Think outside the box.
1.Think outside the box.
ある日の昼下がり藤堂と齋藤が珍しく学園にいた。
「何か久しぶりだな」と齋藤がいう。
「そうですね。卒業以来、来てないですから。それより拓哉、先に各々の用事済ませましょう。
今日はお互い直帰なら、その後、ゆっくりと母校を探索しましょう」と藤堂は書類の束を早く手放したいと言わんばかりにさっさと行動に移す。
「わかったよ!図書館で落ち合おう」と齋藤も自分仕事を片付けるべく目的の校舎に移動する。
藤堂は時宗から頼まれて伊集院教授に遺跡調査の書類にサインの箇所の説明と必要事項記入説明、今後の予定表等を届けに、齋藤は校長に校舎の補強工事の工期予定と補強箇所の説明に来ていた。
フロンティア学園の図書館は初等科から大学院迄の幅広い生徒が一つの建物内で使用するため蔵書の充実ぶりは素晴らしく、建物の規模は体育館や公会堂と同じくらいの建物で階層事に各分野別に別れていた。
蔵書の所蔵規模は公立の図書館に匹敵する。
先に図書室に来たのは藤堂だった。
懐かしそうに図書室を回っていると知った顔を見つけた。その人物に近寄り隣に座る。
少年は、教科書と関連性の高い蔵書を使って勉強をしていた。
「廉様、今日も授業には出られて無いんですか?まだ頭痛が起きるんですか?」
思わぬ人の呼び掛けに少年はびっくりしていた。
「なんで、藤堂先輩がここに?」
「今日は、統轄長のお使いで伊集院教授に書類を届けに。統轄長が午後から休暇なのでそれが済めば、私も半休で直帰きるんですよ。
拓哉も別件で来てますからここで待ち合わせしていてね」と言って廉が勉強してる資料を見る。
「【一事不再理】ですか?
日本国憲法39条『何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない』刑事訴訟法337条、338条、340条ですね。セットで【免訴】刑事訴訟法は337条 も覚えておくといいですよ?」
「先輩。すらすらと条項まで出てくるなんて、かなり法律に詳しいのですね?」
「そうですね。こう見えても弁護士資格を持っているので受験する時、嫌と言うほど頭に法律を叩き込みましたからその成果ですかね?」
「えっ?でも、何で秘書?顧問弁護士にでもなれば…………」
「さあ?何ででしょうね」と藤堂は笑う。
廉は、藤堂を見ながらキョトンとしている。
「秘書は人を影で支える事で、仕えている人の最大限の効率を引き出すことも、非効率な結果しか出来ないことも秘書次第。
言い換えれば影で人を操れる仕事と言うのが魅力でしょうか?
私は、学生時代に三國志の諸葛亮孔明の様な策士に憧れてました。戦国時代において策士は主君の傍らで、前線には立ちませんが後方で自分の知恵と戦略で兵を動かし勝利に導く。敵を欺くのも楽しそうでしょ?
しかし、現代では戦争は知略の戦いより兵器の戦いみたいなものですからね。御免です。
この国では、法治国家において法律は知っている者が強者です。だから知らないで負けるのが嫌だと思ったから法律を学びました。
自分が仕えるのは自分が尊敬でき、その人に自分以上の何を見いだせる人でないとね。
そういう人物以外の他人の争い事にわざわざ首を突っ込む気は有りませんし、そんな仕事は嫌なので法曹関係の仕事には就きたくないと思っているからで答えになってます?」
「先輩変わってますね?」
「そうですか?資格持っているのにそれを使わないとか、その職業に就かないからといってその資格が無駄か?と言われれば私は、NOだと思いますよ?
今度は、私の質問には答えてくれますか?」
「あ~ぁ。頭痛は大丈夫です。授業は………。考え事している時は1人で考えたいので」と廉は笑いながら答える。
「何か悩みですか?」
「う~ん。将来自分は何をしたいかな?
何を目指せばいいのか?それを模索するために独りでどの教科が楽しいか勉強してるんです」
そこに齋藤がやって来た。
「十碧お待たせ。あれ?廉君、授業は?」
「ハハハ」と廉は苦笑する。
「拓哉。拓哉が今の職種選んだ理由は?」
「えっ?何だよ急に?」
「廉様が将来の職業の選択に迷っていらしゃるので反面教師として参考にすればいいかと」
「十碧!なんで反面教師なんだよ!そう言うお前はなんで秘書なんて選んだ?お前が弁護士になれば百戦錬磨、有罪者も無罪にできるかもだろ?そもそも何で弁護士資格取ったんだ?」
「その説明はもう廉君には、したからいいのですよ!」
「えっ?そうなの?」
「ここでは人が居ないとは言え場所的に話せませんから購買棟のカフェに行きましょうか?」
「はい」と廉は書籍を元の場所に戻し片づけている間、何やら2人は雑談をしているようだった。
フロンティア学園は初等科から大学院の専門研究棟以外は同じ敷地に有り図書館と同様に体育館、公会堂、購買棟等のといった建物は共有施設となっていた。
共有なのでプールに至っては室内プールだが階層ごとに小学生から大人、競泳用とダイビング用と言った用途別になっている。
購買棟も同様で地下フロアはコピー機や文房具や書籍等の購買部が有り1階フロアは、初等科、中等科専用の給食センターが、2階フロアではカフェとパンや軽食が食べれるフロアで、色々な自動販売機もあり3階フロアではレストランがある。
全てのフロアは教員から生徒、保護者、学園が立ち入りを許可した人物なら自由に利用可能になっている。
中等科の生徒は寮生活の為、夕食をこのレストランで食べるか給食センターで持ち帰り用の弁当で自室で食べるか選択できる。
この建物の半分近くが齋藤が設計を手掛けたもので共有にすることで無駄を省き、施設自体を充実させるとのコンセプトだ。
2.You never know what you can do till you try.
