体育祭
1.Sports Day
玲音達が高等科2年になった頃
学園行事には体育祭と言うものがある。年に一度、悠貴が一番が張りきる行事だ。
進学コースと芸術コースでは、スポーツ科学コースとは異なり、体育祭とは名ばかりで勉強に差し障りの無いよう集団練習の要らない球技大会となる。
球技大会は、高等科の3学年総トーナメント形式で行われる。種目は、サッカー、野球、バレー、バスケット、テニス、卓球である。
クラスの中で話し合いそれぞれの種目に割り当て、男女別れて2日間で行われる。敗退した者達は自習または、観戦どちらか好きに選んで過ごせる。
生徒のやる気促進のために優勝者には、金一封がそれぞれの種目に個人に各々出る。
放課後、いつも様に部室で玲音は週刊紙を読みながらくつろいでいた。
そこに悠貴が楽しそうにやって来てつかさず聞く。
「玲音先輩、今回の体育祭は何の種目に出るんですか?」
「ん?なんでもいいけどなぁ~。余った所でいいかも」
「え~。決めてくれないと俺達と対戦出来ないじゃないですか?」
「何?悠貴。俺と勝負する気?」
「当たり前です。これが、俺の学校生活における唯一の楽しみなんですから!」
「ふ~ん。悠貴、金一封逃すことになるよ?」
「なんで?俺、負けませんよ?」
「だって、テニスでも、卓球でもダブルスだから最低でもペアだろ?
組む相手によっては敗退して俺の所まで来れないかもよ?」
「潤と組めば怖いものないですよ!」
5人の中で運動神経で順位付けると悠貴、玲音、廉、潤、千景と言う順位になるだろう。だが千景が標準的なもので有って他が良すぎるのである。
「俺と廉が、組めば圧勝かもよ?」
涼しい顔で玲音が挑発にのる。
「誰が、お前と組むと言った?」
廉が部室にやって来た。
「え~。廉は、俺を見捨てるのか?」
「玲音、お前は余った所に入るんだろ?」
「廉!勝負突き付けられて、逃げるわけにはいかないだろ?」
「なら、俺を捲き込むなよ。俺は一回戦敗退で、後はお昼寝でいいんだよ」
「廉先輩、それは面白くない!俺が先輩達に勝てる可能性が有るのは唯一球技大会だけなんですから!」
悠貴はやる気満々で挑発する。
「そういう威張り方も、どうかと思うぞ悠貴」と千景も部室にやってきた。
「千景先輩は、何にでるんですか?」
「ん?俺?廉お前、何に出るんだ?」
「決めてないよ?」
「悠貴!」と潤が呼ぶ。
「ん?」
「千景先輩と玲音先輩、廉先輩がバスケットだと他の2名が、かなりひ弱でも俺達2人+3名ではキツイのでは?
バスケット はポイントゲッター1人がいるよりバランスが良いチームの方が勝利しやすいスポーツだよ?
