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白鷺さんが話す、ミトリ様の昔話


肥蛇家で仕事を始めるまでの1週間、白鷺さんは私になのか、自分になのか、

わからないぐらい話し続けていた。


祖母がなかなか話してくれない「ミトリ様」についても、この時聞けた。

「真偽はわからないから、年寄りの昔話だと思って聞いてね。

 三鳥家にとって運が良かったのは、ミトリ様がある子供を見初めたことでしょうね。

私が最初にある子を見染めたと聞いた時は、子供の肩に神々しい姿をした白い鳥が止まり、寄り添っている光景だった。でも違うの。


ミトリ様の魂が入り込んだその幼い子は、背中に白く大きな翼を持ち、深い緑色の美しい瞳をしていた。

それを知っていたのは三鳥家の者だけ。

化け物と言われて、村を追い出されたら大変でしょう?

でも力は本物で、なんていうか、畑を取られたとか、嫌がらせを受けたとか、悩みのある人間は一方的に話すでしょ?

三鳥の子は話を聞き終えると、ぼんやり遠くを見るような目つきをして、

「もうないよ」って言うの。なんのことだろうと思っていたら、

畑を盗んだ男は、捕まって畑が戻ってきたとか、

嫌がらせをしていた相手が、別の人間に付きまとわれて村から逃げていったとか、

結果を見れば、なんてことはない、よくあることなんだけど、

状況がね、一つ線路のレールが切り替わったみたいに、違う方向に変わっているの。

ひどい流行病が村に蔓延した時は、真夜中に連れてって、ていうの。

仕方なくその子を背負って水のある場所に行くと、しゃがみ込んで、何か話しかけているの、

それか空中に文字を書く真似をしたりしてね、暁の空に大きく手を動かすと、

不思議と何かが変わったような気がしてね、気づくと村はいち早く病人がいなくなっていた。


でもね、みんなが感謝するとは限らない。

インチキだとか、目立ちたがりだとか、陰口を言う者もいた。

親切心というのは、ある種の者には通じないのだよ。


そしてある日、ミトリ子が盗まれた。

その男は三鳥家の長女の恋人で、欲深く、好色で、物を盗んだり嘘をつくのが平気だった。

周りの者は娘の交際を反対していたが、恋愛に夢中で耳を貸さない。

男が「俺にはお前しかいない。お前のような女に初めて出会った」という口説き文句に騙されてね、

結局は、占いで金儲けしているという噂を聞きつけて娘に言い寄っただけで、

占いはミトリ子がしていると知ると、娘を捨てて、ミトリ子を連れ去った。

大きな竹籠に閉じ込めて、言うことを聞かないとお前の家族を酷い目に合わせるぞと脅した」


深いため息をつくと、急須に手を伸ばして、茶碗にお茶を注ぎ足した。


「そして金持ちに法外な金額を払わせて、

予言させたり、触ったものをご利益があると売り始めた。

金を払う方も払う方だよ、男はすぐに大きな屋敷を持つほどの金持ちになった。


ある晩、男は広間の中央に籠をおき、儲けた金を並べ、酒を飲みながらミトリ子に話しかけた。

お前は本当に役に立つな。もっと大きな国に行ってもっと大金を稼ぐか。

でもなあ、お前を運ぶのは面倒だし、飯も食う。

いっそ骨にして金箔を貼り、仏様にするのはどうだ。

その骨を拝ませてもいいし、粉にして少しずつ売りさばくのもいいな。どうだ、いい考えだろう。


その時、畳の隅にあった金がふっと消えた。

男がハッとして金が消えた場所を見ると、今度は、反対側の金が見えなくなった。


俺の金に何をした!っと男が立ち上がると、畳の下から黒いくちばしが現れて、また金を引きずり込んだ。

男は小刀を懐から取り出すと、くちばしに切りつけようと飛びかかったが、今度は足元の金を奪われた。

怒りに満ちた男は、大声でよくも俺の金をと叫んだ。すると、一斉に無数の黒いくちばしが現れて、

いくつもの金の束を畳の下へと引きずり込んだ。

男はミトリ子をギラギラとした目で睨みながら、お前がやっているのか、今すぐ俺の金を返せと小刀を振り上げた。その時、自分の腕に何かがぶら下がっているのに気づいた。

「わーーっ」

何匹もの黒い蛇だった。

腕から振り払おうとすると、さっきの黒い鳥が現れてついばみ始めた。黒いくちばしの狙いが黒い蛇なのを知り、男は一瞬ほっとしてミトリ子を見ると、みとり子が襖に映る影を見て微笑んでいる。


襖には月明かりでできた自分とミトリ子の影が映っていた、いやそのはずが、背中に大きな翼がある子供の影と、自分がいるはずの場所には、とぐろをまいた大蛇がいる。

そう思った瞬間、蛇の影をはるかに超える大きなくちばしが現れ、男が振り返る間もなく、くちばしに飲み込まれて畳の下へと消えた。


昔から言うんだよ、人の恨みのついた金は黒い蛇を連れてくるって。

そして蛇が増え続けると、持ち主自身が蛇になるってね。

黒い鳥はミトリ様の分身、黄泉鳥様と言ってね、黒い蛇がご馳走なんだよ」


「ミトリ子はどうなったの?」

「それっきり」

急に悲しい顔になって、白鷺さんが部屋から出て行った。



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