カフェに行くと伊集院と加藤がいた。
「ん?珍しい奴等がいるな。廉は、また授業さぼりか?」と加藤が3人を見つけ言う。
「藤堂君。さっきはありがとう。齋藤君も一緒に来て居たんだね。廉君は、まだ頭痛がするのか?
よかったら3人もこっちに座れば?雅治が何でも御馳走してくれるぞ」
伊集院が誘う。
3人は顔を見合せて同意し、2人のテーブルに座る。
テーブルの上には調査報告書の様なものが有りおそらく遺跡調査の打ち合わせをしていた様だ。
「ちょうどいいこのお二方にも聞いてみたらどうですか?」と藤堂は言う。
「ん?なんだ?宇宙科学とかは辞めてくれよ?専門外だからな!兄貴の所に行けよ」と加藤は言う。
「雅治それ兄貴が聞いていたら内容も聞かず丸投げするとまた怒られるぞ!」
「そうか、廉。誠が教えてくれるってよ!」
「おい!俺も専門外だよ!」
「大丈夫ですよ。お二方に答えられない質問ではありませんから」と藤堂は言う。
「なんでも今の職種を選んだのか知りたいそうです。あっ何頼んでもいいですか?お昼食べて無いんで……」と齋藤はメニューを見ながら言う。
「好きなもん頼めよ。廉も遠慮せず何でも頼め」と加藤は廉にもメニューを渡す。
「なんで考古学を選んだか?かぁ~。改めて聞かれるとなぁ。随分と昔から考古学者に憧れていたからな」
「俺、ミックスサンドにカルボナーラにカフェラテ。廉君は?」と言いながら齋藤はメニューを藤堂に渡す。
「俺はカフェモカで」
「拓哉は炭水化物ばかりですね。廉様それだけでいいのですか?加藤さんの奢りですよ?」と藤堂はメニューを見ながら言う。
「俺、昼は食べたんで」
「好物のシュークリームでも頼めよ」
「シュークリームに目が無いのは玲音で……。ならアーモンドクッキーお願いします。」
「あぁ、そうだったな。でも、ここに玲音が居ないのも不思議な感じするな」
「噂をすると現れますよ」と廉は笑う。
藤堂は店員を呼びハンバーグランチとミルクティ、カフェモカとアーモンドクッキー、ミックスサンドとカルボナーラにカフェラテを頼みメニューを返す。
「あーハンバーグランチ!見おとしてた!」と藤堂の注文を聞いて齋藤は悔しがる。
「拓哉はお腹すいているとメニュー開けて目に入ったものを頼む癖が有りますからね。定食とかセットものまで目が届かない」
「ううぅ。反論できねぇ」
「注文取り直したらどうですか?」と廉は店員を呼ぼうとするが藤堂が制止した。
「いや、もう脳内では5割がミックスサンドとカルボナーラですから同じ事です」
「お前よくそんなんで施工計画や設計出来るな?」と加藤は呆れる。
齋藤は愛想笑いをしている。
「で、お二方は何故?」と藤堂が仕切る。
「こないだ校長先生がお二人は高校の時にはもう進路は決まっていたと、おじさんは決めかねていた様ですが」
「ん?兄貴がそう言ったの?」
「はい」
「誠は決めて居たけど、俺は決めていた訳で無いなぁ。法曹関係の仕事だけは嫌だとは思っていたけどな。
漠然と海が好きだから海に関係ある仕事したいとは考えていたけどなぁ。
大学も時宗と誠が海外に出ると言うから乗っかっただけで別に拘りは無かったしな。結果的に幅広い人脈掴めたんで良かったと思っているけど………。
社会に出たら時宗と起業でもするかなぁと思っていたら時宗の奴、親のあとを急に継ぐ羽目になったから、まぁ一緒に仕事するために、この会社に入っただけだからなぁ~」
「なんで法曹関係の仕事は嫌だったんですか?」
「雅治の両親は2人とも弁護士だから反面教師みたいに捉えたんだよ。
多分一度か二度は、廉君も雅治の親父さんに会って居るんじゃないかな?」
「あ~。そうかもな」と加藤も同意する。
「??」
「加藤さんのお父様は櫻グループの顧問弁護士ですから、廉君を引き取る時の手続きをされたんですよ。その為に何回か会って説明受けませんでしたか?」と藤堂が説明する。
「あぁ、あの優しそうなおじさん!」
「優しいかどうかは別としてそう言う事だ。俺は参考にはならねーよ!
