Hospitalization
1.Hospitalization.
「よう!十碧。調子はどうだ?」
齋藤が元気に病室に入ってくる。
「最悪だ。入院ってものが、こんなに退屈だとは思わなかった」
「まぁ、念願の長期休暇を取れてよかったじゃないか?」
「どこも行けないなら、まだ仕事をしていた方がましだ」
「そう言うと思ってほら仕事だ。そのタブレットで仕事しろってさ」
「酷すぎる……。そう言えば………」
「ん?」
「これって労災だよな?」
「う~ん。微妙だなぁ………」
「えええ?長期間休むことになるから査定下がるの?俺」
「そうだなぁ。会社に復帰しても窓際かもなぁ」
「え?これ労災だろ?」
「流石に十碧の代わりに誰か統轄長のお付きに就くだろう?3ヶ月位は、同行出来ないんだから。退院も、早くて1ヶ月だろ?
その後のリハビリもあるし、見事に窓際に決定だな?」
「拓哉!人の不幸を楽しそうに話すな!」
「まぁ、そうなったら十碧。リゾート開発部に来い。こき使ってやるよ!念願のデスクワーク要員だ!お前なら安心して任せれる。」
嬉しそうに齋藤は話す。
「拓哉!お前!」
「こらこら、ここ病院だよ。大人しくしないと。私が和也に怒られるよ」
時宗は、呆れた顔をしながら病室に入ってきた。
「統轄長、如何いたしました?お仕事は?」
「折角、時間を割いてこうして見舞いに来たのになぁ。仕事の話かい?はい、これ、見舞品」
フルーツの盛合せと花束を藤堂の隣の机の上に置く。
「ありがとうございます」
「心配しなくも、私は君の査定下げるつもりもないし、窓際に置く気も無いから安心して治しなさい。
退院しても、今以上にしっかり働いてもらうよ?
ただ労災は難しいかなぁ……。齋藤君の方の部所で適用できるの?」
「微妙な感じかなぁと………」
「そうだよね……。藤堂君は、労災に出ないと何が困るの?治療費は私が全額支払うからそれ以外で」
「え?」
「私が命令して島に行かせたからね、それは当然だろ?給料も出張手当は出せないがここで出来る範囲の仕事してくれれば支払うし、何か他にあるかい?」
「いえ、別にないです」
「取り敢えず、藤堂君がここに居る間は廉と玲音に君の代わりさせるから仕事指示してやってくれるかい?」
「出張の同行は?もうすぐフランスで定例会ですよね?」
「定例会は、別に社内の会議だから困りはしないし、いざとなれば齋藤君、助けてくれるだろ?」
「勿論です」
「と言うことで毎日、廉か玲音が来るのでよろしくね」と時宗は帰って行った。
「よかったな!十碧と折れた足を叩く」
「痛い!何すんだよ!マジで痛いんだからな!」
「仕方ないな、今回はお前の分までパリジェンヌと遊んで来るわ!」と病室を去ろうとする齋藤に藤堂はうつ向きながら言う。
「拓哉、ありがとう」
「ん?なんだ?」
「気を失った俺を背負って岩場から降りるのは、大変だっただろ?下手すると拓哉まで……。これくらいの怪我ですんだのはお前のおかげだ」
「十碧に何か有ると俺の人生半分終ったようなもんだからな。お前は、俺の実の兄貴より近い存在だよ。あっこれ兄貴には内緒な?俺はお前を兄弟の様に思ってる。だから何があっても見捨てやしないよ!早く治せよ?定例会に行っても、お前が居ないと何の楽しみも無いんだからな。じゃあ俺も仕事にもどるわ。またな!」
齋藤は照れながら病室を出て行った。
気がつくと藤堂は寝ていた。
「あっ、起こしてしまいましたか?」
「え?いや、いつ来たの?廉君?」
「先程です。先輩?差し支えなかったら先輩の部屋のキー貸して貰えます?」
「ん?別にいいけど何で?」
「着替えや欲しい物が有るしょ?俺、取ってきます」
「あ~。気にしなくていいよ?なんなら着替えは、そこらで買ってきてくれても?お金は財布に………」
「やっぱり嫌ですか?他人に部屋入られるのは」
「いや、そんなことは無いんだけど、片付ける暇が無くて………。それに廉君は俺の弟だから他人だとは思ってないよ?」
藤堂は恥ずかしそうに言う。
「なんとなくそれは、想像ついてますから」
廉は笑う。
「えええ?」
「正直、先輩のオフィス見れば、大体察しがつきますよ。ついでに片付けておきますから、退院後、その足では足元に物が転がっていると大変ですよ?」
「しかし、そんなことは………」
「先輩は俺の兄貴なんですよね?弟がこう言う時、面倒見るのは当たり前でしょ?
