言語
1.言語
それからは100%とは、いかなかったが、部室内において英語の会話が飛び交った。
千景は『ネイティブ』でない分、玲音から言わせると『堅苦しい』と言われていたが会話に影響はない。
廉と玲音と樹里亜に関しては日本語よりも流暢に話す。
美里と悠貴は始めの頃は、全然単語すら聞き取れてない様だったが、徐々に聞き取れるようになってきた。
この頃、遺跡の方も本格的な調査団が組まれ、調査開始目前だった。
廉は、部室で遺跡の資料見ていて違和感を覚える。
まだ調査団が入っても無いのに地下の1階の間取りが何となく浮かぶ。
なんで?自分の想像力?
いや、地下1階に入った事のある感覚だ。
島すらまだ足を踏入れてないのに?
でも、その島の風景さえ思い出せる。
玲音が島中の散策動画を撮影したのを送って来ていたからそのせいか?
頭抱えて悩んでいると美里がやって来た。
「玲音さん?」
後ろ姿の廉を玲音と勘違いして呼び掛ける。
廉が振り返ると。
「廉さんでしたか?何か玲音さんの仕草によく似ていたので、間違えました。ごめんなさい」
「どうしたの?まだ、授業あるよね?」
「あぁ、忘れ物取りにきました。廉さんは授業は出ないですか?」
「うーん、そうだね。たまには出るか?」
部室で悩んで居てもらちがあかないと思い、美里の手前もあり、廉は授業に出る事を選んだ。
2人が部室を出て教室に向かう途中、美里から「廉さんも、玲音さんの仕草そっくりですよね?一緒に暮らして居ると似てくるものなんですかね?」と言われる。
「そっくり?!俺と玲音が?」と思ってもない事を指摘され、びっくりしている。
「はい、仕草もですが、英語の話し方、言い回しなんかも似てると思います。
樹里亜も流暢に話すけど言い回しは、違いますから」と美里は率直な意見を言う。
廉はそれを聞き、今までそんな風に似てると言われる事は、なかったのでますます困惑した。
「美里ちゃん悪い。俺、今日は帰るわ。悪いけど玲音達に伝えておいて。よろしく。 」といい教室とは違う方向に向きを変え歩いて去って行く。
「え?」
美里は気に障る事を言ってしまったのかと動揺と心配しながら、教室に戻り玲音に廉が帰って行った事情を説明する。
(俺と玲音が似てる?)
そう考えると廉は頭痛がしてきた。
多分、美里とあのまま一緒に居て考え込んでしまう。
もし、発作でも出たら、また大騒ぎになり病院に運ばれ入院することにでもなれば、今度は当分は退院させて貰えないと思い、寮に向かう。
みんなから言われる様に、考えない様にすれば良いのかも知れないが、考えずには居られない。自分には早く思い出したい事が有ると思わずには居られなかった。
廉は自分の部屋に入ると思いを巡らす。
玲音が喋れる外国語の種類は同じように喋れる。それもずっと不可解だった。自分は玲音とは違いずっと日本で育ってきているはずだ。
秘書をしていた親父が外国語堪能だったのは考えられなくもないが、おじさんと海外飛び回り、あまり家には居なかったと聞いている。
家庭教師でもいた?
外国語の家庭教師が何人も?
考えれば考えるほど、わからなくなっていく。
自分は誰なのか?
何者なのか?
ソファで考えていると疲れてしまい、いつの間にか寝ていた。
その夢の中、辺りは真っ暗で何もない空間に、大きなスクリーンがあるかの様に誰かの人生が映し出され、凄い速さで巻き戻しされている。
その前に立っている人物はそのスクリーンの人物その者だった。
その人はそのスクリーンを哀しそうに見ている。
( おじさん?玲音??)と戸惑いながらも廉はその人物に声を掛けようとするとそこでまた目覚めた。
目が覚めると目の前に心配そうに覗き込んでいる玲音がいた。
「大丈夫?美里ちゃんから廉が寮に帰ると聞いたから戻ってみたら、またうなされているじゃん。病院に行こうよ俺ついて行ってやるからさ。頭が痛いんだろ?気分もよく無いんだろ?」
玲音は廉を病院に連れて行こうと腕をもつ。
「いや、大丈夫。本当に大丈夫だから。それよりなぁ玲音」
「ん?」
「お前は、俺の死んだ親父と面識有るんだよな?」
「何?そんなこと聞いてどうするの?」
「知りたいんだよ。過去を」
「そんな事、考えているから頭痛に襲われるんだろ?
頭痛ってもうこれ以上、体に負担かけるなって言う体が出すサインだろ? 」
「俺のは、そんなんじゃないから教えろよ」
「俺に聞いても、よく覚えてないよ?
