The god of death
1.The god of death.
俗に死神と呼ばれ、人々から忌み嫌われて、もう何十年、何百年が過ぎただろうか?
死神は別に人の寿命を無闇に奪い取り冥界へと送り込む訳ではない。
その人の決められた運命をまっとうしたかどうか、確めて次の転生のために魂を冥界に送る。
ごく稀に残された時間を残す者が紛れ込む、その場合は甦生し、最後の時まで現世に留まらせる。
まず、生きている人間に見える事はない。しかし、この世の中、例外と言うことも存在する。だから稀に見えた者の勘違いで現世に置いて怖い存在となって居るのかも知れない。
病院にあの死神が現れる。
ただし、誰一人として見える訳でも、声が聞こえる訳でもない。
たまたま死神としての仕事を終えた後、ふと彼の気配を感じた。
病院の待ち合い室で診察待ちをしている廉を見つけ、隣に立つ、そして廉に意味をなさない言葉を投げ掛ける。
『櫻玲音。いや、今は橘廉だな。
君は何時になったら気付く?
君が変えたいのは【未来】?
それとも【過去】?
その言葉の意味が解れば
全てが紐解けるだろうにな。
だか、もう残された時間は少ない。
君の純粋で強い真っ直ぐな願い。
また、絶望へと変えるのか?
君の思いを希望に変えてくれよ。
俺にはもう、見守る事しかできないが……。
俺にも希望を見させてくれ。
君は敗けないと 心に誓ったはずだ。
思い出せ、君の求め続けていることは ひとつだけだ!』
しかし、今の廉には、死神は見えないし、声も聞こえなかった。
でも、何か大切なことを思い出さなければと言う思いに浸っていた。
「廉!廉?」
病院の廊下を玲音がやって来たが……。
しかし、廉の隣に立つ妖艶でこの世の人とは思えない人物を見て凍りつく。
『現世の君は、霊感が有りすぎるようだね。
反対ならよかったのにね。』と言いながら死神は消えていく。
廉が玲音に気付いて声をかける。
「玲音?どうした?顔色悪いぞ?俺よりお前が見てもらった方がいいんじゃないのか?」
「さっき、廉の隣に居た黒いスーツを着た人……」
「隣?俺一人だったが………。
ん?黒いスーツの人!?」
【黒いスーツ】に廉は反応して玲音に問い詰める。
「玲音、その人はどんな感じだった?
黒づくめのスーツ着て、透き通るような肌で、 銀色の頭髪、整った顔立ちの中性的な容姿じゃなかったか?」
「廉も、見えていたの?」
「今も、ここに居るのか?」
「俺を見つけたら消えて居なくなった。
何か廉に話しかけてたよ?知ってる人???」
「なんて言ってた?」
「聞こえなかったよ?でも、あの人は何?
人では無いよね??」
「玲音は見えたの初めてか?」
「前から居たの?廉、変な奴にとりつかれて居るわけでは無いよね??」
(………。隣に居た?何かを伝えたかった?
