修学旅行
1.School excursion.
高等科2年になると、冬休み前に修学旅行がある。
基本、参加は任意で日本の文化の再発見と称して国内旅行である。その年によって北海道、沖縄、九州、東北と行き先が異なるが、玲音達の年は京都、大阪となった。
現地では生徒の自主性を促すため、グループ毎で自分達で観光するルートを決め引率者にそのルートを提出し許可を得てからグループ行動で観光に出掛ける。
「いいなぁ~先輩達。もう京都に着いたかな?」悠貴が教室の窓から校庭を見ながら呟く。
「一緒に行きたければ4月に飛び級申請すればよかったんでないの?」と潤が言う。
学年の年間成績が過去1年間すべての試験において総合順位が5位以内で有れば、飛び級と言う制度を使って1学年進級する事できる。
潤と悠貴は、千景から「この部活内で落第者が出ると、部長として俺の威信関わる」と廉と玲音を巻き込んで部活内学習会があり、わからない所を教えて貰っている。特に試験週間は部活を休止してまで強化学習会が開催されて居るため、反対に変な成績を取ろうものなら、3人に囲まれて勉強浸けになる。
そのお陰で潤は首位をキープし、悠貴も常時5位以内にいる。あの入学当初ブービーだった美里も、今では15位以内に入れるようになっていた。
「やだよ。先輩達と一緒の学年になったら波乱万丈だよ?今でもかなり大変なのに、追いかけている方が楽だよ。一歩下がって見ている方が楽しいじゃん?あの人達にはどうやっても勝てないしさ。
それに俺は、潤とは一緒に居たいしね」
悠貴は窓枠によりかかり、校庭を眺めながら言う。
「俺は悠貴が飛び級するなら俺もするけど、確かにあの先輩達と肩並べるとなると大変だな、色んな意味で」
潤も窓から校庭を見ながら言う。
「でも修学旅行には、ついて行きたかったなぁ~。さぞや楽しいだろうなぁ~」
2人はのんびりと呟く。
本人達に聞かれれば、かなりの反撃を受けそうな言葉の数々だが本人達は居ない為、本音が出ている。
2. That's it! Let's go to Kyoto.
その頃、京都駅に向かう新幹線中、3列席に窓側から玲音、廉、千景と並んでいる。
そのとなりの2列席に通路側から樹里亜、美里と座っている。
「京都どこ行く?金閣寺と銀閣寺、清水寺、京都御所は押さえて起きたいよね?嵐山のトロッコ電車に保津川下りも、鞍馬山 、大原三千院もいいな?」
玲音は、ガイドブック見ながら言う。
「お前ちゃんと場所の位置を見て言っているか?2泊3日で京都、大阪観光はそれぞれ1日だぞ、時間配分を考えろよ。
それ全部回ろうとすると京都で下手すると3日はかかるぞ」と廉は釘をさす。
「映画村なんか、楽しそうですよね?
二条城も割りと近いですよ?」
美里もガイドブックを見ながら言う。
「京都と言えば寺巡りが定番じゃないのか?
もう少し早ければ紅葉巡りもいいなぁ~。
紅葉の名所の東福寺なんか行きたかったなぁ。
あと伏見の稲荷大社は、捨てがたい」と千景がタブレットを見ながら言う。
「千景……。お前、結構渋い趣味してるな?
稲荷大社って鳥居がたくさん連なっているところだろ?
あれ全部回るとなると山越えになるから1日つぶれるぞ?
東福寺は場所的に近いから先に行けば行けると思うが……」
廉が千景の提案に解説をする。
「山越えなんて却下よ!八坂神社近くに抹茶のデザートが美味しい有名な店あるわよ?祇園とか清水寺も近いし、池田屋跡とか行こうと思えばいけるわよ」
樹里亜は繁華街を強く提案してくる。
「デザートいいね!」と美里が目を輝かせながら賛成する。
「【池田屋跡】……。あそこは一昔前はパチンコ屋で、それも今ではつぶれて確か居酒屋になってるじゃなかったか?
それに、歩道に石碑がこっそり有るだけで………。
【池田屋跡】から【坂本龍馬・中岡慎太郎遭難の地】と言われる【近江屋跡】もわりと近いぞ?やはり繁華街の歩道に石碑だけになってるけどな?
