Exposure
1.Exposure.
翌日、廉は時宗に家に帰る旨を伝えると、あっと言う間に時宗は引越業者を手続きして、廉達が仕事している間に引越を済ませていた。
「…………。そこまでパンダ達に帰って来て欲しかったんだなぁ~」
千景は部屋を見回しながら唖然としていた。
「親父、そんなに、寂しかったのかな…。【玲音Jr.】あげとけばよかったのかな?」と玲音は考え込んでいる。
「…………。家出たのは、こうも親不孝だったのか……」
廉は自責の念を感じた。
「……………。仕事もここまで迅速に動いてくれれば、私は何の苦労も無いんですけど?」
藤堂は時宗への仕事の段取りのあり方を考える。
四者四様、思う所はそれぞれであった。
藤堂が退院することになり、怪我が完治するまでは、玲音達と一緒に暮らす事になった。
当面、時宗の書斎が仕事場となった。
事務所には、廉と玲音が交代で2日に1回事務所に行き必要書類と、秘書室の仕事を確認と必要に応じて持ち帰っていた。
ある日、廉が事務所に行くと柊木が来て必要書類を貰う時にあることを頼まれる。
「なんとか藤堂室長に電話を貰える様にお願い出来ますか?」
「急ぎですか?」
「出来れば早めに………」
「なら今、電話しますね」
「先輩?柊木さんが話しあるって………。代ります」
「どうぞ」と携帯を渡す。
その間、廉は他に必要な書類を探す。
何やら柊木さんの声がどんどん大きくなっている。
「しかしですね、進んで無いのですから、こちらとしても言えませんよ!無理です。俺には絶対無理ですから!」
ちらっと廉を見て、
「はい、いらしゃいます。わかりました。
廉君、藤堂室長が代わってくれって」
「俺?もしもし?」
「廉君、統轄長の部屋に行って!今、統轄長が何してるか見てきて。大至急!」
「え?」
「電話はそのままで行って」
「はぁ」
統轄長室をノックし、「おじさん?」と部屋に入ると。
部屋の中では布の様なサンプルがいっぱいに並べられてた。
「なんですか?これ?」
「ん?廉か?新しい素材の試作品でね。蜘蛛知っているだろ?あの蜘蛛の糸は凄い強度が有るんだ。それを参考に化学繊維をね」
携帯から叫び声に似た藤堂の声がする。
「もしもし?廉君、統轄長に代わって!」
「おじさん、藤堂先輩が代われって………」
「え?居ない事に……」
「怒鳴ってますよ?」
「参ったなぁ~。もしもし?」
「統轄長、何をなさっているんですか?」
「勿論、仕事だよ?」
「何の仕事ですか?」
「えっと……」
「本日の仕事に、新しい化学繊維の開発なんて言う仕事は無いはずですが?」
「うん。確かに無いね……」
「無いのに何やってるんですか?」
「えっ?ちょっとね。ちょっとだけ気分転換に見てただけだよ?きちんと通常業務もしているよ。ちょっと効率がよく無いんだけどね……」
「嘘を言ってもダメです。柊木がここ2日間、全くスケジュールの仕事をしてないと報告してます。どうするんですか?溜まってる所の話じゃ無いでしょ?
子供じゃ無いんだから、見張りが居ないと決められた仕事しないとかやめて下さいよ?
