Nationality
1.Nationality.
大学の講義もはじまり、ドライビングスクールとバイトを日々忙しくこなしていた3人。
廉達のNY行きが差し迫ったある日の朝。
「廉、俺のパスポートやばくない?」
「ん?なんで?」
「だってさ、髪型違うじゃん?みんなあの時、俺のこと分かってくれなかったよね?
入出国審査引っ掛からないかな?」
「そう思うなら、なんでそんな髪型にしたんだよ?」
「だってさ廉、NYなんて絶対行かないと思ったからさ。それに入学式の時、目立ちたく無くてさぁ」
「いや絶対目立っているから、お前の場合。考えて見ろよ?中等科からほぼエスカレーター式の学園で退学者は居ても入学者は皆無なのに、お前の事知らない奴、居ないだろ?それが入出国審査に引っ掛かかるかもと、心配する格好して話題にならないわけ無いだろ?」
「朝から何を騒いでる?」
部屋から千景が出て来た。
「おはよう千景、朝たべるか?」
「あぁ、でも俺の分あるの?」
「仕方無いから作ってやるよ!」
「廉は、いいお嫁さんになるよ」
「なんで【お嫁さん】なんだよ!」
「お前、女なら俺、即効プロポーズするんだかなぁ?残念だ」
「俺は心底、男でよかったよ」
「ねぇ廉!どうしょう?真剣に考えてよ!」
「あぁ忘れてた」
「髪脱色するか、そのまま押し通すかしか無いだろ?」
「誰、押し倒すんだ?」
「押し通すだ!」
千景は、テーブルにつき廉から作って貰った朝食を食べながら会話に参加する。
「いいなぁ、あの財界の大御所のパーティだろ?俺も行ってみたいな?」
「来れば?」
「へ?」
千景が驚いてスクランブルエッグをこぼす。
「千景、子供じゃ無いんだからこぼすなよ!」
「パンダ!今、何と言った?」
「来ればと………」
「連れて行ってくれるのか?」
「いいんじゃない?藤堂先輩も同行するし、あんなに人が多いんだから一人増えてもわかんないじゃない?多い方が楽しいし、それより千景!俺が無事に入国審査を通る方法考えてよ!」
「そうか、そうと決まれば飛行機の切符取らねば。あぁ、パスポート期限切れてなかったよな?そうだ!バイト休む連絡もしないとな」
「おい、千景!」
千景は、既に自分の世界に入り、朝食も半分も手をつけず自分の部屋に戻って行った。
「玲音、責任持ってちゃんと千景を連れていけよ?」
「責任持って付いて来るよ、千景は……」
翌日、玲音は藤堂の執務室に行き相談をする。
「藤堂先輩、ちょっといい?」
「ん?どうされました?」
「千景もNY行きたいって言って居るんだけど………」
「統轄長の許可さえあれば、問題無いと思われますが?」
「後さぁ~。このパスポートと髪型違うでしょ?入国審査は大丈夫かなぁ?」
「あぁ……………」
「言葉失わないでよ!」
「う~ん。もし仮に、私が空港の入国審査官だとすると……」
「うん、だとすると?」
「残念ながら、玲音様は御通しさせませんね」
「………何とかならない?」
「何とかと言われましても…。密入国ですかね?」
「捕まるじゃんか!」
「冗談ですよ」
「真面目に冗談言わないでよ」
「何で取り直し、しなかったんですか?日本のパスポートは1週間で出来るのに……」
「早く教えてよ!」
「聞かれてませんし、アメリカは入国審査厳しい国なんですよ?
まぁ審査通らなくても退去命令出されるだけで、前科付くわけでも無いですからね。
" What can't be cured must be endured."」
英語の部分は小声で茶化す様に言った。
「………諦めが肝心てこと? 」
「 That's right!」
「藤堂先輩…。NY行く話、先輩から俺聞いたんだけど…?行かなくていいの?」
「あぁぁ、冗談が過ぎました。玲音様はまだ22歳以下なので国籍選ばれてないですよね?」
「国籍?」
「父親が日本人、母親はイギリス人、産まれたのはNYと聞いて居ます。
アメリカは 生得権と言う権利が有ります。なので今、玲音様は3つの国籍が有ります。まだ国籍を選んで無いと思いますので、パスポートは3つ持ってらしゃるかと思いますが?
