お嬢様命令発動
1.お嬢様命令発動
いつも通りの放課後、玲音達は部室でくつろいで居る。
そこに樹里亜がやって来て部員全員に向けて言い放った。
「これから半月の間、ここでは集中強化勉強会をするわよ」
「え?」と千景は驚き、「なぜ?」と廉は嫌な予感を感じながら呟く。
「もうすぐ、中間テストよ!」
「あ~玲音。もう25点は止めてくれよ?」
廉は玲音に忠告する。
「この前は満点だよ!」と玲音は廉に反論する。
「別に今回は大丈夫なんじゃないか?」
千景はメンバーを見ながら言う。
「美里よ!美里の勉強をみてあげて」
樹里亜は緊迫感あふれる反論をする。
「何の教科がやばいの?」
廉は美里本人に聞く。
「全部かな?」
小さく恥ずかしそうに美里が答える。
一同、沈黙が走る。
「ごめんなさい」
その緊迫した空気に美里は居たたまれなくなり謝る。
「いや、謝ることでは、ないんだけどさぁ」と廉は慌てて美里フォローする。
「うん、ここの学園のレベルが高すぎだよね」
玲音も同調する。
「樹里亜ちよっと」
千景が樹里亜を部室から連れ出す。
「全教科って、どのくらいの学力かわからないと、どうにもならないぞ?」
「こないだの期末試験順位がブービーよ」
「え?ブービーって最後から2番目?」
「そう」
「得意科目は?」
「美術よ」
「いや、それテストの科目ではないだろ?」
「強いて言うなら国語?かしら?」
「それ期末は何点だったの?」
「56点よ」
「得意科目で?」と千景はびっくりする。
「声が大きいわよ!」と樹里亜は怒る。
「今回の中間テストは、英語、国語、漢文・古文、化学、数学、政治経済、後任意選択科目1教科だよな?」
「そうね」
「それ、俺と廉と玲音とお前と4名で教えるのかよ?」
「3名よ」
「?」
思わぬ樹里亜の返答に千景は状況が理解出来ず沈黙が流れた。
「私は、人に教えるのが苦手なのよ。前回貴方達に分からない所を教えて貰って美里の期末試験対策で教えてみたけど無理だったもの」と平然と言う。
「おい、7教科3人で半月かよ?」
千景は呆れながら、無理だと言わんばかりの雰囲気で言う。
「仕方ないから、悠貴と潤の面倒はみるわよ。あの子達は、教えるより勉強やらせば成績上がるでしょ?
それに、半月もあるんだから、なんとかしなさいよ。よろしくね。絶対に美里を退学にさせないでよ」
樹里亜は否応なく千景に押し付けて去って行く。
千景が部室に戻ると美里をよそに、廉と玲音は互いに挑発しあっていた。
「廉、今度の試験で順位高い方に1日なんでも言う事きくっていうのどう?」
「お前、前回、数学満点だったからって調子に乗ってるな?俺が本気だしたら泣くのはお前だぞ?」
「じゃあ決まり!何してもらおうかな?美里ちゃんは、どっちが勝つと思う?」
「廉、玲音。ちよっと付き合え」と千景は2人を呼び出す。
「ん?美里ちゃんごめんね。ちょっと行ってくる」と玲音と廉は千景の呼び出しに応じた。
場所を校庭の隅に移り、千景は樹里亜に言われたことを話す。
「えー、俺達で教えるの?7教科全部?
