Inspiration
1.Inspiration.
東京に戻る日
玲音は【玲音Jr.】を抱き抱えロービーにいた。
「パンダ!お前、そんなにそのぬいぐるみが気に入ったのか?」
「可愛いじゃん」
「玲音!自分の荷物位、自分で持てよ!」
「廉。そんなに怒ると幸せが逃げて行くよ?」
「なんだ?それ?変な宗教か?入るなよ?」
藤堂がやってきた。
「ん?玲音様それ何ですか?」
「【玲音Jr.】可愛いでしょ?」
藤堂が大笑する。
「し、失礼…ハハハ、な、なんで?ハハハ」
「藤堂先輩も齋藤先輩と笑いのつぼ一緒なんだな?」と千景は廉に囁く。
丁度ロビーに来た悠貴と潤はその場を察して理解した。
時宗もやってきた。
「そろそろ帰ろか?………。玲音それどうしたの?」
「【玲音Jr.】可愛いでしょ?」
藤堂は笑いを堪えるのに必死になっている。
「……可愛いねぇ…………。
しかし、ネーミングが自虐的だね………。
ぬいぐるみ欲しかったの?」
「ん?言っておくけど親父!俺は別にぬいぐるみを集める趣味はないよ?
この子だけだからね!」
「う~ん、そう。でも何処から来たの?わざわざ買って持ってきたの?」
「廉からもらったの」
「あげて無いだろう?勝手に自分の物にしたんだろ?」
「廉?ぬいぐるみが好きなのか?」
「え?いえいえ、勘違いからもらっただけです」
「そう?そんなにパンダのぬいぐるみ欲しいなら送るよ。あれと同じのがいい?
それとももっと大きいの?
ぬいぐるみくらいなら、いつでも買ってあげるよ?」
「いえ、要りません。置く場所も無いですから」
藤堂はそのやり取りを見て我慢仕切れず笑い転げる。
「何だかんだ言っても、まだ子供なんだなぁ。ぬいぐるみかぁ~」
時宗はぶつぶつ言っている。
見送りに来た齋藤も、玲音と【玲音Jr.】のツーショットを見て笑い転げる。
「玲音君………。そ、それ、そんなにハハハハハハ気に入ったの?ハハハ」
「可愛いじゃん!。なんで藤堂先輩と齋藤先輩そんなに笑うのか理解出来ない!!」
「そりゃあな」と藤堂と齋藤は顔合わせて笑い転げる。
『宝塚の男役がパンダのぬいぐるみに抱き抱えてる様だもんな。』と口を揃えていう。それを聞いた千景達は、なるほどねと笑う。
「!!!!!なんでだよ!髪型だって元に戻したし、化粧なんてしていないじゃないか!目と頭がおかしいんじゃないか?」
「すいません…ハハハ」
「玲音、考えてみろよ!普通ホテルのロビーに、特大のパンダのぬいぐるみ抱き抱えた男なんていないだろ?居るとすれば女性だろ?」
「【玲音Jr.】バッグには入らないじゃんか!段ボールは嵩張るし。それなら廉が抱き抱えて持って帰ってよ」
「………俺?」
「丁寧に扱ってよ?汚したら怒るよ?」
「なんでだよ!やらないと言っても勝手に抱き枕にして取り込んで!そのうえ俺に運べって?お前は何様のつもりなんだ!」
「抱き枕!ハハハハハハ」
また齋藤と藤堂のつぼに入ったらしい。
「だって夜、寂しそうだったんだよ?可哀想じゃんか!」
「お前が寂しいからだろ?こないだ雷落ちてたもんな」
「パンダ?雷怖いのか?」
「………怖くなんか。……ないやい………」
「あ~。玲音お前、まだあの事がトラウマになっているのか?」
時宗は玲音を見ながら言う。
「ん?なんかあったんですか?こいつ、夜中に雷鳴ると絶対自分の部屋で1人で寝ないですよ?雷なる度、俺の部屋に来てベットで寝るので俺ソファで寝る羽目になるですよ?
俺が仕方無く玲音の部屋で寝ようとしても【俺を1人にするな!】と怒るし………」
「あ~。すまないね廉。昔、ロンドンに行った時、じいさんからロンドン塔の幽霊の話を散々聞かされて、からかわれてたんだが………。
まぁ、じいさんの話位なら、玲音も怖がりはしなかったんだが………。
ある日、一度家族でロンドン塔に観光に行った時に天気が急変してね、まぁロンドンの天気は不安定だから不思議は無いんだが……。館内に居る時に雷が落ちて停電になったんだよ。
その時、玲音が見えないものが見えたって……。それ以来、雷を嫌ってね。
未だにそれがトラウマになっているとはね」
「ちゃんと見えたんだよ!2人の子供が!!
