Qui cherche trouve.
1.Qui cherche trouve.
玲音がイギリスから帰国した。
もう一人でイギリスには行かないと、かなりご機嫌が斜めだった。
その鬱憤を愚痴りたいのだが、廉は忙しくしていて、全然話相手になってもらえなかった。
千景では、まともに話さえ聞いて貰えず適当に話を流されるだけのため、その鬱憤の捌け口は動けない藤堂におのずと向かう。
「先輩。はい、これ僕からのお土産。こっちは齋藤先輩からね」
「御苦労様でしたね」
「本当に御苦労様だったよ?」
「玲音様。ご自分に対して【御苦労様】を使うのは日本語、間違ってますよ?」
「そんな事はどうでもいいよ!ね、ね。聞いてよ!廉は忙しいと言って、全然聞いてくれないんだ、ひどくない?」
「ハハハ」と藤堂は苦笑する。
玲音は藤堂の反応は完全に無視し、勝手に話を始める。
「フランスでの会議は、途中まではスムーズに進んでいんだけどさぁ、人事部が千景の細工した人事を何かの間違いで元に戻す様に会議で提案したんだ。
けど、齋藤先輩は「もう統轄長の承認降りているんだから、そのままでいいのでは?」と反論したもんだから、人事部が「あの人物は、デスクワークに優れた人物でリゾート開発部にはもったいない」と本音が出ちゃってさ。
それを聞いた齋藤先輩がキレて、「俺の部所だってデスクワークの仕事は、山程あるんだよ!いつもできる人材配置してもらえないから、何時も現場は苦労してるんだ!
こちらでちゃんと適材適所の仕事に着かせるからこのままで良いだろう!」って言ったんだ。
そしたら今度は加藤さんまでが「人事部の人材配置には偏りが有りすぎる。俺の部にもデスクワーク要員よこせ!」って。
そしたら他の部からも、「うちも」「うちも」って大騒ぎさ。
それで会議全然進まなくなってさ。
最後には、何で生徒会役員経験者なのに人事部査定なんだとか、ほぼ人事部の糾弾になってさぁ。
人事部は人事部で『人を動かす部所なんだから一番優秀な人材で固めないと機能しない』とか、反論してそれからはすごい紛争だったんだよ?」
「統轄長は?」
「親父?親父はずっと黙ったままだよ!」
「で、結局どうなったの?」
「来年度の人事は、白紙になったよ」
「白紙?」
「うん。加藤さんが、一度白紙に戻して次回の会議までに人事部の配置理由とその経歴開示。それを見て次回会議でそれぞれの部所の欲しい人材を親父に申請、会議でその採決にしろって。
そしたら人事部が、加藤さんと親父は太いパイプがあるから、公平な採決にならないと、糾弾されて。
流石に、それ聞いた親父は親父で「私は仕事を私情で動かしていると言うのか?」とこれまた凄い見幕でキレて人事部に詰めよってさぁ。それでよりいっそう険悪な雰囲気になったんだ。
しかも、こないだ廉と親父が、加藤さんの報告書作成を手伝ってたのが何故かバレバレで、その事を引き出されて、収拾つかなくて会議終わったの10時だよ?本当は6時には終わるはずだったのに……。
そんな大変な中。イギリスのじいちゃんから会議中に何度も電話かかって来てさ。
仕方ないから休憩中に電話して「今日は行けそうもない」っていったら。
「年寄りの楽しみを……。生い先短いから少しでも長く一緒に居たいのに」とか言ってさ、「なんなら、向かえを寄越そうか?」とか言い出して、ほぼ強行手段を打って来そうな感じでさぁ。なんとか『仕事なんだから、絶対に明日朝一で行くから』って納得させたんだ」
「で、結局どう修まったの?」
「取り敢えず人事部が来年度の新入社員一覧とその経歴開示、来月中に秘書室まで各部希望を提出、次回会議までに重複者や指名の無い者の変更や受け入れを再度秘書室が提示して最終的に次回会議で話合うと………。
また秘書室の仕事増えたよ?
会議後、親父の機嫌はすこぶる悪いし、俺と齋藤先輩本当は、じいさんの家に泊まるはずだったのに行けなくてホテルも空き1室しかなかったから、仕方なく俺は、親父と一緒の部屋になったんだけど、親父は、何時も通り飲みに行ってさぁ。夜中に、べろんべろんに酔っぱらって帰ってきたんだ。俺は酒臭い親父の横で寝るの嫌だからソファで寝るはめになったんだよ。酷いと思わない?
