That is now all in the past.
1.That is now all in the past.
島の仮事務所で齋藤と藤堂が酒を飲みながら昔話をしている。
藤堂が昔を思い出しながら言う。
「あの時、もし生徒会の推薦を断っていたら、今ここに2人揃ってこうして居る事は出来ていたのかなぁ?」
「うむ。そうだなぁ~。
お陰様で俺は、月の半分は探検家のように、この島に籠っているけどな?」と楽しそうに齋藤は答える。
「拓哉は事務所で書類作成と指示を出すだけの仕事なんて続かないよ。現場大好き人間だからね」
「 まぁ、この島の開発だけが仕事では無いが、今の仕事の半分位はこの仕事だからなぁ。
島に籠ると世間からは離れる事になるが、でも今までの仕事の中で一番楽しいな。
スパンも長いし、何より自分の思うようにさせて貰えるからな。
他の仕事は自分がベストだと思って提案しても役所の許可やクライアントのワガママで何度も設計が覆るからなぁ~」
齋藤は酒を一気に飲み干す。
「そう言えば、こないだ山崎先輩に会いましたよ?NYの秘書室に居たんだ。
散々NYには行って居たのに、しかも自分の統轄部署なのに気が付かなかったのには不覚ですよね」
「そりゃあ、立場が逆転していると自分からは顔を出したくは無いだろ?
必要が有れば別だが………。
そうなると自分の部署ってお前の場合、多すぎだろ?直接仕事の指示することでもない限り全員の把握は出来ないだろ?
それはそうと鈴田先輩の方はどうしてるだろうな?」
「噂は聞かないですね?」
フロンティア学園の生徒会制度は他校とは異なる。
それは、私立の進学一貫校で初等科から大学院まで通常の教育カリキュラムが違う為制度も変わってくる。
初等科修業の段階で一般の中学2年生までの学力の修得。
中等科修業の段階では大学の基礎課程の教育は完了している。
高等科では自分の目指す職業に必要な学問を重点的に学び技術を得る。
大学では実践、技術精査や研究。
大学院ともなれば特殊免許や海外研修、博士号習得となる。
このカリキュラムの為、生徒会役員の任期は2年間、対称役員年齢は中等科2年から中等科卒業時までの在籍期間で、統轄範囲は 初等科から大学院までの全学園行事を統轄し、執行する。
しかし、大学以上は現地修習や実地訓練が主で、ほぼ学園の行事は無いため、初等科から高等科が事実上の統轄範囲となる。
当然役員になれば自分よりも年上で学力を持った高等科の人間をも従わせなければならず、この活動手腕が生徒会役員の卒業後の重要視される所以である。
もし、強引に票だけをかき集めて生徒会役員になったとしても上手く統率できず自分のキャリアに×が付く可能性もかなり高い事になる。
故に、幅広い人望、行動力、学力、適切な判断が出来無い人物がなると簡単に潰されてしまうのである。
生徒会執行部に入るには生徒会執行部の推薦枠から立候補するか一般枠から立候補するかのどちらかになるが、ほぼ執行部の推薦枠で信任投票と言う場合が多い。
執行部の推薦枠は現執行部の人の能力を見る目を試される最後の仕事で、もし推薦した執行部の失敗や不祥事はそのまま推薦者の人を見る目の有無として評価されるので執行部の最後の関門のとばかり厳選される。
なので、その枠から立候補する人と自ら立候補し選挙で戦う者は少ない。
中等科2年になる前の冬、齋藤と藤堂は生徒会室に呼ばれていた。
当時の生徒会長の山崎亮と副会長の鈴田祐司が待っていた。
山崎が口を開く。
「わざわざ、生徒会室まで御足労すまないね」
「いえ、とんでも有りません。なんの用ですか?」
「察しはついていると思うのだけど、生徒会執行部の推薦枠で次の生徒会の会長と副会長の推薦を君達を推したくてね、了承してもらえるかな?」と山崎がいう。
「次の学年で生徒の統率力、成績、品行、観察力を兼ね揃えているのは、君達2人だと会長と意見が一致してね。是非快諾して欲しいのだが?」と鈴田がつけ足す。
齋藤と藤堂は顔を合わせて困惑している。
「どちらが会長でもいいと思うが齋藤君の行動力、藤堂君の物事の統率力を考えると会長は齋藤君、副会長に藤堂君がベストではないかな?」
「知っての通り生徒会役員は無事に任期を終えることが出来れば、卒業後の櫻グループでの自分の希望部署への切符が約束される。
好きな仕事が選べると言うことだ。悪い話しでは無いだろ?」
「希望しても、なかなか自分の希望と才能の差で叶わないことも多い中、切符を貰えるのは未来へのチャンスではないかい?
まぁ実力で勝ち取る方法もあるが、その実力を発揮出来る機会なんて生徒会以外では、ほぼ無いに等しいよ。生徒会での活躍はそのまま学校側から統轄長に報告され人事の参考にされるからね。
一般立候補者が出ると選挙になるが、君達に敵う者は居ないだろ?立候補者が居ない場合も信任投票となるが生徒会執行部の推薦付きだ。不信任になる可能はほぼ無いからね。どうだろう?」
2人は顔を見合せ「少し考える時間貰えますか?」と齋藤が言う。
「考える必要なんてないと思うが?