そう言えば【羅生門跡」も小さな公園にこっそりと石碑が有るだけだなぁ~」
廉は樹里亜の意図しない部分を解説する。
「保津川下りがいいな?」
玲音がかなり興味を示し推す。
「この寒いのにか?季節も考えろよ。
あの辺は京都でもかなり寒い地域だぞ?
その寒い中、水しぶきを受けながら川を下るんだぞ?
それと船を貸しきりしないと上手く全員同じ船に乗るの難しくないか?
あと、トロッコ電車の時刻とか関係してくるぞ?嵐山は観光スポットは多いけどな。ちゃんと時間調べたか?」
廉はダメ出しの如く玲音に言う。
「えーっ、時間までは調べてないよ」
「ってか玲音!ちゃんと調べるなら全部調べてから計画たてて言えよ」
「廉、何でそんなに詳しいんだよ?」と千景は不思議そうに聞く。
「さあな?」
「廉のオススメコースは?」と玲音が聞く。
「京都駅一周して、京都タワーに行ってホテルで昼寝が【Simple is best.】だな?」と廉は涼しい顔で言う。
「却下だ!京都タワーって駅前じゃんか?アホだろ?旅行に来て駅一周ってなんだ?」と玲音が猛反対する。
「なんで、ここまで来て昼寝なんだ?何時もしているだろ?」と千景も呆れ返る。
「馬鹿でしょ?修学旅行の意味さえ知らないのかしら?」と樹里亜も反撃すら面倒なほど呆れてる。
「まぁ京都駅は、かなり面白い建築物ですが……。京都タワーも高さありませんし、展望する様な所でも無いような…」と流石に美里も廉の提案にフォローしかねる様子だった。
「希望を言えと言うから希望を言ったまでだ!それに俺は人込みが嫌いなんだよ!
あと、京都のなんと言うか歴史の重み?千年の歴史の怨念?重い空気を感じるんだよ!
特に嵐山方面は俺の感が特に敏感になって、苦手なんだよ!」
「廉お前、以前にも京都に来たこと有るのか?」と千景が聞く。
「さあな?でも俺の野生の感があの付近に近寄る事を否定するんだよ!それより、なにより、団体行動で、しかも人寄せパンダ居るからな。目立つだろ?」と廉は、玲音をだしにはぐらかす。
『確かに………』
一同が玲音を見る。
「なんだよ?京都は外国人観光客が多い所じゃないか?目立ちなんかしねーよ?」
「いや、愛玩動物の代表格のパンダオーラは凄い威力あるよな?」と千景が言う。
玲音以外の一堂が『あぁ』と頷く。
「サングラスをかけて、帽子かぶって、マスクで …」と廉は鞄からごそごそと変装小物を取り出して玲音に付けていく。そして出来上がりをまじまじと見て。
「これは………。修学旅行生ではないな?逃亡犯だな」
「おい。なんで、こんなもん用意してんだよ!」と玲音は怒る。
「でも、誰もなんで、きちんとした計画をたてて無いんだよ?」と千景は言う。
「そりゃぁ。千景がちゃんとたてているかと」
玲音は悪びれる事無く言う。
「お前ら、何時も俺ばかりに押し付けるな!京都駅につく前にコース決めるぞ!
