Childhood friend
1.Childhood friend.
事務所に戻って見ると、玲音と齋藤がトランプをしながら話をしていた。
「そんなにシャーロットちゃんは、可愛いのか?」
「うん。あんなにパーフェクトな娘は居ないよ?」
「あの十碧が、影響されて犬を飼いたいって言ってただけの娘だったんだな?俺も会ってみたかったな?おっやった!ババ引いたな!」
「あ!くそ~やられた。シャーロットの事に夢中で、先輩の表情を見るの忘れた」
「ただいま」
「おかえり」
「2人でババ抜きって………」
「4人でするか?明日の報告書作成を賭けて」
「先輩?それ、俺達にメリットないじゃ無いですか?」
千景が呆れて言う。
「そんな事はないよ!よし、あがりだ」
「くそ~。負けた……」
「玲音君。明日は、報告書の作成を手伝ってね。再来週フランスで定例会なんだ」
「また、全然手を付けてないでしょ?」
「流石、玲音君。よく俺の事をよく理解している」
「……。先輩は、秘書室に定例会用の報告書の提出するのに何時もビリ争いしてるもん」
「そうなのか?俺の好敵手は誰なんだ?」
「言わずと知れた、加藤さんだよ」
「なるほど手強そうだ」
「勝ってどうするんだよ?」
「それもそうだな?さぁ、4人で勝負しよう。4人で報告書作れば、今回は俺が一番で、十碧の小言を聞かなくてもいい!」
齋藤はトランプを集めながら楽しそうに言う。
「なんで先輩が勝つことが、前提になってるんですか?」
千景と廉は顔を見合せ仕方無さそうに席に付きながら千景が反論する。
「そりゃあ~。俺は、ポーカーフェイス齋藤と呼ばれた男だよ?負ける訳がないさ。十碧以外には……」
齋藤は手際よくカードを切っていく。
「藤堂先輩には負けるんだ………」
廉が不思議そうに言う。
「十碧は凄いぞ!嘘は見抜くし、他人の急所も見抜く、しかも顔色ひとつ変えない。人を羽目るのも上手いからな」
「散々ないわれようですね。拓哉!」
背後から聞き慣れた声がする。
「え?」
齋藤は恐る恐る後ろを振り返ると藤堂がドアの前で仁王立ちしていた。
「えええ?なんで十碧がここに?」
齋藤はたじろく。
「そりゃあ、拓哉だけでは廉君の事が、心配だからですよ?」
「でも、どうやって?島に?」
「加藤さんに乗せて来てもらったんですよ!」
「え?でも、仕事は?」
「統轄長命令で来てますから、ちゃんと仕事ですよ!廉君!3日で帰りますよ?」
「はい、わかりました」
廉は背筋をただし答える。
「しかし拓哉!いい根性してますね。廉君達に仕事を押し付けようとは………。しかも廉君は病人ですよ!」
「いや、そうじゃなくて、やっぱりゲームするならね。何か賭けないと燃えないじゃ無いのか?それに廉君も気晴らししないとね?」
齋藤は焦りながら言い訳をする。
「ふーん。では、私と勝負しますか?」
「面白そう!やろうよ!俺、絶対負けない」と玲音は喜ぶ。
「いや、玲音ほどカードゲームで顔に出る奴、居ないから………」と廉が呆れる。
「拓哉が勝てば、ここに居る全員で報告書の作成を手伝いますよ。
もし負けると、これからは報告書の締め切りの5日前迄にきちんと提出で如何ですか?」
「う~ん………。ババ抜き勝負で?」
「藤堂先輩?なんで俺達全員?」と千景が突っ込む。
「私は何でも構いませんよ、拓哉の得意なもので………。千景君、大丈夫です。私は、拓哉には絶対に負けませんから」
「う~ん………。毎回5日前?」
「では、12回勝負で私に負けた回数で」
「わかった、受けてやるよ!一回位は勝ってやる!」
「一回なの??」と玲音が不思議そうに突っ込む。
齋藤は玲音の耳元で「十碧は化物並みに強いんだ………」
「なら、俺が勝つ!」
「パンダのあの根拠のない自信はなんなんだろうな?」
「さぁな?」
千景と廉は、呆れながら様子を見守る。
「大富豪で12回勝負だ!下剋上有りでな!
では始めるぞ」と齋藤は威勢良く仕切る。
『Every man for himself, and the devil take the hindmost!』
「…………」
齋藤は茫然としている。
「12連勝って半端ないな……」と廉は感心する。
「しかも、ずっと大富豪のままって……。格が違うな」と千景も言う。
「拓哉、約束ですからね。5日前迄に必着ですよ!ちゃんと守って下さいよ!」
「ええぇ~。どう考えても無理だろ?
