新しい仲間
1.新しい仲間
1週間も経たないうちに、部室からリストに載ったものが無くなった。
「さすがだな。玲音のおばさん」
千景が感心する。
「取り敢えず、これで少しは落ちつけるな」
廉は安堵する。
「必要な機材は、どうするの?」
玲音が千景に質問する。
「学校に申請書、書いて必要と認められればお金がおりるよ。だからお前らも部活で必要だと思う物は言えよ?」
千景が説明する。
「あの樹里亜先輩が付けていたカーテンとかは全部自前?」と悠貴不思議そうに聞く。
「たぶんな」と廉は呆れながら言う。
「どこまでもお嬢様だな」
お坊ちゃんの玲音が言う。
噂をすれば、樹里亜の登場である。
「ご要望の通りにしたわよ」
『ありがとうございます』
男連中が声を揃える。
「こないだ言っていた秋吉美里よ。
サクラと同じこの4月から編入してきたの。
美里はデザイナー目指しているの。将来、美里のデザインした服で私は活躍するのよ」
「樹里亜言い過ぎだよ。秋吉美里と言います。よろしくお願いいたします。皆様ほど頭が良くないんですが、それでもお役にたてるようがんばります」とにこやかな笑顔で挨拶をする。
「こちらこそよろしくね。
取り敢えず部員の紹介していくね。
まず俺が一応、部長をすることになった五十嵐千景といいます。何でも困った事が有れば相談してくれ。
で副部長は2人いて、この色白なのが橘廉、黒い方が櫻 玲音だ」
「おい、色白って日焼けしてなければ玲音の方が白いぞ?」と廉は反論する。
「当分の間、すぐ見分ける方法だ。すぐに名前と顔覚えにくいだろ?」
「橘廉です。よろしく」
「櫻 玲音です。玲音と呼んでね。樹里亜の真似して【サクラ】とか呼ばなくていいからね。よろしく」
「こっちの2人は、まだ初等科なんだが。背の低い方が下田 悠貴。あまり喋らない方が葉月潤」
「下田 悠貴です。もう2年もすれば、千景先輩と同じ位の身長になるから。よろしくね」
「葉月 潤です。よろしく」
「数学は千景、外国語はサクラ、化学や物理は潤、その他は廉に聞けば大丈夫よ」
樹里亜が美里に意味不明な説明をしている。
「?」
一同が理解出来ず固まっている。
「ここでデータ整理とか雑用の手伝いするから授業でわからない所、教えてあげて欲しいの。
私、こう見えても人に教えるの上手く無いじゃない?だから、よろしくね。美里は絶対に退学になっては困るのよ」
超簡単に樹里亜が説明する。
「俺達も人に教えるの上手くないぞ?」
千景が樹里亜に反論する。
「大丈夫よ。数学一桁だったサクラが満点取れるんだから」
樹里亜はさらりと言い返す。
「玲音お前。一桁だったのか?」と廉はびっくりする。
「違うよ!25点はあったよ」と玲音は怒る。
「………。頑張ったな……25点かぁ……。
俺はそんな点を生まれてから一度も取った事はないな………。25%の正解率かぁ~。1/4かぁ……。有る意味凄いよな?