それに元々俺の我儘でこうなったわけだし……」
「この怪我は、誰かのせいとかではないですよ…………。なら、弟君頼んでもいい?」
「勿論です。欲しい物リストアップしてくださいね。
明日から、俺と玲音で交代で来ますから洗濯物とかどちらでもいいんで渡して下さいね。
取り敢えず、先輩の部屋を片付けてきます」
その後、藤堂の両親が見舞に来た。
藤堂と齋藤の実家は広島で、両人とも殆んど帰ってなかった。
「わざわざ上京してきたの?」
「東京に用なんかあるか!もういい歳なんだから、びっくりさせるような事するな」と父親が言う。
「まぁ、こんな事でもないと、会えないから顔色も良くて安心したわ。これお土産ね。東京駅で拓哉君に会ったわよ。彼も元気そうね。広島に帰ったらて齋藤さんにも伝えておかなきゃね。年に1回位は帰って来なさいよ」
「母さん。わかったら、小言はもう沢山だ、今度暇が出来た時、拓哉も連れて帰るよ。それでいいだろ?いつまで東京に居るの?」
「お父さん明後日から仕事だから明日には帰るわよ」
「今日のホテル取れてるの?」
「ええ、統轄長さんが新幹線のチケットからホテルまで全て用意してくれたわよ」
「えええ?その好意に甘えたの?」
「『ご配慮は気持ちだけで……』と言ったけど…。『怪我したのもこちらの責任だから』って、今日これから食事にも招待されたわ」
「お母さん……。統轄長とこの怪我は関係無いからね?失礼な事を言っちゃダメだよ?」
「大丈夫よ!十碧が思った以上に元気そうだからお父さん東京観光でもして帰りましょう。十碧、次の休みには帰って来なさいよ」
「しかし、統轄長に会うのも緊張するな……」と父親は緊張しながら病室を出て行った。
(………。拓哉、東京駅に行ったと言うことは、親父達が来るのを知ってたのか……。通りでさっさと帰る訳だ……。)
「廉、今どこに居るのさ?」
「内緒」
「俺に言えない様な所にいるのかよ!」
「何かその言い方………。他人が聞くと誤解を招くから辞めてくれ!何か用か?」
「今、千景と車で移動中なんだけど、折角だから、ご飯食べて帰ろうかと」
「そうかでも俺は、藤堂先輩に着替えを渡しに病院に戻るから、その後で無いと時間取れないぞ?」
「で、今どこに居るんだよ?」
「藤堂先輩の部屋だけど?」
「千景が迎えに行くって」
「でも、まだ掃除が終ってないし」
「3人でやれば早いだろ?場所教えて」
掃除も無事終わり、3人は、着替え持って病室に向かった。
藤堂は退屈で暇をもて余していた。
「ただいま。持って来ましたよ」
「ありがとう。部屋凄かったろ?」
藤堂ははにかみながら言う。
「潤と悠貴には負けるな………」
玲音は楽しそうに答える。
「あぁそう?俺の上が居たとはね」と楽しそうに藤堂も笑う。
「大丈夫ですか?何か不便有ったら何でも言って下さい」
千景は申し訳無さそうに言う。
「千景君、本当に気にしなくていいからね。千景君の応急処置のおかげで骨も上手く繋がるみたいだし、普通は、あんな所で怪我したら後遺症とか残るみたいだけど俺は、大丈夫そうだし、感謝しているんだから」
「ありがとうございます。そう言って貰うと助かります」
「ここの病室ってネットとか繋げてはダメなのですか?」
「院内の無線有ると思いますから繋げましょうか?」
「お願い出来るかな?繋がれば廉君と玲音様に毎日来てもらわなくても、メールで済みますし。それに退屈しのぎ出来ますから」
「あっ、今日の報告書が集まったリスト、あと3部門集まって無いよ?」と玲音が仕事の報告する。
「どことどこ?そう言えば拓哉の報告書持って帰って来なかったけど……」
「俺がちゃんと持って帰って来たよ。先輩の車もね。マンションの車庫に入れてるよ。前に運転のコツ聞いて置いてよかったね~」と玲音は嬉しそうに言う。
「そうか、ありがとう」
「加藤さんの所以外、催促のメールしておくから加藤さんは2日前までに来ない場合は、統轄長から催促してもらって下さい。
後は報告書、英語表記で無いものは柊木に渡して訳す様にしてもらえますか?
