My best friend is the one who brings out the best in me.
1.new friends, new bonds, new life.
玲音と廉がNYの留学から帰国してまもなくの事。
大学卒業までアルバイトを続けているが業務の内容は正式入社後に備えて本格的な仕事へと移行しつつあった。
廉は、藤堂の下で藤堂の雑務処理と玲音の仕事のスケジューリングと補佐をしていた。
「廉君、今日は玲音様は?」
「ん?あぁ、校長先生に帰国の挨拶と言うか?遊びに行ったと言うか?学園に顔を出してからここに来ると言ってましたよ?」
「そうですか。廉君は行かなくていいのですか?」
「校長先生の挨拶は別として、校長先生も忙しいでしょうからわざわざ行くのも………。それに、もう卒業を待つだけで講義はないですし、単位も取れてますし、卒業論文も提出済みですから行く必要はないですけど?」
Speak of the devil………
「廉!廉!ゆうだい校長先生がチューイ飼ってる!!それに知らない外国人教授が2人も増えているよ!」
「ん?チューイってなんだ?それよりドア開ける前にノックくらいしろよ!」
「チューイはオカメインコだよ!凄く賢くて可愛いんだ!」
「オカメインコ……。先に言っておくが玲音。ここでは飼えないぞ?」
「え~。校長室でも飼えるんだからさぁ~インコぐらいさぁ~。いいじゃん」
「無理ですよ玲音様。あのインコは諸事情で仕方無く校長先生が世話することになっただけですから」
「じゃあさぁ~。ここにも諸事情を作ろうよ!」とにこりとして言葉とは裏腹に屈託のない笑顔で言う。
「アホな事を言って無いでちゃんと今日の仕事しろよ!」
「あっ、そうそう。アレックスが廉にも会いたいってよ?」
「アレックス?アレックスって誰だ?」
「玲音様達が司法研修中に学園に赴任された権威ある生物博士ですよ。アレックス ジョン キャンベル氏。
一緒に赴任された、やはり権威ある化学博士の ラッセル ヘンリー ワーグマン氏。
後もう一人、あの島の火山活動の研究、観測を手伝ってくれる権威ある火山博士のアルベルト フィリップ ホフマン氏。
ホフマン博士はNYで御二人供会われてますよね?
その御三方が学園と櫻グループの事業に新しく参加協力してくれる方々のです」と藤堂が説明する。
「NYで加藤さんに会った時にが帰国してからの楽しみだと言ってた人達だよ?」
「なんでそんな権威ある科学者が3人もあの学園に?」
「加藤さんの昔からの友人で統轄長が引き抜いたんですよ。まぁこれからは国内業務管轄していくのですから挨拶に行った方がいいかもしれませんね。挨拶しなくても逢う機会いくらでも有りそうですが……」
「廉!チューイ見に行こう!廉も見れば絶対さぁ可愛いくて飼いたくなるからさ」
「………。玲音!チューイに挨拶は要らないだろ?それに、飼いたいと飼えないの意味の理解をしろよな!」
「私は、午後から統轄長の外回りに同行しますから、本日午後からは学園に挨拶に行って見てはどうですか?」
「でも、まだ明日の統轄長のスケジューリング精査出来てないですよ?」
「大丈夫だよ!大体出来ていれば、親父の奴、最近俺達が仕事手伝い始めて時間に余裕出来るもんだから以前より増してスケジュール通り行動しなくなってるんだから~大体でいいんだよ」
「ううん!?」と咳払いしながら時宗が現れる。
「玲音!私は、ちゃんと予定の仕事もしてプラス予定外の仕事もしているんだぞ?」
「親父!ノックくらいしろよ!」
(お前がそれ言うか?)と廉は玲音を見ながらあきれ果てる。
「どうされました?統轄長」と秘書室に現れた時宗に藤堂が声をかけると、時宗は少し言いにくそうに
「いや、今日の外回りの最後に学園によりたくてね。相談に来たんだが?」
「ほら、言った傍からスケジュール変更させてるじゃん!」
「いや、先程急に兄貴から島のアリーナ建設の話し合いをしたいと連絡が有ったからさ。仕方無くだな?あぁちょうどいい。お前達も仕事を覚える為にも今日は同行しなさい。うん、それがいい。藤堂君手配頼むよ?」と言い残し逃げて行く。
「はぁ~。玲音様、廉君。これから、午後からの打ち合わせしますよ。会議室に移動しましょう」と藤堂は頭を抱えながら他の所員に必要書類の出力を指示しながら、会議室を押さえている。
