青天の霹靂
1.A bolt from the bule.
廉、千景、玲音、藤堂、齋藤とで翌日朝から5人フル動員で何とか齋藤の定例会用の報告書が出来上がった。
藤堂は出来上がった報告書を見ながら齋藤に質問を投げ掛けている。
「メタンハイドレートの活用は、まだ全然手を付けて無いのか?」
「この島は地震源となるプレートの交わる地点が近いからな。
慎重に検討しないと地盤沈下や地震源に干渉する可能性あるから、加藤さんにその辺調べて貰っているからその結果が出てからだな、うちの部が動くのは」
「拓哉の部下、何してるんだ?報告書の作成くらい部下に手伝わせればいいだろ?」
「島のあちこち測量や地質調査してるよ。それに、俺の部所の仕事はグループ内外のインフラや建築等の仕事が半分位占めて居るからな。そっちにかかりきりの奴も居るから、必要に応じて空いている人員はそっちに回していたりしてるよ。
今この島では、作る必要のある設備は無いしな。仕事を細かく分担して作業にあたっているから業務全体を把握しているのは俺の他には、居ないし、俺の仕事の片腕になるような優秀な奴、俺の部には回ってこないからな。統轄長に言って回して貰ってくれよ。
廉君が来てくれればちゃんと5日前提出できるんだけどなぁ~」
齋藤は廉の方向を見て言う。
「俺?」
廉は苦笑いしている。
「廉がここに来るなら、俺も来るよ♪」
「玲音様、それは絶対に有り得ませんから。廉君は、卒業後、秘書室に配属は、決まってますから。拓哉!お前は本当に諦めが悪いな?」
「俺の辞書に【諦めが肝心】なんて言葉は載ってないからな?」
「ここの事務所は、部下達は使って無いのか?」
「建物自体は大きいが、半分位は機材やらなんやらが占めているし、電力が太陽光と風力で賄ってはいるが、昼間は良いにしても夜は風力のみで、下手すると風が無くて電気使えない日もあるからな。かなり不便だよ。それに野郎ばかりがここに集まられてもな………。
皆、作業中の休憩所としては使ってるが寝泊まりしてるのは俺だけだな?
基本的に朝2回、夜2回程、船が往復しているからみんなそれに乗って帰ってるよ。
時々乗りそびれた奴が来るけど、ここに来ると俺の仕事の手伝いさせられるの目に見えているからめったに居ないな」
「この事務所は基本的に道具や資材収納とロッカーなどので作業着に着替えたりするためと、休憩場所として建てたんだよ。
まぁ、天然温泉がそこかしこにあるからわざわざ入りに来る奴も居るけどな。
ネット環境も脆弱だから、俺もデスクワークするときはホテル内の事務所だな。
女性社員は全員あのホテル内事務所勤務だし、野郎どもも交代で半数位はホテル内事務所で作業してる。時々加藤さんの部に助っ人で派遣してるしな」
「加藤さんの部は、人手不足なのか?」
「さあな、俺の部より人数は多いし部も大きいけどな、要請あれば派遣させているよ」
千景がパソコンに見入っている。
「何してるんだ?」と廉もパソコンを見る。
「ぁ。また、入り込んだのか?」
「う~ん。まぁね」
「これって?」
「え?なになに?」
「いや、何でも無いです」
藤堂と齋藤が画面を見ようとするのを廉は必死で隠す。
「廉君、どきたまえ」
2人に引っ張れ、藤堂達が画面をみると、来年度の新入社員の配属案だった。
「これって統轄長のパソコンデータじゃないの?えっ?来年度、秘書室は配属なし?