ここからは裏技になりますので、あまり大きな声では言えませんが……」
「うん、それで?」
玲音は目を輝かせ藤堂の話しに期待をする。
「日本を出国する時は日本のパスポート、アメリカに入国する時はアメリカのパスポートで退去命令の問題無いと思われますが?この意味分かります?」
「日本人として、日本を出国して、アメリカ人としてアメリカに帰国すると言うこと?」
「そうです。いくら入国審査厳しいと言っても、自国の人間を入国させないとかは通常善良な一般国民であれば有り得ませんから。
でも帰国の事が有りますから帰りはアメリカ人で出国し、日本人で入国ですよ」
「やっぱり藤堂先輩は天才だね!尊敬しちゃうな~。あっ日本のパスポートしか期限見て無かった……。アメリカのパスポート切れていたらどうしよう?」
「ちゃんと私が、把握してますから大丈夫ですよ。但し、紛失とかまでは、わかりませんからね!」
「でも、写真は……」
「学生証は今の髪型ですのね?」
「うん」
「それちゃんと携帯して必要に応じて見せるしか無いですね。一番はいいのは国際免許証ですが免許証まだですよね?
これからはよく考えて髪型変えられる事をお勧めします。それにこんな裏技は、誰もが出来る訳でも有りませんからね」
「わかったよ。ありがとう」
統轄長室
藤堂が時宗に報告をしていた。
「先程、玲音様より御相談有りまして」
「うん」
「千景様が同行したいと」
「いいんじゃない?親戚みたいなもんだし、飛行機の定員の心配はないだろ?
ホテルだけ追加で取ってあげれば大丈夫だろう」
「後もう1つ」
「うん」
「入出国審査の件で」
「あ~ぁ髪型?引っ掛かるかな?柊木とか真剣にわかんなかったんだよな?」
「はい、私も分かりませんでしたよ」
「困ったもんだなぁ」
「取り敢えずアメリカと日本のパスポート使い分け指示しました。まだ身分証無いので学生証携帯するようにはいいましたが……」
「そうか、ありがとう」
珍しく3人が揃った夕食時
「千景、休み取れたのか?」
「勿論。ところでパンダ君、お父様の了承は得てくれた?」
「藤堂先輩に言っておいたから大丈夫じゃない?飛行機のチケットも要らないよ。
一緒に行くからビジネスジェット機に乗ればいいって。
ホテルも同じ所追加で取るって五十嵐のおじさんの許可出たの?」
「親父が何と言おうと俺は行く、勘当されてもな!」
「おい」
「1つ不幸なお知らせと、もう1ついいお知らせが……」
「ん?」
「どっちからがいい?」
「悪い方からかな?」
「樹里亜も来るって、おばさんの所にも招待状来てるらしい」
「……………。最近、顔見て無かったから存在感が空気だったもんな………」と千景がいう。
「……………やっぱり俺、行くの辞めようかな……。俺は、要らないだろ?」と廉は呟く。
『…………。』3人の溜め息が部屋に響く。
「もう1つは、潤が会いにNY来るって」
「潤もパーティ来るのか?」と千景が言う。
「パーティは遠慮しておくって」
「潤、Homesick 治ったのかな?」と廉は心配する。
その次の日、朝早く悠貴がマンションに乗り込んできた。
「ひどい!ひどいよ!僕だけ仲間外れ?ひどすぎるよ!」
「何?怒ってるんだ?」と廉が悠貴をリビングに入れる。
「昨夜、潤から聞いたんだ。先輩達3人と潤がNYで会うって!俺も誘ってくれてもいいじゃないか?」と悠貴が訴える。
「あぁ、ごめんね悠貴。成り行きで千景が行きたいっていうから。結果的に悠貴誘えて無かったんだ。わざとじゃ無いからさ。
悠貴さえよければ、悠貴も一緒に行こうよ?パスポート有るよね?」と玲音が優しく諭す。
「連れて行ってくれるの?」
「勿論さ、両親に了承してもらってね」
「悠貴、お前朝ご飯は食べるか?何にも食べずに寮飛び出してきたんだろ?」と廉が言う。
「うん」とご機嫌が治った悠貴が笑いながら答える。
「なら、そこに座って待ってろ。今から作ってやるからさ」
統轄長室
藤堂が入ってくる。
「あの?玲音様が来られてますが?如何しましょう?」
「え?今日バイトの日だっけ?」
「いや、話があると大学の講義抜けて来たようです」
「さぼったの?」
「平たく言えば…」
「面倒な事かなぁ………。それとも何か怒らせたか?」
「如何しましょう?」
「どのくらい時間かかるのか聞いてくれる?」
「はい、わかりました。しかし、統轄長その仕事だけは今日中に済ませて下さいよ!