俺、教えるほど理解力ないけど?」
「何をおしゃるパンダさん、学年首位で在らせられるのに」
「そうだな、さっきも俺に挑発するくらいだからな」
「ってか、もうアザ無いのに、なんでパンダなんだよ?」
「パンダって寝てるだけでも万人に愛される動物じゃないか?しかも、絶滅危惧種で大切されて、玲音君にピッタリではないですか?」
「そうだな、寝てるか、食べてるか、遊んでいるしかないしな?パンダは」
「おい。俺は、ちゃんと勉強もしてるぞ」
「で、どうする?」
2人は玲音の話を軽く流して話を進める。
「どうすると言われてもなぁ~」
「それぞれの得意教科は?」
千景が「数学、化学?」
玲音は「英語、化学?」
「廉は?」
「特になし」
「よし、決まったな!」
「俺が数学。玲音は英語と化学。廉はそれ以外で、これで行こう!」
「おい、なんでそうなる。俺は全部得意では無いんだぞ?。それに授業も半分未満しか出てないんだぞ!」
「廉、そこは威張る所ではないから」
「威張ってない!こんな状況で人に教える事なんて、出来ないだろう?」
「廉ならできるよ!うん」
「そうだ、お前ならできる!」
「おい、お前ら良く考えろよ!成績上がらなかったら俺達全員、樹里亜に殺されるぞ?」
「………。うーん仕方ないなぁ~。俺が数学と化学」
「玲音が、英語と政治経済」
「廉は、国語、漢文・古文、任意問題な」
「任意問題は何を選択したんだ?」
「さぁな?時間の割り振りだが……。
月、木が俺。火、金が玲音。水、土が廉な。これでいこう」
廉はかなり不満だったが、言っても仕方無いと諦めた。
「玲音。今回のテスト範囲教えろ」
「え?チェックしてないの?」
玲音は呆れ果てた。
「それと、今授業でどこまでいってるかも」
「廉、ちゃんと授業くらい出ろよ!最近発作も出てないし元気じゃないか!」
廉の余りの不良加減に玲音は釘を指す。
人にどうやったら解りやすく説明できるか?
それは、他人から学ぶのが一番良く分かると言うことで、色んな教師の授業を聞くために廉は真面目に授業に出る事にした。
久し振りに1時限目から廉が教室いると玲音が寄ってきて
「なんか教室に、廉がいるの不思議だ」と茶化す。
「玲音!人から反感を買うようなことを言うなよ」と廉は怒る。
教室の一番後の窓際の席でまったりと授業中、外見ていると、とても懐かしい感じがした。
たまには、教室に居るのも、いいもんだなと改めて思った。それをきっかけに廉は、美里の家庭教師事件後も授業にまめに出るようになっていった。
自分がわかっているから人に教えれるとは限らない。きちんと深く理解してないと感覚的な感じでわかつているだけで理解はしていないものだ。
悠貴と潤いわく、この時ほど、あの3人があんなに勉強している所は見たことないと、びっくりしていた。
なので、放課後の部室は塾顔負けの講義が展開されていた。
お陰で考古学研究部部員の中間テストの成績はすばらしいものであった。
同一首位が3名。全ての教科のテストで満点が3名も出たのは学園が始まって以来の快挙であると。
1.五十嵐 千景
同位 櫻 玲音
同位 橘 廉
(五十音順)
4.藤春 樹里亜
5.山下 綾
6.野田 遠吾
7.松本 春菜
8.須藤 薫
9.伊崎 透
10.大野 哲
「美里ちゃん、全部平均点以上だったって」
玲音がテストの順位の発表を見て来て廉に、報告する。
「そうか、よかった。しかし、同点だと一日、奴隷券はどうなんだ?」
「次回に持ち越し?」
「悠貴と潤はどうだったんだ?」
「潤は首位だったよ、悠貴は8位だ」
