Love is a bitter-sweet.
1.Love is a bitter-sweet.
【St. Valentine's Day】
恋する少女達の密かなる戦いの日。
憧れの人に自分の想いを勇気を振り絞り伝える事を後押ししてくれるイベントの日。
しかし、恋は甘くて切ないものである。
男の方としては、相手が真剣であれば、あるほど相手と同じ思いで無ければ困ってしまうイベントだからである。
その日には必ず、考古学研究部の部室の扉には、
【関係者以外立ち入り禁止!】
秘密の調査中のため扉も許可なくあけるべからず。
と貼り紙が貼り出される。
その扉を凄い勢いで開き、肩で息をしながら入って来る男がいる。
「千景か?今回は、無事捕まらなかったんだな?」
その部屋では涼しい顔で本を読んでいる廉がいた。
「あぁ、チャイムと同時に走ってきた。
ってか、廉。お前、また授業さぼったな?」
「いや、チャイムが鳴る5分前まではちゃんと授業には出ていたさ。5分前で気分が悪いからと言って教室を出てきたのさ」
「仮病かよ!」
「いやいや、あのまま教室に居ると、絶対に目眩が起こるからな?予防しただけさ。
予防は大切だぞ。しかし、ここに逃げ込んでも帰りどうするんだ?」
「コアラとカンガルーと最強のパンダを放って、その隙に逃げるしかあるまい」
「その愛玩動物が、ここまでたどり着くかが問題だな?」
「その時は、廉。お前が生け贄なれ!」
「なんでだよ?千景。お前いつも断っているから断わり馴れているだろ?お前の方が適任だ」
「俺は女を泣かすようなことはしたくない」
「俺だって同じだ!」
そんな事を言っていると、また扉の向こうが騒がしくなる。
「ゴメンね。今、忙しいのでそこ通して、お願い」と、もみくちゃになりながら悠貴が入って来る。
「相変わらず逃げ足は速いっすね」
「経験の差さ」とあっさりと廉は言う。
それから間もなく、潤が登場した。
「潤、また告白される毎に、樹里亜の名前を出して断っているのか?」と千景が聞く。
「はい、その方がお互いのためですから。それに最近は俺の所に来る娘は居ませんよ?」
「お前は強者だな?女の趣味も扱いも」
「先輩達には、足元にも及びませんよ」
「…………」
部室内に沈黙が流れる。
すると、より一層、部室の外が騒がしくなった。
「来たな?パンダが……」
「玲音以外、ここに居ない男は居ないしな?それにこの喧騒は玲音以外は考えられないだろ?」
廊下で待ち伏せしている女子生徒をかき分けながら、いつもの愛想笑いを振り撒いている。
「悪いんだけどさぁ、そこ通してくれない?
その気持ちは嬉しいんだげどね、俺チョコレート苦手なんだよ?
毎年言ってるよね?悪いけどさぁ受け取れないよ?ごめんね。
だからさぁ、ここ通してよね?
お願いだからね?それにここに固まっていると他の人に迷惑だよ?
ほらそこ気をつけて、押さないで怪我するよ?」
やっと部室に入って来た男は制服はもみくちゃで髪は乱れゲッソリしていた。
「もう疲れた。毎年、毎年なんで誰も学習しないんだよ!」と玲音は嘆く。
「玲音の口から【学習】と言う言葉が出るとはな。お前の辞書には載って無いのかと思っていたぞ」と廉はからかう。
「うむ。パンダが【学習】しろよ?」と千景が言い放つ。
「だから毎年【チョコレートは要りません】と言って断っているじゃんか!」
「玲音。チョコレートは【おまけ】だからな?
