫陽花や小手毬に混じって、白い花の咲く木がある。

何の花かわからなくて調べてみると「沙羅双樹」という木だった。

お釈迦様が亡くなったとき、悲しみのあまり、我が身で亡骸を覆い隠すようにして枯れてしまった木。

お線香と沙羅双樹、どちらも亡くなった人を悲しみ、慕う印。

このお屋敷には、私が知らない誰かの死があり、その死が棲みついている。


ある朝、いつものように家の周囲を掃き清めていると、隣の門から年配の女性が現れた。

「新しいお手伝いさん?」

「そうです。おはようございます」

「奥様は最近、お茶会を開かないのかい?」

「えっ」

「前はよくお招きいただいたんだけど、最近は忙しいのかしら?」

この人は奥様が亡くなったのを知らない?

「奥様のお茶会には、お茶の作法を知らない人も招いたりして。弁護士だかなんだか知らないけど、

最近は教養のない人が多いのね」

「少しなまっていて」

「方言があったということですか?」

「そうよ、弁護士のくせに、相続をそんぞくって、おかしな人だったわ、奥様と話している時にそんぞくって」

「でもあの茶室、なんだか落ち着かなかったわね、宮大工を呼んで建てさせたっていうけど、音が響きやすくて、門の外の車を通るのが変に伝わって。宮大工っていうのも本当かどうか。奥様に伝えてくださいね。初釜は必ずお呼びくださいって。じゃあね」


相続をそんぞく、音が響く茶室、なぜか耳に残った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