家族団欒
1.予定
廉は、自分の部屋でソファに座りテレビを見ている玲音に質問をする。
「玲音。おばさんは今、東京の自宅かな?」
「ん~どうだろう?今度日本で個展開くとか言って 居たからアトリエの近くのホテルかも?ママの秘書の電話番号なら知ってるよ」
「なら、明日の午後の予定を聞いてくれよ」
「了解」と玲音は自分の部屋へと消えていった。
廉はソファに座り目の前のテーブルに写真とみんなで出した要望のリストを見ながらあの樹里亜がどこまで譲歩するかなぁとしばらくの間考えて居ると玲音が戻って来た。
「ママ明日は親父とデートだ」
「へ?」
予想外の言葉に意表をつかれた。
「久々に2人の休日が合ったからコンサート見に行った後、ご飯を食べにいく予定らしいよ」と玲音から説明を受ける。
「そうかぁ、なら邪魔したら悪いな」
「いや、コンサートチケットはさすがにもう取れないから駄目だけど、ご飯は一緒に食べに来いって」と言いながら玲音は廉の向かいに座る。
「え?もう話ししたのか?」
「いや、廉が会いたがってると伝えただけ。そしたら夏休み家族バラバラだったからみんな揃ってご飯食べに行こうって。だから、明日夕方5時に、ここに迎えに来るって」
2. Compromise between East and West.
翌日の夕刻
「玲音、準備できたか?」
廉は玲音の部屋を覗く。
「ん!?うん」と玲音はベットに寝そべりマンガを読んでいた。
「お前、その格好で行くのか?」と廉は怪訝な顔をする。
玲音はジーパンにTシャツの上にシャツ羽織っているだけだった。
顔を覗かせた廉の姿を見て玲音は
「廉こそ、この暑いのに、スーツって死ぬよ!?」と呆れたように言う。
「いや、毎日SP付いている人が、ジーパンで飲食できる店なんて行かないだろ?」と廉は反論する。
「どうせ、また貸切状態にしてるよ」
「に、してもTPOを考えろよ」
「うーん、親とご飯食べるだけだから、いいと思うけどな?
それよりそこに突っ立ってないで入ったら?冷房が効かないじゃん」
廉は玲音の部屋に入り玲音の隣のベットに腰掛ける。
「お前は、ほんと目立つこと好きだな?」
「えー地味じゃん、どこにでもいる格好じゃん」
玲音は漫画を読むのを辞めてベッドに座る。
「お前、和洋折衷な上、容姿は他人の目引くのに、格好までその場所に不釣り合いな格好してどうするんだよ?」
「和洋折衷って………」
玲音のツボに入ったのか笑い転げてる。
「でも、【half】とか言われるより【和洋折衷】の方がいいね!【half】だと、1つの物が何か足りないイメージがするけど折衷だと両方のいいとこ取りだもんね?
“Compromise between East and West”かぁ~。廉!凄くいい言い回しだ!」と感心する。
「そんなことより……」
「わかったよ!わかったから。今日は廉に合わせるけど、その上着は無しね。ネクタイも無くてよくない?」
「わかったから、早く着替えろ」
「ねえ廉、その服にはこっちの靴の方が合うと思うよ。これ貸すからこれ履きなよ。
あと、そろそろ秋物の服要るでしょ?ママから一緒に買いに行きなさいってお金もらっているから次の日曜でも買いに行こうよ?」
「俺はいいよ。学校は制服だし、そんなに街に出かけることもないからそんなに洋服は要らないよ」
「でも廉が行かないと俺も服買えないじゃん!俺このベスト欲しいんだよね」と玲音はファション誌を廉に見せる。
「似たようなの持ってなかったか?
それにお前のファッションの拘りはすごいよな?
なのになぜTPOに応じた場所で発揮できない?」
「ちゃんとこれはこれで考えてるけどなぁ………。日に焼けて肌の色が大きく変わったから今持ってる洋服ではバランス取れないんだよねえ………。
あ~そうだ廉!廉のあのシャツ貸してよ!あの色なら今の俺の肌に合うと思うんだ」
「好きなの使っていいから早く支度しろ!