テニスか卓球当たりで勝負にしないと」潤が悠貴に囁く。
「う~ん。そうかな?」と悠貴が悩む。
そして2人は部室の隅に行き潤と悠貴は作戦会議らしきものを開きはじめた。
千景は千景で「俺と廉vsパンダ+1と言う対戦でもいいかもな。パンダを叩きのめせるぞ」
「千景も珍しくヤル気なのか?いつも適当に負けてる癖に……。千景と玲音が組めよ?テニス当たりなら悠貴と潤に善戦できるのでは?」
「廉!千景と俺では、千景は俺を盾にするの目に見えてるじゃんか!」と玲音は猛反対する。
「あぁ、そういう手もあるな?」と千景は感心する。
「!」
「千景先輩と玲音先輩のペアなら、テニスか卓球になるから勝てる可能性高いよ。あのコンビネーションなら」と潤は悠貴に囁く。
千景がこの2人の行動を見て不審に思い潤に問い詰める。
「潤。お前、今回やけに勝負こだわってるな?何隠してる?吐け」
「なんでもないよ」と潤は苦笑する。
「そうだな?いつもは適当に負けて、他で遊んでいるのにな?」と廉も不思議そうに詰め寄る。
「先輩、それは言い過ぎ。真剣に負けてます」
「おい」
「悠貴。お前、どういう訳か知って居るだろ?」と千景が詰め寄る。
「う~ん潤。ポケットマネーを全て今作っているパーツに当てすぎて貧乏なんだよね。だから金一封狙い?」と悠貴はあっさり白状する。
「ばらすなよ!悠貴」と潤は言う。
「廉、お前もポケットマネー稼ぐいいチャンスじゃないか?」と千景が廉にふる。
「俺?俺は要らないよ。何に使うんだよ?どうせお前らに、たかられるだけだ」と廉は、両手を上げて千景の提案を拒否する。
「否定はしないけどな」と千景は笑う。
「そこは否定しろよ!」
「取り敢えず玲音先輩、何に出るんですか?決めてくださいよ!」
悠貴は玲音との勝負しか考えてないらしい。
「う~ん、誰と組むかによるな?」
「パンダが最強になるのは廉とのペアでテニスか卓球だな?」と千景が推察する。
「それは避けたいな」と潤が呟く。
「それ燃える」と悠貴は、はしゃぐ。
潤があわてて「悠貴!燃えなくていいから、勝つ確率が低くなるから!!」
「潤、勝ち目指すなら玲音と対戦回避する方が得策じゃないか?」と千景が言う。
「そうだけど……。悠貴が…」と不服そうに潤は答える。
「まぁ、どうでもいいけどな。俺、今回の球技大会お休みだからな。お前ら勝手に頑張れ」
千景は会話から勝手に離脱する。
「なんでだ?」と廉は食い下がる。
「最近軽い貧血気味なんだよ。病弱だからな俺は……。ほら、ちゃんと診断書もある」と診断書らしき紙をちらつかせる。
「………千景。お前、実家の勤務医、騙くらかしたな?」と廉は睨む。
「廉、言いがかりだ!最近、徹夜続きで本当に貧血気味なんだよ!」と千景は言う。
「では、廉は俺と組むことで決まりだな」
「え~やだな…。俺も頭痛が……。診断書貰ってくるかな……」と廉は考え込む。
「なんでだよ!廉。最近、お前元気有り余ってるじゃないか!仮病を使うなよ!廉がそう言う態度なら俺が半年位入院になるように五十嵐先生に言うぞ!」
「えっ?待て!玲音落ちつけ!診断書は無しだ。ちゃんと出るよ。でもお前、勝負となると燃え上がり過ぎるから、俺のような持病持ちには疲れるんだよなぁ。
それに、玲音のファングラブも多いしなぁ、あの黄色い声援を一緒に受けるのは嫌だなぁ~」
「年寄りみたいな事いうなよ!それにあの黄色い声援、俺だけのじゃないだろ?」
「千景、玲音と組んでやれよ!貧血なら今から薬貰って2,3日位大人しく寝てれば回復するだろ?
あぁ悠貴!お前の親父さんに言って速く効く薬を調べて貰ってくれ!」と廉が言うと千景はあっさりと「俺も引き立て役は御免だ」と答える。
結局、廉は、毎日玲音から四六時中、事ある毎に説得され続けて廉は音をあげて渋々玲音と組んでテニスにエントリーした。
しかし、玲音を散々挑発した悠貴達だがエントリーが遅くテニス枠が取れ無かった。
悠貴は、かなり不満をもらしていたが仕方なく卓球でエントリーとなった。
そのアクシデントを一番喜んだのは、言うまでも無く潤である。
「悠貴、お前ら勝負だとあれだけ言ってたのにエントリーは卓球かよ?勝負出来ないじゃん?」と玲音は不服そうに言う。
「だって、先輩達が早く決めてくれないからテニス枠が一杯でもう空きが無かったんだもん…。早くエントリーを決めてくれれば………」
見るからにがっかりしている悠貴がそこにいた。
その悠貴とは裏腹に潤は、金一封に近づき安堵していた。
毎年、玲音が出る球技の試合会場はいつも女性で満員になる。
千景は関係者席に近いベンチに悠貴と潤と一緒に観戦の為に座っていた。
それを目敏く見つけた廉は、ベンチに移り千景の隣に座り囁く。
「毎年の事だが、このアウェイ感は半端ないよな?これ絶対相手のヤル気を無くすよな? 」
「ん?廉お前、部外者装っているが半分とは言わないが1/3位は廉目的でないか?」と千景は呆れながら指摘する。
「そんな訳ないだろ?」
「そう思って居るのはお前だけだよ?」
「そういうお前、この前下駄箱前でかわいい女の子から告白されていただろ?」
「もてるのは【大病院の跡取り息子】と言う肩書きだよ」
「それいうなら俺も当てはまるだろ?」
「しかし、あのスターは、"They love the face, not the grace."この言葉を絵に描いたようなもんだな?」
千景は玲音のことを冷静に表現する。
「それ一番嫌な言葉だな。でもここにいる連中はまさに『人が愛するのは顔であって心の美しさではない』ってポリシーを持った連中ばかりの様だな?
