真打ち登場
1.真打ち登場
子供達の夏休みも残す所、後4日でこの男の登場だ。
「何とか夏休み終わる前に日本に帰って来れたな。
藤堂君も島に行くことに付き合わせてしまったが良かったのかい?」
ホテルに向かう車の中で時宗は運転席の隣に座っている藤堂に聞く。
「ええ、今年の夏休みはあのホテルに行く予定にしていましたからちようど良かったです」
「あのホテルに何の用なの?一応グループ会社の保養施設としてはいるけど、今は新入社員研修と島の開発業務の関係者の宿泊や活動拠点としていて一般社員のリクレーションとしての受け入れはしてないし、周りにはレジャー施設なんか何も無い辺鄙な場所だから実質あの島の開発拠点にしか為って居ないホテルなのに………。自然浴とか静かな所でゆっくりしたいなら他の保養施設に行った方がよいのでは?今は保養できる環境ではないよ?」と興味深そうに時宗は聞く。
「統轄長には御話ししてませんでしたっけ?齋藤拓哉は御存じですよね?」
「ん?リゾート開発部の齋藤君?」
「はい。彼とは生徒会で一緒なのは御存知でしょうが、それ以前から同郷で幼馴染みなんですよ。
彼と一緒に初等科からあの学園に入る為に上京し一緒に寮で暮らしてました。なのでかなり長い付き合いをしてるんです。統轄長と伊集院教授や加藤部長の様な関係なんですよ。
だから、長期休暇は会ってお互いの近況を肴に酒飲みながら過ごしているんです。
今回は遺跡探索で島の方が忙しいので拓哉は夏休みが取れない為に、休みの取れる私がこうして出向くんですよ。でも、結局私もたった3日かしか取れませんけどね」と藤堂話す。
「そうなの?でも、休み3日しか取れなくなったのは、今回は私のせいでは無いからね!」
「分かってますよ。もうそろそろホテル着きますよ!」といいながら藤堂と時宗は目減りした夏休みをどうやったら代休で取れるか車の中で真剣に話し合っていた。
ロビーに着くと伊集院の考古学の学生グループや、加藤を含め部下達と、玲音達が島に渡る準備をしていた。
「今頃、来たのか?時宗」と 最初に時宗に気付いた伊集院が呆れながら言う。
「もう、来ないのかと思ってたぞ?
まぁ、時宗の場合、居ても酒を飲む相手くらいしか勤まらないからな」と友人とは思えない発言を加藤は言い放つが、その上がいた。
「もう帰る準備しなきゃいけないのに……。
親父!今頃になって何しに来たのさぁ?」
時宗の姿を見た玲音も呆れながら言う。
「みんなひどいなぁ。俺だって早く来たかったのに………。
夏休みの予定に無理矢理勝手に仕事が入るんだよ?酷い会社だよ。
それでも、頑張って仕事済ませてやっとの思いで来たのに……。
何?そのみんなの冷たい態度!世間は冷たいなぁ~。もっと歓迎してくれてもいいと思うんだけどなぁ?
少なからず俺、スポンサーなんだしさぁ………。それに頑張って会社を支えているんだからさぁ………」
時宗は泣き言めいた不平を言う。
「で、仕事うまくいったの?」
玲音は半分は聞き流しながら一応反応を示す様に言うと。
「俺を誰だと思ってるんだ?俺がミスるわけ無いだろう」
時宗は胸を張って息子に向かって言うが、
「そう、それはよかったね。これから俺達、島に行って来るから親父はホテルでゆっくり風呂でも入りながら仕事の疲れを癒してのんびりしていたらいいよ」
玲音はあっさりと形だけの労い?を言う。
「え?俺、折角一生懸命に時間を作ってここまで来たのにお留守番?」
意外な息子の冷たい対応に唖然とする。
「だって、スーツ姿で島に行って何するのさぁ?」と玲音は呆れて言う。
「いやいや、すぐに着替えてくるから、それまで待っててくれよ!