"Never put off till tomorrow what may be done today. "この言葉の意味わかりますよね?」
「わかるよ ?【今日できることを明日に延ばすな】だろ?
でも、今日出来ないから明日に伸ばしてるんだが………。
藤堂君、顔怖いよ?」
「こないだからスケジュール以外の他の事ばかりして、全然必要な仕事は進んで無いんですよ?これ以上は調整不可能ですからね?お願いしましたからね!」
「わかったから、聞いてきて」
(玲音、手伝ってくれないかなぁ。と窓から外を眺める。)
すぐに藤堂が帰ってきたと思えば、隣に玲音もいた。
「すぐに済むと言われるので連れて来ました。では、統轄長先程の件くれぐれもよろしくお願いしますよ?」
「わかったから」
藤堂が出て行く。
「どうした?」
「う~ん、NYに悠貴も連れてって」
「ん?」
「今日、朝一番に悠貴に一人だけ仲間外れでひどすぎるよ!って怒られたんだ。
たまたま今、潤がアメリカに留学中で軽いホームシヨックかかっているから会いにNYまで来るって。そこに千景がパーティー行きたいって…。結果的に悠貴だけ誘えてなくてさぁ……」
「悠貴君はパスポート有るの?」
「うん」
「もし、ホテル部屋取れなかったら廉と玲音は相部屋になってもいいかい?」
「そんなの全然、大丈夫」
「悠貴君の御両親の了承は?」
「取るって」
「そうか、なら一緒に行けばいい」
「ありがとう」
「あと、玲音、藤堂君から説明受けたと思うが、今お前は、国籍3つあるだろ?
玲音が好きな国籍選べる様にしているんだが、日本では国籍は一つしか持てない22歳までにどうするか本人が決めなければならない。
だから、玲音、どこの国が自分に合っているか?将来どこの国に住みたいかよく考えておきなさい。
【権利は、義務を果すからこそ発生する】んだからな?
いいとこばかりではないぞ、ちゃんと自分に合う国を探しなさい。いいな?」
「うん、わかったよ」
「しかし、大学の講義サボった罰として、半日私の仕事の手伝いしなさい」
「うっ、仕方ないなぁ~。わかったよ。何すればいいの?」
「こないだ報告書をチェックして貰ったよね」
「うん」
「それを元に私が付け足したものがこれなんだが、この結果を資料としてメールに添付して私のアドレスから報告書作成者に資料を指示通りに作成し直すようにメールしておいてくれ。それ終わったら、これ英語に直して藤堂君に渡してくれ。
それだけ、できたら解放してあげよう。免許取りにいくんだろ?」
「わかったよ。即効で済ますよ!」
親子が仕事していると、また部屋にノック音がする。
「どうぞ」
「失礼します」と藤堂がやって来た。
「どうした?」
「急な来客が……。あれ、玲音様お帰りにはなって無かったんですね」
「親父に、こき使われてるんだ」
「来客って誰かな?」
「藤春家の方だと」
「ん?香織姉さんかい?」
「いえ、もっと若いお嬢さんなんですが」
「あぁ、樹里亜だ!」
「親父、俺は秘書室で仕事するよ。樹里亜には、俺ここに居るって言わないでよ」と統轄長室飛び出すとそこに樹里亜がいた。
「なんでサクラがここにいるの?」
「いや、仕事中なんだ」と報告書の山見せる。
「じゃあね」と逃げた。
「で、どうしましょ?」
藤堂は何がなんだか分かんないみたいで呆然と聞く。
「まぁ、通して」
「失礼します。おひさしぶりです。おじ様」
「本当に久しぶりだね?樹里亜、姉さん達は元気?」
「はい、お陰様で」
「今日はどういった用事かな?」
「NYのパーティーなんですが両親が急な仕事入って行けなくなったんですが………。
私、後学のためにどうしても参加したくて、おば様に相談したら、おじ様達と一緒に来ればと言って頂いたので頼みに参りました」
「そうか、姉さん達は残念だったね。ホテルは取ってあるのかい?」
「はい」
「なら問題ないよ。一緒に行こう」
「ありがとうございます。後、これ、たいした物では無いんですが秘書室の方々とお召し上がりください」
「気を使わなくてもいいんだよ?」
「たいした物ではないので」
「ありがとう皆喜ぶよ、連絡先だけ藤堂に伝えておいてくれるかい?藤堂から予定連絡させるから」
「はいわかりました。よろしくお願いいたします」
樹里亜は出て行った。




