探索開始
1.探索開始
本島からヘリで一時間。目的の孤島は大海原に浮かんだ自然溢れる所だ。
島右中央には大きな活火山もあり標高も高いため冬場は山頂付近は真っ白な雪原になる。山には原生林が生え、山水が湧く、急な崖や滝もある。
海辺は北側の一部分だけは徐々に水深が深くなっていくがそれ以外の海辺は千景が最初に言ったように遠浅の珊瑚礁の海辺が半島の半分以上続く。
左半分は平地であり、島全体に原泉が到る所に沸いている。
島には半島一周出来るようにアスファルトで舗装された2車線の道が1本とヘリポートに北側に船を接岸したりするアリーナがある。
これは時宗が島を購入後、島を開発するため作らせたものだ。
その開発の責任者が齋藤拓哉という男で1年程前からこの島に実際に入って調査、開発計画立案、開発を指示していた。
伊集院と加藤とその部下達も7月末からこの島に入って作業をしていた。
伊集院は、島と遺跡の関係性がある場所がないか、古文書と地図、現地の写真から模索していた。
加藤達はこの島周辺の海洋資源や環境調査をしていた。
調査の拠点は島から一番近い本土に時宗がリゾートホテルを買取り改築、改装し、櫻グループの保養施設兼島の開発事務所として機能している。
一階はフロント、大浴場、レストラン、カフェ、コンビニがあり、2、3階フロアにリゾート開発部の事務所、考古学研究室の分室、海洋開発部仮事務所が入り4階フロアが新人研修や会議室等大小合わせたオフィスフロアで5階から上が宿泊施設となっている。最上階フロアはスポーツジムとプール、スパやマッサージ等が受けられるレクリエーション施設がある。
加藤と齋藤がホテルの会議室で島の地図を広げて打合せしていた。
加藤、伊集院、時宗ともに、38才だが、齋藤拓哉26才とまだ若い人物だ。部所の規模は違うが役職的には加藤と齋藤はおなじ地位となる。
時宗の秘書の藤堂とは同期で友人関係にあり学生時代は供に、生徒会役員をしており、その働きと才能を認められての役職となっていた。
「よくこの遠浅の海辺に囲まれている島に、珊瑚や生態系を壊さず資材運び込んでここまで開発できたな?」と加藤は感心する。
「えぇ、北側の一部は遠浅になってないので、そこからアリーナを作り資材を搬入して、開発を進めて行きました。
まだ島の全体の調査が完了してないので、アリーナと島の一周する道とヘリポート以外は手付かずですよ」
「ここは、最終的に観光地にする計画なのか?」
「いえ、まだ、何も決まってないみたいですよ。活火山がありますし、まだ、島全体調査しきれてないので。それに、今回遺跡が本当に見つかれば、それこそリゾート開発は白紙になるんじゃないですかね?
統轄長からは、この辺り海洋資源も豊富みたいなので、それを壊さず島を活用できるように手を加える方法を考えてくれと言われてます。
ところで統轄長と玲音君達は、いつ頃来られる予定なのですか?」
「時宗はなぁ~。なんか急遽NYに行かなくてはならない事案が起こって昨日出国したから、その問題片付けてからでないかな?玲音達は、そろそろ来ると思うが………」と加藤はいう。
2.予定変更
3日前
「統轄長、NYから先程連絡が有りまして、どうしても統轄長に来て欲しいとの事ですが………」
夕方、時宗は自分の部屋に戻ると同時に秘書の藤堂が報告してきた。
時宗は荷物を机に置き机に腰掛け卓上カレンダーを手に取り見ながら言う。
「えぇ、どういうこと?5日後から夏休みだよね?ちゃんと申請したよね。私でないとダメなの?」
藤堂は時宗の反応を予測していたかの様に順序よく説明を行う。
「何やら水面下で、ある企業の買収の打診がNYの事務所の方で発生していて、既に下処理は全て完了しているので最終的な判断を統轄長にして欲しいとの事です。
一応、業績等の資料はこちらにも送られてきて揃っているのですが、極秘に動いているプロジェクトなので全てが揃って居るわけではないのと、実際にその企業の視察や最終的な相手企業の社長と会談は統轄長でないと………との事です」と揃っている資料を渡す。
「ううぅ、そんなに急いでいるの?この買収?」と時宗は渡された資料をパラパラとめくりながら無駄な抵抗をしてみる。
藤堂は(やっぱり、そう言って来たか。
多分何を言っても納得は、しないだろうな)と内心で思いつつ一応考えていた提案をしてみる。
「統轄長、夏休み1週間ずらしましょう。スケジュールは何とか調整します」
「愚問だと分かっているけど、企業買収となるとさぁ、1週間ずらすだけでは足りないんじゃあ………」とカレンダーを見ながら恨めしそうに時宗は言う。
「では、統轄長の夏休みのために、折角NY事務所が水面下で動いていたこの買収計画を取り止めますか?」と藤堂は時宗の言葉を一刀両断する。
「うぐっ、藤堂君。そんな事いっては………。
ただね、私にも予定が………。
玲音との約束もあるしね。あの年頃の子供との約束は教育上、とても大切だよね?」と家族を盾にしてみる。
「こう言っては何ですが、 玲音様は統轄長の夏休みの参加が遅れたくらいでグレるようなお子様ではないとお見受けしています。理由をきちんと説明すれば快諾して頂ける聡明なお子様だと思いますが?
