The destiny of man is in his own soul.
1.The destiny of man is in his own soul.
玲音は、また10年前に戻り、【橘廉】としてまた人生をやり直す。
しかし、何度もやり直すが、結果に微妙な変化は有るものの、どれも似たような結末を迎える。
あの天災の前にギリギリ記憶を取り戻す事迄は出来ても、玲音に素性を隠して上手く回避するように伝えられなかったり、伝わってもハプニングが起き後一歩のところで天災を回避できない。
それを、何度繰返したかわからない。
玲音の魂は、苦悩にうちひしがれ、傷つき疲労の色がにじみ出ている。
時空の狭間で、死神見かねて言う。
「もう、諦めたらどうだい?
辛いだろ?
何度も何度も、楽しい時間を過ごした後に、奈落の底に突き落とされるのは。
幾ら選択が変わっても、結果は同じなのは十分な程、分かったよね?
それは【君】だからだよ?君が生きている間、君は君の【最善】と思う選択を選び続いているからだよ?」
玲音は、苦悩しながら死神に問う。
「なら、自分の思う事と反対を選べばいいのか?」
「その答えは、頭のいい君なら、わかっているはずだ」
「あぁ、そうだな。人生は2択なんかじゃないからな」
「そう、最後の答えがわかってないと望む結果にはたどり着かない。
どうしても望む結果にたどり着きたいなら時を時間を逆昇るしか方法は皆無と言っていい」
「聞いてもいいか?ゲームに質問は駄目とか言って無かったよな?」
「まぁね。質問してくる前例もないけどね。仕方ない君は特別だ」
「俺が、去った後の【櫻 玲音】は、どうなっているんだ?
俺が、最初に歩んだ人生とは明らかに違っているよな?。
例え【橘 廉】と言う人物の記憶を消したとしても矛盾は生じているはずだ。
幼い頃、孤独な環境で育ち、愛情に渇望した少年に10代になって兄弟同様の存在が与えられた。
それが玲音にとってどんなに嬉しかったことか?
どんなに【かけがえの無い存在】だったか。
10年もの長い月日を一緒に過ごし、深く係わり合って育ってきた【家族】を、あの天災以降に【橘 廉】に関わる記憶を全て消し去って、【橘 廉】と言う少年は10年も前に、死んだと言っても、あんなに深く強く繋がった絆は記憶を消しても消しきれるものでは無いだろ?
絶対に何処か綻びが出来て、矛盾が起きる。
あの玲音が、その矛盾に気付かないわけがない。
あんたは、最初に『ゲームの舞台は、お前が生まれ変わる事で、お前の歩んだ、【櫻 玲音】の人生とは、少し違う事になるが、それは、お前の生まれ変わった存在が、加味されるだけで【櫻 玲音】の人生が、大きくは、変わることはない』と言って居た。
人は1人で生きて居るわけではない。
だから人、1人の関わりで人生経験は多かれ少なかれ変わって来るはずだ。
だが【橘廉】の存在は【櫻玲音】にとってあまりにも大きな大切な存在になっていた。それ故に、【櫻 玲音】の人生は大きく変わったはずだ。
人生の主幹の流れは変わらなかったかもしれないが、【橘 廉】の存在は、【櫻 玲音】にとって、とてつもなく大きな存在になったはずだ。
俺が、感じた居心地の良さを、同じ自分であるあいつが、同じように感じ無いわけがない。俺にとって心の寂しさを癒してくれた存在をどうやったら忘れられる?
【櫻 玲音】にとって、【橘 廉】は紛れもなく家族だったはずだ。血の繋がり以上の兄弟だったはずだ。
何も言わなくても、分かり合える理解してくれるお互いにとって欠けがえの無い存在となっていた。
そんな、かけがえのない存在を、いつも一緒にいた家族を、玲音の記憶から、消しても全てを消し去ることは出来ない。出来るはずがない。
記憶の中の、この大きな穴をどう繕う?あんなに複雑に絡みあった沢山の大きな穴をどうやったら埋められるんだ?