ちなみに大阪は誰か考えて居るんだろうな?」と千景が言うと。
「食い倒れるんだろ?」ときっぱりと玲音は当たり前の様に言う。
「………」千景は絶句した。
「それを言うなら『京都では着倒れ、大阪で食い倒れ、神戸で履き倒れだ! 』京都では買いものしまくるのかよ?」と廉が援護してみたが玲音はガイドブック見ながら
「でもさぁ~。大阪名物の串かつ、たこ焼きは絶対食べたいよな?あぁ、お好み焼き食べて帰らないと大阪来た意味ないよ?」
「やっはり食い倒れなのかよ………」と廉と千景は声を揃えて言う。
「旅行は買い物することこそが醍醐味よ!」と樹里亜は言いはなつ。
「さっき修学旅行の意味さえ知らないのかと言ったのは何処の誰だよ。買い物は明らかに学問とは違うだろう」と廉は溜め息混じりに樹里亜に聞こえない様につっこむ。
廉は玲音で茶化してごまかしたが、廉自身の認識は無かったが、黄泉の国の入口と言われた嵐山方面に行くのは最後まで強く難色を示した。
それは、廉が【櫻玲音】が黄泉の国から戻ってきた男だから無意識に拒絶したのかもしれない。
一行は京都観光ルートをそれぞれの要望に別けた。
千景の強い要望の伏見稲荷大社。
廉が嵐山方面を嫌がるのでその方面の除外。
玲音の推す清水寺。
樹里亜と美里の要望でショッピングと甘味処を含めて、できるエリアと言うので八坂神社辺りを盛り込んで以下ルートを選択した。
東福寺→伏見稲荷大社→三十三間堂→京都国立博物館→清水寺→八坂神社→平安神宮
ただ千景の望んでいた稲荷大社のお山巡りは時間の都合上、当然のように省かれた。
千景は最後の最後まで「お山巡り無くして稲荷大社の行く意味が……。あそこには霊石有ってだな、抱えた重みで願い事の成就がわかるらしいぞ!試して見たいと思わないのか?」と強い抵抗を示した。
「へぇ~。千景がそんな迷信を信じて居るとは意外だね。その願い事ってなに?」と玲音がツッコミを入れる。
「願い事は、他人に言っては成就しないんだよ!」と千景が反論すると、
「どうせお前の親父を、何とか言いくるめる事だろ?」と廉がさらりと言う。
「だから、願い事は他人は言わないんだよ!」と千景はムキになって反論する。
「千景。お前、今の反論は肯定したようなもんだぞ?」と廉は呆れながら指摘する。
「!?」
千景は、図星だったらしく「お前ら、今の全部忘れろ!忘れるんだ!いいな?」と珍しく大人げなく騒いでいた。
3. Enjoy your trip!
伏見稲荷大社に着くと鳥居の多さを見て玲音が感動し、巡りたいと言い出しまた揉めていた。
「サクラ!時間限られているんだからそんなこと言うなら置いて行くわよ」と強烈に否定され、
「千景も玲音も、また来れば良いじゃないか?」と廉に諭され次の見学場所に後ろ髪をひかれながら向かった。
清水寺に着いた玲音の一言。
「清水寺の舞台から飛び降りたら死ぬかな?」
「12mくらいだからビルの4階の高さだな、落ち方にもよるけど、骨は折るのではないか?江戸時代とかは願掛けで降りた奴、かなり居たらしいが生存率は80%を超えていたとか。まあ、木とか、土が柔らかだったと言う要因があったそうだがな。
でも、まぁ全くの無傷は、なかなか無いだろうがな」と千景が説明をする。
「この現代、もし飛び降りて死ななくても、複雑骨折でえらい目にあう事は確かだな?
ってか玲音、降りるなよ」
廉は玲音の裾を持ち舞台脇から離す。
「降りねぇーよ!ただよく言うじゃん?清水の舞台から飛び降りるってさ」
「それは、例えだよ!」と千景は呆れ返る。
「あっ!そう言えば千景じゃないが、ここの神社にも霊石あるぞ?恋愛成就の……」
廉は思い出したように説明する。
それを聞いた玲音は廉の顔を覗き込ながら廉に問う。
「廉、相手誰なの?」
「なんでだよ?」
「いや、相手いないと霊石が有ってもさぁ……」と玲音は食い下がる。
「そこの2人には興味あるかな?と思って言っただけだ」と美里と、樹里亜を指さす。
「廉、それ樹里亜には酷だよ?」
「サクラ!舞台から飛び降りる?」
「えっ?冗談だってば!樹里亜なら石の力要らないだろ?」とは言ってみたものの、このあと3人の男達は両手一杯の荷物持ちとなったのは言うまでもなかった。
一行は予定通りの観光とショッピングと甘味処で休憩後、ホテルのロビーに戻って来た。
「明日の大阪はどうするんだ?」と千景か聞く。
「勿論、グランフロントになんばウォークスでショッピングよ!」と樹里亜は言う。