今日中に今日までのノルマこなさないと帰って来ても家でやらせますからね。徹夜を覚悟してください!」
「おいおい。これもさぁ、事業として新しく展開していきたいんだよ?」
「なら、やるべき仕事をなさった後、おやり下さい。では」と言って冷ややかに電話を切った。
「おじさん。俺も手伝うから、2日分のノルマ挽回しようよ。多分、このままだと本当に今日は寝れなくなるよ?」
「う~ん。そうだね、藤堂君かなり怒ってたもんな」
「それもあるけど………。他に迷惑かけちゃあねぇ………」
「あぁ、これは、すまなかった」
「俺に謝られても………。どれから片付けていきますか?」
何とか夜の9時になって仕事が片付いた。
「廉、助かったよ。ありがとう」
「また、新しい事業を起こす気ですか?」
「まだ、考えている最中で、どうするかは疑問だな?利益とか長期的展開の可能性の有無を見定めないとね」
「今、統轄している事業だけでも大変なのに………。なのにこれ以上増やして自分の首を絞めてませんか?」
「そうだね~。でも新しい事をするのは楽しいじゃないか?」
「う~ん………。そうなのかな?」
「まぁ、廉も社会に出ればわかるよ。さあ帰ろう」
車中で時宗は廉に質問する。
「そう言えば、司法試験って、何時なんだ?」
「来年の5月ですね」
「勉強しなくていいのか?」
「まぁ、それなりに時間を作ってやってます」
「資格取れたら、NYに行きたいんだろ?」
「出来れば………」
「玲音も連れて行ってやってくれるかい?」
「玲音が行きたいと言うなら、俺は嬉しいですよ?」
「そうか。しかし、玲音が受かるかが問題だな?そうすると、またあの家も寂しくなるなぁ~」
帰ると藤堂が玄関に出迎えて時宗に小言を言う。
「統轄長、なんで柊木の提示した〆切を守らないんですか?私は小言係じゃ有りませんよ!言わせ無いで下さい」
「ちらっとのつもりがね………。ついつい、すまなかったよ」
「先輩、ちゃんと今日までの仕事は全部出来てるから大丈夫ですよ。こっちの仕事はどうですか?」
「人事部と経理部と総務部この3部署で備品購入と接待費の計上がね、問題があるんです。
他にも、統轄長まで報告上げる必要の有るものが上がって無い物も多くて………。
総務部のパソコン全社員分の一斉入れ替え、これなんかまだリースの期限は残ってるし、結構高額な機種なんです。
一般事務にこんな高性能のグラフィックボードとかのせる必要ないし、見積りも何社か取る必要が有るのに取ってないし。
リース満了してないのに入れ替える理由が提示されてない。
リース満了分は部署が稟議書で対応できるけど、それでも見積りは何社か取る決まりですからやはり問題が有ります。
経理部は、接待費を申請していますが、申請先が人事部。金額も250万、経理部が接待必要なのか?というのも疑問ですが申請先も人事部と言うのもおかしいです。
人事部も新入社員の歓迎会300万とか人材募集広告費1000万とこれは統轄長の未承認のまま行われています。
グループの人材募集は広告を出さなければいけない程、人手不足でもないし学園から毎年一定数の人員が入るからわざわざ広告を出さなくても賄える。
下の子会社が欲しい場合はそこの会社が広告を出すからこれもおかしい。
新入社員の歓迎会を今時、人事がしているのか?って事もあるし。
あるとしても、300万って………。1人一万位かけている?立食パーティとかにしない限り300人は、入らないし、立食ならもっと価額押さえれるはずです。
後、気になるのがこの3部署の慰安旅行なんだよな?合同で行っているみたいですが通常会社からの補助は社員一人あたり2万なのに毎年ハワイやオーストラリアとか海外に豪勢に行って居る様なんですが………。
各自で積み立てしてるのかも知れないですが毎年となると………。
後、人事部の速川さん定例会議の出張費用が俺達の金額に比べて1.5倍も多いのも既定通り申請なのか?ってところですかね?
今の所出て来ているのはこんな所です」
と藤堂は経過報告をする。
「千景君この中から何か裏出てきそう?」
「そうですね。この狸さんパソコン使ってくれれば出てきそうな気がしますがある程度年配の方ですよね?
パソコン苦手で裏帳簿とかになるとお手上げかなぁ~。
取り敢えずメールから覗いてみます」
「頼むよ」
「先輩?」
「ん?」
「この広告出したって、これ広告会社?
主事業不動産業になってるし、グループ外の会社だよ?
