色即是空、空即是色
1.Form is exactly emptiness.Emptiness is exactly form
病室で廉が、千景が持って来たタブレットで資料を見る。どうしても島が気になって仕方がない。
居ても経っても、島に直接行って色々と自分の目で確かめてみたくなり、病室に伝言を残して、抜け出した。
"すみません。どうしても気になることがあるので出かけてきます。
戻ったらちゃんと検査受けるので許して下さい。"
(千景はあれ見たら怒るだろうな。約束破ってすまない………)と病院をの方に向き手を合わす。
(さて、あのホテルまではレンタカーで行くとして、島に渡るのどうやって渡ろうかな………)
その頃、病院では、置き手紙を発見した看護士が医院長に連絡して大騒ぎとなった。玲音と千景が病室に呼び出されて手紙を読む。
「まったく、やることはパンダそっくりだな!」
「なんでだよ?俺は、病室を抜け出した事なんかないぞ!」
「家出した時と同じではないか?」
「…………って事は廉もあの島?」
「多分な、島の活火山の事知りたがってたからな?お前ら本当にやることは2人そっくりだな?」
「誉めて貰うと照れるな?」
「あほか?誉めて無いだろ?仕方がない。追うぞ!」
「うん」
日本櫻グループ統轄事務局ビルに時宗が入ってきた。
1階フロアの受付嬢が出迎え頭を下げて「おはようございます」と挨拶する。
いつもなら満面の笑顔で「おはよう」と挨拶するのだが………。今日は携帯電話を片手にして不機嫌そうに通りすぎた。
受付嬢は内線で藤堂に統轄長の到着を伝える。
「今日はかなり不機嫌そうです」と付け足して……。
統轄長室前のエレベーターで藤堂が出迎える。
「おはようございます。統轄長、病院から電話が有りまして………」
「おはよう。あぁ、さっき私の所に和也から連絡が有って聞いたよ。困ったもんだな。千景君達が後を追ったそうだ」
「どこにですか?」
「あの島みたいだよ?」
「玲音様と行動は、同じですね………」
「変な所は、よく似てるな………」
「拓哉に連絡して見ます」
「あぁ、よろしく頼むよ。雅治には連絡しているんだが圏外に居るらしく通じないんだ」と言って部屋に入っていく。
藤堂は、自分の部屋に戻り、何度が齋藤に連絡して見るが、齋藤もやはり圏外で連絡が取れない。
やっと連絡が取れたのは、夕方になってからだった。
「拓哉!今まで何してた!」
「何ってお前……。仕事に決まってるだろうが!遊んでいて給料は貰え無いだろ?」
「そんな事は、どうでもいい。廉君から連絡来なかったか?」
「そんな事って……。十碧……」
「どうなんだ?」
「………。無いけど?どうした?」
「病院を抜け出してそっちに向かったらしい。もし、廉君から連絡が来たらすぐに俺に連絡しろよ?」
「あぁ、分かったよ………」
「…………ん?拓哉お前、何か隠しているだろ?」
「え?何でだよ?」
「やっぱり!拓哉、何か隠してる。何を隠している?吐け拓哉!俺に隠し事が出来ると思ってるのかよ?きちんと白状しろ!」
「参ったな……十碧。お前、感は人一倍鋭いもんな………。参ったなぁ………」
「まさか拓哉!廉君から連絡があったな?何時だ?今何処に居る?」
「まぁ……。どうしても調べてみたい事が有って他の人には内緒にしてくれと、でないと連れ戻されるからと、かなり必死に懇願されたから………」
「何を考えてる相手は病人で入院中だぞ?何かあったらどうするんだよ?」
「本人は、なんともないなら、皆が大袈裟なんだと。毎回検査しても、何もないんだからって。十碧、お前が廉君からそこまで懇願されて断れるか?」
「………。今、廉君はどこに居るんだよ?あのホテルだと思うが。明日朝、迎えに行く約束しているから」
「今、千景君と玲音様が追いかけてそっちに向かってるから合流しろよ?いいな!」
「分かったよ……」
(まったく、いいとばっちりだなぁ。しかし、何調べたいんだろう?
考えてみると、玲音君とは島あちこち一緒に調べたけど、廉君とは無いもんな?だから?でも、入院中にしなくてもなぁ……。なんだろうなぁ。)と齋藤は考えこんだ。
朝一番ホテルに行くと、車から廉が出て来た。
「もしかして車の中で寝たの?」
「指名手配をかけられていると思うので」と笑いながら言う。
「それなんだけどね………。十碧にバレて………」
「すみません。喧嘩の種になるような事、頼んで………」
「喧嘩ってほどではないけど、十碧には俺、昔から嘘ついてもバレるんだよね。あいつ感いいから………。千景君と玲音君、そろそろ来るんで無いかな?」
「やっぱり、千景達にもバレてますね」と笑う。
「何が、そんなに気になるだい?」
「自分でも、よくわかんないけど島の事が気になって仕方がないんです」
そんな話していると千景達が来た。
「廉!お前、約束破っていい加減にしろよ?何考えてる」
「千景……。ちゃんと検査は受けるよ?
帰ってからね」
「廉。お前、馬鹿だろ?あちこち動き回れる奴は検査なんて必要無いんだよ!」
「いや、だから俺、必要無いって……」
「もう、廉帰るよ!子供じゃないんだから、病院抜け出すとかするなよ?」
「……パンダ。お前がそれいうか?」
「玲音。お前だけには言われたくない」
「いやぁ、俺のは一人旅だから………」と玲音は笑う。
「まぁ、ここまで来たんだ。廉君の気がすむまで付き合ってあげたほうが精神的にもいいんじゃないか?