3/4も間違える事が出来るのはなぁ~」
千景がしみじみと言う。
「!人の汚点をバラすなよ樹里亜!お前だって化学不得意じゃんか!」
玲音は顔を真っ赤して怒るが、日焼けで顔の色までは他の人には解らなかった。
「残念ながら平均点位は取れるわよ」
樹里亜は玲音に容赦なくとどめを刺す。
「何が不得意なの?」
廉は心配そうに美里に聞く。
「今まで普通の小学校に通っていたから…。全般的にここの授業に追い付けてないの」と美里は恥ずかしそうに言う。
「まぁ、俺達が役にたつなら協力はするけど、自分から質問してきてね。
あまり俺達気が利くタイプでは無いからね。
特に、玲音はストレートに聞かないと鈍感だから理解しないからね。
あと廉は体調壊して、この前まで入院していたから、体調悪い時は遠慮してね」
千景はさらりと忠告を促す。
「勿論です。皆様の御迷惑ならない範囲内でお願いいたします」と美里は頭を下げる。
「千景!鈍感って。俺、鈍感なんかじゃないぞ!」
「では、日本語の理解力が少し足りないか?」
「いや、普通に理解してるから」
「お前は、日本語の奥深さを理解してない。言葉の裏の意味までは理解してないだろ?」
千景は日本語のエキスパートの様な態度で言う。
「廉、そんなのあるの?」
玲音は心配になって聞く。
「まぁ、どの言語でも、裏側と表があるだろ?日本語にも有るには有るが、中々純粋な日本人でも全て理解しているのは居ないじゃないか?居ても学者位だろ?俺も良くわからんよ」と廉は答える。
「ある地方では言葉では、『もっとゆっくりしてください、お茶入れ替えます』と言われたら、はやく帰れと言う意味だ」
千景がかなりマニアックな地方の風習を話す。
「えーそうなの?」と悠貴が驚く。
「それは、かなり極端かと思いますが…」と美里は言う。
「でも、あるって事だよね?」と玲音は考え込む。
「まぁ………」と美里は言う。
「俺、日本語の勉強をし直すわ」
玲音は素直に感銘を受け言う。
「誰に習うんだよ?」と廉は心配で聞く。
「千景?」
「悪い事は言わん。それだけは、辞めとけ」と廉は笑う。
部は発足したが、すぐに活動といってもこれといってすることもなく。
伊集院教授も岩の撤去待ちで遺跡はまだ手付かずの状態だったが毎日メンバーは部室にやって来た。
新しく入った秋吉美里は樹里亜が綺麗な女性に対して可愛いと言うタイプだった。
樹里亜は今までたくさんの取り巻きは居たが友人関係は作ってなかった。
玲音と同じように取り入ろうとする人には上手く利用すると言う感じだ。
だか、秋吉美里には本気で友人関係を作ろうとしている。
樹里亜は美里の才能を見込んだと言っていたが彼女の実直さと優しさも気に入っていたんだろう。
部室で廉と千景がなにやら話していた。
「パソコン3台は欲しいな?」
「どうせお前は自分のノートパソコン使うんだろ?2台で良くないか?」
「たぶん潤も自分のノートパソコン使うと思うぞ」
「1台は解析専用すれば、効率的じゃないか?」
「まぁそうだが……。玲音と悠貴と潤が暇潰しのゲーム機になりそうだ」
「そう言えば潤が3Dプリンター欲しいって言っていたな」
「あぁ、それは有った方がいいかも」
するとそこへ美里がきた。
「今日は珍しく2人だけなんですね」
「あぁ、玲音達はおやつでも買いに行ったんじゃないかな?」と千景が答える。
「秋吉さんこそ、樹里亜と一緒では無いんだね」と廉も話しかける。
「皆さんと同様に美里って呼んで下さい。樹里亜は日直なんで後から来ます」
「そうか、ところで美里ちゃん。この部室にあったらいいな?って思うものある?」と千景が聞く。
「そうですね。ポットとコップかな?作業中お茶とかコーヒーあると息抜き出来ますよね?」
「成る程ね、そのくらいならお前のポケットマネーで買えるな?廉」
「俺にポケットマネーなんかあるかよ?」
「え?」
「そんな小遣いまで世話になれるかよ」
「そうなの?」
「あぁ」
「だから、あの部屋は何もないの?」
「そういう訳でないが大体、玲音が持ち込むから俺が買うものがないんだよ」
「どうしても欲しい物がある時だけ、おじさんかおばさんに相談してるけどな。
勘違いするなよ?おじさんやおばさんがくれない訳ではないぞ。俺が受け取らないだけだからな?」と廉は説明をする。
「成る程ね、まぁそれなら俺が出してもいいが、妙な遠慮なんかするなら奨学金貰えば?お前の成績なら余裕だろ?」
「出場所一緒じゃないか。それにそんなのおじさん達が嫌がるよ。何でも玲音と同じようにしてくれてるから」
「成る程ね」
「今日は何するんですか?」
「そうだね、今日はこれといってすることないんだよ。だから、こいつに授業でわからなかった所を教えて貰えば?
