Absorption-type merger
1.Absorption-type merger.
統轄長室
「統轄長のご指示通り、廉君には案内を断る様に伝えました。
あの3人を島に送る手配してもよろしいですか?」
「あぁ、ご苦労だったね。手配を頼むよ」
「後、先程の件は?」
「あぁ、これから説明するから取り敢えず座ってくれ」
統轄長室のソファに勧められ
ソファの手前の机の上には幾つかの資料が置いてあった。
「先程、私が少し調べて見たんだかね」
その資料は、来日しているジェームス氏の傘下の構成、営業成績や今の事業状態だった。
「取り敢えず、まずジェームス氏との会談の話から話そう。
ジェームス氏は日本には、まだ自分の傘下のホテルやリゾート関連施設がない。
日本に見え隠れするカジノ法案が出来る前に出来れば日本に進出しておきたいと。
そしてもし法案が可決された時にはあの島をカジノ専用のリゾート施設にしてはどうかと。
ジェームス氏のリゾート関連のノウハウとスタッフをリゾート開発部門に送るので協同開発しないか?と」
「待ってください。その提案ジェームス氏に得は有っても、うちの櫻グループには何のメリットが無い所か、リゾート開発部門が吸収されるだけではないですか?」
「その通り。その件についてあちらからの提案は廉だよ。
廉を婚約させてジェームス氏の正式後継者と発表し、うちと完全業務提携を結ぶ。若しくは合併と言う形でと」
「しかし、廉君の婚約は正式に断った訳で何で蒸し返すのですか?」
「それが気になってね。しかもあのアリスって娘。あの子があんな振舞いしてもタイラー親子は容認しているのも気になるし。傘下の人間をあのパーティに一緒連れて来るのは、相当深い係わりがあると思ってね。色々と伝を使って聞いてみたんだ。
そこのFaxが知り合いからの情報だよ」
「!!これ、石油王って呼ばれている人ですよね」
「そうなのか?昔、留学した時からの知り合いだよ。昔、ロンドンで紹介し無かったか?」
「してもらって無いです」
「そうか、今度機会あれば紹介するよ」
その資料と時宗が調べた資料とも、業務に陰りか見える。
アリスの父親はジェームス氏の兄で家督争いに破れて傘下の社長に収まっていた。
ただ、アリスの父親以外の傘下の計上利益が芳しくない、反対に好調なのがアリスの父親が運営している会社だけと言うことだ。
「ジェームス氏は廉君を利用して櫻グループを吸収合併を目論んで居るんですか?
今の所、婚約を強要する理由として考えられるのはそこだね?」
「統轄長は先程の会談でなんと御返答されたんですか?」
「ん?『あの島は少なくとも近海に遺跡もあり、世界遺産的価値が有る可能性が有る以上、まだ使用用途は決定できない。
廉の事に関しては、私は政略結婚などさせる気はない。
もし、廉がオリビアさんと結婚したいと言う気持ちになったならそれは、喜んで後押ししたいが、決して会社の為では無い。
反対に廉の優しさに漬け込む様な事をされるのであれば今後一切、廉に近寄らないでくれ。今のところ、うちのグループは大幅な業務拡張も資金提携も今は必要としていない。今回貴方を受け入れたのは、単に息子の縁を潰したく無かっただけだ。』と言っておいたよ。
さて本題だ。藤堂君、ジェームス氏の経営があまり芳しくないのは、見ての通りだ。その経営状態がどのくらい深刻な状態なのか?
後、オリビアさんとのことも仕組まれた事か?本当に、偶然なのか?
あのアリスの父親の件も、もう少し調べて見てくれるかい?」
「はい、わかりました。しかし、そんなにはっきり拒否して、ジェームス氏は怒って帰ったのでは無いですか?」
「政略結婚させると言っても自分の可愛い娘だよ?十分こちらの経営状態や事情は調べ尽くして居るさ。
怒って破棄して帰らなかったと言うことは、うちのグループが、かなり魅力的だと言う事だと思うよ」
(この人は人の言葉や態度から裏の部分まで見透しているのか?凄いな…)
「統轄長、凄く失礼な質問なのは、十分に分かって居るんですが、敢えて質問する非礼を許して欲しいのですが………」
「何かな?もし、私が怒って、藤堂君を飛ばす様なことが有っても聞きたい事?」
「………はい。私は、廉君を弟の様に思ってます。
それは、亡くなった橘先輩が私を実の息子の様に仕事を教えてくれたり、家族の付合いして貰ったからです。なので……」
「いいよ?なんだい?」
「もし、廉君がこの縁談受け入れた時、合併するとなると玲音様の立場が微妙になると思われます。
廉君自体は玲音様をどうこうさせることは絶対ないと思いますが……。
でも、廉君に後ろに着く者たちはそうはいかなくなると思われますが?」
「それ以上は言わなくていいよ。
私に廉と玲音とで両天秤にかける日がもし来たときどうするか?って事だろ?