「心斎橋からなんばまでの商店街は食べ歩きもショッピングできるらしいよ?後、吉本新喜劇とか」と玲音が言う。
「大阪城に海遊館?」と美里が言う。
「USJでどうだ?」と千景
「見事にまた意見が別れたな?USJは丸1日だよな?他行かないなら良いかもしれないが……吉本新喜劇も観覧している時間が無いし、グランフロントとなんばウォークス は大阪の北と南だな?大阪城は東側に海遊館は西側。これまた全部は無理だろ?しかも心斎橋、なんばは大阪駅から大阪中心縦断………。お前ら1日で回れるコースを考えろよ!」と廉が吟味する。
「海遊館の近くに日本一低い山天保山あるね」とガイドブック見ながら玲音が言う。
「あぁ、あれ山と言うより丘なんじゃないか?」と千景が言う。
「USJは、また来たときゆっくり回るとして。グランフロントも大阪駅に隣接しているから帰る前の自由時間に寄ればいいんじゃないか?」
廉が切り崩しを始める。
「まぁ修学旅行らしく、海遊館に天保山、なんば周辺で食い倒れて大阪城見て帰ればいいんじゃないか?」とざっくりと廉がコース提案する。
「樹里亜。グランフロントに例え行ったとしても、俺はもう荷物持ちはしないからな」と千景が樹里亜に釘をさす。
「男が女性の荷物持つのは礼儀よ!」
「京都であれだけ買いものして、大阪でもする気かよ」と廉が呆れ返る。
「だから旅行に来て買い物しないなんてあり得ないわ。観光名所は観光客の落とすお金で潤っているのよ!」と樹里亜はあくまでショッピングをおす。
「俺、段々ホテルの周りの公園で散歩後、昼寝でもいい気がしてきた」
廉が匙を投げて言うと他のメンバーが口を揃えて
『却下!』
結局、大阪観光は以下のコースとなった。
海遊館→ 天保山→ なんば→ 心斎橋 →大阪城
大阪城は天守閣までは時間無くて諦めた。
ホテルが大阪駅近接位置にあった為、翌日朝早くから樹里亜と美里に廉は半強制的に呼び出されてグランフロントのショッピングに付き合わされた。
【廉が居る所、玲音と千景の影有り】と言わんことで廉を追いかけて2人も合流し、昼ご飯は皆揃ってグランフロントで食べ、それから新大阪へと向かった。
新大阪駅構内では、各々のお土産品購入の為に自由行動していた。
廉は、悠貴と潤の土産物探していると、両手一杯に笹を買い集めている玲音に遭遇した。
「玲音!こんなにどうするんだ?」
「悠貴と潤と俺と廉の土産物だよ?」
「行った本人の土産物って………」
「いいから、いいから、はい廉これもって。
これは廉から悠貴達に渡せばいいから。
親父から預かったお金だからさ。また、遠慮して受け取らなかったんでしょ?土産用の小遣い。さぁ次に行くよ」
「おい、次って?もうこんなに有るじゃないか?」
「まだ、あっちに美味しそうな土産物あったからさ」
「どんだけ買うんだよ!」
「まだ、親父とママと藤堂先輩に齋藤先輩、伊集院教授に加藤さんと校長先生、箱根のじいさんばあさんとイギリスのじいさんばあさん、後執事の後藤さんの分要るだろ?
廉と俺とで一緒にするにしても後10個は必要だよ?」と言って廉を引っ張りながら土産売場を奔走する玲音の姿があった。
4.帰途
新幹線の中
「パンダ君、仲間に会えなくて残念だったね」と千景が言う。
「ん?」
早速自分用の土産を食べている玲音は不思議そうに千景を見る。
「和歌山のアドベンチャーワールドには、お前仲間、結構居るぞ?
あと神戸の王子動物園にもな。
近くまで来たのに挨拶なしで帰るのは残念だったな」
「じゃぁさ、今度の冬休みはみんなで……」
「玲音、却下だ」と廉が遮る。
「まだ、何も言ってないじゃん?」
「言わなくてもわかる」
「そうね、サクラ。おじさまとおば様と今年の年末はイギリスで会うことになっているんでは無くて?」と何故か樹里亜は玲音達の予定を知っておりさらりと言う。
「あ~ぁ」と玲音は思い出したようだ。
「お前、齋藤先輩とも島で会う約束してなかったか?」と呆れながら廉が言う。
「ああぁ」とまた玲音の記憶が甦る。
「お前、信用を無くすぞ」と千景に指摘される。
「廉!どうにか親父達を言いくるめて島で会うようにしてくれよ!」
「自分でしろよ!」
「えええ……そんなぁ」
「土産物に、身代りパンダのぬいぐるみでも買っておけばよかったね?
特にじいさんばあさんには」と千景か笑う。
こうして波乱万丈の修学旅行は終わった。