まぁいい。明日返事をくれ」山崎が言う。
「ちなみに他の執行部、会計と書記は誰を推す気ですか?」と藤堂か質問する。
「まだ検討中だが?」と鈴田が言う。
「では、この推を薦受け入れたならその2人は僕達で推薦させて貰えませんか?
やるとするならベストな構成とチームワークでしたいと思うので」
「さすが、藤堂君は聞きしに勝る交渉術だね?了解したよ。いい返事を待っているよ」
生徒会室を出て教室に戻った2人
「さて、どうする?」
「いいことばかり、並べられたが失敗でもしたら、そこで終わりだからな。
俺達の学年は良くも悪くもかなり色々な奴居るからな。どうやってまとめあげるかだ、俺達2人以外の人選がキーになるぞ」
2人は暗黙の了解で生徒会執行部を受けることは、ほぼ決めていたが、【どう自分達に優位に運営できる状態にするか?】にポイントが置かれていた。
「拓哉なら人をまとめることは大丈夫でしょ?」
「俺が会長するのか? 十碧、お前の方が適任でないか?」
「俺は秘書志望だから。秘書とはサポートですよ。だから副会長がいいんですよ!」
「会計は?書記は?心あたりないか?」
2人は当時の記憶が昨日の事の様に鮮明に思い出し、酒が影響してか思い出にひたる。
「かなり、他のメンバーの人選にも頭を痛めましたよね?」
藤堂は振り返る。
「 周藤 秀一は今何処に居るんだ?十碧に連絡あるか?」
「いえ、卒業後のあのパーティ以後、忙しくて連絡してないですね?向こうからも来ませんし。
移動してなければ東京の報道部に居ると思ういますが、取材とかで社に居ることは少ないのでは?
そう言えば、俺は田辺 薫さんにもこの前、島でちらっと会っただけで随分会ってなかったくらいです」
「ん?薫?呼ぶか?」
「いや、いいよ。正直俺は、少し彼女は苦手だから」
「ハハハ、2人の性格は、何処と無く似てるからなぁ~。思った事ストレートに言う所は特にな」と齋藤は笑う。
「似て無ませんよ!俺は、必要な事しか口にしないでしょ!」
「まぁ、ああ言う性格だが、やさしい所も有って、それに頭もきれるから配慮も完璧なんだぜ?そう言う所もお前ら似てるかもな?」
「なんとでも好きに言えばいいよ!」と藤堂はふて腐れる。
「結局、人選を2人でかなり吟味し、スカウトして万全の体制で推薦を受けて生徒会執行部に席を置いたが、その年に限って色んな騒動もあったよな?」
齋藤は、また記憶を遡る。
「あ~。進学コースの奴らの体育祭は無用直訴とかありましたね。
文化祭は文化祭で、売り上げがかなり突出している部が出て、あまりに文化祭の催しの域を卓越しているのは、生徒会の吟味ミスだとか指摘されましたね」
「あの部長は、商才有るのかも知れないがTPO考えろよって感じだったよな?
ただあの商才を上手く使えば今や本部の三役に居るかもな?十碧。今度探してみろよ。
まぁ大変だったが、今思うとあれはあれで面白かったなぁ」
「拓哉だけですよ、そう思うのは。でもあんな経歴が無かったら、今の統轄長のお守りは出来てないかもしれませんねぇ………」
「おいおい」
「いやぁ、お前が思うより大変なんですよ?
目を離すとすぐ他の仕事に手をだすし、その癖、今日中に片付けないといけないものはしてないし。
それ指摘すると、『いやぁさぁ、これいい案だと思わないかい?思い立ったら吉日と言うだろ?だからね!やってしまおうと思ってさ』とか言うんですよ!あの人が決められた仕事を片付けてくれないと俺が、秘書室の奴らから責められることになるのに。定時退社できないとか、休日出勤が続いてるとかね」
「でも、楽しんだろ?そんな風に話すお前はやりがい感じてないと言わないからな?」
「あぁ楽しいですね。あの人が口に出した事が次々形になっていく。
どんなに忙しくても妥協しないし、先見の明がありますね。あんなに起業して失敗に終った事なんか無いのも凄い事ですよ?
そんな人、今迄に会ったこと無い。
本当に凄い人です。そんな人の仕事を傍で見て手伝えるんだから楽しく無いわけが有りませんよ」
「それは、生徒会執行部に入れたおかげなのかな?
そう言えば、今年は玲音君達が生徒会の執行部に立てる年でないか?立候補するのかな?」
「いやぁ、しないんじゃないですか?
廉様と千景君は、人の面倒に進んで首突っ込むタイプでは有りませんし、玲音様はその反対ですが、まず人を選びますからね。
それに彼らは生徒会の場を利用しなくても十分に活躍を学園全体に披露してるでしょ?
敢えてする必要ありませんしね」
「あぁ、今思うと俺達が生徒会執行部の時に在学してくれなくてマジでよかったな。
俺、無神論者だが、これだけは神様居るのなら感謝するな。今年の生徒会執行部は、マジで御愁傷様だなぁ~」
2人は、酒を酌み交わしながら、思い出話をつまみに明け方まで飲み尽くした。