どうするかな?私には選べないな。
別に私は、玲音に後を継ぐ事に積極的で無いのは知って居るよね?」
「はい」
「玲音が、どうしても私の仕事をやりたいと言ってくれるなら、何とかしてやりたいと思うが、やりたいこと出来るようになるなら、それはそれで玲音の幸せだ。
でも、廉も私にとっては玲音と同じ存在だ。
【血の繋がり】か【育ての親】かとよく言われるが、私は【育ての親】だと思うよ。
藤堂君だって血の繋がりより【絆】で廉を弟の様に思ってくれて居るんだろ?
もし、私がその答えを出さなければいけない時が来たら、その時は、私の使える全ての権限を使って2人が一番いい形になるようにお膳立てすることかな。これで答えになったかい?」
「すいません。でしゃばりました」
「そんなことは無いさ。藤堂君が廉達の心配してくれるだけでも嬉しく思うよ。
話がそれたが、調べて貰えるかな?」
「はい、できるだけ早急にします」
藤堂は出来るだけ多くの資料を集める様に秘書室全員に指示した。
「山崎さん」
「はい」
「山崎さんNY在住、長かったですよね?」
「そうですね。学校卒業してからずっと向こうでしたから」
「経済界に詳しい記者知りませんか?」
「経済界では無いですが、ニューヨークタイムズの記者なら知り合い居ますよ」
「その人に頼んで調べて貰えませんか?
NYの失敗を挽回して下さい。私から口添えしますから」
「ありがとうございます。でもこう言う調査なら鈴田が、かなりコネもってますよ?」
「鈴田さんって副会長の?」
「ええ、鈴田祐司ですよ」
「今どこに居るんですか?」
「ワシントン支局で報道関連の仕事してますよ?」
「連絡取って頼んで貰えますか?」
「はい、勿論です」
「時宗、合併の話受けるわけで無いんだろうな?」
「なんだ?雅治。いきなり電話かけてきて、前降りもなくそんな話を出すなよ」
「受けてないだろうな?」と念を押す。
「俺がそんな軽率な判断する男だと思っているのか?」
「時宗。お前は、息子の事になれば、会社を乗っ取られてでも息子を優先するさ」
「おいおい、そっちにちゃんと廉達行って居るだろ?そう言う事だよ」
「ならいいが、それとちよっと耳にした話なんだがジェームスタイラーの会社かなりヤバイらしいぞ。絶対に関わるなよ、いいな?俺の忠告は素直に聞けよ!」
一方的に言うだけ言って加藤は電話を切った。
2. Present.
島の仮事務所
「廉君、君に荷物が届いているらしいよ。
ホテルの方だけど…」
齋藤が廉に言いにきた。
「ん?誰からですか?」
「樹里亜さんみたいだよ?かなりでかい荷物だけど…。何か頼んだの?」
「いえ、後で見てみます」
「ロビーで預かっているって」
「千景の間違いじゃないかなぁ」
「何でだよ?俺が樹里亜に物を頼むかよ10倍返ししなくちゃならないんだぞ?」
「ええぇ。俺、何も頼んでないけど…。お返ししないといけないのか?」
「なんだろうね~。楽しみ~」
「玲音、自分に来たら大騒ぎするのに、楽しみってどういうことだよ?」
【他人の不幸は蜜の味】
「玲音!俺とお前は他人なのかよ!」
「いやそう言う訳でなくてさ!細かいこと気にしたらダメだよ?廉。荷物見に行って見ようよ?