次の日は、次の日で、齋藤先輩はじいちゃんの家まで一緒に行ってくれたけど、予定が狂ったからすぐ帰ってしまうし。
ママはママで、これまた1日でイタリアに行っちゃうし、俺も帰ると言っても、じいちゃんやばあちゃんが「ゆっくりしていけ」って放してくれないから、親父に電話して迎えに来させて、やっと帰れたんだ。
もう二度と親父の同行なんかしない」
玲音は、イギリスの騒動の一部始終を藤堂に話した。
「しかし、事の発端は私達ですよ?」
「何で?」
「お忘れですか?千景君が……」
「あぁ~」
「まぁ。しかし、統轄長が加藤さんの部署で仕事を手伝ったとか第三者が知っているなんて色々探ると何か出てきそうですね。
しかも、拓哉からまた面倒な依頼が来そうだ」と言ってると電話がかかる。
藤堂は相手の名前を確認すると。
「玲音様、申し訳ありませんが出て貰えませんか?俺は寝てるって」と玲音に居留守を頼む。
「うん。まぁ~。もしもし?」
「あれ?これ十碧の携帯だよな?」
「うん、先輩今、寝てるよ?」
「玲音君?」
「うん」
「十碧、居留守なんかしないで出ろって言ってくれる?」
「う~ん」
玲音の
困った表情で藤堂の方を見る。
藤堂は溜め息をつき「かわるよ。ごめんね」と言って携帯にでた。
「病人に何の用だ?」
「十碧、暇だろ?退屈だろ?」
「残念ながら、秘書室に余計な仕事が増えて、暇なんかあるか!」
「話を聞いてるなら話が早い!十碧。来年度卒業者を調べてくれ」
「拓哉?俺の話を聞いて無かったのか?
それに秘書室とリゾート開発部のパイプとか変な言い掛かりつけられたく無いだろ?」
「秘書室が決定するわけでもないし、十碧お前今、病院に居るじゃないか?関係無いだろ?
頼むから、俺の右腕になりそうな奴ピックアップしてくれよ!
俺の負担減れば秘書室の負担も減るだろ?俺、今調べる時間が無いんだよ!お願いだ十碧!」
藤堂は大きな溜め息付いて
「どんな奴が欲しいんだ?」
「廉君!」
「切るぞ?」
「嘘、嘘ではないけど、頭キレて物わかりが良くて、運動神経もあって、デスクワークを完璧にできる奴」
「………。居ると思うのか?」
「十碧の所には居るよな?2人も………」
ブチッと藤堂は電話を切った。
「ありゃ。電話切ったの?」と玲音が驚く。
「すぐに掛かってきますよ」と言うと同時に携帯が鳴る。
「十碧。途中で切るなよ!一人で全部とは言わないから3人でもいいからさ。その条件合う奴を調べてくれよ?」
「仕方ないなぁ~。拓哉には借りがあるからな。しかし、俺もやらないといけない仕事あるから少し時間はかかるぞ?それとこれで借りはチャラだ!」
「大丈夫。今月中で頼む。よろしくな!」と言って切れた。
藤堂は携帯を見ながら大きな溜め息をつく。
「溜め息つくとさぁ~。幸せが逃げて行くらしいよ?」
玲音がその様子を見ながら呑気に言う。
「それでは、どうしたら幸せが来るんですか?」
「どうすれば、いいんだろうね?
