Identity
1.Identity.
藤堂は帰国後、この前のフランス語の件を柊木から報告を受けた。
「藤堂室長、バイト君達2人ともフランス語ペラペラなんて秘書室の他のメンバー立つ瀬無いですよ?まぁ実際は、助かりましたけどね。
しかし、本当にビックリしましたよ。そう言う事は事前に教えておいて下さいよ!
部下の能力知って置かないと適切な指示出せませんよ?」
「そうですか、なら今、教えておいてあげるよ。
彼らは 英語は勿論、ドイツ語、フランス語、イタリア語も日常会話くらいはたしなんでるよ」
「え?」
「本人達に聞いてみなよ。秘書室はもう通訳は要らないかもしれませんね?」
「藤堂室長、やはり俺にはそんな出来る人に指示、命令なんか出せませんよ?」
「それは困ります。語学が出来ても、まだ学生なんですからね。
そこを効率よく上手く仕事を振り分ければ、秘書室の凄い戦力になりますよ。
柊木君の力量次第じゃないですか?あの2人が組めば統轄長を上回るかもしれませんね」
「なら尚更、指示・命令なんてできませんよ~。勘弁してください」
「大丈夫ですよ?彼らはバイトとしての立場わきまえているし、反対に、今バイト君達をここから放り出してご覧なさい、それこそ君に将来は有りませんよ!」
「そんな………。自分よりもできる人間の上の立場で働くほど働きにくい事ないんですよ?
当初は藤堂さんが面倒見るって言ってたじゃ無いですか?」
「仕方ないでしょ?統轄長の業務に同行しないと行けないのですから、私がここに居る間は指示はしますよ。
まぁ、柊木君!君なら大丈夫ですよ!頑張って下さいね。
あぁそうだ忘れていた。後、あの2人は来月末NYに連れて行くから帰国まではバイトは休みね。仕事上手く配分しておかないと、あの2人の穴埋めはきついですよ?
今からしっかり仕事の割り振り調整しておいて下さいね」
「来月末って承認書の仕分けとか、あるじゃないですか?あと定例報告会も………」
「だから、こうして前もって言ってるでしょ?私にどうしろと言うんですか?」と藤堂がぼやく。
「廉、今日はバイト休みだよね?俺、散髪いってくる」
「いってらしゃい。帰り変なもん買って帰るなよ?」
「変なもんって?まぁいいや、いってくる」
リビングで1人廉は珈琲飲んで居ると遅いお目覚めの千景がやって来た。
「何か、お前の顔見るのひさしぶりだな?」
「そう言われれば、そうだな?」
「今日は遅い出勤か?」
「いや、ひさしぶりの休みだ」
「そうか?」
「何みてるんだ?」
「ん?高等科卒業したから、晴れて自由に免許取れるようになっただろ?
今のうちにバイクと自動車免許取ろうかなと。ただ結構な金額掛かるんだよな?
まぁ【お前達の自転車】に比べると微々たるものだがな~」
「………」
千景は返す言葉が無かった。
「バイクかぁ~、通勤楽になるなぁ。俺も取ろうかな?」
「案内書貰いに行くから一緒に貰って来ようか?」
「いや、俺も暇だから、一緒について行くよ」
「なら昼過ぎにでも行くか?玲音も帰って来るだろうし」
「パンダもか?」
「黙って行くと怒り狂うからな」
「流石、パンダだな、ああ見えてなりは熊と同じだもんな?
