How I used to be , what I am now
1.How I used to be, what I am now.
廉は、藤堂の部屋に着替えと頼まれた資料を取りに来ていた。
(これと、これで。あと………。)
机の引き出しを開けると中から何枚かの写真が出てきた。
一枚は藤堂の両親と藤堂が中等科に入る頃の写真。もう1枚は、同じ頃の齋藤と齋藤にどこか似ている少し歳上の少年との3人の写真。
他に、大学の卒業式の写真が何枚かあり後、初等科の頃の自分らしき少年と自分の両親と思われる2人に藤堂を入れた4人で写った写真だった。
この2人が自分の両親?確かに自分にどこか似ている。
しかし、今まで親の事を思い出そうとしても面影が、時宗やメアリーと重なってしまって思い出が混乱してしまう。
事故以前の記憶は未だに回復しておらず、事故後、入院中に何度か事故以前の思い出を考えると、頭が割れるくらいの頭痛が襲っていたので、事故以前の記憶は無理に思い出そうとしない方がいいと担当医から言われ、両親の写真は、何度かはちらっとは見せて貰ったが、じっくりとは見る機会がなかった。
それ以降、事故以前の事は考えると頭痛がするし、今現在の生活に追われ、今の生活にも満足しており、事故以前の事に別段興味が無かったので気にもとめてなかった。
(この2人が両親………?)
なんとなく自分の幼少期は、寂しい思いをした気がしてならなかったが、その写真に写った少年は日焼けをし、元気そうで満面の笑顔で写っており、寂しさは微塵も感じられない。
何処と無く、藤堂の事は覚えている。大勢の見知らね大人達が入れ替わり出入りする環境の中で、1人寂しい思いをしていると何時も優しく声をかけてかまってくれた。
藤堂の声を思い出す。
「僕も一人っ子で兄弟が居ないから両親が忙しいとかまって貰えないよね。寂しい気持ちはよく分かるよ………。
でもね。僕にはちゃんと兄弟のような友達が居るんだよ?兄弟以上に仲のいい友達がね。玲音様も、そう言う友達が早く出来るといいですね」
(玲音?玲音?)
突然携帯が鳴る。
「もしもし、廉君?藤堂だけど、もう俺の家を出た?」
「いえ、まだ居ます」
「そう、よかった。本棚の隅に電子辞書を置いて有ると思うんだ。探して持って来てくれる?」
「ちょっと待ってくださいね。本棚の一番左側に置いてある奴ですか?」
「そうそう、それを一緒に持って来てくれる?」
「はい、わかりました」
「お願いね」と言って電話が切れた。
本棚から辞書を取り出した時、また一枚の写真が落ちた。
やはり大学卒業したばかりの頃の藤堂と玲音だった。
この場所………。野外パーティかなんかで大人ばかりに囲まれて同年代の子供も居たが、明らかな取り巻きで一緒に居ても楽しく無くて、早く自分の部屋に戻りたくて、ふてくされて居るところに藤堂が見つけて話し相手になってくれていた。
「ほら、玲音様。秀一が写真を撮ってくれるそうですよ?ほら笑って」
(何で?この情景がわかるの?俺も傍に居た?それでも、この写真の玲音の気持ちがなんで手に取る様に分かるんだ?なぜ?)
考えても考えても答えは出なかった。
多分、それ以上考えると、また頭痛で倒れると困るので、今はそれは出来ないと思い考える事をやめ、必要な荷物を持って病院に向かった。
「持って来ました」
「ありがとう。助かるよ」
「先輩、散歩しませんか?車椅子借りて来るので、気分転換になると思いますよ?」
「ありがとうお願いできる?この部屋に缶詰めも飽々してたんだ」
「では、少し待っててくださいね」
暫くして車椅子をもって廉が戻ってきた。
「これ退院まで先輩が使っていいそうですよ」
「そうか、嬉しいな。しかし、よく気がつくね」
「俺自慢じゃないけど、ここの常連ですからね。ここの病院の一番見晴らしいい場所を教えますよ」
廉ははにかみながら笑い、藤堂を車椅子に乗せて第1病棟から第3病棟の屋上に行った。
「ここ気持ちいいでしょ?」
「本当に気持ちがいいね」
「先輩質問してもいいですか?」と車椅子を押しながら言う。
「ん?なに?」と藤堂は廉の顔を見るため上目遣いに答える。
「俺、事故に会う前、どんな子供でした?」
「どんなって言われてもなぁ」
「玲音は、大人に囲まれて、いつもさみしい思いしていて。あいそ笑いしかしてなかったんでしょ?」
「あぁ、今じゃ考えられないけど、あの頃は、あまり笑って無かったな。今程、明るい性格では無かったですね……」
「俺はどんな感じでした?」
「今と変わらない、いつも友達がまわりにいて元気に遊び回って居たよ?