「頑張ったんだな?まぁ順位が全てでは無いけどな」
首位の廉が呑気にいう。
そこに慌ただしく戸を開けて不機嫌そうな顔した千景がやって来る。
「廉!ちょっと知恵を貸せ!」
「何、また?ろくでもないことはお断りだ!」
廉は千景をつっ跳ねる。
「放っておくと大変な事になるぞ」
千景は見るからに不機嫌な態度で廉を脅す。
「ん?」と玲音は興味を引き呑気に耳を傾ける。
「勉強会の事が噂になって、考古学研究部に入れば、試験のための特別勉強会があってそれで成績が上がると噂が広まり入部希望者が殺到している」
「え?」と廉は絶句する。
「入部希望者全員を受け入れないと駄目なの?」と玲音は不思議そうに聞く。
「受け入れられるか!100名以上の入部希望者来てるし、まだ増え続けてる」と千景は反論する。
「部室に入らないじゃん」
と玲音はピントのずれた回答をする。
「そう言う問題か?」
千景は玲音の反応に溜め息をつく。
「断われないのか?」
廉は素朴な疑問を千景に言う。
「その断る理由を考えてくれ」
「入部テストするとか?面接するとか?」
玲音は思い付くことを言ってみる。
「テストでも面接でもしたら、何人か入れないといけないだろ?俺はこれ以上、部員増やしたく無いんだが?」
「同感だ」と廉も頷く。
「学校の規定はどうなっているの?」と今度は玲音が興味本位に聞く。
「部活は生徒の自主的活動の場で、学校は基本的に不介入だ。だから、部の決まりや、活動内容は顧問のサポートはあるが生徒が話し合いで決める。
但し部活費とか、支援金のお金が出ているから活動報告書の提出は義務だ」
「じゃあ簡単じゃん?【この部活は定員満員のため募集は行っておらず】といえば?」
「7人と言う人数が微妙なんだよ。部活をある個人の閉鎖的な社交場と特定されて、廃部の沙汰でも出てみろ。どうにもならん」
「それは、誰が判断するの?」
「生徒会長だ」
「誰がなっているの?」
「お前知らないのか?」と千景は呆れる。
「知らないよ。俺、自慢じゃないけど、必要な人以外の顔と名前覚えないもん」
「……」
廉は流石、玲音だとしか言いようがないなと沈黙した。
「やっぱりお前は、極楽パンダだな?」
「なんでだよ!どんだけ親父の関係で人と会うと思っているだよ。いちいち覚えてられるか!」
「じゃぁ、これからは、この人はよーく覚えておけ。『相澤白夜』歴代生徒会長の中で一番切れる男と有名人だ」
「齋藤先輩も昔ここの生徒で生徒会長してたと言ってたけど、先輩より上なの?」
「あぁ、あの人もかなり有名な人だったが、今の生徒会長の千里眼は凄いらしい」
「千里眼?」
「あぁ、人の話しの中の小さな矛盾を聞き分けて、嘘かホントか直ぐに見分ける。
成績も、首位から落ちた事ないし、統率力あって、他の生徒会役員全てまとめあげてる。そんな男相手にどう取り繕うんだよ」と千景は言う。
「簡単じゃん?」
玲音は呑気に言う。
「ん?」
廉は玲音の言葉に興味を示す。
「こちらには、もっと凄いトークマシンいるじゃん?」
「おい、樹里亜に聞かれると殺されるぞ?」
廉は玲音に忠告する。
「あぁ、その手があったか?」
千景はなるほどとばかり納得する。
「でも、生徒会長相手にあの弾丸トークで勝てるかな?」
廉は安直な考えに不安を漏らす。
「大丈夫じゃない?別に嘘を言うわけでないしさぁ。押しきれればいいんでしょ?ピッタリの人選じゃん?
それに、樹里亜、ちゃんと相手見て話し方変えるしさ」
「お前、樹里亜の事よく理解してるんだな?」と千景は驚く。
「どんだけ今まで、酷い目に逢ってきたと思っているの?