えええ?分室には3人?」
「リゾート開発部は10人か……。人数来てもな辞める奴が多いからなぁ」
「廉、この人学校ではかなり有名だよな?」
「ん?浅田慎二??あぁ~。リゾート開発部に来るんだぁ~」と玲音が言う。
「え?なになに?なになに?教えて」
「かなり変わた方ですよ?パンダと同等かそれ以上かな?」
「玲音君と?優秀なの?」
「頭はそんなに悪くはないかな?まぁあの学園に居るからね………」
「何が変わってるの?玲音君、教えて?」
「かなりの気分屋だよ?目立つこと大好きだし、何より、権力には屈しないがモットーで高等科の時よく生徒会と揉めてたよね」
「え?命令拒否とかするの?」
「多分、自分が納得しなければするかも、でも芸術的センスは高いんだよね。しかし、妥協しないんだ」
「廉、見てみろよ。リゾート開発部と 海洋開発部門って一癖ある奴ばかりだな?」
「ん?」
「ほら、こいつなんかしょっちゅう喧嘩ばかりしていた奴じゃ無いか?こいつなんか女癖の悪さ有名だし」
「十碧!どういう事なんだ?」
齋藤は藤堂に詰め寄る。
「俺が知るわけないだろ?それにこれは、統轄長権限の人事では無いから俺に進言とかできないよ?」
「統轄長は承認だけだからな?いちいち全員を調べたりしないさ」
「人事部が意図的に扱いづらい奴を送りこんでるのかよ!」
「まぁ、本社からここは、遠く離れているからなぁ~。いい隔離場所だよな」
「先輩」と千景が不敵な笑いをしている。
「ん?」
「来年度、欲しい人材いるの?」
「どんな奴か、知らないからなぁ?欲しいと言われてもなぁ」
「では、こいつなんかどう?人事部配属予定の村山真守。元生徒会で書記を務める。報告書作成にはもってこいでは?」
「そりゃあ……。そう言う奴、欲しいが人事部なんだろ?」
「先輩には何時も迷惑かけているから………。こうしてと村山真守と浅田慎二を入れ替えて出来あがりと。来年度楽しみですね」と千景は笑う。
藤堂と齋藤が唖然としている。
「これ、ばれ無いか?」
「当初の人事案と違っているからと言って統轄長のパソコンに誰かが入り込んで書き直したとか考えますか?
『人事部の入力ミスでしょ』と言えば疑われないですよ。
統轄長の承認が降りてまうと変更は、不可能でしょ?」
「千景君!リゾート開発部に来ない?手厚く歓迎するよ?」
「千景君!この悪魔の言うことに耳を貸してはいけません」
「十碧。お前、廉君と玲音君が居るからいいじゃないか!」
「齋藤先輩が、うちの親父を説得してくれるなら喜んで」とにっこり千景は笑う。
「五十嵐さん?五十嵐さんの説得ねぇ………。統轄長よりハードル高い様な……。十碧!一緒に考えろ!五十嵐さんの説得方法を!」
「無理だよ!」
「十碧なら、だまくらかす方法くらい思いつくだろ?」
「アホか!出来るかよ!」
「さて、寝ましょうか?明日は山登りでしょ?」
(五十嵐さんを説得する方法……)
諦め切れない人が一人………。
2.Many go out for wool and come home shorn.
早朝、山登りに行くため事務所を出る。
1人山登りの格好とは、かけ離れた格好している。
「十碧。お前、山をなめてるだろ?」
「え?長袖TシャツにGパンではダメ?」
「Gパンは疲れるよ?」と玲音。
「寒暖差あるし」
「皆そこでちょっと待ってて。十碧来い」
藤堂と齋藤は事務所に帰って行った。
廉と齋藤はマウテンパーカーに長ズボントレッキングシューズ、帽子。
玲音は長袖Tシャツの上に半袖のポロシャツにベスト短パンにスパッツにトレッキングシューズ、帽子にサングラス。
千景は長袖Tシャツにチェックの厚めのシャツに7部丈のズボンに厚手のハイソックス、スニーカーに帽子で厚手のシャツは腰に巻いてた。
しばらくして齋藤と藤堂かやってきた。
藤堂は長袖のシャツを加え短パンにスパッツにトレッキングシューズと帽子に着替えてきた。
「ごめんね。こいつ自然の中では生きられないタイプの人間だから」
「!!俺だって暇さえあれば山登りしたいわ!」
「十碧。お前は暇が有っても、山登りなんて自発的するような人間ではないだろ?嘘をつくなよ」
「…………」
「さぁ行こう。山に入ると、苔とかはえて居るから足元に気をつけて滑るよ。特に岩場ね。後、つるとか木の根で足を引っ掻けて転ばないように。山に入ったら手袋してね」
「あっ……」と藤堂
「ほら十碧」と手袋を投げる。
「Thanks」
一行は山に入って行く。
「来月から伊集院教授もこの山に調査に入るらしいよ」
「そうなんだ。やっぱり遺跡と繋がっているのかな?」
玲音と齋藤は、何時ものように話ながら登っていく。
廉は周りを観察しながら付いていく。
しかし、藤堂と千景の2人はあの3人に付いていけない。
「齋藤先輩」
「ん?どうした廉君?」
「後ろの2人と距離がかなり離れてますが?」
「仕方ないな、ここで休憩がてら待つか?