それより廉。迷って居るなら将来、海洋開発部に来いよ!海の良さ十二分に教えてやるぞ?」
「そうですね。候補の1つとして考えておきます」と笑う。
「それなら考古学の方が面白いぞ?」
「教授は何故考古学を?」と藤堂がまた仕切る。
「こいつは幼い頃に見た映画のヒーローに憧れて、その人物の職業が考古学者だったからだよ」
「まぁ、それも有るが君達の年より若い頃から時宗や雅治と一緒に徳川の埋蔵金探しや財宝を乗せたままの難破船探しの為の資料探ししていたからね。
まぁ実際は調べるのは俺の役目で探すのはあの2人だったけどな。
それに俺の母親は翻訳家でそう言うアドベンチャー物の小説が家に転がってたしな。
高校に入ってからは世界遺産めぐりもしたしなぁ~。昔の人達がどの様に暮らしたかどの様に文明が滅んだのか?小さな手掛かりから紐解く面白さを知ったからかな?」
「そうなんですかぁ~。でも憧れた職業につけて幸せですよね?」
廉が言うと伊集院がそれに答える。
「それはその人の気持ちの持ちようじゃないかな?好きなことでも仕事となると、うんざりする部分が出てくる。それが積もると好きなことが好きでなくなるかもしれない。
反対に時宗の様に嫌だった親の後を継いだが自分の好きなように起業できる特権を得、楽しんで仕事をしている」
「仕事は暮らしていくために必要不可欠なことだからな。遊んでお金はもらえない。そうなると嫌な部分もやりたくない事もあるだろう。だけど対価をもらっている以上はそれをなさなければいけない。だから自分のモチベーションが保てる職業を探すのがいいのかもな」と加藤も率直な意見を言う。
「さて、食べるのは後にして拓哉は?」
「えっ?」とカルボナーラを勢いよく食べている齋藤は急に自分に振られ喉につまらせる。
「先輩!大丈夫ですか??」
「あぁ、大丈夫」と水を飲みながら手を休める。
「俺?俺は何時からとは覚えて無いけど…………。
きっかけは校長先生が何かで話してくれた【フィボナッチ数列】の話で【黄金比】との不思議かな?芸術作品や建築物に関して至るところに使われ造形美を生み出す。それは人が作る物だけではなく生物の中にも溶け込んで居る不思議がね面白くってさ。後、日本では【白銀比】とか使われていて【もったいない】という観念から効率よく木材を使うことから派生したそうなんだが調べていくとね、色々な所に有るんだ。
例えば用紙サイズ、風呂敷、法隆寺、菱川師宣の「見返り美人図」、平安京の街並みとかね。
その造形美を使って色々な街や建物を作ってどのくらいの人が気付くかな?どの様に折り込めば後世に残る建物として遺せるか?やってみたくてね。
俺が死んだ何十年後でもその建物が俺が生きていた証として残ればいいなぁ~と。後世の考古学者に素晴らしいと言ってもらえる遺物を残したくてね。ただそれだけだけど?」
「兄貴の数学論に影響された奴が身近にいるとはな」と加藤は齋藤をまじまじと見る
「兄貴に『建物より数学の定理を証明して後世に名を残さないか?数学は一度証明されると覆る事の無い永遠の真理だよ』とか言われなかったのか?」と伊集院は唯野のものまでねしながら口癖のように言う。
「あ~。そう言う手も有ったのかぁ?気が付かなかったな……。でも俺には無理ですよ。ハードル高すぎ」と笑顔でミックスサンドを食べながら答える。
気が付くと授業が終わったのか周りに人が増えてきていた。
「そういうお前はどうして秘書なんかになったんだ?弁護士資格持ってるんだろ?」と加藤が藤堂に詰め寄る。
すると藤堂は涼しい顔で「それはもう廉様には説明したので終わってますよ!」という。
「なんかずるいな…………。俺達だけ喋らされた様な気分だ」と加藤が言うとそこに別の知った声が聞こえる。
「廉!お前。授業さぼって何?自分だけくつろいでいるんだよ!」と玲音と千景と悠貴と潤が現れる。
「あ~。やっぱり見つかった」と廉は苦笑いする。
「仕方ないな。玲音ここに座ってシュークリームでもなんでも好きなもの頼めよ!」と加藤が言うのが早いか玲音達もテーブルを寄せて座る。
「加藤さんのおごり?何頼んでもいいの?」とメニューに釘付けになりながら嬉しそうに言う。
「ダメと言っても頼むんだろ?好きなもの頼めよ!その代わり大人になったらこの借りきっちり返してもらうからな」と加藤は楽しそうに笑う。
帰りに藤堂は廉に「何か得るものがありましたか?」と聞くと廉はにっこりと笑いながら「えぇ、十二分に」と答えた。