しかも、お前、シュークリームだと心揺らぐんだろ?【シュークリーム】に!」
「ちゃんと断ってるよ!」
今度は、大きな袋を持った美里が部室に入って来た。
「あの~。廊下の皆さまから頼まれたんですが…………」
「ん?」
「これ、どうしても皆さんに渡してくれって」
「え?もしかして……預かったの??」と玲音の顔がひきつる。
「すいません。そうしないと通して貰えなくて……」と場の雰囲気を察して申し訳なさそうに美里が謝る。
しかし、男達は放心している。
「余計な事でしたか?」とおそるおそる美里は訪ねる。
「う~ん、預かったものは仕方ないけどさぁ、もう次からは辞めてね?」と玲音は優しく言う。
「ごめんなさい」
「いや、ちゃんと言って置けばよかったね。そう言えばここ何年かは上手くこの日は土日とかだったもんね。」
「貰うとさぁ。義理でも面倒なんだよね?
俺達が受け入れてくれたとか、友達として繋がりできたと勘違いとか。
中には、このまま、うまくすれば付き合ってくれるんじゃないか?とか勝手に妄想してくれる娘もいるからね。
こちらも、本命か義理か?いちいち本人に確かめるのも失礼だしね。
それに相手がどんな娘かなんて、知らないしね。相手も俺らの事は、理解してないだろうし、残念ながら俺達はそういう娘には興味ないし。
本命だと言ってても、本当に俺達、個人を純粋に好きってわけでは無くて見かけだったりステータス的な物だったり、勝手な憧れだったり、家柄を含めた権力ってのが殆どだからさ。面倒なんだよ?」と廉が説明する。
「特に、廉とパンダは後に有るものが、でかすぎるからな?
この学校以外で出会える確率なんてほぼ皆無だからな。お近づきになりたい連中は必死なんだよな」と千景が付け足す。
「きっかけを作らなければ、いいことなので受け取らないことにしているの。
それに顔のキレイなお姉さんたちの怖さ知っているし。
特に、一人、ここに半端ない性格なのが居るし」と玲音は言う。
「そう言うことなので、これからは取り継がないでね?」と千景が言う。
「ごめんなさい」と美里は改めて謝る。
「しかし、結構な数だね?」
廉は袋を覗き込みひきつる。
「どうする?一人一人返して回るか?」
千景が提案する。
「直接、渡されたわけでないから、直接返さなくてもよくないか?」
廉は極力簡単に済ませたいと態度に出ている。
「あぁ、通りから言うとそうだな?」と千景も同意する。
「取り敢えず、宛先毎に別けるか?」と廉は机の上に袋から出し並べていく。
「千景8、廉10、玲音25、悠貴7」
机の上に所狭しとチョコレートの山が4つできる。
「これ、同じ娘からのもあるな?」と千景が見て更に細分化していく。
「千景5、廉6、玲音15、悠貴5か?」
整理されたチョコレートの山を千景が確認した。
その山を見ながら廉は提案をする。
「教室の机の上でも置いて返すか?」
千景が溜め息をつきながら言う。
「席どころか相手の顔もわからんぞ?」
そこに、樹里亜がやって来た。
「あら、珍しくチョコレート受け取ったの?」
「違うの。私が渡してくれって頼まれて、持って来てしまったの」と美里が言う。
「美里が?」
「うん、皆さん受け取らない主義とは知らなくて……。他の男子は、喜んで受け取って数を競ってたりしている人多いから…。男の人はみんな喜んで受け取って居るのかなと思って」
樹里亜は美里が落ち込んでいるのを見かねて「仕方ないわね、今回は私が突き返して来るわ。どうせ無理矢理、美里に押し付けたんだろうから。でも、潤の分無いなんて意外ね?」
「………」
男達は沈黙する。
「潤、お前の気持ちは、肝心な奴には届いてないぞ」
廉は潤の耳元で囁く。潤は苦笑していた。
「サクラ、廉、千景、悠貴、これ貸しだからね」と樹里亜はチョコレートを袋につめ部室を出て行く。
「!!!」
その言葉は、潤を除く男達は雷に撃たれたような衝撃を起こし、また男達を放心させる。
「樹里亜。待って、手伝うよ」と美里は樹里亜を追い掛け部室を去っていった。
部室に残された1人を除く男4人。
今日学校に来たことを真剣に後悔していた。