当初俺の歩んだ人生には仲間はいたが、兄弟はおろか、家族的な関係を持つ同世代の人物は存在はしてない。
俺には橘廉に代わる存在は居なかった。
しかし、俺の記憶には矛盾は何一つない」
玲音は真っ暗な空間の上方を見つめながら記憶をたどる。
「そう、俺が歩んだ最初の人生は……。
確かに中等科からあの学園に入った。
元々、あの学園は初等部から通って居る子供が多く、6年も経っていれば、子供ながら既にその学園の中でも人間関係は出来あがっていた。
その子供社会の中に、途中から入り込み馴染むのは、子供ながらでもかなり苦痛でしかなかった。
それまで大人の中で過ごし、同世代の友人を持った事のない子供がどうやったら同世代の子供達と馴染めるか?子供ながら、試行錯誤した。
しかも、学園創設者の息子となれば尚更だ。
悠貴と潤との関係は同じだが……。
千景は【橘 廉】を事故で亡くして大きなショックを受けていた。
そんな時、お互い顔を知っており、それぞれの心の重みを紛らすように、癒す様にゆっくりとお互いを理解し、友人関係を築く様になった。
しかし、俺が廉として生きた世界の千景と玲音は【廉】で繋がった。
だが、俺が玲音として生きた世界の千景とは少しずつ心を開きながらゆっくりと繋がった。
だから千景は俺の事を【パンダ】とは呼んでは居ない。あの悠貴と起こした【喧嘩騒動】は俺の人生では起きてはいないからだ。
他にも起こっていない出来事はたくさんある。
【藤堂先輩との関係】も、【齋藤先輩との繋がり】も廉がいた世界と居ない世界では違う。
藤堂先輩は足の骨など折ってはいない。
だから俺の家に住み込むと言う出来事は起こっていない。
齋藤先輩に関しても同様だ。島での探険や遊びには付き合って貰っていたが、俺が先輩の部署に手伝などしに行っては居ない。
確かに2人とも俺を弟の様に何かと可愛がって貰ってはいたが仕事を手伝ったりはしていない……。
俺の当初の人生は大切な仲間がおり、かけがえのない関係を築いていた。
でも、【廉】の存在が加わる事でそれぞれがより一層深い、かけがえのない強固な関係になっている事からも大きく違っている。
俺は、あの天災で仲間や大切な知人を無くて心が折れた俺は、あの遺跡のトランスゲートの存在を頼りに、時空移動の可能性にすがり微かな希望をかけ、心の支えにして生きていた。
トランスゲートを見付ける事さえ出来れば時空間を操りあの島での被災者を無くせる、大切な仲間や知人を取り戻せると言う可能性にすがり、出来ると自分に言い聞かせずっと探し続けた。
でも、廉と供に過した世界の玲音は……?
廉の存在は突如として消滅し、仲間も無くし、記憶は矛盾だらけ。とてもでは無いが立ち直れないはずだ。玲音は、自分の意志は強いが心は弱い。
心の拠り所の【橘廉】は、例え、トランスゲートで12才の【橘 廉】の死亡事故前の過去に戻って事故を回避することが出来ても、廉の存在は?中身が違う者になる………。
それは、玲音の知っている廉ではない。
【島の天災を未然に防ぐ?】
例えそれが出来たとしても一番一緒に居て欲しい存在となった【橘 廉】は存在しない。
矛盾に満ちた廉の存在は?パラドックスに陥る。
片方の翼を無くした玲音は、その後何を心の支えに生きて行く?
そうなると明らかに世界が違う。
似て非なる世界だ。
その世界は事件以降の玲音の人生が成り立たない。櫻玲音と言う男はそんなに心強い男では無い事はこの自分がよく知っている」
死神は、玲音をまじまじと見つめながら答える。
「君って男は、凄い所を突くね?
大概の人間は自分の過去全体を振り返らない。そうゲーム中の事ばかり気をとられて、そのゲームの後の時間の事までは考え無いんだよね」
玲音は死神に自分の思い、考えをぶつける。
「俺が、【橘廉】として、生まれ変わっている世界は、当初の俺が生きて、生涯を終えた世界ではないんだろ?
時間を逆行してなんか無いだろ?
