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現代を息づく最古の怪異  作者: 宇城
第一章:努力と執念の軌跡
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03.果てなし肉体改造

筋トレを始めてからかれこれ5時間ほどが経った。


洞窟の中には、風の吹く音と汗の滴る音、そして黙々と数字を数える声だけが響いていた。最初は10回すらも続かなかった。5回ほどで力尽き、腕立て伏せも腹筋もスクワットもどれもほとんど出来なかった。


筋トレで疲れ果てるたびに腕は痺れて、まだ完全には治りきっていない体の痛みが骨や体中に響く。腹筋をするたびに妖鹿に突進されたことによってぐしゃぐしゃになり、今は治ったはずの内蔵がぐるぐると体内を回るような感覚に陥り、吐き気やめまいがしていた。足はふくらはぎから足首まですべての筋肉が痙攣し、膝が笑っていた。


「…ぁ゙ぁ…ぐっ、はぁ…はぁ…。」


しかし、その程度の痛みや不快感で筋トレをやめるわけにはいかない。今やめてしまえばこれから先、絶望した時や疲弊、瀕死になったときにすぐに己の命を諦めてしまうことになる。であれば、四肢が欠損しようが、脳が破損しようが動き続けるという固い『意思』が必要になる。その『意思』を筋トレでは同時に鍛えることができると思っている。


そうして一度やめようと思ってしまったが、妖鹿への屈辱を思い出し心を奮わせて筋トレを再開した。


「ぁ゙ぁ…ぅ゙、あ…ぁ゙ぁ。」


何度も筋トレをしていると、その最中に気づくこともあった。この体は異様に回復が早いのだ。


筋トレの回数を10回、20回、30回と徐々に回数を増やしていくごとに、少しずつ筋肉や骨に走る痛みが少なくなっていった。最初の方は体に走る痛みのせいで動けそうにもなかったが、2時間ほどで再び同程度の回数をこなすころができるようになるまで回復した。次は1時間、その次は1時間50分、と少しずつ体が回復するまでの時間がこれもまた徐々に短くなった。


そして筋トレを始めて9時間ほどが経った。腕立てと腹筋を交互にやり続けていたせいか、腕と腹は最初の頃に比べてより一層血が溜まって赤くなり、体中汗まみれになっていた。


筋トレを始めたのは朝日が昇り始めた時だったが、筋トレを終えた頃にはすでに日が沈んでいた。筋トレに没頭し続けていたせいか、日が沈んだことに全く気づかなかった。そうしてその日は、祭壇の側に置いておいた木の実を食べて寝ることにした。


横になると筋肉痛と妖鹿に受けた怪我が痛むが、それでも寝ないと体を休ませなといけない。そうして無理やりに目をつむって眠りについた。


そんな筋トレをして木の実を食べて寝る、ということを何度も続けた。当時の俺は山奥に住んでいたせいか、年月を数えるための方法がなかった。流石に山奥に住んでいるとはいえ、自分がどれだけ数えられないというのは少し困る。俺は、日、月、年というような単語を知っているだけで、それがどれほどの長さなのかは分かっていなかった。だからこそ洞窟の入口の外から見える桜が散り、また桜が咲くという周期を1年として数えていた。


桜が散り、また桜が咲くという周期を数え始めて137回の桜が咲いたとき、つまり137年が経ったときに祭壇からの食料供給が止まった。しかし、それで困ることはなかった。肉体を鍛えていくさなか、体が食料をほとんど必要なくなったため、日に一度野菜を1つ2つ程度食べるだけでその日を凌ぐことができるようになった。


そして食べ物を食べる量や頻度などが少なくなってから大体100年。どうやら、俺の体は長い期間生きることができるようで、俺の自我が芽生えた頃より少し歳を取ったようにしか感じなかった。俺はこの100年間はひたすらに体を鍛え続けていた。その成果なのか、体に変化が訪れた。


まず、身長が170cmほどまで伸びた。それに応じてか、体に筋肉が徐々に定着し始めていた。生まれたての頃に比べればずいぶんな成長だと自分でも思う。それに応じてなのか、体はこれまで以上に食べ物を必要としなくなった。


最初の頃は1日に木の実を2つほど食べていた。それがいつしか、3日に2つ。1週間に2つ。2週間に2つ。そしてついには5ヶ月に2つほどでも生きていられるようになった。俺の木の実だけしか食べていないはずの体は、栄養が偏ることも筋肉が減ることもなく、肉や魚を食べていた頃と同じ状態を保っていた。


そうして更に100年たったある日。洞窟の外で何かがあった。


いつものように洞窟の中で筋トレをしている最中に突然、酷い地鳴りが起きた。体だけでなく、洞窟そのものが揺れるような感覚に陥るほどの地鳴り。


地鳴りがしてから5秒ほどで体は地面に転がり、天井や壁の岩は音を鳴らしながら崩れた。幸い洞窟の岩や土が丈夫だったのか、洞窟が埋まることはなかった。外に出ようかとも思ったが、地鳴りによって妖鹿や他の生物も外に出てくる可能性があると思い洞窟にとどまった。


地鳴りは1週間に1〜2度ほどの頻度で発生し、それが2年ほど続いた。地鳴りがするたびに洞窟の外からは獣の悲鳴がした。威嚇するようなものから、殺される寸前のようなものまで様々だった。


そして紆余曲折ありながらも、生まれてから471年の月日が経った。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
面白そうな気配がしたのでやってきました。 まだ如何とも言い難いですが、文脈的にワクワクが止まりません。
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