まだ半分しか来てないのにな?
お前らこの上は岩山でロッククライミング状態になるんだぞ、このくらいでバテてどうする」
「えええ?」とその言葉を聞き下の2人は座り込む。
「お前ら、休憩はここまで来てからにしろよ!廉君、気になっていること晴れそうかい?」
「う~ん、今は何も………」
「そうか。まぁ、登山を楽しめばいいさ」
「はい」
「もう少し上がったら滝あったよね?」
「あぁかなり、でかいのがな」
「あそこから、すこし上がると勾配緩くて冬は、雪積もるからあそこまで車で上がれるようにすればスノボーとか出来るのに~」
「遺跡調査の結果にもよるけど、ロープウェイか車道か作って将来スキー場にする計画はあるよ?」
「いいな!楽しそう!」
「玲音君、何時でもリゾート開発部においで、好きなように設計させてあげるよ?」
「ホント?」
「男に二言なしだ!」
「拓哉!俺の居ないところで囁くな!」
「それじゃあ、しっかりついてこいよ!
十碧お前、体が鈍り過ぎだろ?」
「いや、拓哉がおかしいだけで俺が普通だ!」
「藤堂先輩ここで大声出して体力使っても…」と千景が忠告する。
「そうだな……」
やっと2人が追い付き少し休憩した後。
「さて上がるか?」
また登り始める。
調査のために齋藤や他の部下が何度も往き来をしてるので雑草とかは踏み固められて獣道の様にはなっているが、登山道の様に整備されている訳では無いためかなり足をとられ体力を使う。
「もう少しで滝がある。そこでまた休憩しよう。それ過ぎるとロッククライミングが待ってるぞ」
「…………」
「山って登るためにあるのかなぁ?」
「登る意味が分からないよな?」
千景と藤堂は愚痴った。
切り立った岩肌が連なりそこの一部に10m位の高さから流れ落ちる滝があり、水量もかなりの量かあり、心癒される光景が広がる。
「すごいなこの滝、マイナスイオン気持ちいいな」
千景は感動している。
「さて、2人はどうする?ここで待ってるか?そろそろ体力の限界なんじゃないか?」
「大丈夫だよ!」と藤堂が反発する。
「正直、俺の部下でも、ここまで登ってこれるのは半分位だ。
そのうち初めて登って、ここまでくるのは1/4程度だからな。恥ずかしい訳でも体力無いわけでもないが?」
「俺も、ここに居ても仕方が無いし、ここまで来たら山頂からの光景を拝みたいから付いて行くよ」と千景も根性を見せる。
「では、一応落下防止に腰に金具を付けてロープを通して皆で連なってゆっくり登っていくぞ。玲音君先頭を頼めるかい?」
「OK!」
「次廉君、その次が千景君、その次が十碧、最後俺、ゆっくり行こう」
「わかったよ~」
段々と岩肌が多くなりほぼ腕力で登っていく状態になってきた。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ!このくらい」
最後山頂まで後もう少しの所で千景が足を滑らし落ちてきた。
「十碧、横に避けろ!避けるんだ」
「え?」千景を避けきれず藤堂は千景とぶつかった衝撃で岩に叩きつけられる。
「十碧!大丈夫か?千景君?大丈夫か?」
「俺は大丈夫ですが……。藤堂先輩にもろにぶつかったので藤堂先輩大丈夫ですか?」
「取り敢えず、滝まで降りるぞ!玲音君聞こえる?」
「OK!降りるよ」
「十碧!大丈夫か?十碧!」
「齋藤は気を失いロープで宙ぶらりんになっている藤堂を引寄せ背中におぶり予備のロープで体にしっかりとくくりつけ降りる」
