Quarrel between brothers
1.Quarrel between brothers.
喧嘩と言うものは、実にくだらない事や些細な事から起こる。
この事件も、そんな些細な意地の張り合いから起きた出来事である。
「廉!今週末、映画見に行けないってどういうことなんだよ?」
凄い剣幕で玲音が部屋に入ってくる。
廉はソファに座りパソコンに気を取られている。
「ん?悪い。来週末にしてくれよ」
「だからさ、何でだよ?急にメールだけで【行けない】って。
傍に居るんだから直接理由を言えよ!」
「急に用が出来たんだよ。だから、すまないけど、ずらしてくれよ。
まだ来週末でもお前の観たがっていた映画は上映しているだろ?」
「いや、だからその用事は、なんだって聞いてるんじゃないか?」
「玲音。お前に、いちいち俺の行動を全部、話す必要は無いだろ?」
「そっちが勝手にキャンセルするんだから、俺には、理由聞くくらいの権利はあるだろ?」
「だから、ドタキャンについてはちゃんと謝っているだろ?」
「もういい、勝手にしろよ!廉のアホ!」
「アホって、たかが映画を来週末してくれって言っているだけで、行かないとは言って無いだろ?なんでそこまでお前に束縛されなければ、ならないんだ?」
「束縛なんかしてねーよ!
誰がキャンセルしたらダメとか、俺に無理でもつきあえとか、強制しているんだよ!
ただ【その理由を教えろよ!】って言っているだけだ」
玲音はそう吐き捨てて、怒り心頭で出ていった。
2.仲直りのタイミング
翌日、校舎屋上
「あっ、いたいた」と千景がやって来た。
「お前、何かあるといつもここだよな?」
廉は屋上でぼーっと空を見上げていた。
「俺のプライベート空間はここしか無いからな」
「昨夜パンダとド派手に喧嘩してたな?」と言いながら千景は廉の隣に座る。
「何で知っているんだ?」
廉はびっくりしている。
「あれだけ怒鳴り合っていれば、隣の部屋なら聞こえるさ」
「あぁ、すまん。騒いでうるさかったな。」
「べつに毎日してるわけでもないから、構わないが、お前が怒鳴って居るのも珍しいなぁと思ってさ。
内面に貯めるより吐き出した方がいいしな。
まぁ、俺から見れば兄弟喧嘩出来る相手がいて羨ましいよ。
しかし、パンダが兄貴と言うにのは、俺だったら微妙な感じがするな。
まぁそれはさておき喧嘩の原因は何だ?
パンダ相当怒って居るみたいだな?今日は、学園にも来てないぞ?」
「世の中、誕生日の早いか遅いかで上下が決まるのもどうかと思うよ。
不条理この上無い。
まぁ、そんなことはどうでもいいが千景から玲音に学園に来るように言ってくれないか?」
「俺がどうこういっても、あの石頭は聞きはしないぜ?
仲裁するにも、喧嘩の原因を知らないとやりようがないぞ?きちんと詳しく教えろよ?」
「今週末、玲音と映画を観に行く約束を反故にしたんだよ」
「たったそれだけの事で、あんなに怒っているのか?」
「いや、その理由を聞かれても誤魔化して言わなかったからだと思う」
「廉。お前の事だからきちんと理由は有るんだろ?」
「まぁ………」
「俺にも、言えないのか?」
「そう言う訳ではないが、理由を話したら千景。協力してくれるか?」
「理由次第だな?」
「もうすぐ玲音の誕生日だろ?」
「あぁ、もうそんな時期か?
またお兄ちゃんになるのか?」
千景が少し茶化す。
「それは、考えないようにしているのだからそこを言うなよ!」
「すまん、すまん。それで?」
「この夏、玲音の好きなロックバンドの来日公演あるだろ?
玲音の誕生日プレゼントにそのチケットを手に入れたくて色々調べたら、プロモーターがおじさんの関連会社だったから藤堂先輩にお願いしてみたんだよ。
そしたら交換条件に、この週明け大きな会議があってその準備に猫の手も借りたいから会場準備を手伝ってくれないか?って。
そのバイト代で特等席用意してくれるって言われたからさ。
玲音に言うとプレゼントがばれるだろ?
だから言わなかったら、あの馬鹿、凄い剣幕で怒ってさぁ~。
今日は、朝から顔すら見せないんだ」
「ふーん、なるほどね?