しかし、統轄長が玲音様に理由を説明しずらいのでしたら、代わりに私が玲音様に事情を説明して納得して貰いますが………」と藤堂は反撃する。
「もう分かったよ!行くよ!NYに行けばいいんだろ?車の中で資料に目を通すから、すぐ全ての資料くれ。今からすぐNYに向かうから飛行機の手配と今後のスケジュールの調整してくれ。あと、藤堂君、君もNYへ同行して貰うよ?その準備してくれ」と時宗は半分やけになりながら言う。
「そう言われると思い、全て準備と手配は完了してます。取り敢えずこれが資料でこれが新しいスケジュールとなります」と藤堂は涼しい顔で資料等を差し出す。
「もしかして……藤堂君。これは……君が仕組んでいたのか?」と段取りの良さに呆然として時宗は藤堂に聞く。
「統轄長、人聞きが悪いです。私がその様な事をするわけがないでしょ?
統轄長の休みが減ると言うことは私の休みも減ると言うことですよ?
ただ私は、NYからの連絡を受けて外堀を埋めておいただけですよ」と藤堂はにっこりと作り笑顔で答える。
時宗は溜め息をつきながら椅子に深く座り込み夏休みを諦めて言う。
「私は、有能な秘書を持ってうれしいよ。玲音にもだが、加藤と伊集院にも、事情説明しておいてね」
「光栄です。それも既に完了してます。それと、奥様にも連絡了解済みです。」
3.パラダイスにようこそ
玲音達子供が島にやってきたのは8月中旬だった。
行く準備している時に、樹里亜に計画がばれ「そんな面白そうな事、私に内緒にするなんて!」とかなり文句を言われたが、千景が「無人島での活動は女の子にはきついのと、モデル志望が真夏の海辺なんかにいると日焼けで肌傷めるからよくない。そんなに調査に係わりたいなら廉が入院している間、廉と一緒に調査結果の解析の手伝いしてくれ」とあっさりと言い伏せた。
「千景、お前凄いな。あの樹里亜を言いくるめるなんて!」と玲音はかなり感動していた。
そんな折、玲音は秘書の藤堂から連絡が入り、時宗がどうしても仕事の都合で夏休みを取れるのが遅れるので許して欲しいと言われた。
「そんなの何時も事だろ?藤堂先輩が親父の為に謝らなくてもいいよ。
親父はスポンサーだから、現場に居ても居なくても、後からゆっくり来ても来なくても誰も困らないからいいよ」と多少皮肉を含めて言っていた。
「加藤部長と伊集教授はもう現地入りしています」と聞いて、玲音は「親父に俺達は大丈夫だからしっかり仕事頑張って」と伝言していた。
手付かずの自然の中、廉と樹里亜以外の子供達はのびのびと夏休みを満喫していた。
玲音は、島内を色々案内してくれた齋藤は面倒見もよく若い事もあって、兄貴となついて何時も行動を供にしていた。
探索は、加藤が伊集院から指示受けた場所に、船を出して千景と潤が探査機を操縦して海底の映像とデータ撮る、そのデータはそのままネットサーバーにデータを送られ、廉と樹里亜がまとめて解析し、その結果を伊集院の所に送り、また伊集院が場所を絞る。その指示で探査機場所の移動する。と言った段取りで調査は進んでいた。
玲音と悠貴は探査機を使っている間は出番も少なく、齋藤と供に島の探検をしていた。
齋藤から「この島は大昔、人工的に何か手を加えられたのではないかと思われる場所が何ヵ所かあるから、遺跡が発見されればこの島と何か関係でてくるかもね」と教えて貰っていた。
廉は、モニタから送られて来る風景が、デジャブのように感じられ悠貴と海に潜る夢を思いだす。
しかし、この島こそが、【櫻 玲音】の人生最後の地であることを、橘 廉が、思い出すにはまだまだ先の事だった。