途中で藤堂の意識が戻る
「え?」とびっくりしている。
「十碧。暴れるなよ、気分は?」
「大丈夫………。だけど足が………」
「そのまま、大人しく俺にしっかり捕まっておけよ」
滝の所まで何とか全員が戻り、藤堂の様子を伺う。
「………。参ったな………」
「多分この足は骨折してます。レントゲン写真を見て無いから断言は出来ないけど、触診する限りでは」と千景が診断する。
「すいません。俺がここに残って居れば………」
「いや、俺がちゃんといざと言うときの対処法教えなかった俺の責任だ。千景君が
気にする事は無いよ」
齋藤は時計を見ながら言う。
「千景君、十碧の骨折の応急処置してくれるかい?それであの傾斜の緩やかな平地まで廉君と2人で運べるかい?」
「はい」
「十碧気分は?吐き気は?足の他に痛い所は?」
「大丈夫だよ」
「俺、急いで下山して、ヘリをあそこの平地に持って来るから、そのヘリに乗せてそのまま病院に運ぶぞ。
廉君と千景君2人で十碧を見ていてくれるか?後、応急処置で必要なものは?」
「添え木と冷やすものかな?」
「わかった。玲音君、俺と一緒に下山して手伝ってくれるかい?」
「勿論」
「1時間半位で戻ってくるから頼むよ。
玲音君行こう」
2人は凄い早さで降りて行く。
「藤堂先輩すいません」
「気にしなくていいよ。俺の不注意もあるから、廉君ごめんね。頂上まで行けなくて」
「いえ、俺の我儘が根本の原因だから……。すいません」
「大丈夫。俺には、ちゃんと記憶有るからさ」
「痛いのは、ここだけですか?」と千景は藤堂体のあちこちを触診をする。
「あぁぁ!痛いよ、触んないで………」
「でも、ちゃんと確かめないと、感覚無いところありますか?」
「腕がちょっと痛いかな?」
「どっちですか?」
「右手かな?」
「触りますよ?」
「あぁ、痛いよ千景君!」
「腕は打撲ですね」
「廉、ヘリがくるまで滝の水で患部冷やすからタオル貸してくれ」
「なら、俺が濡らして来るよ」
「では俺のタオルも」
千景は出来る限りの応急処置した。
間も無く齋藤が運転して来たヘリが到着した。
「ゆっくり乗せてくれるかい?」
「はい。 」
「今、玲音君が事務所から五十嵐先生に連絡しているから、千景君の病院まで運ぶから2人とも乗って」
「はい」
病院に着くと連絡を受けて駆け付けた時宗も居た。
「ミイラとりがミイラになったのか?困ったもんだね。意識は大丈夫?」
「すいません。統轄長」
「無事とは言い難いが、まぁこれくらいで済んでよかったのかな?全く困ったもんだ」
「おじさん。すいません………」と廉は頭を下げる。
「本当に、これ以上は辞めてくれよ?」と廉の頭を撫でる。
診断の結果、軽い全身打撲、右手の強度の打撲、右足骨折と千景の診断通りだった。
「和也、藤堂君はいつまで入院?」
「そうだなぁ、早くても全身打撲が治まるまでは無理かな?」
「当然、完治するには時間かかるよね?」
「そうだなぁ、普通に生活出来るまでは時間はかかるな。歩くのにも骨が繋がった後リハビリが要るからな」
「困ったもんだ。それと廉は、検査したほうがいいのか?」
「う~ん。元気そうだし、発作もあれ以来出て無い様だから通院で様子を監察でいいと思うが………。それに……」
「それに?」
「うちの特別室はもう塞がってしまったからな」