デスクワークの時間は夜しか取れないし………。
まだ山の探査全部終了してないし、統轄長から調査結果催促されてるしメタンハイドレートの調査も進んでないし………」
齋藤は頭を抱えて悩む。
「玲音君達、また当分………」
「拓哉?統轄長にそのまま報告書されたいですか?」
「う~ん十碧。ハンデ頂戴」
「勝負がついて尚、まだ挑む気ですか?」
「その気持ち悪い敬語が俺の調子を狂わせる!」
「言葉使いは気持ちの切り替えですから仕事中はいつも使っているでしょ?」
「今は仕事中ではないだろ?十碧やめろよ?」
「ふん、わかったよ!拓哉。お前、負け犬の遠吠え言って恥ずかしくないのか?」
「何とでも言えよ、何がなんでも挽回しないと………」
「挽回って………。もう勝負ついたんじゃないの?」と玲音は頭を傾げる。
「玲音君!人間諦めたらそこで終わりだよ?足掻いてこそ、男だ!」
「そうなの?」
「さぁ?ちょっと違うと思うけどな」
廉は呆れながら返答する。
「拓哉は【諦めが肝心】と言う言葉を知らないんだよ」
「最後、今までの全勝負を賭けてババ抜き一本勝負で!」
「言っている意味が分からない。なんで全勝負をかける必要が?拓哉、お前の頭のネジ1本抜けてるだろ?」
「十碧は勝つ自信が有るんだろ?俺の挑戦を受けて立てよ?男だろうが!」
「では、俺が勝ったら?何か魅力的な賞品を出してくれるんだろうな?」
「う~ん。そうだなぁ~。今度のフランスの定例会後の飲み代は全て俺がもつ!それにお土産付きで!」
「それだけでは、足りないな?そうだ、それ+1日観光でも付き合って貰うよ?当然、統轄長に俺のお休みの交渉と観光代金も全額拓哉負担でね」
「えっ?まぁ~うん。で、ハンデは?」
「俺の所にババ来たら申告するよ。それでいいだろ?」
「よし決まりだ!勝ってやる!何が何でも!」
『 Every man for himself, and the devil take the hindmost!』
「やったぁ!俺!一番抜け!」
「どうでもいい勝負にはパンダ強いな?」
「いざと言うときは発揮されないからな?」と廉が言う。
気がつくと藤堂と齋藤の2人の勝負になっていた。しかも、藤堂にババがある。
「う~ん?どっちだ?どっちがババ?」
齋藤は色々とフェイントをかけるが藤堂は一向に動じない。
「なぁ十碧、ババどっちだ?」
「アホか?答えるわけないだろ?」
「う~ん。どっちだ?」
「うるさい。拓哉!早く決めろよ!」
「いや、ここは慎重に………。報告書を通常業務こなしながら5日前に提出とかあり得ないから、絶対無理」
「拓哉お前……。お前のせいで秘書室の全員が夜遅く迄残業して対応してるんだぞ!締切位守りやがれ!」
「ふっ、引っ掛かったな!十碧。こっちだ!よし!」
齋藤はガッツポーズをとる。
「拓哉、何でわかった?…」
「十碧、他人の事になると一瞬だけど感情的なるんだよな。
その時見たのがババだから、それの反対取ればいい」
「よし!全部チャラだ。明日は、報告書よろしく~」
「なんで報告書が付くんだよ!」
「“One For All,All For One."だよ!」
結局、翌日皆で報告書の作成している。
「すいません。私が負けたせいで……」と藤堂が謝る。
“Not at all.”と千景は言う。
「なんとなく勝っても負けても同じ結果ですよ。たぶん」と笑いながら廉は最初から諦めていた様だ。
「でも、作ってしまえば期限ギリギリに来るのは加藤さんの報告書だけになるから秘書室の仕事が幾分楽になるしね」と玲音は楽しそうに言う。
「廉君、これ十碧に渡せば山に連れて行ってあげるからね」
「ありがとうございます」
「十碧お前。明日は事務所に残るのか?」
「何でだよ?一緒に行くよ」
かなり不機嫌そうに藤堂は、資料見ながらパソコンに向かっている。
「その格好で?」
藤堂はスーツ姿では無いものの山に登る様な服装では無かった。
「ん?似た様な服装しか持って来てないが………。そんなにここの山は険しいのか?」
「原生林、なめんなよ?」
「なら、拓哉お前の服を貸せよ。それで解決だ」
「十碧。体力が持つといいがな?」
「う~ん。あの山登るの、結構しんどいよね?」
「運動馬鹿のパンダがしんどいって………。俺、止めようかな………」と千景が不安になる。
「玲音様。そんなに険しいの??」
「行く場所にもよるけどね。山頂まで登るのは富士山山頂に登るよりも、しんどいかもね」
「標高はさほどでもないけど、道なんて無いからな………」
「…………廉君。………山頂まで行きたいの??」
「出来れば……」
「……………」
「デスクワークばかりしている十碧には無理かもな?」
「むう、俺だってデスクワークばかりしているわけではない!行ってやる!登頂してやるよ!」
千景に玲音が耳元で囁く。
「藤堂先輩ってかなりの負けず嫌いなんだね………」
「あぁ、あれは相当だな?」
「俺、罪滅ぼしに夕飯でも作りますよ。
何か材料ありますか?」
「肉、魚は冷凍庫に、野菜は裏の畑と冷蔵庫の中にもあるけど」
「適当に使ってもいいですか?」
「あぁ、いいけど作れるの?」
「廉の飯は上手いですよ?パンダの飯は不味いけど……」
「千景が作っても不味いじゃん」
「そんなに誉められるものでもないけど、食べられますよ?」
といって廉はキッチンに消えていった。
その日の食事は楽しい、思い出に残るものとなった。