玲音達はアルバイト時代に何度も同行に付き合わされて居るので要領は得ているが訪問先リストと訪問趣旨、滞在時間目安を教えられ昼からの時宗の外回りにつきあう準備を行う。
車の中で廉は時宗に質問する。
「学園に教授が3名も急に増員されたのは何故ですか?」
「ん?あぁそうかぁ~。玲音達にはまだ紹介してなかったな?ちょうどいい後で紹介するよ」
「いえ、玲音はもう会ってるみたいです」
「え?いつ会ったの?玲音?」
「午前中。チューイにも会ったよ!」
「………。玲音、先に言っておくが統轄長室や秘書室で鳥は飼えないからな?ついでに犬や猫もだ!」
「ならさぁ~熱帯魚を飼おうよ?こないだ視察に行った子会社の社長室に有ったじゃん?綺麗だったよね~」
「却下だ」と時宗はいい放つ。
「なんでだよ!」
「玲音、お前パソコンのバーチャルアクアリウムで何度も熱帯魚全滅させているよな?バーチャルでまともに育てられる様になってから言えよ!」と廉はあきれながら指摘する。
「廉!あれは、長期間不在したとき自動餌やりに切り替えるの忘れてて………。日頃さぁ~。目の届かない物は忙しいとさぁ~」
「毎日パソコン開いて居る時も構いすぎてストレスで死滅させたよな?」
「そう言う廉だってリアルでサボテン水やり過ぎて枯らしたじゃんか!サボテン枯らすなんて相当だよ!」
「水やりの適量がわかんなかったんだから仕方無いだろ!お前が育て方も聞かずに貰って来るからだろ!」
「サボテンねぇ~。そう言えば統轄長も昔枯らしてましたよね?」と藤堂が指摘する。
「藤堂君。そんな大昔のどうでも良いことは思い出さなくてもいいから!」と時宗は焦りながら藤堂の言葉を遮る。
「あの~。それよりお父さん。教授が増えた訳は?」
「あぁ、そうだったね。メタンハイドレートを効率よく、安全に実用化レベルにするための研究を手伝ってもらうためにラッセルを、バイオ繊維の研究や次世代農業の研究にアレックスに手伝ってもらうためだよ。これからこの分野をグループ産業の要にしたくてね。雅治の古くからの友人たちだったので引き抜いたんだよ」
車の中で時宗の考えているこれからの事業展開の説明を受けながら本日最後の訪問先の学園へと着いた。
校長室では、齋藤と加藤が先客として島の安全管理対策を話し合っていた。加藤の肩には玲音が午前中に話していたと思われるオカメインコが大人しく留まっている。廉は、そのオカメインコの様子を見ると、『なるほどね』と玲音が夢中になるわけが一目で分かった。
時宗が現れると、3人は話し合いを中断し、唯野が時宗の取り巻きを見て、「この人数だとここでは狭いな?会議室に移るか?」と唯野が言うと時宗は、「いや、玲音と廉は、アレックスとラッセルに紹介するために連れて来たから会議に参加は私と藤堂君の2人だ」と説明する。
「ん?玲音君は午前中に会っているだろ?」と唯野は不思議そうに言うと、玲音は「俺は、チューイに会いに来たの!加藤さん学園に居る間、チューイを俺に貸してよ!」と目を輝かせながら子供の様にねだる。
「ん?チューイほら玲音と遊んで来い!」と肩から降ろし玲音の方に向けて放つとチューイは玲音の頭の上に止まり「マーサ!マーサ」と鳴く。
玲音は、頭から腕に止まらせ「俺の名前はレオン!レオンだよ?俺の名前も早く覚えてね」とオカメインコに一生懸命に話しかける。それを見た時宗は、唯野の耳元で「兄貴。あの様子だと玲音の奴、当分の間は暇さえあれば、ここに入り浸るよ?」
「時宗!お前は、なに他人事の様に言っているんだよ!お前の息子だろうが!お前がちゃんといいきかせろよ!」と怒る。
「いや、もうあれは完全に俺が何を言ってもダメなレベルだ」と他人事のように苦笑する。
結局唯野達は伊集院とホフマン博士を呼びだし島の施設とアリーナ建設の詳細を協議するために会議室に移動した。
廉と玲音は新しく赴任した教授に挨拶をしに学園内を移動していた。
校庭を横断する途中に小走りに移動している千景とすれ違う。
「千景!」と廉が呼び止める
「ん?珍しいな二人がこの時間に学園に居るのは。何か用事か?」
「新しく赴任された教授に挨拶に来たんだ。千景はこれからレジデント勤務か?」
「ああ、今勤務中なんだよ。あの教授達には、お前達はまだ会ってなかったのか?