で、俺に何しろと?」
「適当に何とか、ごまかせれないかなと」
「 事と場合によっては、下手すると火に油を注ぐ結果になりかねないぞ?」
「千景。お前なら、それは上手く回避できるだろ?」
「そうだなぁ、そのチケット俺の分も確保してくれるなら……。いや悠貴と潤の分も用意できるなら何とかしてやろう」
「チケット代だけで、バイトの料金以上になるじゃないか!」
「でも俺一人ではどうやっても無理だ。悠貴と潤にも手伝って貰わないとな?
それに、チケットのお金は払うさ。チケットを確保してもらえればいいんだよ」
「まぁ、みんな揃って行く方が玲音も喜ぶからな。藤堂先輩に聞いてみるから頼むよ」
「バイトは何時からなんだ?9時から準備が終わるまで」
「放課後、作戦会議するから部室に来い」
「わかったよ」
3.奇想天外な出来事
放課後、部室
「今日、玲音先輩は休みみたいだ」
つまらなそうに携帯をいじりながら悠貴が言う。
「珍しいね」
潤が本を読みながら返答する。
そこに廉が部室に入って来る。
「廉先輩いらっしゃい。今日は、玲音先輩は風邪?」
「へそ曲げているだけだよ。メールしてみろよ、暇もて余している頃だから直ぐ返事くると思うよ」
「悠貴、まだメールは待て」と千景が部室に入って来た。
「ん?」
千景から昨夜の廉と玲音の喧嘩について説明された。
「玲音先輩が怒るのもわからなくも無いかなぁ~」と悠貴は玲音に同情する。
「でも誕生日まで知らない方が嬉しさは違うよ?
でもいいなぁ~。このチケット抽選で、なかなか手に入らないのに………」と潤は羨ましそうに言う。
「まぁ、こいつらの兄弟喧嘩はどっちもどっちだから賛否はどうでもいいんだよ」
「おい、どっちもどっちって」
「では御子様の喧嘩だからと言った方がいいか?」
「大人げ無かったとは思うけど…御子様って」
「まぁ廉。そこを拘ると話しが進まないぞ」
「わかったよ」
「で、今週末。廉がバイトに行きやすくする為にお前達、協力してくれ。その礼に廉がチケットお前らの分も確保してくれるそうだ」
「おおおおぉ!マジですか?」
潤は、目を輝かせ驚き叫ぶ。
「正確には藤堂先輩が確保してくれるんだが……」と廉は訂正する。
「土曜日に俺が、東京事務所にメディカルセンターのバイトの説明を聞きにいくのに廉に付き合って貰うと言うことにする。
お前達は、それとなくそれをパンダに話しつつ遊びに誘い出せ。付いてくると言われても困るからな?
藤堂先輩の手伝いは、俺と廉2人ですれば早く終わるだろ?
猫の手も借りたいなら、2人居ても問題無いだろ?
俺は、チケットの確保さえしてもらえばバイト代は要らないし。
今週末と言うのはどうしても、俺の予定が今週末でないと困ると廉に頼み込んだからで、廉はパンダと先に約束していたから、バツが悪かったから言い出せなかった。って事でどうだ?」
「それでも、玲音は、そう易々と機嫌を直さないのでは無いか?」
「パンダには笹を与えれば、機嫌なおすさ」
「笹?」
「ああ、シュークリームと言う笹さ」
「お気に入りの店のがあるんだろ?」
「うん、あるけど」
「先輩、俺もそこのシュークリーム食べてみたい!」
コアラとカンガルーが目を輝かせながらおねだりしてる。
「お前ら………。ちゃんと上手くやってくれよ?」と仕方無さそうに廉は言う。
「うんうん。今週末は、ちょうどゲームの発売日だから一緒に買いに行こうと誘い出すよ!