グループ内にちゃんと広告会社は有るよね?」
「このリース会社もグループ外の会社だよ?」
「総務部のパソコン本当にこんないいスペックなのかな?」
「一斉入れ替えなら一台抜き打ちで調べて見れば?」
「誰が調べるの?」
「いるじゃん!分解が得意なのが!」
「潤君?」
「うんそう。明日連れて行ってみる」
「しかし、表だっては……」
「秘書室が忙しいので臨時にバイト雇って1日だけだから総務部のパソコン一台回して貰うでいいのでは?」
「なるほどね、お願いするよ。写真撮っておいてね」
「OK!」
玲音が潤に電話すると悠貴が出た。
「玲音先輩!引越したならちゃんと教えて下さいよ。こないだ先輩の家に遊びに行ったら、ものけの空でびっくりしたんですから~」と悠貴が文句を言う。
「あーごめんね、忙しくて忘れてた。潤居る?」
「居ますよ?」
「代わって」
「もしもし?」
「潤?ちょっと付き合って?」
「俺、男とは付き合いません」
「…………。俺だってそんな趣味ないよ!」
「冗談ですよ?そんなムキにならなくても」
「潤は、冗談に聞こえないから」
後ろで悠貴の「俺も行く!」と言う声が聞こえる。
総務部のパソコン統轄長室に持ち込み潤が分解していく。
悠貴が部品の写真をとる。
「先輩、やっぱりスペック違いますよ?」
「違う部品の写真分かるように写真撮って
後スペック表に印つけて」
「付けるにもほとんどだし……CPUの性能から違うからな………」
「悠貴、もう一台借りて来るから手伝って」
「あーい」
もう一台また統轄長に持って入る。
潤が分解していく。
「さっきのと同じです」
「このスペック表がおかしいのだと思います」
「潤これ一台大体市場価格いくら?」
「パソコン本体だけなら低スペックだから高くて7万?相場は5万位では?」
「このパソコンのスペック表作れる?」
「作ると言うより市販のだから組立品ではないからネットで調べれは出ますよ?」
「調べて、そこの親父のパソコン使っていいから」
「おい玲音、私の仕事は?」
「親父は秘書室の俺のパソコン使えばいいだろ?」
「ふーぅ秘書室ねぇ…。まぁ仕方ないなぁ」
時宗が秘書室に来て仕事を始めるので秘書室の全員が氷ついた。
柊木が思い余って聞く。
「統轄長?どうかされましたか?」
「うん、息子に追い出されてね………。少しの間ここを使わせて貰うよ…。これ仕上げないと藤堂君がうるさいからさ」
「はぁ」と柊木をはじめ周りは唖然としている。
夕方、玲音は家に帰ってきて藤堂に報告する。
「あの見積りのパソコンとは性能が全然別物だったよ?一応2台調べたけど2台とも一緒だったよ。市販の安価な物だって。
これがスペック表。高くて7万位だって。もし、見積りのスペック通りだとしても27万は高いってさ。これが部品の写真ね」
「総務部50名100万以上の計上がおかしいと言う事になりますね………」
「広告の方も、いつどこで広告されたのか?不明瞭でネットに掲載されている形跡も無いです。
書かれている会社は、やはり不動産業しか、してないみたい」
「メールにその不動産業者から土地の売買のメールがあるぜ金額も1000万名義はタヌキになってる」
「これは立派な横領ですね」
「全部、裏取ってまとめて下さい。これは大変な事になりそうですね」
時宗が家に着くと藤堂が出迎えた。
「藤堂君、君は病人なのだから出迎えとかしなくていいんだよ?容体はどうなの?」
「もう少しで全部骨は繋がります。
あとはリハビリです。
まぁそんなのはどうでも良いのですが……」
「よくはないだろう?」
「それより、例の調べ物困ったことになりそうです」
「書斎に来ていただけますか?」
「あぁ分かったよ。その前に着替えていいかな?」
「どうぞ」
書斎に行くと玲音達もいた。
「これがまとめた報告書です。裏も全部取れました」
時宗は報告書読んでいくと怪訝な表情になり
「これは立派な刑事事件になるね。速川氏だけでなく経理の溝田氏、総務の岡田氏もって事になるよな?」
「その様になるかと………」
「参ったなぁ~藤堂君、親父に報告書してくれないか?」
「会長にですか?」
「うん………。俺の判断の域を越えてるだろ?」
「それなら統轄長がされた方が………」
「親父、苦手なんだよなぁ………。また説教される」
「説教される様な事ばかりするからだよ!」と玲音が言う。
「玲音、お前だけには言われたく無いんだが?そうだ玲音!お前行ってこい」
「じいちゃんとこ?」
「あぁ、イギリスのじいさんの所ばかりで箱根のじいさん所はほとんど行って無いだろ?行ってこい」
「やだよ!こないだ行ったじゃんか!
後継ぐ継がないで、一週間も軟禁されてさぁ」
「でも、親父は玲音には甘いじゃないか?」
「行ったら最後、年寄の相手しなきゃいけないじゃん!なかなか離してくれないし、なにより廉の事あまり良く思ってないじゃん!あのじいちゃん。俺一人で行くのはやだ!」
「………。う~ん、私も嫌だなぁ……」
「そんなに難しい人なのか?」と千景が廉にこっそりと聞く。
「う~ん、確かに玲音には甘いけど他の人には厳格みたいですよ?」
「でも、事が事なので……」と藤堂が言う。
「仕方ないなぁ。明日行くから、玲音お前もついてこい」
「なんでだよ?子供じゃ無いんだから一人で行けよ」
「いいじゃないか?少しはじいさん孝行しろ」
「親父がすればいいだろ?俺は行かない」
「シュークリーム10個でどうだ?」
「………」
「15個では?」
「仕方ないなぁ。今回だけだからな」
「………。やっぱり、笹の威力は凄まじいな…」
と3人口を揃えて呟いた。