まぁ取り敢えず、お土産物を食べようよ。そうすれば少しは幸せな気分になれるよ?」
「あぁそうですね。どれが、いいですか?」
「う~ん。これから」
そんな事をしている所に廉がやって来た。
「玲音お前、また……」
「先輩、こいつに餌さを与えないで下さい」
「餌さって……。なんでだよ?」
「図々し過ぎる!」
「いいよ。一人で食べても美味しくないし、そんなに食べれないし、廉君もそこに座って食べなよ?」
「ありがとうございます。俺も持って来たんですが、今日は食べれそうに無さそうですね」と言うと。
「廉!それは!!」
「玲音。お前のじゃないから。冷蔵庫入れておきますね」
「廉!シュークリーム!!」
「先輩、飲物買って来ますよ?何がいいですか?」
「そうだなぁ~。カフェオレをお願いできる?」
「わかりました。玲音お前は?」
「シュークリーム!!」
「そう、要らないのね」と言って廉は病室を出る。
「待てよ!廉!俺のも買ってくれよ」と玲音が追う。
「本当に、仲がいいですね」と2人の後ろ姿見ながら藤堂は微笑む。
結局、廉の隣に玲音が座り大人しくシュークリームを食べている。
廉は藤堂に今日の秘書室の仕事と会社の状況を説明する。
「統轄長は、どうされて居るんですか?」
「かなり機嫌が悪いと聞いてますが、俺はすれ違ってばかりでまだ会ってないんです。
それに俺、おじさんの機嫌が悪い所なんか見たこと無いんだけど………」
「それは、幸せですね。見ない方がいいですよ」
「うん、達が悪いもんな………」
「どんな風に?」
「顔は笑ってるけど、人の話は全然、聞いてないわ、黙りこんで返事すらしない」
「玲音そっくりだな?」
「なんでだよ?似てねーよ!」
「あっ。お前!シュークリーム全部食べたのか?」
「ちゃんと先輩の1つ残してるよ!」
「1個って……。玲音、お前に買ってきたんじゃ無いだろ?お前が食ってどうするんだ?」
「廉も食べたかったの?仕方無いなぁこの半分食べる?」
「要らんわ!」
「廉君、もう来年度の新入社員のリストある?」
「会社のイントラネットに公開されてますよ?」
「えっと、人事部のHP…。ここです」
「ふーん。仕事とは別なんだけど協力してくれる?」
「俺にできることなら?」
「この中で、頭の回転がいいと噂なのは?」
「う~ん、やっぱりこのリストの中では村山真守じゃないですかね?」
藤堂の隣に 玲音がベッドに腰掛け並びタブレット画面を覗きみる。
「お前!病人のベッドに!」と廉が怒る。
玲音は廉を完全に無視して
「この人は、結構、頭いいよ?確か高等科時代学年で何時も10位以内には入ってたよ?」
「何で知ってるの?」
「いつも全学年の上位10人はチェックしてたもん。それに、その人趣味は囲碁将棋だよ?」
「なんで、そんな事まで知ってるの ?」
「その人に頼まれて将棋の大会の練習相手したことあるもん」
「大会の成績は?」
「地方予選は勝ち抜いていたよ?全国大会では2位か3位だよ?」
「玲音様は、この方に何勝されたんですか?」
「勿論、全勝さ~」
「では、玲音様。私と勝負してみます?」
「いいよ~。何賭ける?」
「残りのシュークリームでは?」
「受けてたつよ!絶対に勝つ!」
「……。笹に釣られるパンダ……」
廉が呆れながら呟く。
「廉君、この病院の娯楽施設に将棋はないかな?」と藤堂が廉に聞く。
「多分、待合室に有るんじゃないかな?
本当にするの?」とびっくりしている。
「暇潰しにね~」
「俺、借りて来るよ~」と玲音が出ていった。
不思議そうな顔している廉に齋藤からの頼みを説明する。
「玲音様の将棋を通して実力を図れば、その男の大体の実力は察しがつくでしょ?」と藤堂は笑う。
「借りて来たよ!」
「では始めましょうか?」
玲音と藤堂の真剣将棋勝負が始まった。
「う~ん。先輩なかなか強いね?」
「そうですか?玲音様もかなり強いですよ?」
「あっ、そこそう来るかな~う~ん…。では、これではどう?」
「うん、何となくそこに来ると思ってましたよ」
「あー、読まれてたのかぁ。でも俺はその上を読んでる」
「!!!そう来るとは。もう手加減なしで攻めますよ」
「…………。これ勝負はつかないじゃぁ?」
廉が将棋盤を見ながら言う。
「勝負つかないゲームなど有りませんよ。
拓哉よりは数段強いですね。玲音様は」
それからずっと両者の攻め際合いが続き
「ふふふふ♪シュークリームは俺の物♪」と玲音が勝負をかける。
「ああぁ!ここと、ここと、ここでだめか…。う~ん悔しいけど参りました。負けたの何年ぶりだろう………」
盤を見ながら、藤堂は勝目がないと悟る。
「先輩、まだ参らなくていいですよ?」と廉が将棋盤のある位置を指差す。
「あっ!!!王手!」
藤堂の一筋の勝利への道筋が拓く。
「あっ廉、ずるい!」
「残念だったな玲音♪」
「二人ともプロになれるかも知れませんよ?」
「なってもいいの?」
「あっ!聞かなかった事にしてください。
しかし、強すぎて計りにはならないな」
玲音はシュークリームを手に出来なかったショックを隠し切れてなかった。
「まぁ、取り敢えず候補者に入れておきますか。次は運動神経のいい人を………」
「先輩、玲音はもう当分の間、再起不能です」
藤堂は盤を放心状態で見つめて居る玲音を見る。
「そんなに負けた事、悔しいの?」
「いえ、シュークリームが手に出来なかった事が原因です」
「笹で釣れるのですね?」
「ええ、簡単に…」