別の世界、このゲームだけのために作られた舞台でゲームセットとともに消失しているんだろ?
俺は、大切な仲間を無くした事だけでも心が折れ絶望から天災を回避すると言う可能性だけが生き甲斐だった。
しかし、あの世界の玲音は大切な仲間も失い、兄弟で心の支えでもある存在をもなくし、絶望で人生を歩み続けられないはずだ。
廉の存在が大きくなれば成る程その絶望は深く立ち直れない。
そうなると考えられるのはあの世界はゲームのためだけに作られた舞台、架空の世界では無いのか?」
死神は玲音の傍に立ち周りを見ながら言う。
「参ったよ。その通りだ。
創造主そこに居られるんでしょ?
彼は、見破ってしまいましたよ。
見事な程に……。
これは、彼の勝利ではないですか?」
「あぁ。意外に、早く解いてしまったね」
何処からとはなく、光りに包まれた人物が現れる。
「おめでとう。ゲームクリアの記念すべき第一人目だ。
しかし、困ったことに、 想定外の結果で、 事故を阻止したわけでは無いし、もう、君は輪廻の輪からは離脱している。どうしたものかな?」
「なぜ?こんな茶番するんだ?」と玲音は光りに包まれた人物をにらみつける。
「茶番か、そうだね。茶番だね。
天界も死神不足で困っていてね。膨れ上がった人口とともに死者の数も増加していているんだ。しかし、誰でも死神ができるわけでない。
死神は色々な魂、すなわちを その人の人生を生き様を全て見分けて冥界へと案内しないといけない。
それには、現世と未練を絶ち切り、強い精神力と慈愛が必要だ。そうでないと勤まらない。
君の様な意志の強く、やさしい魂でないとできないだよ。
しかし、現世に未練のない魂など稀だ。
特に強い信念がある魂は。
だから現世への未練を取り除くためにゲームしている。
過ぎ去った時間の流れをどうやっても変えられなかっただろ?
未来は変えられても、過去は変えられない。
それを理解して貰うための茶番だったのだよ。
たが、私が思う以上の魂が居たとはね。
まぁ、約束は約束だ、どうしたい?君の望みを叶えよう」
「最初の約束通り、あの島で死んだ仲間を知人を助けたい。
俺は輪廻の輪からは離脱しているから【櫻玲音】には戻れないんだろ?」
「残念ながら?あの舞台でもう【櫻玲音】の存在を作ってしまって居るからね」
「なら【橘廉】としてあの仲間とともに、これからも人生を歩みたい」
「先程も言ったように、未来は変えられるが過去は変えられない。だから、ゲームを始める時に言ったように【櫻玲音】としての記憶は全て消させて貰うよ? 舞台はゲームと同じスタート地点も同じだ。
ただ、違うのは橘廉としての人生の最後の日まで続くと言う事だ。もう2度と繰り返すことは出来ない。
君がまたあの時点に戻り新しい人生を始めることになるが、いいかい? 」
「ああ」
「では、約束通り君の未来に起こるであろうあの島の天災の部分を消し去ろう。あの世界に戻るといい」
「ああ」
「君の望んだ世界で、君の幸せを見付けるといい」
死神が嬉しそうに玲音に向かって言う。
「おめでとう。よかったな?
お前のような奴ははじめてだ。
では最後の転生させるぞ。
新しい未来の幕開けだ。
さぁ仲間の所に戻るといい」
【櫻 玲音】は【橘 廉】として仲間の待つ新しい現世へと転生していった。
爽やかな陽射しの中。
いつも顔ぶれが何処からともなく
示し会わせた訳でも無いのに
いつもの場所に当然のように集まり
他愛もないおしゃべりや、ふざけあいや、
議論をしている仲間。
人生の目指す所は、それぞれ。
互いに高めあい、競いあったりもするが
みな互いを認めあい、
自分に無い部分を尊敬し協力しあいながら、
かけがえの無い関係を築いていく。
季節は巡り年を重ねていっても、
遠い年月が過ぎても、
この光景は変わることはない。
これが日常なんだ。
All the best for your new life.