俺だって、ちゃんと学習能力あるぞ!」
「愛玩動物も苦労はあるんだな」
「だから、パンダ扱いは止めてよ」
「色白かったり、黒かったり、パンダ以外当てはまる愛玩動物、俺知らないなぁ」と千景は真剣に考え込む。
「コアラとかは?」
廉が他の愛玩動物をあげてみる。
「イメージではないな?どちらかというとコアラは潤だな。あとカンガルーは悠貴だな」
「あぁ!それわかる!」と廉も同意する。
「だからさぁ!愛玩動物にしなくていいだろ!」と玲音は反論するが、2人にはすんなり話しを流される。
「で、誰が樹里亜に頼むんだよ?」と千景はおそるおそる2人に聞く。
「そりゃあ………」
廉と玲音の2人の視線が千景に向かう。
「え?」
「この3人で樹里亜を上手く説得できる人間はただ一人だ。廃部にしたくなければ頑張りたまえ部長!」
廉は嬉しそうに千景の肩を叩く。
「じゃぁよろしく~。俺、笹買ってくる」
玲音は逃げるように部室を出て行く。
「自分でパンダ自称してるじゃないか。それでは、俺も」と廉も立とうとすると
「まて廉、俺一人では無理だ。せめて援護射撃しろ」と千景に引き留められる。
「…………俺。何時も美味しくない役目だよな?」
廉は、千景に泣きを入れるが相手にされず上着を引っ張られる。
「いいから、部室行くぞ!」
部室に行くと樹里亜と美里がいた。
「美里ちゃん、今回は全教科平均点以上取れたて?おめでとう」と廉は愛想良く言う。
「ありがとうございます。皆さんのお陰です。助かりました」
「ところで、樹里亜。相談したい事が有るんだけど?」と千景は樹里亜に直球で言う。
「なにかしら?部長直々に相談なんて」
「うん、生徒会長にこの資料渡して、これ以上部員の増員は無理だと説明してくれないか?」
「なぜ私が?
部長のあなたがすればいいじゃない?
それが部長の役目というものよ!」
「いや、俺では、役不足だ。どうか頼む。下手すると、部員増やすか廃部だぞ?」
千景は樹里亜に手を合わせ頼み込む。
「変な噂が広まってて、この部に入部すれば成績が上がると。今現在、入部希望者100人以上来てるんだよ。
生徒会長に入部させない理由を言わないと駄目だろ?
理由は真っ当でもさ、交渉術ないとさ」と廉は援護する。
「俺は、樹里亜以上の交渉術を知らない頼むよ?
こないだのお前の頼みは聞き届けたよな?
"Give and take is fair play. "でいこう」と千景はおだてつつ交渉する。
「ふっ、仕方ないわね、美里の成績上がったのは貴方達のお陰だしね。
この部に他の変な奴ら来られても嫌だし。
まぁ白夜先輩ならなんとか頼めば大丈夫だから貸しもあるし、いいわ」
「お前、生徒会長と知り合いなのか?」
「昔から知ってるわよ。生徒会長になる前からね。
ちゃんと上手くいったら貸しね。
資料ちょうだい。こちらも把握しないといけないから明日頼みにいくわ」
樹里亜はそう言うと資料を貰い部室を出ていった。
「アイツの社交範囲広いな?パンダと正反対だ」と千景は感心する。
「パンダ??」
美里が不思議そうに首を傾げていた。
数日後学園の掲示板に生徒会より、以下の内容の貼り紙が掲示された。
以下の理由により、考古学研究部の増員停止の許可をする。
1.考古学研究部発足は、先日発見された遺跡の調査を引き続き発見者及びその関係者が、在学しながらの参加する事を目的としている為。
2.この遺跡調査には一般企業、及び権威ある考古学研究者が数多く携わっている為。
3.実際現地に入り遺跡発掘作業をすることもあり、危険が伴う為。
以上の事を考慮すると、一般の部活と違い誰でも参加できるものではないと判断し、一般学生が遺跡調査及び関係者に及ぶ作業の妨げを考慮してのことである。
将来、考古学に携わりたく、どうしても参加したいと言う者は、顧問と副顧問、部長の3人の許可が揃って入部を認めることとする。
生徒会会長
相澤白夜
廉と千景2人が掲示板をまじまじと見ながら言う。
「やっと落ち着いたな」
「本当に説得したんだな樹里亜」
その2人の背後から声がする。
「そうよ、大変だったんだからね。
千景!貸し1つよ、覚えておいてよ」
2人はおそるおそる振り返ると樹里亜が腕を組んでいた。
「え?その貸し廉に譲るよ」
「なんで、俺なんだよ!」
「そう、なら2人に貸しでいいわ…」
「………」
「千景、お前覚えてろよ!」