齋藤先輩、今日はもうあがってホテル帰っていい?」
「あぁ、悠貴君達も戻るかい?」
「うん」
「船でもいいか?ちよっと時間かかるが」
「いいよ~」
「では、埠頭で待っててくれ」
「今日は齋藤先輩もあがるの?」
「あぁ、ちよっと調べたい事あるから」
「手伝いましょうか?」と千景ニッコリ笑顔を浮かべ言う。
「いいのかい?」
「ええ。ネットの情報収集なんてたいしたことないですよ」
「そう言えば、千景君。ハッキングとかできるだよね」
゛I will not confirm or deny.″(私は肯定も否定もしない)
千景は笑う。
「それは、法に関わるのでね。でもね、ここだけの話。廉の奴も俺には敵わないけど、それなりですよ」と齋藤の傍で千景が囁く。
「そうなのか?」と廉に向かって驚きながら聞く。
「ある程度ですよ?そこに師匠いますからね。手伝っているうちにある程度は覚えますって」と廉は涼しい顔で答える。
「君達は、いつもどんな事を調べているんだよ?」と齋藤は改めて驚く。
「そう言えば、オリビアさんあれからどうしたの?」
船の中で齋藤が廉に聞く。
「どうって言っても、ここでは携帯圏外ですから連絡は取ってませんよ?
何件かここに来たときにはメールで『折角、日本に来たのだからもう少し会って話したい』とかメール来てましたが。確認したの3日後とかなんで、そのまま放置ですよ?」
「なるほどね」
ホテルに着くとロビーで樹里亜からの贈り物を受け取った。高さ1.2m幅50cm角の段ボールで廉宛になっていた。
「………。でかいな」と千景が不審に言う。
「なんだろう~。廉、開けてみてよ」
「お前、なんか楽しそうだな?」
「そ、そんなことないよ?」
「廉君、開けてみたら?」と齋藤も興味深そうにみる。
「でも、ここでは……」
廉の荷物に釣られて、みなロビーのど真ん中で集まっていた。
「仕方ないな。廉の部屋行こう」と千景が言う。
「え?」
「いいから、いいから」と玲音はフロントから廉の部屋鍵を貰ってくる。
ホテルのシングルの部屋に男6人が段ボールを見つめる。
「軽いんだよな?重さ的には」と千景。
「開けますよ?」と廉が言う。
「うんうん」
そこから出てきたのは、特大のパンダのぬいぐるみだった。
メッセージカードが入っており、
『上海でサクラ見つけたわ、結婚しても寂しく無いように御祝いに贈るわ』と
「……………………」
齋藤は笑い転げた。
千景は玲音とぬいぐるみ並べて「そっくりだな?」と感心している。
「何処が、似てるんだよ?千景!」
「廉先輩、そう言う趣味があったのか?」と悠貴が感心している。
「抱き枕には、いいかもね?大きさ的に」と潤はいい方にとらえるように言う。
「そう言う趣味ないから悠貴、抱いて寝ないから潤!」
「樹里亜の奴、勘違いしてるよな?」と千景が言う。
「藤堂先輩、どういう頼みかたしたんだろ?」と廉はぼやく。
齋藤はツボに入ったらしく笑い転げて言葉が出ない。
しかし、玲音はなかなか気に入ったようで「可愛いな」とぬいぐるみを抱いている。
「……………」
「取り敢えず樹里亜に誤解を解かないと……。千景、電話して誤解を解いてくれよ?」と廉が千景に頼む。
「俺が?」と千景は不服そうに言う。
「本人より第三者の方がいいかもな」と、涙拭きながら齋藤が同意する。
「齋藤先輩、そこまでうけなくても……」
「いや、玲音君、いやパンダが……」
また笑い転げて言葉になってなかった。
千景が渋々樹里亜に電話し、事情を説明し誤解を解いた。
「廉、そのぬいぐるみ、樹里亜がやるってよ」
「………そうか。【玲音Jr.】と名付けてリビングにでもおくか?」
しかし、玲音はかなり気に入ったらしく「可愛いよな?こいつ」と離さない。
「同類相憐むとはよく言ったものだよな?
悠貴、お前カンガルーのぬいぐるみ買えば?
潤はコアラ。オーストラリア辺りで売ってるんじゃないか?」
「では、先輩が買って下さいよ!」
「まぁ、俺がオーストラリア行く機会が有ればな」
「ねね、廉、ねね」
「なんだよ?【玲音Jr.】は、やらないぞ」
「!!何でだよ?」
「なんとなく………」
でも結局後日、【玲音Jr.】は玲音の抱き枕になった。