それじゃあ、それまで俺、もう一寝入りするわ。行く時、廉起こして」
「あぁ了解」
リビングのソファで廉も、うとうと浅い眠りに入っていた。何時間か経った頃。
「ただいま~」と玲音が帰ってきた。
廉は、寝ぼけ様に玲音の姿を見て泥棒でも入ってきたのかと言うくらい、びっくりして言葉を失っていた。
その視線の先にはイメージチェンジと言うより、変装に近い姿の玲音がいた。
茶髪は真っ黒に染め、天然のウエーブは真っ直ぐにし、短めに切り揃え、メガネかけていた。
「ねね廉。この髪型、似合う?」
「う~ん」
「え?似合わない?おかしい?」
「うっさいな、何騒いで居るんだ?」
千景が部屋から出てきて玲音を見るなり
「お前誰だ?」
「お前、メガネ要らないだろ?視力いいんだから」
「パソコン用に買った。この髪型に似合うかなと思って」
「みんなして何だよ?似合わない?美容院の兄ちゃんは、よく似合ってるって言ってくれたのに~」
「似合うか?似合わないか?と聞かれれば、似合ってるが正解かも知れないが、パンダでは無いみたいだな?」
「そうだな。アイデンティティが無くなった感じだな?」
「えー酷い言われ様だなぁ。ちょっと気に入ってたのに……」
「違和感はその真っ黒な髪に真っ白な肌と掘りの深さだな?見かけ的には本物のパンダに近付いたが………。
だが、個性は、パンダを黒く染め上げてパンダですと言っても黒熊にしか見えない感じだな?」
「まぁ、もうやってしまったんだ。見慣れるしかないな」
「そうだな」
「何だよ!何か酷い言われ様だ!」
「それより玲音。昼から免許の案内書貰いに行くがお前どうする?」
「勿論、行く!」
「では昼飯食べて出掛けるか?」
2. Driver's license.
教習所の見学を終え、案内書を貰い、帰る途中、千景は親に一応許可を貰いに実家の病院に帰り、玲音と廉は歩きながら相談していた。
「おばさんは今、イギリスなんだよな?」
「NYでなかった?」
「おじさんは帰って来てたな?おじさんに許可貰いに行くか?」
「うん」
事務所に着くなり、玲音を見た受付嬢は廉から説明を受けて唖然とし、声すら出なかった。
秘書室では、最初は誰も玲音と気付かれて無く、柊木から廉に「流石に廉君のご友人でも秘書室に部外者は………」と注意されて廉は苦笑しながら柊木に「よく見て下さいよ」と言うと、腰を抜かす程びっくりしていた。
その騒ぎに気づいて藤堂も出てきたが、やはり最初は気付かず廉が説明すると、言葉を失っていた。
流石に時宗だけは、すぐ解ったみたいだが、見るなり大笑いしていた。
時宗の時間が空くまで秘書室の仕事を手伝うことにした2人は自分達のデスクで待っていた。
「人ってさぁ~。見た目でしか個人の識別しない生き物なんだな?」
玲音はその間ブツブツ不平を言っていた。
(他に何で識別するんだよ!)と廉は思いながら聞き流していた。
時間が取れたのか、藤堂がやって来た。
「柊木から聞きました。こないだのフランス語の件、ありがとうございます。助かりました」
「いえ、とんでもないです。後から、出者張りすぎたかな?とも思ったのですけどね」と廉は笑った。
「いえいえ、本当に助かりました。ありがとうございます。
しかし、玲音様思い切りましたね」
「う~ん。茶髪だと日本では軽い男に見られるから染めてみたら、廉達からはアイデンティティの喪失だとか言われて、散々だよ」
藤堂はなんと言っていいか分からず苦笑した。
「来月末のNYの話し聞いてますか?」と藤堂は2人に言う。
「ん?」
「廉様と玲音様2人とも私達と一緒にNYに来て貰う様に統轄長から指示されてます」
「藤堂先輩"君"付で良いですよ」
「しかし、勤務内ならともかく勤務外ですから」
「でもその境界線、曖昧だし何よりも面倒ですから」
「では、御言葉に甘えて」と笑った。
「俺達NYに行って何するんですか?」
