和光同塵
1. 和光同塵
統轄長室
「統轄長、先日の件の調査の結果が出ました」
かなり部厚い報告書を藤堂が持ってきた。
「見せてくれるかい?」
「はい」
「思った以上に経営は良くないみたいです。
ただ、廉君とオリビアさんの件は偶然だったみたいですが、まぁ助けてくれた男が紳士で優しい人なので好印象だったのでしょう。
そこで、あのパーティの招待客ですからある程度、財界関係者と考えられます。
その男の素性調べて縁談を持ちかけたと思われます。
廉君が養子で有ること。
櫻グループの経営状態。
玲音様との廉君の関係。
棚からぼた餅だったのでは無いでしょうか?
ジェームス氏は経営状態圧迫でアリスさんの父親のマイケル氏の代表交代を迫られていた様です。
このマイケル氏ですが、調べていく限り、いい噂が有りません。
マフィアとの黒い噂も有りますし………。
アリスさんもかなり甘やかして育てたみたいで、破天荒で男性関係でかなり問題を起こしてます。警察沙汰になり揉み消したと言う噂もあります。
ジェームス氏はパーティ直前まで吸収合併先を探していました。
今の段階では、裏では噂が出てきてますが、表には経営悪化は、まだ出てませんから上手くすれば吸収と言う形で業績の良い企業得る目論見もあったみたいです。
悪くても5分5分の合併でと。
以上が調査結果のあらましです。
詳細な根拠や証拠は報告書に書かれてます」
「ありがとう。よくここまで詳細な情報取れたね」
「これは山崎氏の人力です」
「山崎ってNYから左遷させた?」
「はい。もう一人鈴田祐司と言う男が協力しています」
「そうか、分かったよ」
「あの差し出がましいのですが……。1つ提案があります。聞いて貰えないでしょうか?」
「なんだい?改まって」
「秘書室に分室を作って欲しいのですが?」
「ん?なんのために?今回の様な調査行う上で各国の報道機関に太いパイプを持つ人間を集めて情報収集に力を入れれば買収や海外進出の足掛かりを上手く早く調査が出来ると思います」
「いい考えだね。責任者は誰にするの?」
「山崎氏では如何ですか?ワシントン支局の鈴田氏を呼び寄せて後のメンバーは彼らで人選させればいいと思います」
「そうだね、情報機関は今のうちのグループには急務な事案だね。
でも、この内部事情の詳細はここまで報道機関で分かるものなの?」
「そ、それは………」
藤堂が言葉を詰まらせる。
「何隠してるの?藤堂君」
「隠しては居ませんけど……。言いにくいのは確かなんですよ」
「言ってごらん、ほら」
「実は拓哉が………」
「齋藤君?」
「はぁ……。千景君達を使って………ハッキング…」
最後は殆ど声になってなかった。
「う~ん、困ったもんだ。しかし、そういう手段使える人材、欲しい気もするね分室に………」
「それなら、ちゃんと愛弟子が2人も秘書室に……」
「え?」
時宗は嫌な予感を感じる。
「はぁ………。拓哉いわく千景君には及ばないまでも、かなりの腕前だそうです。ご子息お二人は………」
「……………………。藤堂君!何処までが、法律にひっかかるの?」
後日、 日本櫻グループ統轄事務局に秘書室分室として情報収集機関が設置された。
ジェームス氏の提携の話も、廉の婚約騒動も全て正式に破棄された。
廉達の夏休み終盤に差し掛かった頃、時宗と藤堂が島に視察兼夏休みでやって来た。
ホテルの会議施設で関係者が一同に集まり現在の進行情況と課題を話あった。
2.My precious treasure.
「十碧!飲みに行こうぜ」
「拓哉の奢りでか?」
「お前の方が稼いでいるだろうが!」
「島籠って金の使い道ないだろ?俺が使ってやるよ!」
居酒屋にて
「十碧お前、飛ばされるの覚悟で統轄長に質問したんだって?」
「!!!何で知ってるんだよ?拓哉、まさかお前、統轄長室に盗聴機とか仕掛けて無いだろうな?」
「んなことするかよ!やっぱり廉君の婚約騒動心配だったんだ?」
「婚約がどうとかでなくて、政略的に利用される可能性が嫌だった。
廉君は多分、統轄長達の役に立つなら 自己犠牲も意図わないからな。
廉君は俺の弟だと思っている。橘先輩の所に行く度によく遊んだからな、小さい頃から知ってるんだ。
自分の弟がそんな目に合うのに自分の保身考えるか?それに、廉君の意思とは裏腹にジェームス氏に利用されるのが嫌だった。統轄長のことは良く分かっている。信じてもいる。
でも今回は、実の息子と養子の息子両天秤かけなければ、ならなくなった時が心配だった」
「そうか、統轄長と同じ思いでよかったな?」
「あぁ」
「山崎さん達、今度は上手くいくかな?」
「大丈夫だろ?実力と人を見る目は有るんだから」
「人を見る目?」
「ああ、俺達を見出だしたじゃないか」
「なるほどね」
「廉君はどうしている?はからずもジェームス氏に利用された訳だろ?傷付いてないか?」
「玲音君達いるからな、俺には心の奥までは分からないが大丈夫じゃないか?