そんなに聞きたければ親父に聞けよ!
四六時中一緒にいたんだから」
「まだ、おじさん日本に居るのか?」
「え?まじで聞きに行く気?」
「お前が聞けと言ったんだろ?」
「まぁ、そうだけど……」
「俺、おじさんの所に行ってくるよ」と体を起こす。
「行っても予定変わって、もう日本に居ないかもしれないじゃん?無駄足になるかもよ?」と玲音は何とか考え直すように説得する。
「居なければ、事務所で今後の予定聞いて出直せばいいよ」と言って廉はソファから立ち上がろとする。
「おい、待てよ。例え日本に居ても外出中で会えるか、わかんないじゃん?それより病院に行こうよ」
「会えるまで、待てばいい話しだよ。
病院に行っても無駄な検査されるだけで嫌なんだよ。お前には、あの検査の辛さなんか分かんないだろう?」
「もう~!分かったよ廉!
親父に連絡してやるから取り敢えず、今は薬を飲んでベットで安静に寝ておけ!
絶対寝てろよ!
本当に、お前は頑固だよな!」
玲音はそういって部屋を出ていった。
直ぐに事務局に電話をかけると藤堂先輩が出た。
「お久し振りです。玲音様」
「お久し振り。今、親父ってどこ居るの?」
「昨日まで、NYに残務を片付けに行ってらしゃいましたが本日、日本に帰国されましたが?」
「今、話すこと出来る? 」
「はい、書類確認してらしゃるので、電話でなら話すことが出来ると思います。代わりますか?」
「御願いします」と言った後、保留音にかわり保留音のメロディーがリピートする前に時宗が電話に出た。
「玲音どうした?なんかあったか?」と時宗から聞かれ玲音は、廉の状態を事細かく話した。
「分かった。少し時間くれ、後からまた電話する」と言って電話を切る。
すぐさま内線で藤堂にかけて聞く。
「藤堂君、今日の予定はどうなっているの?」
「帰国後なので、残務処理しか入れてませんが?」
「その中で緊急度の高いものは?」
「先日締結した買収の契約書の確認ですが?」
「それだけ?」
「はい」
「では、それ持ってきて。それ済んだら出かけるから」
「はい、わかりましたが何処に行かれるのですか?」
「息子に会いに行ってくる」
「直帰されますか?」
「さぁ、まだわからないから、また連絡入れるよ。後、玲音に連絡してそちらに行くと。車の手配も頼むよ」
「わかりました」
夕刻、時宗が寮に到着し、玲音が出迎えた。
「廉の様子はどうなんだ?」
「無理矢理寝かせた。そろそろ目が覚める頃だよ」
「病院は?」
「いくら行こうと言っても、大丈夫だから、何ともない。また意味のない検査は御免だ」と言ってきかないんだ。
「何が知りたいって?」
「廉の亡くなった父親の事を知りたがってる。そんなの俺より親父に聞けよと言ったら直接聞きに事務局行くって。居ないかもと言っても待てばいいと」
「そうか、わかった。廉の部屋に案内してくれるかい?」
「うん」
「ここだよ」といって入った部屋は簡素な部屋だった。
ベットに青白い顔した少年が寝ていた。
(困ったもんだな。顔色も悪いし、熱も少し有るみたいだ。病院に行った方が、いいとも思うが……。
あれだけ散々検査を受けて居るから行きたく無いのもわからなくも無いが……。)
「玲音。ちよっと電話してくるから、ちゃんと廉見ててね」
「うん、わかってる」と言って玲音は廉の寝ている隣の椅子に座る。
時宗は部屋を出て五十嵐和也に電話をし事情を話し、往診を頼んだ。
10分後、和也が寮に到着した。
廉が丁度、目が覚めたので診察してもらい、廉の部屋を出た所で状況をきく。
「精神的なものだろうな微熱は。発作も今までの症状と変わらないから心配ないと思うが、気になる事もある」
「なんだ?」
「前より発作が頻発してる。今の環境があわないのかな?