「あぁ、アメリカの経済界の重鎮が開くパーティがあって、そのパーティ家族でって招待状来て居るんですよ。
このパーティ何十年に1度の各界の著名人の集まる大きなパーティなんですよ。御二人にも、いい経験になると思いますよ?」と藤堂は説明する。
「俺もですか?玲音だけで………」
「廉、行かないなら俺も行かないよ」
「おい」
「統轄長は『【2人の息子】にも来るように手配してくれ』と私に命令されてますので、行く行かないの交渉は、統轄長とお願いします」と笑って言われた。
「あっ。今日は何の用事ですか?すっかり聞くの忘れていました」
「今、大学も講義始まってないし、バイトも少し落ち着いているから免許取りたくて許可貰いに来ました」
「なるほど、車ですか?」
「俺は、車とバイク、両方欲しいのですが」
「俺も、両方取る」
「そうですか、もう少ししたら統轄長の時間が取れると思うので待ってて下さいね。主旨は伝えて置きます」
「すいません。急に押しかけてきて」
「いえ、空き時間とはいえ、仕事を手伝っていただいて、助かりますからね。何時でも歓迎しますよ」と藤堂は笑って去って行った。
1時間くらいして、秘書室に時宗がやって来た。
「悪いね。待たして」
「いえ、すいません」
「いやなに、ハンバーグの借りもあるしな」とぼそっと時宗が呟く。
「ん?」
「いや、こっちの話しだ。な玲音?お手柔らかに頼むよ?取り敢えず応接室で聞くよ」
3人は、応接室に移り腰かける。
「さてと、免許が取りたいんだって?」
「うん、親父!バイクと車の免許を取ってもいい?」
「両方かい?」
「うん」
「バイクは事故がなぁ怖いからねぇ。車くらいは取っておいた方がいいと思うがぁ~」
「バイクも車も当分の間は買う予定ないから免許とっておくだけなんですが………」
「え?バイク買わないの?」と玲音が言う。
「今、必要無いだろ?」
「そうだな、免許だけなら許そう。
でも、もし乗るなら車か原付位にしてくれ。
二輪車の事故率が高いからね。それに事故の負傷も車に比べたら重傷なのや、死亡率も高いからね。原付でも気をつけて貰わないとね?
通う教習所は決めたのかい?」
「ええ、先程見学に行ってきました」
「なるほど、案内書見せて貰えるかい?」
廉は貰ってきたパンフレットを渡す。
時宗はパンフレットに目を通して言う
「すぐに通えるように手配しておくから、来月末はNYに付き合ってくれよ?」
「手配って?」
「講習料や実技演習代とか受験料が要るだろ?」
「あぁ、それなら貯金で」
「でも、結構な金額だよ?貯金足りる?足りたとしても、全部無くなるではないか?
それに、隣の道楽者はそんなお金を持って無いように見えるんだが?」
時宗の指摘を受け廉が玲音を見る。
玲音はニッコリ笑って「流石親父!俺の事をよく理解してる」と言う。
「玲音、今までの小遣いやバイト代は、何に使ってるんだ?貯めて無いのか?」
「少しは貯めては居るよ?5万位はあるかな?」
「………本当に少しだな?」と廉は、呆れながら玲音をみる。
「玲音、5万じゃあ……。もう少し廉を見習って倹約と言う事を学ぶべきだな?
"Money does not grow on trees.”(お金は木には生らない。)って言うだろ?
まぁ、しかし今回は頑張って家賃も出して居るみたいだし、お前達がバイトに励んでくれているみたいだから特別に、ボーナスとして私が2人とも全額出すから。
でも、免許とっても運転する時はちゃんと相談すると約束はしてくれよ。いいね?」
「ありがとうございます」
「うん、解ったよ」
「しかし、玲音、何でそんなヘアスタイルにしたんだ?」
「茶髪だと軽い男に見られるし…。目立つじゃんか?」
「なるほどね。でも、私は前の色の方が好きだけどなぁ~」
「皆して俺のアイデンティティを否定するなよ!」