そのまま廉先輩の部屋で対戦してればいいだろ?」と悠貴が言う。
「なんで俺の部屋なんだよ?」
「男3人、入れるのは廉先輩の部屋だけだよ?」と潤が言う。
「………。好きにしてくれ、その代わりしっかり頼むぞ」
「了解!」
悠貴は早速、玲音に今週末発売のゲームソフト買いに行く誘いのメールをした。
しかし、玲音からの返信は無かった。
「どうしたんだろう?」
「返信無いのか?」
「うん。玲音先輩はメール見たら大体、すぐに返信くれるんだけどなぁ~。どうしたんだろ?」
悠貴は不思議に思い電話をしてみる。すると凄い声の玲音が出た。
「どうしたの?その声?」
「う~ん。ちょっと風邪ひいたみたい。
今メール見たよ。土曜は空けておくよ」と言って切れた。
「廉先輩。本当に玲音先輩、風邪ひいたみたいだよ?」
「紛らわしいやつだな?パンダの事だから病院には行って無いだろうなぁ。
親父に電話してみるから廉はパンダを病院に連れてこい」
「わかったよ。すぐに寮に戻ってみる」
廉は寮に戻り玲音の部屋のドアを叩く。
「玲音!ここ開けろ!」
「なんだよ?うるさいな!」と、がらがら声の玲音が出てくる。
「病院いくぞ」
「大したことないよ!今日1日寝てたし大丈夫だよ」
玲音の額に廉の額を当てると凄い熱なのがわかる。
「凄い熱じゃないか?病院いくぞ!
お前、俺の時は大したこと無くても引っ張って連れて行くのに、こんなに熱が有るのに病院に行かないって馬鹿か?
何で朝、体の調子悪いなら俺に言わないんだ?」
玲音は、ばつが悪そうに
「昨夜、喧嘩したから言いそびれた………」
「喧嘩なんて関係ないだろが!
俺は喧嘩したら、弱ってるお前を、平気で見捨てる男だと思っているのか?」
「そんなことは………」
「俺は、お前の家族では無いのかよ!」
「ゴメン」
「取り敢えず着替えろ!一人でできるか?」
「出来るよ」
「タクシー呼んでくるから着替えたら横になっておけ!いいな?」
「うん。わかったよ」
病院に着くと千景と五十嵐先生が出迎えてくれた。
「凄い熱ですね?一体いつからなんですか?」
「昨夜は元気そうだったんですが」
「取り敢えず診察と検査しましょう」
「お願いします」
小一時間後、検査の結果が出て診察室で五十嵐先生と廉が話している。
「軽い肺炎起こしてますね。1週間程、安静にする意味でも入院してもらいましょう。
時宗には私から連絡しておきます」
「お願いします」
玲音の入院が決まった。
病室にて
「大袈裟だよ!こんな熱でなんで1週間も入院なんだ?」と玲音はふて腐れている。
「では、どうしたら昨夜まで元気をばらまくほどピンピンしていたお前が、肺炎起こすんだ?
俺にじっくりと詳しく教えて貰おうか?」
玲音のベットの隣に椅子を持って来て廉は座り込み玲音の顔を直視する。
玲音は観念したのか先程の威勢は何処かに行き、小声でぽつりぽつりと理由を話していく。
「昨夜、あの後あまりにも廉が素直で無いからさぁ~。メチャクチャ腹がたっててさぁ………。
部屋に居てもムシャクシャするから………。
その辺ランニングして………。帰って来てシャワー浴びても、まだ体火照ってるし、面倒だからタオルできちんと体を拭かずにそのまま寝たら………。
朝、気が付くと少し体調おかしくて………」
「ランニングって?お前………。
昨夜、凄い雨降っていたよな?
あの中、走ったのか?アホだろ?お前!
しかも濡れたまま裸で寝たのか?」
「………。でもさ、1週間入院は、大袈裟だよ!部屋で寝てたら治るって。
廉!なんとか退院出来るように頼んでよ」
「諦めろ!しっかり入院して治せ。1週間なんてすぐだ。俺に比べればな!
それに、ちょうどいい機会だ。
入院がどんなに辛いか体感しろ!