まぁ、頭痛以外に併発する症状がなければ安静していれば問題ないと思うがな。
俺としてはちゃんと、また検査して結果を確認したいがこの間しているし、 検査も体に負担あるからなぁ。 何より本人も嫌がってるからな。
出来れば、週1回は通院するようにならないか?千景を付き添わせればいい」
「わかった。週1回は病院に行かせるよ」
「一応、処方箋出しておくので薬局に行ってくれ」
「ありがとう」
廉の部屋に戻ると玲音と話ししていた。時宗に気付いて
「すいません。呼び出す結果になって」
「病人が無理して会社に来て、もしそこで倒れられでもしたら、受付のお姉さんから苦情を言われるからね。綺麗な人達だが、少々厳しいんだよ」と何時ものように時宗は冗談半分に言う。
「樹里亜みたいなのか?怖いな」と玲音も茶化す。
「気分はどうだい?少し顔色は良くなったみたいだけど……」
「大丈夫です。玲音が大袈裟なんですよ」と廉は笑う。
「でもね、発作や体調に変化が起きたら病院には行って欲しいな。玲音にでも付き添って貰ってね」と時宗は釘を指す。
「すいません」と廉が落ち込んでいると
「まぁ俺でも、出来れば病院には行きたくないからね。気持ちはわかるよ。
ところで俺に聞きたいこと有るんだって?何かな?」と時宗は話しを変える。
「死んだ両親の事を聞きたいんです。特に親父の事を」
「どのくらい覚えてるのかな?」
「全然」
「うーん、そうかぁ。でもそれ思い出そうとして発作が起きたんだよね?」
「いや、それででは無いです」
「ん?まぁ話すのは構わないが、様子がおかしいと感じたらすぐに止めるよ?」
「はい、構いません」
「君の親父さんは今、藤堂君が遣っている仕事をしてくれてて、俺の専任秘書だったんだよ。だから何時も色んな所に一緒について来てサポートしてくれていたんだ。スケジュール管理や補佐とかをね。
当時は今より、海外に長期出張が多くてね。今の会社があそこまで大きくなれたのは、君の親父さんのお陰と言っても過言ではないよ」
「親父はおじさんと一緒に世界各地飛び回って居たんですよね?」
「あぁそうだね、だからあまり記憶なかったのかもしれないね」
「親父は何ヵ国語くらい話していました?」
「ん?そうだね英語は達者だったね。他は、どのくらいかは………。正直覚えて無いな通訳とか居るからね。どうしてだい?」
「俺、たぶん玲音と同じくらい外国語分かるけど、玲音は小さい頃からおじさん達と海外に住んでいたから覚えたんだろうけど、俺は日本に居て日本語の中で育ってどうやって覚えたのか?全くわかんないから」
「そうだね。でも橘君は、君が学園に入る迄は、私達と一緒に家族で世界各地で生活していたよ?」
「そうなんですか?」
「あぁ、あの頃は、1つの国に1年とか2年とか留まる事が多かったからね。単身赴任ではなかったよ」
「君があの学園に行く事になったと同時に、外国に留まる日数も減った事もあって、橘君が単身赴任するようになったけどね。それまで十分に外国語に接してたからでないかな?
言語は小さい頃に聞き慣れることで理解力が育って行くからね。少し勉強すれば分かるのは不思議でもないよ?
玲音と同じ言語が分かると言うのも、玲音も廉もあの頃は一緒の国に同じ様に過ごして培われたからでないかな?」
「そうですか。ありがとうございます。すっきりしました」
「そうかい、よかった。しかし、廉この部屋もう少しなんと言うか、飾り気とか有ってもよくないか?そう言う事でも、気分違うよ 」と時宗は部屋を見渡しながら言う。
「いや、寝る時以外、そこにいる玲音が居座って居るんであまり居心地よくすると、俺の部屋が無くなります」
時宗は「そうかぁ、それはそれで困ったもんだね」と玲音を見ながら溜め息をつく。
「なんでだよ!いーじゃん楽しくってさ」
「玲音は、一人になりたいことは無いのか?」
「無いね」と玲音は断言する。
時宗と廉は苦笑した。
玲音が急に、目の色を輝かせ「親父!ちょうどいい」と時宗に向かって話しかける。
「もうそれ以上、何も言わなくていい。玲音、それは却下だ」と時宗はあっさりと玲音の話しを全否定する。
「何も言って無いじゃん」
「言わなくても分かる」
「俺も、そう思います」と廉まで同意する。
「なんでだよ!」
玲音は2人から全否定されてふて腐れる。
「それは俺が、お前の父親だからだ!そう言う目の輝きしている時はろくでもないこと考えている時だからな」
「玲音。お前の考えている事を当ててやろうか?」と廉が挑発する。
「分かるのかよ?廉」
「分かるさ」
「なんだ?言って見ろよ!」
「俺の病気に託つけて犬か猫でも飼いたいとか言うんだろ?動物は癒しかあるとか言って」
玲音は廉に、図星され顔を真っ赤にしながら言う。
「………なんで?なんで?そう思うだよ?」
「解りやすいんだよ!お前は。この間テレビで犬の特集番組に見入ってたからな」
「却下だ、玲音。これ以上、廉に負担かけれない」と時宗は言う。
2人声を揃えて玲音を見ながら言う。
『もうここには、【玲音】と言う愛玩動物がいるからな 』
「俺はペットかよ!」