忽然と現れて壁のなかに消えたんだ。
あの場所には、もう絶対に行かない。二度と行かない!」
「2人子供って ?もしかして?幽閉されたまま行方不明になった2人の王子? 」
千景が聞く。
「エドワード5世とヨーク公リチャードの事ですか?」と言って藤堂が怖がる。
「………」
「本当に居るんですか?………イギリスに滞在中に観光する暇が、もし出来たとしてもロンドン塔は辞めて置きます。
まぁ何十回とロンドンには行ってますがそんな暇を貰えた事は無いですが………」
「何?藤堂君、ロンドン見物したかったの?言ってくれれば……」
「言えば休暇を貰えたんですか?」
「う~ん……。まぁ今度じいさんの家でも泊まるか? 歴史ある由緒正しい建物だぞ一般に公開もされてもないし。
じいさんがちょっと変わってるがな?」
「統轄長、話反らしてますよね?」
「何のことかな?ハハハ」
「十碧も怖がりだからな………」
「拓哉ほど、神経が図太く無いんですよ!」
2.Night Parade of One Hundred Demons.
「ロンドンと京都どっちが幽霊多いのかな?」
悠貴が潤に訪ねる。
「魑魅魍魎が跳梁跋扈するくらいだから京都じゃない?
昔、百鬼夜行が一条通りに出たって」
「潤…。訳わからない単語多すぎ。もっと解りやすく言ってよ?」
「廉先輩、説明お願い」
「何で俺なんだよ?」
「俺、上手く説明出来ない」
「千景、説明してやれよ?」
「俺、語学は得意でないから無理」
「う~ん、魑魅魍魎は山や川の怪物。様々な化け物や妖怪変化したもの 。
【魑魅】が山林の気から生じる化け物。
【魍魎】が山川や木石の精霊のこと。
英語では"evil spirits of rivers and mountains"
跳梁跋扈は悪い人など権勢を欲しいままにして、我がままにのさばること。
【跋】は踏む意。
【扈】は魚をとる竹籠。
【魚が籠にはいらず、踊り跳ねること】から我もの顔に振る舞うこと。のさばり、はびこることだ。
英語では" being rampant, domination"
あとは何?」
「百鬼夜行?」
「百鬼夜行は学校で習ったろ?
日本の説話などに登場する、深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れまたは、彼らの行進だよ。
【宇治拾遺物語】や【古今物語集】や【古本説話集】に出てくるし潤の言った【 一条桟布屋鬼の事】とか昔の物語に出てくるし、昔に描かれた絵巻物が数多く残っており、重要文化財になってる」
「流石、物知り博士ですね」
藤堂が感心する。
「まいったな俺、全然覚えて無いわ」
齋藤は笑う。
「拓哉は歴史殆ど興味有りませんからね。よく退学にならなかったもんです」
「余り覚えていても生活には役にたちませんけどね」と廉は言う。
「百鬼夜行を間近で見ると、死んでしまうんだぞ!!
正月、2月子日、3月・4月午日、5月・6月巳日、7月・8月戌日、9月・10月未日、11月・12月辰日には百鬼夜行が起こるんだ。
もし間近に見る様な羽目になったら 『 カタシハヤ、エカセニクリニ、タメルサケ、テエヒ、アシエヒ、ワレシコニケリ』という呪文を唱えるんだ」
玲音が泣きそうな声で言う。
「玲音お前、よく知ってるな?」
廉が感心する。
「修学旅行に行く前に調べたんだよ!
また、変な者に出くわしたら嫌だから…」
「でも、パンダ、嵐山方面行きたがったよな?」
「ん?うん、川下り楽しそうじゃんか」
「 嵐山は京都の結界の外にある【魔界】への入り口と言われている場所だぞ?さまざまな怪異の伝説がある地域なのにな」
千景は呆れたように言う。
「!!!」
「廉、歴史が好きなのかい?」
時宗が廉を見ながら心配そうに聞く。
「え?いや。悠貴が放って置くと歴史が残念な結果にしかならないから…。教えていたら覚えただけです」
「そう、よかったよ。歴史学者にでもなりたいのかと……しかし、玲音?」
「ん?」
「その【玲音Jr.】と悪霊祓いどう関係あるんだい?」
「【玲音Jr.】は魔除けの御札何かじゃないよ!!!」
(幽霊ね……)
廉は、帰りの車の中で隣の【玲音Jr.】と一緒にまた、あの日見たデンドゥール神殿の展示場所での出来事を思い返していた。
黒いスーツの人物は幽霊だったのか?
でも、あの人物は俺を知っていた。
『やぁ、久しぶりだね。』と言う位だからよく知ってる人の幽霊?
でも、俺以外、玲音さえ見えてなかった。
怖くは無かった。でも懐かしい訳でもなかった。
『その様子だと、まだ僕の事思い出せて無いようだね?』と言うことは俺の記憶が無いことを知ってる?なぜ?
『君は誰?君は何の為にそこに居る?』
この言葉、事故に合ってから、ずっと問われている気がする。
幽霊が夢の中にでも出てこれる?
そんな事を考えているうち
いつのまにか廉は、【玲音Jr.】に抱かれて眠ってた。