後は統轄長のスケジュールですね。緊急の物以外はメールで連絡して下さい。緊急な物は電話していただけますか?後の雑務は持って来てくれれば片付けますから、よろしくお願いしますね。
後、統轄長のお供にスーツ着用だけど何着も持って無いでしょ?毎回同じでは何だから俺のでよければ好きに使って下さい。
多分そんなに背格好変わらないと思うから。大丈夫だと思います」
「ありがとうございます」
「うん、わかったよ!ねね、そこの箱」
「ん?これ?」
「うん」
「食べる?」
「やったー」
「玲音お前」
「いいよ、俺甘い物は好きではないから。
この果物も持って帰っていいよ」
「わーい」
「パンダ。お前は何処までも図々しいな」
「千景は食べないの?」
「………」
「痛いから笑わせないでくれ」と言いながら涙流しながら藤堂は笑う。
廉達3人は病院からの帰りにレストランにより夕飯を食べることにした。
「さっき、あれだけ饅頭食って、よく食えるな」
「別腹だもん」
「廉、俺のせいで山頂まで行けなかったけど……」
「気にしなくていいよ。千景に怪我が無くてよかった。山に登れば何か気持ち晴れるかと思ったけど変わらなかった。すまない」
「今度俺、登ったら写真撮って来てやるよ♪」
「玲音、いつ行く気だよ?」
「そのうち?」
「黙って行くなよ?」
「廉には言われたくない」
「………。明日、俺がおじさんのお供だから藤堂先輩の病室には、玲音が行ってくれよ?」
「うん、わかってるよ。でも、親父のお供なんて大変だよ?」
「何でだよ?」
「時間通り動かないし、興味有ること見つけると予定そっちのけで動くからさ」
「親子だな……」
「あぁそっくりだな…」
「何でだよ?似てないよ!」
「自覚がないのが救われないな」
「なんだよ、2人共ひでーな」
「まぁ、明日ちゃんと頼むよ」
「パンダ、藤堂先輩の邪魔するなよ?」
「邪魔って?」
「多分、傷み止めで眠気が出ると思うから睡眠の邪魔だよ」
「わかったよ」
翌朝、廉は朝一番に統轄長室に入ったが時宗はまだ来て無かった。
統轄長室のソファに座り今日のスケジュールをもう一度確認する。
すると、時宗が部屋に入って来た。
「早いね、廉。そのスーツよく似合ってるね」
「俺、黒のスーツしか持って無かったので藤堂先輩から借りました」
「そう言われて見ると藤堂君の趣味だね?