あっ、パンダ、廉。悪いがちょっと今取り込んでて忙しいから急いで勤務に戻らないといけないんでまた後で」と校舎の時計を見た千景はそう告げ、また大学病院の方向に小走りで向かう。
「なんか千景。かなり疲れ溜まってるみたいだね?」と玲音が言う。
「そうだな。また無理して倒れなければいいが」と廉は千景の後姿を見ながら言った。
校庭を進んでいくと休憩用のベンチにクロスワードの雑誌を解いている外国人がいた。
「あの人がMr.アレックス?」
廉は、玲音に聞くと「違うよ?」と言って玲音は、ベンチまで歩みより男性の隣に座り「こんにちは、初めまして」と英語で話しかける。
男性は、雑誌から目を反らし隣に座った玲音を見て、少し驚いた様に返答する。
”How do you do?”
しかし、チューイに釘付けになっている。
それに気付いた玲音は、「この子かわいいでしょ?【チューイ】って言うんだよ?
僕の名前は櫻 玲音。彼処に立って居るのが弟の廉だよ。おじさんは?」
「私の名前はラッセル ヘンリー ワーグマン。君は、Mr.時宗の関係者かい?と不思議そうに聞く」
「時宗は俺の親父だよ」
「あーいたいた。ラル、ユッキーにさぁ………。Hey!Leon.また会えたね!」といかにも人なっこそうな外国人が現れる。
「アレックス!廉を連れてきたよ!」と嬉しそうに叫ぶとチューイは”アレック!アレック”と鳴きながらアレックスの肩に止まる。
「あーぁ、チューイに逃げられた」と玲音は残念そうに言う。
廉は、2人の傍に行き” Hi, it’s a pleasure to see you.”と言うとアレックスは満面の笑みで「ヨロシクネ!」と返した。
「こんな所ではなんだからさぁ購買棟のカフェに行こうよ」と玲音が提案するがアレックスは「チューイを連れて行くとユッキーに怒られるから生物準備室においでよ!」と楽しそうに誘う。
「ねね、アレックス!チューイ貸してよ!」
「チューイ!レオンの所へ」と指差すとチューイはまた、玲音の肩に乗る。
4人と1匹はアレックスの控室へと向かう。
2.The grass is always greener on the other side.
千景は、夕方の巡回が終わり医局に戻り同じレジデント仲間の1人と休憩に入っていた。
2人は自販から珈琲を買いソファに座り話しをしている。
「あっという間に一年が経ったな。五十嵐お前は基礎研修で居なくなるかと思ってたが?なんでレジデントしているんだ?研究医希望なら基礎研修後は研究機関にみんな戻るだろ?お前研修当初から研究医になるって言ってなかったか?」
「ん?研究医になりたいが医療の現場もしっかり知っておくのも大切だろ?両親も研究医だけだと潰しが利かないとか、将来あの病院どうするんだとかうるさいからな。研究医にはいつでも転向は可能だからな出来るだけ臨床の経験しておこうかと。反対に研究医から臨床医は無理だろ?だからまぁ無駄な経験でもないしな。今のうちにしっかり臨床経験も積むさ」
「それなら実家の病院で研修を受ければ良かったんじゃないか?あの事があった以降ここに居にくくないのか?」
「なんでだよ?」
「あんなにあっさりとお前がフラれるなんてさ。毎日顔合わすのも辛くないか?俺はあの件の後は、てっきり研修場所を変わるかと思っていたが………」
「陣内お前、職場の人に告白して断られたら、その職場を辞めるのかよ?」
「いやぁ~さぁ。俺はこう言ったらなんだが………。お前と違ってフラれ馴れてるというか?免疫があるというかさあ~。大体モテたことがないからな。でもお前は違うだろ?」
「俺だって同じだよ!俺自身より実家の病院や櫻グループとの関わりがモテる要因で、それを知らない奴から告られたことなんてね~よ!それどころか、知らなかった奴がそれ知ったとたん近づいてくる事ばかりだよ!そっちの方がへこむわ!」
「しかし、なんでよりによって真宮寺女史なんだよ!お前も怖いもの知らずだよな?しかも運が悪すぎると言うか断わられる所をあの坪田の奴に見られるなんてな?3日間学園中に拡声器でふれまわる位の認知効果あるぞ?」
「噂の件は、まぁ彼女が悪気が有って言いふらした訳では無いだろからさ。あそこまで噂になったのは、それだけいい方にも、悪い方にも俺の事に関心のある奴が多かったって事かな?」
「でもさぁ~。坪田のお喋りは有名だからな?あいつ医者より報道関係の方が合うんじゃないか?