でも千景、玲音の前ではその言葉は使うなよ。あれでもかなり傷つくんだからな?」
「わかってるさ、それにパンダは顔だけの男ではないだろ?」と千景は言う。
暫くの間、廉は千景達と雑談していると、一斉に黄色い声があがり玲音がコートに入って来る。
「流石先輩、凄い声援だな?ここに居るのは先輩達の応援者ばかりで、対戦者の応援者は皆無なんじゃない?」と悠貴が言う。
「もしかして先輩と対戦することになってたなら俺達もこのアウェイの中でしなければいけなかったのかな?」と潤かぼそっと言った。
「ほら、スターの登場だ。さっさと試合して勝ってこい」と千景は、廉の背中を押しながら言う。
「嫌だなぁ~。あのとなり…」と廉は嘆きながらコートに戻って行く。
結局、テニス部門の試合は玲音達の圧勝で終わった。
スポーツ科学部のプロ目指す選手がいれば別だが、勉強ばかりしている進学コースでは玲音達に勝てる者はいないのでは?というほどの見事なストレート勝ちの試合ばかりだった。
悠貴達の方も悠貴のファングラブが存在しており。声援おかげか?悠貴の性格上、注目されればされる程、悠貴は闘志を湧かせ同様に圧勝で終わった。
潤はゲーム終了後「これで残りの部品買える」と上機嫌だった。
試合全て終了し解散後。
悠貴が玲音と勝負が出来なかったので、空いているテニスコートを使いテニスで勝負しようと言ってきた。
それを聞いた廉は、「えぇ~、そこまで玲音と勝負したいのか?卓球で優勝したんだからそれで納得しろよ。潤お前もそんなに、勝負にこだわってないよな?それに、俺はかなり疲れたよ…」と不服を言う。
「う~ん、悠貴との約束で絶対優勝するからその後の先輩達の勝負に付き合うよう言われているし、金一封は全部くれるって言うから………」と潤は言う。
「潤。お前…買収されるなよ」と廉は呆れる。
「廉、いいから、いいから、始めるよ?」と玲音はやる気をみせる。
「千景先輩、審判してよ!」と悠貴が頼む。
「あぁ、わかったよ」と千景は軽い気持ちで引き受けた。
それから4時間「お前ら、いい加減どっちか手を抜けよ!勝負つかないじゃないか!」と千景が怒る。
「悠貴だけには、負けられないよ!」と玲音は闘志を燃やす。
「俺が、先輩を越えるんです」と悠貴も燃えていた。
「なぁこれ、ダブルスの必要あるのか?お前ら2人でやれよ」と廉は反対にやる気が激減していた。
「それなら、いつもしてるから面白くない。早く終らせたいなら廉の本気をだしてよ。ほら廉!球いったよ」と玲音は廉の苦情を受け入れない。
結局、その後1時間経っても勝負がつかず千景がキレて、審判を放棄したため引き分けに終わった。
後日、廉の部屋には、たくさんの笹とゲームソフトが届いた。
玲音は、満面の笑顔で『廉の為に金一封で買ってきてあげたよ』と言って。