その代わり次、大小問わず発作が起きれば、すぐヘリで病院まで直行だよ?いいね」と齋藤が言う。
「ありがとうございます」
「もう、仕方無いな!廉は頑固なんだから~俺も付き合うよ」
「廉、これは貸しだからな?いいな?齋藤先輩、俺も付き合います」
「なら、飛行機に乗ってて。俺、電話してくるから」
齋藤は藤堂に連絡する。
藤堂はすぐに連れて帰るように言っていたが、「本人が納得しないと同じ事を繰り返すだろうし、その時は誰にも連絡取らず1人でボートとかで島に向かうようになるぞ?その方があぶないだろ?」と少し脅して言うと、「仕方がない。少しでも体調に変化あればヘリでそのまま病院に運べよ?」と約束して、藤堂が統轄長の許可を取ってくれた。
「拓哉。ここまでして、廉君に、万が一もしもの事があれば、俺達2人の未来はないからな?わかってるだろうな?」とも脅された。
齋藤を待ってる間の飛行機の中で
「なぁ、千景………。怒っているか?」
「あぁ、怒ってるよ、完璧にな!」
「すまない。約束したけど気になって仕方が無かったんだ。多分直接言っても、聞いてくれないだろ?だから………。裏切る気は無かったんだ。ただ自分の目で確かめないと気が済まなくてさ……」
「そうだな?帰ったら1ヶ月間。毎日朝晩ちゃんと飯を作ってくれたら今回の事は忘れてやるよ」
「………。今までも毎日朝晩、廉がごはん作ってるじゃん?」
「なら、パンダが作るか?」
「いや、一生廉が作るよ!」
「何で玲音!お前が勝手に約束するんだよ!」
「廉、怒ると血圧あがるよ?」
「俺の頭痛は血圧のせいじゃない」
「楽しそうだな。そろそろ島に向かうよ」と齋藤が帰ってきた。
「お願いします。後、もうひとつお願いが……」
「え?これ以上、十碧怒らせるような事は辞めてくれよ?十碧、いつも涼しい顔してるが怒ると本当に恐いんだぜ?」
「大丈夫ですよ。あの火山の周り少し飛んで貰っていいですか?できるだけ近くでみたいです」
「あぁ~、そんな事ならいくらでも………」
「廉、なんでそんなにあの火山が気になるだ?」
飛行機の窓に貼り付いて島を見ている廉に千景が尋ねる。
「わかんない。わかんないけど今の風景と違う風景が脳裏に浮かぶんだ」
「………」
「ここに来れば分かるような気がして」
2.To most people, Future Me is much less important than Present Me.
廉は島に着くと真っ直ぐに続く道路の真ん中に立ち火山を見つめてる。
千景がやって来て廉の隣立ち真っ直ぐな道を見ながら言う。
「ここの空はきれいだな?
この澄んだ青空の様に
このどこまでも続く道様に
ただ 一度の人生、真っ直ぐ
悔いのない生き方が出来ればいいな?」
「ただ一度の人生……か?」
「俺、一生懸命に何かを探していた気がするんだ。
何かを悔やんで、
何かに望みを託して、
その何かを探して、
あちこち探し回って居たような気がするんだ。
有るかどうか分からないものに希望を託して探してた 。
それが何かも分からないし、今までの人生そんな事はしていないのにな?
でも、自分の中に、もう一人の自分が居るようで、
その知らない自分に逢いたくて、
知りたかった本当の自分に逢いたくて
何かここに来れば分かるかなと
何を探していたかという答えは出ないのかも知れないけど……。
でも何かヒントや手応えをつかみたくてさ」
「答えは出そうか?」
「どうかな?」
「俺は精神科は専門ではないけど………。
普通は人格は経験を積み重なって形成されていくが廉。お前は、事故に因って廉の記憶を無くす前の人格、無くした後に出来た人格と分断されたんじゃ無いのか?
二重人格とまでは言わないが記憶を無くす前の人格が、脳の一部分に潜在的に有って自分の両親を無くした事に悔やんで悲しんでいるとかじゃ無いのか?」
「亡くなった両親の事はさっぱり思い出せない。
どんな人だったか?どんな風に暮らしていたか?
あの事故の前の記憶の一切は、今でも、全然思い出せない。
でも玲音やおじさん、おばさん、千景や悠貴、潤が何時も居てくれたから………。
藤堂先輩や齋藤先輩が本当の兄貴だと思って頼れと言ってくれたから、寂しいと思った事は一度もない。
何より玲音が、必ず何時も傍にいてくれているから………。事故の事を思い出す事も無いんだ。
でも、反対にこれから起こる未来が不安なんだ。
この幸せが全部壊れてしまいそうで……」
「誰だって未来に不安はつきものだよ!
だけど未来がどうとか考えるより、今現在をどう生きるか?が大切なんじゃないか?
あのパンダだって、これからの将来に廉が自分から離れて行くかもって思い悩んでここに逃げ込んだじゃ無いのか?
俺だって廉があのマンションを出ていったら俺の食事はと思うと心配でたまらないよ!」
「………。俺はお前の食事係りか?」
「"The way to a man's heart is through his stomach."(人の心をつかむ道は胃袋から)
仕方がないんだよ!お前は俺の胃袋掴んだんだから♪」
「だから、いい加減自分で自炊しろよ?」
「嫌だね、自分で作っても美味しくないからな!労力の無駄だよ!時間の無駄だ」
「威張って言うことではないだろ?なら、3食作ってくれる彼女でも探せよ」
「そうだなぁ~。俺の1日が48時間有れば、探すことも出来るかもだけど、廉よりうまい飯作れる娘を探す労力も大変だ」
「千景は飯で結婚する相手選ぶのかよ?」
「毎日の事だろ?大切じゃないか?健康にも関わるしな。さて、事務所に帰るか」と笑いながら廉の肩に手を回して答える。