しかし、悪気は無いにしてもなぁ~。お前、かなり噂になってるぞ。
そういえば前にもお前の後輩と藤春のゴシップも坪田が報道部の友人から聞いて広まったんだろう?」
「あの件は、ストーカー退治のために敢えて目立つ様に2人は振る舞ったからな。
研修で顔見知りがテレビ局に居る事まで想定してなかったからゴシップになるのも無理ないさ。
俺の方は、他人から何を言われようと気にしないから、反対にあのチャンスに言わないで片想い続けるのも性に合わないからな。まぁ自分が好きだからと言って相手も同じ気持ちとは、なかなかいかないもんだ。
それに断わられたと言っても俺自身を否定されたわけでなく。今の自分にはそんな事より、もっとしなければいけないことがあると指摘されただけだから。可能性は0ではないと言うことだ!だから完全に諦める必要もないさ。もっと俺が医師として成長して見直してもらえば、可能性もチャンスも広がるさ」
「五十嵐お前、強いな?強いと言えば、もう帰って来てるんだろ?天下無敵の兄弟が」
「 天下無敵?" invincibility on earth "」
「あぁ、理事長の御子息で頭脳明晰、運動神経抜群、容姿も名誉も地位も将来も約束されて居るどう考えても【人類皆平等】と言う言葉に異論を吐きたくなる兄弟でお前の親友だよ。」
「天下無敵かぁ~。端から見ればそうだな。そう見えるよな。天下無敵かぁ~」と呟きながら千景は笑う。
「何がおかしいんだ?なんか間違っているか?」
「天下無敵に見える兄弟にも各々悩みもあるし、叶わない事もあるよ。白鳥と同じで優雅に泳いでいるように見えても水面下では必死に足をばたつかせているのさ。
まぁ、でも、生まれ持った物にはやっぱり不平等だけどな」
「五十嵐は、あの兄弟を羨ましいと思った事は無いのか?」
「無いな。廉は、本当の両親を幼い頃にいっぺんに亡くしてる。それに自分も、大事故の後遺症にずっと悩まされている。
陣内お前は、自分の両親の命と自分の健康と記憶を引換えに廉の地位を貰えると言われたら差し出すか?」
「え?親の命は………」
「玲音もそうだ。小さい頃から1人。世界中を連れ回されて友人の1人も出来なかった幼少時代、両親と一緒に居たいと思っても出来ない環境。能力は有りながら自分がなりたいと思う職業すら選べず、これからの人生には背中に何千、何万と言う人達の生活を抱えさせられる責任。
お前は自由を取られ、重圧と責任を押し付けられても、玲音の地位が欲しいか?金が幾らあっても、自由が無いと意味無くないか?」
「…………」
「青芝だよ!俺は陣内、お前の方がよっぽど羨ましいぞ?
お前は、自分で医者になりたいと思って医者になったんだろ? 自分の望む職業になれる人はほんの一握りだ。
お前、奨学金は、受けてないよな?
両親の愛情に恵まれ、実家はこの学園に通えるだけの財力がある。それに自分がなりたい職業を自由に選び、その願いも叶いなりたい職業で働いていける。
お前には、何もかも揃っているじゃないか?それ以上を望むのは、贅沢だよ!」
「まぁ、そうなのかな?そう思う事にするよ」と同期生は笑う。
「それより最近五十嵐、顔色が悪いぞ?あまり寝てないんでは無いのか?」
「ん?そう言われれば最近はここに泊まり込む事が多くて家に帰ってないな」
「倒れるぞ?休みはメデカルセンターにも行って居るんだろ?」
「今、受け持っている患者がいつ急変してもおかしくないからな。メデカルセンターはその患者が落ちつくまでは、休みとってるよ」
「お前、患者がどうこう言う以前に自分が倒れたらどうするんだよ!
もし、万が一倒れでもして見ろ真宮寺女史に自分の体調管理も出来ない医者は医者失格だとかまた言われるぞ?」
「あぁ、そうだな。それだけは極力避けたいな。気を付けるよ!
ん?もうこんな時間かよ。休憩時間も終わりだ。仕事に戻るぞ」
千景は笑いながら残りの珈琲を飲み干し立ち上がり病棟へと向かう。