まだ検査が無いだけ幸せだぞ?」
4.大団円
廉は玲音が薬で寝たのを確認して病室出ると。
「計画は無用になったな?」
千景がやって来た。
「軽い肺炎と聞いたけど1週間入院なんて症状が重いのか?」
「いや、お前が週末バイトしやすいように、親父に入院させて安静にさせるように囁いたのさ。普通なら2、3日で退院だ。ここなら看病はいらないだろ?入院して無くても1週間は安静だからな。
退院すると絶対、週末ゲームソフト買いに行くぞパンダは……」
「そうだな。可哀想な気もするが助かったよ」
週末、千景も一緒に会議の準備を手伝い、思った以上に早くおわった。
藤堂がやって来て2人を見つけて言う。
「助かりました。報告書コピーだけでも凄い量ありましたし、会場の机や椅子並びの指示、お茶や弁当の手配、座席表、ネームプレート作成等、と言った細かな作業の種類も多くて、何より今回は出席者の数も多くて、秘書室だけでは夜中までかかってたと思います。ありがとうございました。
廉様チケット5枚きちんとおさえてありますからね。もう少し待っててくださいね。
後、2人の今日のバイト代です」と言って藤堂は封筒を2通差し出す。
「いや、バイト代はチケット代と相殺で、多分それでも不足してると思うけれど………」と廉が言う。
「おさえてあるチケットは、社内配布分で、お金は、要らないんです。
だから、バイト代は受け取ってください。
受け取って貰わないと私が統轄長から怒られますから」
「では1人分だけで、俺は、飛び入りだし。それに慣れて無くて2人で1人分の働きしかできてないと思うから」と千景が言う。
「そんな事はないですよ。また手伝って欲しいくらいです」
「また、チケット頼むこともあると思うから今回は1人分で」と千景が断った。
「それで、いいのですか?うちのグループ会社のプロモーターのチケットはいつでも手配しますから言ってくださいね。
後、玲音様は大丈夫ですか?」
「もう、熱は下がって今は退院したがってます。
もし退院したら、じっとして居ないと分かるから退院できないだけで」と廉は苦笑しながら話す。
「そうですか。大事でなくてよかった」
「藤堂先輩、このチケット玲音には内緒でお願いします」
「わかってます。最後に統轄長に会ってから帰ってもらえますか?統轄長室に居ると思いますから」
「はい。では、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました」
統轄長室をノックする。
「どうぞ」と声がする。
「失礼します」
「あぁ廉か。今日はすまなかったね。
千景君もありがとう」
「いえ、役にたったかどうか」
「秘書室、全員が早く終わったと喜んでいたよ。
千景君メディカルセンターはいつでも見学OKだそうだよ。行ってみるといい」
「ありがとうございます」
「玲音はどうしてる?」
「すいません。俺がむきになって喧嘩したばかりに」
「廉のせいではないだろう。玲音が馬鹿な事するからだ。病院連れて行ってくれてありがとう。
こないだ私も病院に様子を見に行ってきたが玲音は寝ててね。時間も無くて話し出来なかったんだが……「」
「早く退院したいとごねてます」
「そうか。なら大分元気になったんだな」
「はい、本当は退院出来るみたいなんですが、今日の手伝いあったので、俺の目が届かないので千景に頼んで入院したままにしてもらったんです」
「そうだね、その方が確実だ」
「おじさん。今日の事は玲音には内緒に」
「あぁ、わかってるよ」
「それでは玲音の所にも寄るので帰ります」
「あぁ、帰る時、藤堂君からシュークリーム受け取ってくれるかい?玲音の好きな店の奴なんだが……。みんなで食べてくれ。ばれるとなんだから、私からだと言わなくていいからね?」
「ありがとうございます。みんな喜びます。では、帰ります」
「気をつけるんだよ」
「はい」
病室に行ってみると悠貴と潤がいた。
そこは、病室と言うより、3人の少年が部屋でゲーム対戦している状態だった。
「お前ら、ここは病室だぞ!そこの2人!
それにおとなしく寝てろよ病人は!」
「廉!」
「ん?」
「その手に持っているのって」
玲音の目が輝き廉の持っている箱に釘付けになる。
「病人の見舞いにと思って買ってきたが、病人は居ないみたいだ。千景2人で食べようか」
「そうだな。残念だなぁ~。たくさん買ってきたのにな」
「先輩、俺達も食べたいです」
「おい、待てよ。ちゃんと居るじゃんかここに病人が!」
「病人はベッドから起きてゲームなんかしないんだよ。パンダ君!」
「ちゃんと、おとなしく寝てるからさぁ。俺にも食べさせろよ」
「このシュークリーム食べれるなら、入院も悪くは無いなぁ~」
「…………。お前」
廉は玲音を睨む。
「冗談です。はい冗談だってば」
後日、藤堂先輩からチケットが送られて来た。
廉は、そのチケットを手に玲音の部屋のドアを叩く。すると、寝ていたのか?眠たそうに玲音が顔を出す。
「玲音ちょっと早いが、誕生日おめでとう!これプレゼント」
「ん?」
「おおおおぉ、これ幻のチケットじゃない?どうやって手に入れたの?」
「秘密」
「廉!ありがとう。凄いV.I.P.席だ!凄いよ!最高だ!」
「もう、間違っても雨の中ランニングなんかするなよ!」