多分、玲音君は廉君のこと良く分かっているから」
「そうだな」
「後、十碧、最初に謝っておく、すまん許してくれ。この通り」
齋藤は藤堂に向かって頭を下げる。
「何だよ?拓哉、気持ち悪いな?」
「許してくれるか?」
「まぁ……」
「そうか、よかったぁ。どうしようかと。
ほんとハゲるかと思う位、悩んだんだ」
「????」
「十碧の車ちょっと傷付けてしまった」
「!!!!!おい、ちょっとまて、何した」
「十碧の車、車高低いじゃないか?砂利道を走ったらまぁ」
「おい、なんで砂利道なんか走るんだよ?
しかも会社の車、島に有るだろ?
なんで島なんかに持って行くんだよ!」
「だって社用車は部下が使うからなぁ」
「拓哉のJEEP廃車にして欲しいのか?」
「おい、さっき許すって……。それに大丈夫、潤君に頼んで目立たなくしてもらうから。
それに十碧、殆ど車使わないじゃないか?」
「使わないじゃない、使う暇が無いだけだ!」
翌朝
「潤、何してるんだ?」
千景が散歩しているとスポーツカーの前に潤を見つけ話かける。
「齋藤先輩に言われてこの車を直しているんだけど…」
「スポーツカーかぁ。いいなぁ齋藤先輩の車か?」
「さあ?」
「千景!何してるんだ?」
廉がやって来た。
「あぁ。この車かっこいいなって潤と話てたんだ」
「これ、藤堂先輩の車じゃないか?」
「何で知ってるんだよ?廉」
「前、ここまで乗せて来て貰ったから………。
で、潤は何してるんだ?」
「齋藤先輩に言われてこの傷を目立たなくしてる」
廉は傷を見て怖れ驚く。
「!!これ藤堂先輩みたら激怒するぞ?」
「このマフラー変えたら走り良くなるのにな~。ここもちよっと改良してやればかなりいい走りするんだけどな~。改良させてくれないかなぁ」
「何してるの?あ~。藤堂先輩の車じゃん!乗りたいなぁ。運転したいな~」
玲音は車を覗きこむ。
「いくら玲音でも、ぶつけたら半殺しに合うぞ………」と廉が言う。
「ってよく見たら、ホント凄い傷だな?」と千景。
「何、集まって居るんですか?」
気分良さそうに藤堂が出てきた。
「あ~。噂をすれば………」とその場にどよめきが起こる。
そのどよめきとその場の全員の視線の先から、藤堂の目が車の傷に釘付けになり、先程のご機嫌が一気に裏返った。
「!!!拓哉!こら、拓哉出てこい!」
「何だよ!うるさいなぁ~。朝から」
「これ、なんだよ!ちよっとじゃないじゃないか!
これ直すのにいくらかかかると思ってるんだよ!拓哉の4駆売っぱらうぞ!」
「辞めろ!辞めてくれ、あれは半年かけて特注したんだから」
「藤堂先輩」
「ん?」
「部品代くれれば俺直しますよ?
その代わり改造しちゃダメ?
車検には通る様にするから」
「直せるの?」
「It's a piece of cake.」
「部品代は、全部拓哉に請求していいから。好きなだけ直して」
玲音の目が輝いている。
「藤堂先輩!」
「ん?」
「直す前に運転させて?ちゃんと道路走るから」
「玲音様免許取ってから運転されていませんよね?これオートマでは無いですよ?
スポーツカーだから少し癖ありますし……」
「大丈夫!免許もオートマ限定ではないから、それにここの道路、跳ねるものないし、運転させて?ね?ね?」
「…………」
「十碧、運転させてやれば?
壊れたら潤君が直してくれるよ?」
齋藤がアクビをしながら勝手な事を言う。
「直すにもシャシ、イカれると直すの無理ですけど…」と潤は呆れながら小さな声で呟く。
「………。わかりましたよ!まず隣に載って下さい。操作を教えますから」
「ヤッター!」
「藤堂先輩、俺も運転したい」
「俺も~」
次々名乗りが上がる。
「好きにしてください。廃車になったら拓哉に請求書送りますので」
「おい、十碧?この車、俺のボーナスどころじゃ買えないだろ?」
「大丈夫だよ!拓哉の年収で買えるから」
「おい!」