しかしなんで俺の洋服まで把握してるんだよ!」
廉が苦言を言うが、もうそこには玲音は居なかった。
3.家族団欒
寮の前に出ていると時間ぴったりに迎えがきた。
「すいません、お邪魔する結果になって」と廉が申し訳なさそうに言うと。
「構わないさ、大勢の方が楽しいし、息子が邪魔な訳ないだろ?」と時宗は楽しそうに言う。
「廉ちゃん、だいぶ顔色良くなってよかったわ」とメアリーはほっとしたように言う。
廉は時宗の顔を見て驚いた。
「おじさんもかなり日に焼けましたね」
「あぁ~たった1日、海上に居ただけだけなんだけどね。
この肌のおかげで社では、『夏休みを満喫されたんですね』とか言われてさぁ………。
たった3日しかない休みを夏休みとか言われてもねぇ………」と愚痴ってる。
「玲音も真っ黒ね」とメアリーは玲音を見ながら笑う。
「うん。まだ、水でもヒリヒリするよ」
「そう言えば廉ちゃん、何か相談でも、あるの?」
「あぁ、実は」と、廉はメアリーに部室の写真をみせて説明をする。
「まぁ、可愛い部室だけど考古学研究できる感じでは無いわね」と笑う。
「俺達、女の子の扱いが上手く無くて、樹里亜を怒らせても困るし。だからといってこのままでも………」
「その歳で、女性の扱いに上手くなってもらっても、親としては困るけどね」と時宗が茶化す。
すると玲音が「親父は、その歳になっても上手とは思えないよ」と皮肉る。
「そうかぁ?これでも俺、もてるんだがなぁ~。もてない様に見えるのかぁ~」と楽しそうに笑う。
(そりゃあ、玲音ほど堀は深く無いが、その甘いマスクとその後ろにある権力と財力あれば、もてないわけないよな)と廉は心の中で思った。
しかし、玲音は父親に対してはかなり辛辣だった。
「ママ程、寛大な心の人でないと、いつも約束すっぽかす男は駄目だよな」と鋭く言う。
「えっ?もしかして玲音。まだ夏休みのこと怒ってる?
俺は、ちゃんと予定通り初めから参加するはずだったんだよ?一生懸命、時間は作っていたんだからね」
「いいよ。別に中止になった訳でないし。伊集院教授や加藤さん、齋藤先輩が相手してくれたし。千景達もずっと一緒にいて楽しかったから。
でも親父!結果がすべてなんだよな?
どんなに頑張ったかでは無くて、【結果】なんだよな?」と玲音は容赦無く言い放つ。
時宗は杭で心臓貫かれたようなダメージを受ける。
「そうだったね。うん、そうなんだけどね。情状酌量の余地と言ってね、仕方ない事や、やもえない事情や、状況は寛大な心でね」
時宗は必死に自己弁護を図る。
「だから、俺もママも廉も、いつも情状酌量してるじゃんか!」
「すいません」と時宗はガックリと肩を落とす。
メアリーが見かねて「玲音、仕事と家族は違うでしょう?仕事には対価が発生するけど家族は対価は発生しないでしょ?
友達もそう、対価の発生しない事をあまり厳しくしたら駄目よ。寛大な心で接しないとね。特に家族はね。家族だけよお互いを思いやることができるのは。思いやりは人として大切なことよ?」と諭す。
「わかってるよ」と玲音は言う。
「話しがそれちゃたわね。そうね、樹里亜の作った部室では作業しずらいわね。すぐには時間が取れないけど、樹里亜とこの部室レイアウト考え直してみるわ。
このリストと写真貰ってもいいかしら?」
「はい、御願いします」と廉はメアリーに資料一式渡す。
「さぁ、今日は楽しくご飯食べましょうね何食べたい?」とメアリー達は久々の家族団欒に喜んだ。