それは、タイムリミットが近いと言うこと、思い出さなければいけない事が有るということ。)
「廉、どう言うことか説明しろよ?」
「分かったよ!帰ってから話すよ。
だから玲音も、もっと詳しく教えてくれ」
廉はその後、ずっと考え込んで居た。
それは、見事に検査に引っ掛かってしまった。
診察で【かなり、脳波が乱れている】と言われて、発作起きたりしているのでは無いかと言われてしまった。
【起きてない!】と言っても、これから起きる可能性が高い。取り敢えず、この脳波の乱れが治まるまでは帰せないと言われて入院が決まった。
玲音はかなり、心配して「傍にいる」と言って廉の病室から出ようとしなかった。
「やっぱり体調が良くなかったですね。ちゃんと養生しないとダメですよ?しかし、困りましたね。ドイツ行どうしましょうか?」と藤堂は言う。
「大丈夫ですよ?本当に何とも無いのに大袈裟です」
話しをしていると時宗がやって来た。
「調子が良くないようだね。気分はどうだい?」
「何とも無いんですよ。ここから出して下さいよ」
「廉、今回はダメだよ?ちゃんと医師の許可出るまでは入院して居なさい」
「そんな………」
「藤堂君、ちょっと」と言って病室から2人が出て行く。
病室の外では時宗と藤堂が話しをしている。
「和也の話しでは、かなり、脳波が乱れている様だが……兆候が有ったのかい?」
「千景君と3人で話しをしている時、急に呼び掛けても、反応しなくなったんです。
前日にも、玲音様が同じ様な事を言ってましたから、本人は考え事をしていたと言ってましたが、余りにも変なので連れて来てみたんです。ドイツに行って倒れたら大変ですから」
「そうか…………」
玲音は病院に残ると言っていたが時宗達に無理矢理に廉の体に障るからと引き離され家に帰って行った。
病室に一人取り残され玲音の言葉を思い出して居た。
あの人物は俺の隣に現れて何かを言って居たと玲音は言うけど、俺には見えないし、聞こえなかった。
『これが君に警告できる最後のチャンスかな?』
あの言葉は俺に声が届くのが、あの時までと言うことか?
なら、今まで俺が気が付かなかっただけで傍には現れていたのか?
しかし、いつも玲音が傍に居たが見えて無いようだったし………。
『この神殿のお陰で姿現せたけど、その代わり僕の持ち時間は無くなってしまった』
ミステリースポットやパワースポットの様な所なら姿が表れやすい?
以前は、何時、何処で俺と会ったのか?
事故に遭う前?
しかし、記憶が全くない。
なんとしてでも思い出さないと……。
「廉?廉!おい。廉!親父を呼んでくれ」
千景は看護士に向かって叫ぶ。
周りの喧騒に廉が我に返り千景に気付く
「ん?千景?」
看護士がバタバタしていた。
千景が不安そうな顔をしている。
「千景どうした?」
「どうした?じゃない。廉、何時からこんな状態なんだ?」
千景は厳しい顔で問い詰める。
「えっ?なにいってるんだ?千景、俺どこも悪くないぞ?」
「自覚症状がないのか?頭痛も発熱も無いが完全に意識が混濁しているだろ?」
「いや、考え事しているだけだよ?」
千景と話しをしていると五十嵐先生がやって来た。
千景は一度病室を出て、五十嵐先生と話しをしている。
(参ったな………。はぁ……これで完全に病人扱いになったな……)
五十嵐は廉に「気分はどう?」と聞いた。
「別に何とも無いんです。本当に」
「そうかい、分かったよ。少し寝たほうがいいかもしれないね…」と言って、看護士に何か指示をしていた。
千景は「また来るから」と言って病室を出て行った。
点滴に入れた薬が効いてきたのか?眠気が襲う。
夢の中で寮に入ったばかりの頃の玲音が居た。玲音は千景と、よく喧騒はしていたが、何時もお互いを思いやり、心配しあい、何かあれば相談にのってくれていた。
悠貴も潤も、何時も一緒にいた。
ただそこには、俺は居なかった。
遺跡の調査の提案も千景から玲音に頼まれておじさんには玲音が頼んでいた。
(【橘廉】は存在していない?俺は?存在していないのか?)
遠くから、俺を呼ぶ声が聞こえる。
「廉!廉!起きろよ!廉ってば!!」
目が覚めると玲音が居た。ほぼ半泣き状態だった。
「玲音どうした?何、泣いて居るんだよ?」
廉は不思議そうに聞くと、玲音は真っ赤な顔で廉の頭を叩く。
「廉のドアホ!知るか!心配さすなよ!」
と言って病室を出て行った。
(あいつ、本気で叩きやがった。痛いなぁ
そう言えば、玲音からあのスーツの人物の事を聞きそびれたな?
夢で見た俺の居ない世界……。
玲音は俺が居なくても、楽しそうに暮らして居たなぁ。
何となく玲音には自分が傍に居てやらないとって思って居たが、俺が玲音を必要としてたのか?)