特に俺が見かけた時は千景君とよく一緒にいたよ?」
「そうですか」
「どうしたの?何かあったの?」
「いえ、先輩の部屋で写真見つけて見てしまいました。すいません」
「あー、机の引き出し?」
「はい。で両親と写った自分がやはり思い出せ無くて……。辞書の間に玲音の写真があって……」
「あー、ふてくされているやつ?」
「はい。で自分はどんな子供だったのかなと」
「全然、記憶に無いの?」
「はい、見事に……。先輩も思い出せません」と笑う。
「いいんじゃない?思い出さなくても。
未来は変えられるけど、過去は変えられ無いよね?変えられ無い事、思い出すより変えられる未来考えた方がいいんじゃない?
玲音様だって、あの頃の事はあまり思い出したくないと思いますよ?」
「そうですね。そろそろ部屋に戻りましょう。まだ風は冷たいので体冷えますから」
「そう言えば、今日、定例会だよね?」
「統轄長は、今回は、誰を同行させたの?1人で行ったわけでは無いよね?」
「玲音ですよ。当分の間、静かに養生出来ますね」
「えっ?でも、大学は?そう言えば廉君も大学に行って無いよね?」
「今、実地研修期間なので講義はないです」
「あー。そんな時期か」
「そう言えば弁護士資格取るの?」
「取れれば」と笑っている。
「NY行きたいの?」
「ん?玲音が喋りました?」
「う~んまぁ……」
「統轄長の各国の滞在時間は一番多いのは日本だけど、次はNYですよね?
だから将来、玲音も滞在時間増えると思うから、あの誘拐事件とか有ったりしたから、いざと言う時に、法の知識が役にたつかなと思って……。そう言えば先輩、あの時も怪我してましたね…」
「………。ジムでも通うかなぁ……。そんなに運動神経も体力も悪く無いと自負してたんだが、俺ばっかり怪我するのはやっぱり体力落ちてるんだよなぁ~」
「いや運が悪かっただけだと思いますよ?どう考えても千景の方が先輩より運動神経や体力はないし、齋藤先輩と玲音がずば抜けているだけで……」
「運かぁ……。初詣とかすればいいのかなぁ~。パワースポットとか行く暇なんて無いしなぁ……」
「いやぁ気持ちの持ち様でないですか?ほら、俺に比べればいいじゃないですか?
俺、事故に有ったとき3ヶ所骨折した上、記憶無くして、親まで亡くなったんですよ?今でも記憶はないし」
「そうだな、すまない」
「でも俺、事故に逢って失った物もあるけど、得たものの方が多いですからから~。兄貴を3人もいっぺんに得られたんだから幸せですよ」
「そうかぁ~。そうだな…。そう考えないとな…。
話は、戻るけど玲音様は、よく統轄長について行きましたね?」
「あぁ、かなり嫌がってましたよ?フランスまで行くとイギリスのおじいさんの所、寄らない訳には行けませんからね。
それにフランスも歴史の深い国ですから変な物見えたりするのは嫌だとか……。凄い剣幕で文句を言ってましたよ?」
「なのに、よく付いて行ったね?」
「切り札有りましたから♪」
「切り札?」
「はい前、玲音と島でバイクで競走した時の賭けがね」
「あぁ、一日下僕だったっけ?」
「そう、それ使ってしまいました」
「玲音が行かなければ、俺が行くことになるんですが、おじさんが俺の体調考えて玲音に来るよう言ってくれたんですが……。いつもの弾丸トークで抵抗してましたよ。
俺が行ってもよかったんですが、玲音がここに来ても先輩の邪魔はしても役にはたたないでしょ?病人そっちのけで自分が寝てるんですから… 。
おじさんの付き添いは付いておけばいいだけですから、だから使ってしまいました」
苦笑しながら廉は成りゆきを説明した。
「そう、帰って来たら一層騒がしくなりそうだね………」と藤堂も苦笑した。
2.A grown man.
その頃フランスでは、
「お、今日のお供は玲音か?お前も一緒にこの後飲みに行くか?」
「おい、雅治…。玲音はまだ未成年だぞ」
「ここフランスは16才以上から飲めるぞ?イギリスもビールなら16才、他は18才以上だから大手振って飲めるぞ?イギリス人になっちまえ!」
「玲音君も、もうそんな歳かぁ。時宗は20なる前から大手振って飲んでたよな?」
「おい誠、変な事吹き込むなよ!玲音はこの会議済んだらじいさんの所に行くんだよ」
「別に知らせなければ、行かなくていいものを……」
「たまたま、メアリーが里帰りしてるからだよ!お前らの相手は俺がするから、玲音は諦めろ!どうせろくでもない事を吹き込むだけだからな?」
「今日は、もう一人の息子は来て無いのか?」
「廉は、お前らと違って日本できちんと仕事しているよ」
「玲音、一人でイギリスまで行くのか?」
「ん?俺は、ガキじゃ無いから何処でも一人で行けるよ!」
「いや、そうじゃ無くて、また誘拐とか…」
「齋藤君が暇だからと言うので、付き合って貰うんだよ」
「あ~。秘書の藤堂が入院したんだって?時宗、部下をこき使うなよ?若いからといって体壊す程働かせては……」
「雅治!お前がそれを言うか?上司まで、こき使うお前が!
それに打撲傷と骨折での入院だから体壊したわけじゃない」
「親父!どうでもいい話は、後にして会議室に入らないと、また時間押すよ?」
「あぁわかったよ」