藤堂君も島に渡りたいよね?」と時宗は必死に藤堂に振る。
「私は拓哉に会うだけなので、拓哉がここに戻って来るのをのんびり待ちますよ?」
時宗の意とは裏腹な言葉を藤堂は言い放つ。
「ええ?そんな……」というと。
「もう!!ただでさえ時間が、足りないのに!足引っ張るなよ親父!早く着替えて来い!」と玲音は怒る。
「天下の櫻グループの総帥も息子には形無しだな」と親子のやり取りを見ながら加藤と伊集院が笑う。
島に渡るヘリの中では千景と時宗が話ししていた。
「すいません。昨夜また廉が発作起きたみたいで………。病人なのに俺がデータ整理とか、頼んだりしたから……」
「千景君が謝ること無いよ。毎日元気に楽しそうにやっていたらしいよ。何もしないで病院に大人しく寝ているのも辛いもんだよ。場所は違っても遺跡探索に参加出来てるっていう事は廉はかなり喜んでいると思うよ?
それに発作は予見出来るわけ無いしね。発作が起こるすぐ前に、玲音と話ししていたらしいが、その時は何時もの様に元気だったらしいしね。
不幸中の幸いで病院ですぐ異変に気付き治療して貰えたし、今は発作も治まって元気になった見たいだよ?」
玲音は伊集院と話しをしていた。
「教授、今日は島に渡るんだね」
「うん。君達の夏休みもうすぐ終わりだろ?少しでも可能性を上げるために現地で指示することにしたんだよ。」
「見つかると良いなぁ~。」
「そうだね。でも、遺跡探索は何年もかけて根気のいることだからね。簡単には、見つからないのも現実だ。でも、資料は揃って居るんだ頑張ろう」
「うん。それでね教授、昨日岩壁の所に行ったでしょ?大きな岩が連なって居るところ………」
「あぁ、あったね?でも、あのへんは岩壁しか無かったんだよね?」
「うん。でも、今日もう一度行って見たいんだ」
「どうしてだい?」
「昨日廉が、あの岩壁の一部に人一人くらい入れる岩穴が画像で見えたようだって昨夜言っていたからさ。だから、もう一度行って確かめてみたくて………」
「構わないよ、雅治にポイント教えておくね」
「うん、お願い」
島に着き各グループに別れそれぞれでミーティングを済ませ調査を開始する。
「さて、今日も頑張って探しますか?」と加藤は部下にそれぞれのポイント行くように指示した後に玲音に向かって
「昨日いった所、もう一度行きたいのか?」と聞く。
「うん、お願い」と玲音は頼む。
「岩壁が連なっているから危ないと思ったらすぐ引き返して来いよ」と注意を促す。
「わかっているよ」と玲音と悠貴は頷く。
「では、行こう。時宗、お前は船の上で待機な?」
「まぁ、最近は、疲れはてて長時間潜る体力に自信ないからなぁ………。仕方無いかなぁ~」とお気楽に言う。
玲音は、悠貴に昨日廉から指摘受けたことを詳しく話して海底に潜った。
『廉は、海底と岩壁の隙間って…』広範囲に岩壁が立ち並ぶ。悠貴が、手をひっぱりあるヵ所を指さす。そこには、廉の言った通り一人くらい通れる穴があった。行ってみようと悠貴に合図して、穴を潜り抜け岩壁の隙間を通り抜け奥に進むと辺りは開け、遺跡への入口らしき物が見える。
海底に石畳が広がり入口は更に地下に進む石階段かある。
『見つけた!千景の考えは正しかった』
二人は海中で手を合わせ喜ぶ。
『やったね!玲音 』
悠貴がメッセージボードに書いて見せる。
廉が見た夢の通りに………。
二人は海上に戻り、ボートで待機していた加藤と時宗に『出入口があった』と伝える。
2人とも何を言っているのか解らず豆鉄砲くらったように、固まった。
「親父!本当に石段の入口があったんだってば!」と玲音が叫ぶと2人とも我にかえって、全関係者に遺跡が見つかったと集合かける。
玲音と悠貴は伊集院、加藤、時宗、千景、潤を連れて遺跡入口まで案内する。
その影像を廉も病院のベッドの上で、見て夢とまったく同じ光景に困惑する。
夏休み最後の日、子供の冒険は実を結び12才と13才の子供達による遺跡発見の偉業のニュースは世界中に広まる事となる。
しかし、子供達の冒険は、ここまでとなり、後は加藤達海洋開発部がこの辺りの海洋環境調査をし、調査の段階で問題が無ければ危険度の高い石壁を撤去し、それから伊集院と大学の考古学部が本格的遺跡内調査することになった。