千景が病室にやって来た。
「珍しいな?こんな時間に。今日はバイトも研修も休みか?」
千景はベッドの隣の椅子に座り、
「お前は、脳天気だな?気分はどうだ?」
「ん?俺は、はなから気分は悪くも無いし、体調だって悪くはないよ!」
「しかし、意識は飛んで居るだろ?特にここ最近は、特に頻発して」
「どうも、考え事すると自分の世界に入ってしまうだけで意識が無いわけではないさ、お前らが何時も周りで騒ぐからそう言う癖がついただけだよ!」
「なら、その癖は治せ。体には良くない」
「そうなのか?まぁ努力はしてみるが…」
「後、あまり考え事はするな。考え込むくらいなら俺か、玲音か、藤堂先輩にでも相談しろ。
俺なら研修中でなければ、電話でも何でも聞いてやるから、ひとりで考え込むな!いいな?」
「あぁ、ありがとう」
「ドイツどうする?行きたいなら口添えはしてやる。しかし、先程の約束は守れよ?」
「おじさん一人では仕事大変だろうし、ドイツに留学って事もなかなか出来ないだろうから、行ってみたいな」
「分かったよ!その代わり先程の約束は絶対に守れよ?いいな!」
「分かったよ。なぁ千景?」
「ん?なんだ?」
「小さい頃、俺達、親父の都合で玲音のお供するのが嫌で距離とって居ただろ?」
「まぁ、パンダはパンダで俺達にも心開いて無かったからな……。それがどうした?」
「もし仮に、万が一だけど……。あの時の事故で俺が死んでたら、千景と玲音はちゃんと今のように………」
「廉!万が一なんて無いだろ?お前はここに居るし、死んでは居ない!そんな訳の分からない事を考え込んでいるからおかしくなるんだろ?
俺は、お前の居ない世界なんて考えられねーよ!」
「………まぁそうか。俺ここに居るもんな……」
「さっきまで、かなりパンダはお前を心配してたぞ。変な事言うなよ?」
「何で半泣き状態だったんだろ?」
「さぁな、お前が死んだように寝てて起きなかったからじゃ無いのか?
お前は昔からよく寝ていたが、丸一日は寝すぎだろ?」
「そんなに寝てたのか?」
「あぁ本当に死んだように寝ていたよ。
看護士が睡眠導入剤の量を間違ったんじゃないかってナースステーションで騒動に成る程な!」
「…………。すまない?と言った方がいいのか?この場合?」
「さぁな。何か有れば連絡しろよ!俺、バイト行ってくるわ」
「あぁ、気を付けてな~」
千景は、父親の所に行き、廉が目を覚ました事と、ドイツに留学してたい旨を伝えた。和也は「今の状態で留学は……」と難色を示したが、「玲音も傍に何時もいるし、やりたい事出来ない方が精神的に良くないのでは無いか?」と千景が言うと、和也も少し考え込んで「時宗も玲音君もドイツに一緒に居るなら、まぁ条件付きの許可は出そうか」渋々言った。
千景は、廉が時々何か遠くを見ているような気がしてならなかった。事故に遭ってから、廉はやたら自分の存在意義について悩んで居るようにみえる。
それが、マイナス要因となって発作を起こして居るのでは無いかと………。
玲音の様に傍に何時も居れば、廉の考えている事はだいだい分かるのだが、昔と違い進む道が各々違うため学生時代の様に傍に何時も居られない。
玲音には、ちゃんとしっかりよく見張って変だな?と思えばどんな些細な事でも俺に連絡しろとは言ってあるが、限界はあり不安は隠せない。
今回の件も少し前に玲音から何か考え事していると周りの声や視覚が入って来てないようだと聞いては居たが、自分の忙しさで確める事が遅れてしまった。
廉は、何を考え、何を探して居るのか?本人にも、その答えは出て無いのだろう。でも、それが発作の原因で有るのも間違え無いのだろう。