廉、この機会に何着か買って置く?これからは色々必要だよ?」
「そうですね。今度、玲音と一緒に買いに行きます」
「そう、その時は言ってくれ。でも、私が見立てるより藤堂君の見立ての方がいいかもな……。
さて、今日は外回りに付き合ってくれるかい?」
「はい。車の手配をしてきます」と言って部屋を出た。
今日の予定は、殆んどが申請書の抜き打ち検査で本当に現場が困っているのか?有ると無いのの効率の差を見て回る。
時宗いわく、現場で無いと分からないことが多いから、それに申請は出して無いものでも現場が困っていると分かれば支給することができると抜き打ちに回っている。
「今日の最後はどこだい?」
「横浜事務所ですね」
「雅治の所か……。何を申請しているの?」
「えーっと…………」
「どうしたの?」
「なんと言ったらいいか?」
「また変な申請を出してるの?見せて」
「はぁ………。【優秀な人材】って買えませんよね?」
「まったくだ。買えるなら幾らでも買ってる」
「つきました。加藤さん居るんですかね?」
「まだ、雅治の部所は報告書が出てないだろ?今、泣きながらやってるんじゃないか?」
「そう言えば、ついでに催促してくださいね」
「そうだな」
事務所内に入り加藤の所まで案内される。
「雅治。この申請書は?」
「見ての通りさ。おや、今日は廉が付き添い?ちょうどいい、報告書の作成を手伝ってくんないかな?そこの親父がうるさいんだ『報告書出せ』って、海に出ててデスクワーク出来るかよ!って思わない?」
「部下にある程度、任せろよ………。廉を手伝わせる位なら部下に手伝わせろ」
「だから、そのために申請書を書いたんだよ!ここの部署にも頭のキレる奴を一人くらいよこせ!時宗の所は3人も居るんだから一人回せよ!」と廉を見つめる。
「俺ですか?」
「廉なら申し分ない。大歓迎だ!って、こないだ齋藤の報告書の作成を手伝ったんだろ?通りで提出早いはずだよな?はい廉、そこに座って」
「ここですか?」
「そそ、はいこれ、英訳してね。後、この資料を探してくれる?」
「おい、雅治……」
「時宗、お前これな?そこに座っていいから」
「私まで使うのか?」
「持って帰りたいだろ?3人ですれば後1時間くらいで出来るよ。
フランスでいい店に連れて行ってやるから、黙って手伝えよ」
その頃玲音は、藤堂の病室で、
「ねね、先輩」
「ん?」
「シュークリーム買って来たんだ。一緒に食べない?ここのおいしいよ?」
「玲音様はシュークリームがお好きですよね」
「うん大好き。先輩は何が好きなの?」
「そうですね………。あまり食べ物には拘りはないかなぁ?」
「好きなものないの?」
「そうですねぇ~。お好み焼きは好きですよ?広島焼きって言われるほうね」
「それ、なかなか売って無いよね?」
「そうですね。実家ではそこらかしこに店有りますけど、流石にこのあたりでは、なかなか無いですね。
あっシュークリーム食べるなら飲み物が要るのでは?」
「うん、有るといいね」
「冷蔵庫に缶コーヒーなら有りますよ」
「やったー」
玲音は飛び付くように供え付けの小型冷蔵庫の前に行き扉を開ける。
「結構色んな種類入っているね?先輩は、微糖?ブラック?カフェオレ?」
「カフェオレで」
「はい、好きなだけ食べていいよ?」
藤堂の目の前に缶コーヒーと10個くらい入った箱を出す。
「かなりの量買われたんですね?」
「おいしいからすぐ無くなるよ」
「では、遠慮なく戴きます」とひとつ取り食べる。
玲音は顔をのぞきこむ。
「本当!おいしいですね?」
「でしょ?ここのは世界一だよ。好きなだけ食べて」と自分も食べながら満面の笑顔でいる。
おやつタイムが終ると玲音は、
「ねね、親父と何時も一緒で退屈しないの?」
「そうですね……。その様には思ったことは無いですね。反対なら結構ありますよ?」
「面白いって事?」
「ええ、色々勉強になって楽しいですよ?
そう言えば玲音様は、弁護士資格取るつもりですか?」
「あった方がいいかな?廉は取る気満々みたいだけどね………。でもNYに廉行きたいなら取らないとな。先輩は持っているんだよね?」
「私は日本の弁護士資格だけですよ」
「でも、役にたって無いよね?」
「役にたつか?たたないか?は資格の職種着くかどうかだけでは無いと思いますよ?」
「そうだなぁ………。はぁ~。何か眠気が………」
玲音は藤堂のベッドの横に腕を枕にして寝た。
「食べて、遊んで、寝て、皆から愛されて本当にパンダの様ですね。しかし、こんな所で寝ると風邪引きますよ」と言って、寝ている玲音に、毛布をかけて、自分はタブレットに向かって引き続き仕事をする。