俺、申請書とか用意しないといけないから」と千景は言う。
「いいですか?」と美里に廉は遠慮がちに聞かれて「俺、教え方下手だけど……。それでよければ」と廉は言う。
「はい、ありがとうございます」
「敬語やめない?仲間なんだからさ」
「はい」
「美里ちゃんは、何が一番苦手なの? 」
「英語ですかね?」
「英語かぁ。千景!この部屋だけ、公用語英語にするか?」
「別に構わないが、悠貴が泣くぞ」
「でも、美里ちゃんも英語苦手みたいだし、語学は教えるより慣れた方が良くないか?」と廉は言う。
「しかし、荒療治過ぎないか?。帰って苦手感を増す結果になることもあるぞ?」
千景は普段男どもには荒療治上等と言わんばかりなのに女性に対しては細かい気遣いをみせる。
「皆さん、英語はペラペラなんですか?」
「どこまでがペラペラと言うか解らないけど日常会話に困るのは悠貴だけだね」
報告書を作りながら千景が会話に参加している。
「えぇ、凄いですね」
「美里ちゃんは世界で活躍したいと思ってこの学校来たんだよね?
世界で日本語が通用するのは極一部の限られた国だけだよ?
コミュニケーションが出来ないといくら才能あっても潰れるよ?」と廉は忠告する。
「あぁ~。良いこと思いついた」と報告書作っていた千景が急に言う。。
「ん?」
廉は千景に興味を示す。
「玲音に、この部屋の会話を英語に通訳してもらえばいい」
「千景お前、玲音が嫌がる事を思い付く天才だな?」
「そうかぁ?いい考えだと思うがな?」
噂をすれば、噂の主の登場である。
「廉、今日は何するの?」
「またお前達、何買ってきたんだよ?」
「おやつにマンガ」
「お前、小遣い使いすぎだろ?」
「そんなことないさ」
「玲音!」
「何?千景?」
「美里ちゃんのために、お前この部屋の会話を英語に通訳してやれ」
「えぇやだよ。めんどくさい。それなら英語で喋る方がいい」
「この部屋、公用語を英語にすると美里ちゃんと悠貴だけ喋ることが出来なくなるだろ?
だから英語にまず慣れるために英語に通訳してあげろよ!」
千景は名案と言わんばかりに玲音に強要する。
「それってさぁ、千景でも、廉でも出来るよね?
それに廉なら俺と語学力は変わらないじゃん。ドイツ語、フランス語、イタリア語出来るよね?たぶんフランス語は廉の方が上なんじゃない?」と玲音は反論する。
「そうなのか?」と千景は驚く。
「さぁ?」
「とぼけるなよ!廉」
「しかし、玲音の方が発音はいいじゃないか?」と誤魔化す。
「変わるかよ!」と玲音はふて腐れる。
「仕方ないなぁ。
では、これからこの部屋は公用語は英語するか?
で、悠貴は廉にサポートしてもらえ。
美里ちゃんは玲音に、これでいいだろ?」
千景は溜め息をつきながら言う。
「あの~。僕、あまり自信無いんですが?」と潤が恥ずかしそうに言う。
「宇宙ステーションでは日本語は、ほぼ使えないぞ?」
千景は潤を見ながら呆れて言う。
「?!」
「潤。お前は、樹里亜にサポートしてもらえ!」




